マツコ・デラックスも「男の育休3か月なんて大した役に立ってない!」と言っていたが、その言葉が身に沁みた

マツコ・デラックスは育休から復帰した男性スタッフに対して、こう言い放った。
「3か月休んだって、まだ何の助けにもなってないよ!」

実際に育休を取得したら、この言葉が身に沁みた―そう語るのは、弊社の吉田である。弊社のようなBtoB企業での営業職。しかも管理職として初の男性育休取得者、さらに、これまで例のなかった8か月という長期休業を取得したことで、社内ではちょっとした話題になった。

ちなみに、政府は2030年度に取得率85%の目標値を掲げ、男性育児休業取得を推進している。2023年度の同取得率は30.1%となり、前年度より13.0 ポイント上昇した。もっとも割合の高い取得期間は1か月~3か月未満である。

一方、弊社は男性育休取得率100%の企業に与えられる、東京都「TOKYOパパ育業促進企業2024」のゴールド認定を受けた。男性育休に熱心に取り組む企業だといえるだろう。

それにもかかわらず、吉田はなぜマツコ・デラックスの言葉を噛みしめたのだろう。育児休業という経験を通して得られた気づきや学び、今後の取り組みに生かしたいことについて、話を聞いた。

インタビュイー

株式会社ウチダシステムズ 営業企画推進部 次長|吉田 学(37歳)

2014年よりウチダシステムズに参画し、オフィス構築を検討されるお客様への新規営業およびプロジェクトマネジメント業務に従事。営業部のマネジャーを経て、現在はマーケティング戦略や人材育成計画の立案・推進などに携わるかたわら、生成AI活用のプロジェクトリーダーも務める。妻と娘(1歳)の3人家族。毎朝、保育園まで自転車で爆走中。

―BtoB企業の営業職であり、しかも男性管理職として初、さらに8か月の長期間にわたって育児休業を取得するというのは、異例づくしですね。それを決断した理由とはどのようなものだったのでしょうか。

吉田:私の場合、結婚や子どもの予定すらまったく立っていなかった頃から、「もしも将来子どもができたら、絶対に育児休業を取ろう」と決めていました。
理由はいくつかありますが、一番は「人生でそう何度もない経験だからこそ、子どもとの時間をできるだけしっかり確保したい」という思いでした。

父親が子どもと過ごす時間って、母親と比べて圧倒的に短いというデータがありますよね?生涯で父親が子どもと過ごせる総時間を調べてみたら、約3年4か月、驚くほど短い。母親の半分以下です。
だからこそ、「子どもが誕生したら、0歳のうちにある程度まとまった時間、一緒にいたい」と昔からずっと考えていたんです。

さらに、私の周りには「子どもを授かりたくてもなかなか恵まれない」という友人・知人が少なからずいます。そういう話を耳にすると、改めて「子どもが生まれてきてくれることは、偶然や縁の部分が大きいんだな」と実感するんです。

それで、もし自分が子どもを迎えられるのなら、きちんと時間をつくって向き合いたい、というのが大きな決断理由になりました。

ただ、8か月という長さをあらかじめ狙っていたわけではありません。
会社の決算月が7月で、新しい期のスタートに合わせて復帰しようと考えたら、結果的に8か月になりました。最初は1年近く取ることも視野に入れていましたが、区切りを考え合わせると8か月がちょうど良かったという流れですね。

―育児休業取得中に感じたメリットにはどのようなことがありますか。

吉田:いちばん大きなメリットは、夫婦で育児の負担を分担できたことです。生まれてすぐは3時間おきの授乳やおむつ替え、吐き戻しの処理などが一日中続きます。

私は妻と2人がかりでも「これは大変だな」と思いましたから、もしワンオペ状態だったら相当きついですよね?2人とも育休を取っていたからこそ、どちらかが疲れたらもう片方が交代する、という形で乗り越えられました。

この時期を通じて、“育児戦力”を伸ばせたことで、育児に対する自信がつきました。

パパとママのどちらかに育児が偏ると、育児の習熟度に差がつき、子どもも習熟度の高い方の片親だけに頼るようになってしまいます。
その結果、さらにその差が開いて、育児負担の非対称性が生じてしまうのではないでしょうか。

でも育休中に、妻と同じペースで育児に必要なスキルやリテラシーを身につけることができ、そうした“育児戦力”を今後も育児に生かしていけるという自信がつきました。
これからも、お互いにいたわり合い楽しみながら、長期間にわたって育児に取り組んでいきたいと考えていますが、その基盤ができたという手応えが得られたのは、大きいですね。

印象的なエピソードの1つが、娘の「向き癖」です。
うちの娘は新生児期からずっと同じ方向を向いて寝るクセがあって、頭の形が歪んできてしまったんです。重度になると、“ヘルメット治療”を受けることになるのですが、その一歩手前でした。

病院では「月齢がまだ小さいから、少し様子を見ましょう」と言われました。そこから、夜中でも1時間おきに向きをチェックして、頭が傾かないように抱き直したり、向きを変えたり。

幸い、1か月ほど根気よく続けた結果、きれいな頭の形に戻ってくれました。これも2人とも育児に集中できる環境だったから可能だったことで、ワンオペではとてもではないですが、無理だったと思います。

保活(保育園探し)のプランを早めに立てられたのも大きなメリットですね。
多くの家庭が「1歳児の4月入園」を狙うため、そこは非常に競争率が高い。

そこで私たちは「0歳児で入園する選択肢も早めに検討しよう」と考え、実際に10施設ほどを見学し、自治体の“評価”も調べて、園に求める優先順位を整理しました。

それと平行して、空き枠情報も都度チェックしていたんですね。
その結果、ちょうど良いタイミングで空きが出た園に申し込むことができ、0歳児クラスから保育園に入れられたんです。

夫婦そろって育休中だったからこそ、時間をかけて見学や情報収集をして、納得のいく園を選べたのは良かったですね。

―育児休業取得中に感じたデメリットにはどのようなことがありますか。

吉田:は私自身、デメリットをほとんど感じていません。ただ、一般的には、次のようなことがあるのではないかと思います。

多くの方に共通するのは「収入が減る」という危惧ではないでしょうか。
2025年2月現在、育休中は給与が支払われない分、育児休業給付金(賃金の67%、手取りの8割相当)が支給されていますが、2025年度からはさらに給付率の引き上げ( 賃金の80%、手取りの10割相当に)も予定されていて、金銭面のハードルが下がる見通しです。

ただそれでも、給付金が入るまでタイムラグがありますから、最初の2か月くらいは給与ゼロ状態になります。そこをきちんと認識しておかないとびっくりするかもしれません。

ちなみに私自身は「子どもができたら育休を取る」と早めに決めていて、妻とも相談したうえで貯蓄を進めていたので、ある程度は大丈夫でした。

あと一般的には、職場に負担がかかるという点もデメリットになると思います。
私のケースでは、会社や上司が「それなら早めに引き継ぎを考えよう」という姿勢を示してくれ、人事総務部も面談シートなどを用意して丁寧にサポートしてくれました。

ただし、どんな会社でも同じようにいくとは限りませんし、育休に対して後ろ向きな会社があるのも事実です。その結果、「職場に迷惑をかけるんじゃないか」「本当に取っていいのか」と悩んでしまう方も多いのかなと思います。

―マツコ・デラックスさんの言葉を実感したのは、どんなときでしょうか。また、なぜでしょうか。

吉田:あの発言をテレビで聞いたのは、私が育休に入る少し前でした。「3か月か……、確かにあっという間かもしれないな」と思いながら観てたんです。
でも実際に育休を8か月取ってみたら、「確かに3か月じゃ全然足りないかも」と痛感しました。

生後間もない頃って、24時間ずっと赤ちゃん中心の生活になります。その合間に洗濯や掃除、食事の支度……、1日があっという間に過ぎていきますが、もう慣れないことだらけで、2人がかりでもストレスフルになりがちです。

もし「3か月だけ」休んで戻るとしたら、パパが抜けたあとの数か月~1年近くはママ1人でやらなくちゃいけない。それを想像したら「3か月じゃやっぱり大した役には立たないかもな」と、マツコさんの言葉を身をもって理解した感じですね。

それと、生後3、4か月経つと、生活リズムが整ってくるので、それで一区切りだと思ったんですね。実際に、子どもは長時間寝てくれるようになりますし、親の方でも育児に慣れてきます。

ところが、うちの場合には、4か月目から6か月までが一番、大変だったんです。
知恵がついてきて、喜怒哀楽がはっきりしてきて、それで笑顔を見せてくれたりもするんですけど、反面、自我が出て来て、長時間泣き続けたりして。

3か月経って、ようやく壁を乗り越えたと思ったとたん、いきなり次の壁がたち現れてきた、みたいな感じでしたね。

育児って、問題の内容が変わっていくのであって、どこかで急に問題がなくなって楽になるっていうものじゃないんですね。それが実感できたのは、8か月にわたる一連の育児に関われたからだと思います。まさに、マツコさんの言葉どおりでした。

ただ、だからこそ、「今後の育児もそんなふうに、常になんらかの問題に対応する必要があるんだろうな」というビジョンが描けたのは、とてもよかったと思っています。

―育児休業の体験からの学びや気づきにはどのようなものがありますか。

吉田:一番は、「子育ての負担は圧倒的にママに偏りやすい」という現実を、身をもって体感したことです。

もし私が育休を取らなかったら、あるいは3か月程度にとどまっていたら、その残りの長い期間を妻が一人でこなすことになっていたわけで……、考えただけで申し訳なくなりますし、そういう状況では、夫婦間でストレスが爆発しても不思議はありません。

0歳児の育児は想像以上の大変さがあります。赤ちゃんは“不機嫌な時間”も多くて、四六時中泣くこともある。そういうときにワンオペになったら、自分の気持ちの余裕なんてすぐになくなっちゃうでしょう。

私が長期間休んで一緒に育児できたことで、「これは2人でやらないと続かないな」と心底思いましたし、ママが通常ワンオペでやっている状況ってどれほど大変なんだろうと改めて実感しました。

それじゃ、2人目、3人目を迎えようなんて、思えるはずがない。
国の少子化という大きな課題が、いきなり“自分事化”した感じでしたね。

それと、もう1つ、思いがけない発見がありました。
先ほどお話ししたように、私は子どもの誕生直後の特別な時期を家族と一緒に過ごしたいという一心で、積極的に育休を取りました。それで、育休中、友だちと会うとか趣味のサウナに行くとか、そういうことがやりにくくなっても、そのことには全くストレスを感じませんでした。

ところが、娘がなかなか泣き止まなかったりして、なんでもない時間、たとえば何気なくスマホを手にとって漫画を読むとか、ゲームをするとか、そういう、いわば“非生産的な”時間が遮られることに、妙にストレスを感じたんです。

私はスマホ依存では全くありませんし、仕事では効率化を図って生産性を高めようとするタイプの人間です。それなのに、そういう“ぼうっとする時間”、“なんでもない時間”が削られると辛い。一見、無益にも思える時間なんですが、それが必要なんだということに気づきました。

これは私の場合の気づきですが、人それぞれに、コントロールが利かない状況だからこその発見があって、自己認識がより深まるという側面があるのかもしれませんね。

―育児休業という経験を総括すると、どうなるでしょうか。

吉田:現時点での総括は難しいですね。もしかしたら、もっと後になって見えてくることもあるかもしれません。

ただ、私にとっては「プライベートだけど期限が決まっている不思議な期間」でしたね。
仕事であればいつまでに何をどこまでやる、という目標や期限がありますが、育児には明確なゴールがない。プロセスそのものが大事ですし、子どもは親の都合では動いてくれない。

でも、そういった“自分のコントロールが利かない”時期と真剣に向き合ったことで、「人を待つ」という心構えができましたし、仕事の進め方を冷静に見直すきっかけになりました。

育休を取るためには、仕事から一旦、離れる必要があります。それは、自分の業務を客観視するいい機会になりました。「これまでの働き方はどうだっただろう」「復帰したら何を変えよう」と、振り返る余裕ができたんです。それに、復帰後の生産性も上がった気がします。

仕事って意外とコントロールしやすい部分があるんだな、ということにも気づきました。赤ちゃんを相手にするほうがよっぽどコントロール不能というか、予期せぬ事態が多い。

そういう意味で、「育児に比べると仕事の方が楽」に感じることもあり、結果としてストレス耐性が強まって、心の余裕を持って働けるようになりました。

―育児休業後の現在は、子育てにどのようにかかわっていますか。

吉田:私が復帰するタイミングで、娘が0歳児クラスに入園できました。妻も1か月遅れで復帰したので、ほぼワンオペ期間なくスタートできています。私が朝の送り、妻が夕方の迎えを担当して、夜はお互いに家事や子どもの世話をシェアしています。

私は生成AI(ChatGPTなど)を積極的に使って業務効率化を図り、残業は絶対せずに、18時台には家に帰ると決めています。これまでお話ししてきたとおり、育児はとても大変だと痛感しているからです。

それで、夜は娘と遊んだり、食事を作ったり。もしどちらかに会食や出張がある場合は、スケジュールを共有して都度カバーし合う形をとっています。

―育児休業の経験を今後、どのように生かしていこうと考えていますか。プライベートと仕事に分けてお願いします。

<プライベート>
吉田:0歳児の育児を経験して、「可愛いだけじゃ済まない」ことが身に沁みて分かりました。これから2歳~3歳の“イヤイヤ期”が来ると聞きますし、藤本美貴さんもテレビ番組で「3歳までは本当に大変」とおっしゃっていて、私たち夫婦も「まずは3歳まで2人で力を合わせて乗り越えよう」と話しています。

育休が終わっても、引き続き夫婦で助け合いながらやっていくことが大切だと思うので、しんどいときは遠慮なく言い合って、カバーできるところはカバーする。そうやって家庭内の余裕を保ちながら子どもに向き合っていきたいですね。

<仕事>
吉田:社内で男性育休の意義をもっと共有したいです。
うちは20代の女性社員も多いので、近い将来、結婚や出産を迎える人も多いでしょうし、そのパートナーも含めて「こういう体験例があるんだ」と知ってもらえれば、少しは参考にしてもらえるかもしれません。

社内の人事総務部も力を入れ始めているので、私の体験が役立つならどんどん発信していきたいですね。

―社内の今後の取り組みに関して、なにか提言はありますか。

吉田:まずは男性育休への理解や制度の周知をもっと進めることですね。法律的には「上司が許可しなければ取れない」わけではないのに、現場では上司の反応一つで取得しにくくなるケースが多いようです。
特に、直属の上司の理解があるかどうかは大きいと感じています。

私の場合、妊娠が判明して安定期に入る前から、上司に早めに相談しました。自分が管理職なので周囲への影響もあるし、「早く言ったほうが混乱が少ないだろう」と思ったんです。

「育休を取りたい」と伝えたら、上司は「分かった。お前が取りたいなら取っていいよ」と即答してくれたんです。
正直、内心はいろいろと思うところがあったかもしれませんが、あのときの「即OK」があったことで、「あ、これなら大丈夫だ」とホッとしました。本当にありがたかったです。

ただ、会社によっては「人材が抜けるのは痛い」「正直メリットを感じにくい」という経営的な本音もあると思います。

ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)などの論文によれば、男性の育休取得が幸福度の上昇や女性の社会進出、また復帰後の生産性向上につながるデータがある一方、短期的には人手が足りなくなるというジレンマがあるのも事実です。

だからこそ、業務引き継ぎやマニュアル整備、妊娠中から産後までのサポート体制など、企業側が腰を据えて仕組みづくりに取り組む必要があると感じます。

私の場合は、管理職として初めて長期間取得するケースだったので、人事総務部もかなり手厚くサポートしてくれました。普通なら上司と1対1で面談をするところに人事も同席したり、面談シートを用意して「給付金は、何月ごろから何回振り込まれるか」といったカレンダーを作ってくれたりしました。

給付金支給までのタイムラグが2か月ほどあるので、その間の収入ゼロ状態をどうカバーするか、丁寧に説明してもらえたのは、安心でした。
さらに、「賞与の算定期間途中で育休入りする場合、どのくらいボーナスが支給されるか」といった細かい計算も教えてもらいました。

こうしたフォローがあるのとないのとでは、気持ちの余裕がまったく違いますよね?
ですから、制度的には許可不要といっても、やっぱり上司や会社がどんなふうに対応してくれるかで、取得のしやすさはかなり変わると思います。

私の場合は上司の反応がポジティブで、社内も協力的で、「男性管理職が長期育休を取る」初めてのケースにしては、スムーズにいったと感じています。

一方で、メリットがあるのは社員側ばかりではありません。
採用難の時代にあっては「社員が長く働き続けられる環境」を整えた企業のほうが企業価値が高く、優秀な人材を確保しやすいという側面があるので、長期的にみれば会社にとってもプラスになるだろうと私は思っています。

特に弊社は、オフィスづくりを通して、そこで働く方たちのウェルビーイングに寄与する環境空間をご提案する会社です。それだけに、弊社自体にそうした環境が整っていなければ、説得力がありません。

最後に、妊娠中の方へのケアも含めて、もっと早い段階から支えられる環境を整えてほしいですね。体調が悪いのに引き継ぎのために無理をさせるなどして流産のリスクが高まったりしたら、本末転倒ですから。

育休制度を活用した“体験者”がまだ少ないなか、会社としては、当事者のリアルな声を積極的に掬い上げ、そうした声に耳を傾けて、「育休前のサポート」にももう少し配慮してもらえるといいなと思います。

―近い将来、育児休業を取得しようと考えている方、あるいは現在、取得を検討中の方にメッセージをお願いします。

吉田:もし「取りたい」と思っているのなら、まずは上司や会社にしっかり意思表示をすることが大事です。

男性育休は許可制ではなく、制度的には申請すれば断れない仕組みなんですよね。

これは私の推測ですが、「上司に言ってみたけど反対された」人よりも、「うちの職場は無理だろうな」とチャレンジする前に諦めてしまう人の方が多いんじゃないでしょうか。

育休を取れば、上司や同僚などに、間違いなく仕事のしわ寄せがいってしまいます。周囲のことを考えたらきりがありませんが、私の実体験上、間違いなく言えることは、「あなたがいなくても、きっと会社は回ります」ということです。

組織の効能は、平たく言えば、「一人では難しいことでも、みんなで力を合わせればできる!」でしょう。今回はそれが立証された形で、私がいなくても会社は十分回っていて、頼もしさを感じるくらいだったんです。

それで、もし「自分は育休を取りたい」と思っているならば、その意志をしっかり伝えてほしいです。

そのうえで、給付金がいつ支給されるか、どのぐらい支給されるか、有休や「産後パパ育休」とどう組み合わせられるかなど、情報収集も必要です。1年まとめて取るのが難しければ、数か月ずつ分割したり、週休3日にするなど、個別事情やそれぞれのご家族に合った工夫・やり方は、いくらでもあると思います。

男性育休を取得する権利が付与されているのは、とても恵まれていることだと思うんです。
日本の育児休業制度は、ユニセフの報告書(2021年)でも世界第1位にランキングされていますが、それは父親の育児休業の期間(完全有給相当)が世界で最も長いことが評価された結果だそうです。

でも、すべての方がこの制度を利用できるわけではありません。雇用形態によっては、あるいは個人事業主の方は、利用したくても利用できないんです。
そう考えたら、利用できる立場にある会社員は恵まれています。世界に誇る育休制度を利用しない手はないでしょう。

何よりも、生後数か月~1年ぐらいは、赤ちゃんやママにとって本当に大変な時期です。ここを夫婦で協力して乗り越えると、その後の夫婦関係や家族の土台がまったく違うものになると思います。

先ほど触れたように、2025年度からは育児休業給付金の給付率が引き上げられ、金銭面のハードルも下がる見通しなので、ぜひ検討してみてください。

【2025年4月施行】育児・介護休業法改正、知っていますか?
  • 対象企業規模:従業員数1,000人超 → 300人超へ拡大
  • 子の看護休暇:対象を小学校3年生修了までに見直し
  • テレワーク活用促進:短時間勤務の代替措置に追加
  • 育児休業給付金:賃金の80%(手取り約9割)へ引き上げ予定
【参考情報】
厚生労働省「育児・介護休業法改正について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html

―最後に、当時の直属の上司だった武田部長は、どうして育休取得を“即OK”したのでしょうか。

武田:そもそも法律で決められている社員の権利だからです。男性が育休を取ることは、社員個人のためだけでなく、会社にとっても有益だと認識しています。それは時代の要請ですね。

それに、「嫌だといったところで、駄々をこねてでも休むだろうし」というのは冗談ですが、率直に言って、「吉田だからすんなりOKが出せた」という側面はあります。

彼のこれまでの功労には目を見張るものがありますし、完璧な引継ぎをしてくれると信頼していましたので、躊躇はまったくありませんでした。

また、部員が吉田を頼り切っているところがありましたので、留守を守る彼らにとっても、成長できる良い機会になると考えました。

さらに、初めてのケースだったので、私自身も上司としてチャレンジしたかった、というのもあります。
実際に、吉田が取得したいという意思表示してから育休に入るまでの期間、そして育休を経て職場に復帰するまでの一連の流れからは、私自身、さまざまな気づきや学びを得ることができました。

子どもはあっという間に大きくなりますから、生まれてから暫くは、大変貴重な時間です。
なにを優先するかは人によって違いますが、若い時に今のような制度があったら、私も利用していたと思います。(法人第二営業部 部長(当時))

この記事を書いた人

そしきLab編集部

ウチダシステムズのスタッフを中心に、組織作りや場づくりについて議論を交わしています。業務の中で実際に役に立ったことなどを紹介していきます。


資料一覧

*1(マツコ・デラックスの言葉)
サンスポ「マツコ、男性の育休に意見「3カ月育児休暇をやっても女房は嬉しくないよ!」
(2023/10/24 13:28)
https://www.sanspo.com/article/20231024-ZWLKQSWLXFBGTD77YTUABDYEPA/

*2(政府による男性育休の推進:育児休業給付金) 
首相官邸「岸田内閣の主要政策02/こども・子育て政策」
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/seisaku_kishida/kosodate.html#:~:text=%E4%

*3(政府による男性育休の推進)
厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」(2022年11月18日更新)p.17
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000851662.pdf

*4(男性育休取得率(2023年))
厚生労働省「「令和5年度雇用均等基本調査の結果概要」(2023年7月31日) pp18-20
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r05/07.pdf

*5(「TOKYOパパ育業促進企業2024」でゴールド認定)
東京都産業労働局「男性の育業支援 登録企業」
https://www.katei-ryouritsu.metro.tokyo.lg.jp/danseiikukyu/kensaku/?page=4

*6(第一子出産前後の妻の継続就業率・育休利用状況、今後の子育て世代の意識)
厚生労働省「第一子出産前後の妻の継続就業率・育児休業利用状況(今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会(第8回)資料3)」(2023年5月30日)p.1, 10
https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001101627.pdf

*7(平日に母親/父親が子どもと一緒に過ごしている時間)
厚生労働省「第5回21世紀出生児縦断調査結果の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/syusseiji/05/kekka3.html

*8(わが子と生涯で一緒に過ごす時間 母親:約7年6か月、父親:約3年4か月)
NHKチコちゃんに叱られる「チコちゃんクイズ 親とあとどれくらい一緒に過ごせる?」( 2022年8月15日更新)
https://xn--h9jua5ezakf0c3qner030b.com/19408.html#google_vignette

*9(男性の育休取得は幸福度の上昇や女性の社会進出、復帰後の生産性向上につながる)
Havard Business Review「経営者であり、父親でもある私が、最も後悔していること 男性社員に「理想の働き手」になることを強要していないか」(2021年2月8日)
https://dhbr.diamond.jp/articles/-/7426

*10(日本の育児制度がUNICEFの報告書で第1位にランキング)
男女共同参画局「男女共同参画白書 令和5年版>コラム4 我が国の育児休業制度は世界一!?
男性の育児休業の変遷と背景」
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r05/zentai/html/column/clm_04.html


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