人間が座るはずだった席に、ソフトウェアとAIが座る話

「うん。うん、うん、うん、うん、うん。
あー …、そうですね、うん。うんうんうんうんうん…..えぇ、うん」

おいおいおいおい。
いくらなんでも40代で、求人面接中の相槌が「うん」なのはヤバすぎるやろ。
だいたい、こっちが立って挨拶をしているのに、そっちは座ったままっておかしいやん。
この人、本当にちゃんと働いた経験があるのかな?

事前に送られていた履歴書には、高い学歴に加え、立派な資格の数々が並んでいる。加えて、目鼻立ちの整った華やかな顔立ちと知的な雰囲気が素敵だったので、「この人なら」と期待に胸が膨らんだけれど、これじゃぁ全然ダメだ。

こんな人に顧客対応をさせたら、きっと取引先を怒らせてしまうに違いない。
どの職歴も3年未満と短いのは「派遣だったから」ではなく、「行く先々でトラブルを起こしがちだったから」ではないだろうか。

はぁ、やれやれ。また今回も不採用か…。

世の中は人手不足というけれど、「誰でもいい」のであれば人は居る。
地方の小さな会社で、決して給料がいいわけでもないけれど、「事務」という職種で求人を出せば応募者は多い。さすがは有効求人倍率の全国平均が0.3という人気の職種だ。

これまでに応募してきた求職者たちの志望動機も

「サービス業では帰りが遅くなり、家族と生活時間帯が合わない」
「土日祝日は子供と過ごしたい」
「体力が落ちた時のことを考えて、座っていられる事務系の仕事に転職したい」

などである。

正直でよろしい。
「御社の商品やサービスに魅力を感じましてうんぬん」などという薄っぺらい建前なんぞ要らんし。
そういう「一見やる気がある風」の振る舞いができることは社会人として望ましいのだろうが、下手に熱意があってもこっちが困る。従業員の熱意に応えられるような将来性がある会社ではないので、期待を持たれて入社されると、早々に失望されてしまうだろう。
それよりは、「労働条件に惹かれて応募しました。条件が変わらない限りはつつがなく勤めたいです」くらい割り切っている人の方が安心である。
低賃金で募集しているのだし、年齢も学歴も不問。スキルさえあれば氷河期世代も大歓迎。

と、こっちはこっちで割り切っているつもりなのだが、なんだかんだで不採用が続いている。
1つの席に対して10人以上の応募があったというのに、2ヶ月以上かかって一人も選べないのである。応募者の顔ぶれが以下のような人たちだからだ。

【3年間無職の50代男性。東京からの移住者。現在は職業訓練校に通学中】
ごめんなさい。流石に見えてる地雷は踏めないよ…。

【50代男性。パチンコ店勤務】
う〜ん。ここは女性中心の職場なので、ちょっとカラーが違うかも…。

【20代女性。求職中】
えっ。あなたは確か、1年前に出した求人にも応募してきた子だよね?この1年間なにしてたの? 

【50代女性。団体職員として勤続30年。退職予定あり】
おぉ、団体職員として長く働いてきたなら信頼できそう! 仕事もできそう! 
えっ? 待って。履歴書のPDFをメール添付で送ってくるのじゃなくて、自宅ソファーの上に紙の履歴書を置いて、スマホで写真撮影して送ってくるってどういうこと?
画像が暗くて文字がよく見えないし、しかも写り込んでるソファーのボロボロさが怖いんですけど…。

書類選考の段階で「いくらなんでもちょっと…」という部類の方々は落として、「良さそう」な方々には面接に来ていただくのだが、いざ会ってみると期待していたような人物は現れない。

【20代女性 大学中退】
「ここに勤めていただくとなると、今お住まいのご実家からはずいぶん離れてしまいますね。一人暮らしをされる予定ですか? 親御さんはご心配されませんか?」
「えーっと、はい。大丈夫、で、ございます!お父さんとお母さんには、今まで大変お世話してこられていただいてたんですけど、心配はしていらっしゃらないです。もし、ここで働かせられていただけたら、お母さんは頑張ってって言ってくれてるので」

お、おぅ。日本語がガッタガタやのう…。
本当に大学生だった? 履歴書はChatGPTで書いてたのかな。若いからポテンシャルはあるけど、言葉遣いから教えるのは大変すぎるのでゴメン。

【50代女性 事務職の経験あり】
「すみません。実は、事前にお伝えしておりませんでしたが、難聴を患っております。
耳が聞こえづらく、電話越しの声も聞き取れないため、電話に出ることができません」

そういうことは先に言っていただければ…。
うちの会社では電話対応も大事な日常業務なので、残念です。

【30代女性 小売業で店長経験あり】
「期間は短いですが事務職の経験もありますし、販売の仕事を長くしてきたので、お客様の対応は任せて下さい。店長として管理職経験もあります」

おぉ、なんて頼もしいんだ。ええやん、ええやん。この子でええやん。この子がええやん。
と、喜んだのも束の間、社長夫人であるマナミさんから「待った」が入った。

「彼女はちょっと。面接の後に受けてもらった適性検査が、見たことないような結果だったのよね。どの職種にも適性が無いという判定だし、信頼度の結果も悪くて」

は? 何ソレどういうことよ。

聞けば、能力を測るのではなく適性を見るためのテストで、質問に対して直感的に「はい」か「いいえ」で答え、どうしてもどちらかに決められない場合にのみ「?」を選ぶテストなのだが、彼女はほとんどの設問に「?」で回答していたそうだ。

「普通の人なら、こんな結果にならないのよ。私もやってみたけど、私の場合は管理職に適性があったわ」

はぁあ???
じゃあ、その時点でそのテストは信用できんやろ?! トラブルメーカーのお前こそ何にも適性がないはずやんけ!

試しに私も回答してみたが、私の場合は「外交積極型」で、思考力と「厳しい状況下でも自信を持って物事に対処できる」能力は高かったが、感情にムラがあり、協調性と従順さはなかった。適性があるのは企画、総務・人事、営業である。

判定結果を見た同僚や夫が「だいたいあってる」と言ったので、私の場合は自己認識が間違っておらず、長所も欠点も自覚があるということだ。

けれど、マナミさんのように自己に対する解像度が低い人がテストを受けると、正しい判定結果は出ない。

先ほどの女性は、まがりなりにも10年以上同じ会社に勤めて店長までやったのだから、それなりに能力はあり、何らかの職種に適性もあるはずである。ただし、自分に軸がないため悩みやすく、相手によって態度や言動を変える人なのかもしれない。だからどっちつかずで、回答を選べなかったのだろう。

とはいえ、直感的に「はい」か「いいえ」で答えろと書いてある以上は「はい」か「いいえ」を選ぶべきなので、それができない時点で能力に疑問符がつくのは仕方がない。

「人手不足を嘆きながら、人を選びすぎなんだよ。低賃金で募集しているなら最低限のことさえできればいいだろう」

という至極もっともな意見が、Xでよくバズっている。まったくだと思う。
ただ、こちらとしては負担を減らしたくて人を募集しているのに、戦力にならない人を雇って、かえって負担を増やすわけにはいかないという事情もある。

結局、「猫の手も借りたい」と言いながら、猫レベルでいいってことにはならないのだ。

でも、じゃあ一体いつになったら新人が入ってくるんだよ?
それまで私が延々と2人分働くのかよ?!

脳内で堪忍袋の緒ってやつがプツッと切れる音がした。
もういいや。期待しない。自分で解決してやるわ。

感情にムラがあり、従順さのない私は社長に向き直り、冷たい調子で言い放った。

「今回もまた採用を見送るなら、もうそれでいいです。ただし、これからは業務を効率化するためのソフトやツールをどんどん使いますよ。アナログで管理していたものは順次クラウドソフトに切り替えます。私が『もはや意味ナシ』と判断した作業は廃止しますので」

すると、社長はむしろ喜んだ。
「いいね〜、ジャンジャンやっちゃって! むしろ早く進めちゃって!」
「そうですか。では、そうさせていただきます」

人を増やすより、ツールで回す方が早い。ツールの利用料は膨らんでいくだろうが、人件費よりは安いだろう。
これまで続けてきたアナログな手法の良さってやつもあるとは思う。しかし、私のような元々アナログ嫌いな人間が、それまで人の手でやっていた仕事をソフトやAIにどんどん置き換えていく。

誰かが座るはずだった席に、ソフトウェアとAIが座るのだ。文句も言わず、うんうんと相槌も打たず、適性検査も受けずに。
人手不足は、このようにして解消されていくのかもしれない。

この記事を書いた人

マダムユキ

ブロガー & ライター
https://note.com/flat9_yuki


組織力の強化や組織文化が根付くオフィス作りをお考えなら、ウチダシステムズにご相談ください。

企画コンサルティングから設計、構築、運用までトータルな製品・サービス・システムをご提供しています。お客様の課題に寄り添った提案が得意です。

この記事を書いた人

アバター

そしきLab編集部

【この記事は生成AIを利用し、世界のオフィスづくりや働き方に関するニュースをキュレーションしています】