フリーアドレスオフィスのメリット・デメリットは?総務省・経産省の事例で確認!

現在、多くの企業が進めつつあるフリーアドレス化ですが、その動きは中央省庁にも広がっています。

省庁でもワークスタイルの変化が求められ、また新型コロナをきっかけに広がったリモートワークやペーパーレスなどの推進もオフィス変革を後押しし、その成果も報告されています。

フリーアドレス化が業務にどのようなメリットをもたらしたのかご紹介していきます。

オフィス変革の目的

日経BPの2024年4月の調査では、「フリーアドレスを導入している(固定席はない)」「フリーアドレスを利用でき、それとは別に固定席もある」を選んだ人の合計が調査開始以降はじめて5割を上回りました。*1

その流れに追随するかのように、中央省庁にもフリーアドレス化の流れが生まれています。

財務省が2021年に設置した有識者会議の会合では、「企業がオフィス改革に大きく舵を切る中で、この5年で公務員の職場環境とは大きく差が開いた。優秀な若手職員を確保するにはオフィスは武器になる」との意見が出されました。*2

そして主な取り組みとして、

  • フリーアドレス化
  • 個室型ブースの設置
  • 交流スペース

を進めています。

中央省庁のオフィス改革は、定員増加によるスペース不足も関係しています。内閣官房や厚生労働省の本省では近年定員数が増え、「会議室の予約を取ろうと若手職員が右往左往するのは日常的な光景」という状況になっていたのです。

では、フリーアドレス化によってどのような効果がもたらされたのか、具体的に見ていきましょう。

管理職との距離を縮め、コスト削減も

まず総務省行政管理局の事例です。
固定席での業務には、このような課題がありました。

オフィス改革前の個人席
(出所:総務省「理想の働き方のために 働く「場」を変える、オフィス改革の挑戦」)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000669323.pdf p4

これでは、必要な時に必要な資料を探すのにも手間がかかりそうですし、座っている人の可動域も狭くなってしまいます。

また、もうひとつの課題として「U字管調整」の効率の悪さも挙げられています。

決裁などにかかる動線
(出所:総務省「理想の働き方のために 働く「場」を変える、オフィス改革の挑戦」)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000669323.pdf p5

係員が課長へ何かの報告をしようとする場合、他の人の席の後ろを縫って移動しなければなりません。何かあるごとに自分の席を立たなければなりませんし、狭いオフィスでは課長席まで移動しにくいというストレスがあります。

そして自分の席に戻らなければ業務を継続できません。課長からOKがでなければまた自分の席に戻って手直しをして課長席に赴かなければならない、そして課長がOKを出した資料を全員に配るためにまた狭い通路を歩かなければならない、といった具合です。

しかしペーパーレスとフリーアドレスが浸透すれば、このような手間が省けます。

では、総務省行政管理局の実際のオフィス改革を見てみましょう。

総務省行政管理局でのオフィス改革ビフォーアフター
(出所:総務省「理想の働き方のために 働く「場」を変える、オフィス改革の挑戦」)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000669323.pdf p6

ずいぶんとスッキリしたというのもありますが、注目したいのは、ペーパーレスとフリーアドレス化によって

  • 印刷は約53%削減
  • 係員と課長の距離が10.7メートルから1.2メートルに大幅短縮

したという成果です。

さらに、什器の調達コストも削減されています。

それまで役職ごとに仕様の異なる什器を調達していましたが、これが統一されることで課長補佐以下の机の調達コストは約70%削減、課長級の椅子は約50%削減、課長補佐以下の椅子は約40%の削減効果が出ています。*3

コア業務の比率アップも

また、経済産業省のフリーアドレス化では、職員がどのような業務をどこで行っているかが「見える化」されています。

下の写真が改装後のオフィスに取り入れられた工夫の一例です。

経済産業省のオフィス改革の一例
(出所:経済産業省「令和3年度 デジタル行政に対応した本省庁舎執務環境整備に関する調査事業調査報告書」)
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2021FY/000058.pdf p13
※METI=経済産業省(Ministry of Economy, Trade and Industry)

これらの結果、職員が日頃どのような業務をどのような割合で行っているかが変化しました。

オフィス改装後、各部局の職員のアクティビティ(行った業務×業務を行った場所×かかった時間)は下のように変化しています。

業務比率の変化
(出所:経済産業省「令和3年度 デジタル行政に対応した本省庁舎執務環境整備に関する調査事業調査報告書」)
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2021FY/000058.pdf p25

全ての部局で大幅な変化が起きたわけではありませんが、注目したいポイントもあります。

まず上から2つめの部局A②では、「ノンコア業務(電話、メール、オンラインによる連絡調整)」に100%割かれていた時間が1割減りました。

また上から3つめの部局B③では、ノンコア業務が39%から18%に縮小され、代わりにコア業務に充てられる時間が41%から77%に大きく広がっています。

部局によってはオフィス改革がコア業務への集中に繋がるということでしょう。

フリーアドレス化を失敗させないために

もちろん、フリーアドレスが業務改善の万能薬というわけではなく、それなりに課題もあります。例えば、

  1. 周囲に誰が座るかによって人望の差が露呈しやすく管理職にはつらい
  2. 社交的でない人は居心地が悪い
  3. 優秀な人は「知恵を借りたい」と頻繁に話しかけられ多忙を極める
  4. 部署の一体感や帰属意識が薄れる
  5. 上司の目がないと気が緩み、仕事の質や効率が落ちる
  6. 気持ちを休める自分の城がなくなり、疲れている時は追い打ちをかける

といった点などです。*4

ただこれは、運用次第で解消できる可能性が高いといえます。

特に個室ブースの設置は、上記にあるような負担が減るでしょうし、部署によってレイアウトを変えるといった方法もあります。

そしてフリーアドレス化を成功させるには、まず明確な目標を持つことです。

無駄な移動を物理的に避け効率化したいのか、集中できる環境を作りたいのか、逆に交流を促したいのか。それを実現できそうな席数の配分やルール、居場所確認アプリなどのデジタルツールを導入することです。

かつ、テレワークを導入している会社の場合、フリーアドレスの導入はオフィス面積の削減に繋がります。出社していない社員の分のスペースを確保する必要がないからです。

社員がいかに快適に過ごせるかが重要視されるいま、オフィス改革の検討は会社の課題を洗い出す作業にもなるでしょう。

この記事を書いた人

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアや経済誌に寄稿中。

資料一覧

*1 日経クロステック「フリーアドレス導入率が初の5割超え、出社とテレワークの「理想の割合」に変化」
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02854/053100003/

*2 読売新聞オンライン「霞が関でオフィス改革広がる…フリーアドレス制やボックス型個室」
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20210717-OYT1T50344/

*3 総務省「理想の働き方のために 働く「場」を変える、オフィス改革の挑戦
https://www.soumu.go.jp/main_content/000669323.pdf p12

*4 日経クロステック「フリーアドレスで築く「ワイガヤ職場2.0」
https://xtech.nikkei.com/it/article/OPINION/20080627/309616/


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そしきLab編集部

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