
企業におけるハラスメント対策は重要な経営課題の一つです。
ハラスメントは個人の問題として捉えられることも少なくありませんが、コミュニケーションのあり方、さらには職場環境の設計など、組織全体の構造も深く関係しています。
この記事では、医師の視点からハラスメントが心身に与える影響を整理するとともに、組織づくりやオフィス環境の観点から、ハラスメントを未然に防ぐための具体的な取り組みについて解説します。
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職場でのハラスメントが心身に与える影響を医学的背景から解説
職場でのハラスメントは、従業員の心身に影響を与える問題です。
医学的にもストレスによる健康への影響が指摘されており、個人の問題にとどまらず、企業にとっても重要な課題といえます。
職場でのハラスメントとは
ハラスメント(Harassment)とは、さまざまな場面での「いやがらせ」や「いじめ」のことで、発言や行動によって、相手に不快感や不利益を与えるものです。*1
職場で起こりうるハラスメントにはいくつかの種類があります。*2
- パワーハラスメント
- セクシャルハラスメント
- マタニティハラスメント
- カスタマーハラスメント
- 就活ハラスメント
なお、パワーハラスメントとは、優越的な関係を背景にした言動であり、業務の適正な範囲を超えて精神的・肉体的な苦痛を与える行為を指します。*2
つまり、職務上適切な範囲での指摘や注意はハラスメントには該当しません。
しかし、適切な指導との違いが分かりにくい点もあり、現場での判断が課題となることもあります。
職場でのハラスメントが身体に与える影響
近年、日本でも労働者のメンタルヘルス対策が個人や社会にとっても重要な問題になっています。
職場でのいじめと健康状態に関連する研究では、いじめと抑うつ症状、不安、さらにストレスに関連するさまざまな心身の不調との間に正の相関関係があることが示されています。*3
抑うつ症状は、気分が落ち込んで何もする気になれないような状態になったり、いろいろなことへの意欲の低下、思考力や集中力の低下もみられるものです。 食欲の低下や睡眠リズムの異常、疲れやすさなど、身体にもさまざまな症状が現れます。*4
職場でのハラスメントは、精神面だけでなく身体にも影響を与えるといえます。
ハラスメントが起こりやすい職場の構造
ここでは、ハラスメントが起こりやすい職場にはどのような特徴があるのかを考えてみましょう。
ハラスメントは個人の問題として捉えられがちですが、実際には組織構造や業務設計、職場環境の影響によっても生じやすくなると考えられています。
ストレス過多や安全管理が不十分などの環境要因
パワーハラスメントの温床になりやすい職場の要因として、多くの研究で指摘されているものに以下のようなものがあります。*5
- 管理職の専制的、あるいは放任すぎるリーダーシップ
- 仕事の曖昧さや不明確な目標
- ストレス過多な環境
例えば、上司の指示が一方的で意見を言いにくい環境や、業務の役割分担が不明確で責任の所在が曖昧な職場では、従業員間の摩擦が生じやすくなります。
このような職場では、パワーハラスメントが発生しやすくなることが懸念されます。
コミュニケーション不足と組織文化
職場内の人間関係とハラスメント問題に関するアンケート調査が実施されています。
その結果、上司と部下のコミュニケーションが少なく、失敗が許されない環境においてはハラスメント被害が発生しやすい傾向がみられました。
一方で、同僚同士のコミュニケーションが適度にみられる環境では、被害が発生しにくいことも示されています。*6
ハラスメントは、コミュニケーション不足によっても起こりうるものと考えられます。
そのため、普段から上司や部下、同僚どうしが適度にコミュニケーションをとることがハラスメントの発生を防ぐことに役立ちます。
ハラスメントが企業にもたらす経済的インパクト
ハラスメントは従業員だけでなく、企業全体にも経済的な悪影響を与えます。
従業員の健康や働きやすさに関わる問題であると同時に、企業の生産性や人材確保にも影響する重要な経営課題といえるでしょう。
生産性と離職率への影響
ハラスメントは従業員の心身に悪影響を与え、能力を十分に発揮できない要因となります。*7
結果として、仕事の生産性の低下にもつながりかねません。 また、職場のハラスメントは労働者の離職の意向を高めるのではないかという研究もあります。*8
離職の理由を尋ねたアンケートでは、「人間関係への不満」が約2割というデータもあります。
さらに、自らへの直接的なハラスメント被害で約半数、他者へのハラスメント行為を見聞きすることも含めると 7割以上が職場のハラスメントを離職理由に含めていました。*9
ハラスメントは企業の生産性と離職率にも影響を与えるため、組織戦略としてハラスメント予防に取り組むことが必要といえるでしょう。
人的資本経営の視点からみたハラスメントの問題
ハラスメントは、人的資本経営の視点からみても重大な問題です。
企業価値を高める要素として「人材」が重視されており、従業員一人ひとりの能力やエンゲージメントをどのように引き出すかが問われています。*10
しかし、安心して働けない環境では、本来の力を発揮することは難しくなります。 また、ハラスメントが発生しやすい職場では、組織への信頼感が低下し、職場の秩序の乱れや人材流出につながる可能性もあります。*7
これらは企業の持続的な成長にとってリスクとなる要因です。
そのため、ハラスメント対策を人的資本を活かすための基盤づくりとして位置づけることが重要です。
ハラスメントを防ぐために企業が取り組めること
ハラスメントを防ぐためには、個人の意識だけでなく、組織としての仕組みづくりが重要です。
以下に、企業が取り組むことができる具体的な対策について、筆者の失敗談も交えながら解説します。
組織としてのコミュニケーション設計
日常的なコミュニケーションをとることができるよう、定期的な面談やミーティングを行うようにします。
風通しのよい職場環境や互いに助け合える労働者同士の信頼関係を構築し、コミュニケーションの活性化を図るとよいでしょう。*11
相手を攻撃する意図がなかったとしても、コミュニケーションの行き違いが起こり思わぬトラブルにつながることもあります。
筆者自身も、職場でのやり取りが別の形で事務方担当者に伝わり、問題として扱われた経験があります。
健康診断の業務の際、スポットワークの医師と2人医師体制で行うことになりました。
詳細は伏せますが、筆者がスポットワークの医師に対し、診察の方法について「通常はこのような運営にしているので、よかったら参考にしてください」と助言しました。
しかし、この発言が相手には強い表現として受け取られたようで、事務方を通じて注意を受けることになりました。
こうした出来事を通じて、個々のやり取りの問題だけでなく、認識をすり合わせる機会や、意見を共有できる仕組みが十分に整っていない場合には、意図しない誤解や対立が生じやすいと感じました。
ハラスメントの問題は個人の言動だけでなく、こうしたコミュニケーションの経路や情報共有の仕組みにも影響を受けるものといえます。
コミュニケーションをとりやすくするオフィス設計
職場のコミュニケーションが取りやすいオフィス設計を意識することもよいでしょう。
例えば、フロア中央にコミュニケーションエリアを設置します。
そのエリアに、ミーティングスペースに加えてパーソナルロッカーやパントリー、文房具置き場などの機能を集約すると、自然と人が集まる「マグネットスペース」としての役割を担います。
また、窓側にコミュニケーションエリアを配置すると各席からのアクセスが良く、迅速な打ち合わせや情報共有を可能にします。*12

https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/officereform.html
PDF:令和3年度 内閣人事局の執務環境整備に関する調査業務 調査報告書 p35
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/pdf/01_220331.pdf
こうした空間設計は、部門や役職を越えたコミュニケーションを促進し、組織内の透明性向上や心理的安全性の確保にも寄与することが期待されます。
相談体制と通報制度の整備
相談窓口の設置と、従業員への周知も大切です。*11
匿名で相談できる仕組みや、外部の相談窓口の設置などにより、従業員が安心して声を上げられる体制を構築することが求められます。
相談窓口が設置されていても、実際に利用されなければ意味がありません。
相談後に不利益が生じないことを明確にし、従業員に十分に周知することが重要です。
まとめ
ハラスメントは個人の問題として捉えられがちですが、実際には職場の構造や組織文化、コミュニケーション環境などさまざまな要因が関係しています。
医学的にも、職場でのストレスは心身の健康に影響を与える可能性があります。
企業にとっては、従業員の健康だけでなく、生産性や離職率にも関わる重要な課題といえるでしょう。
ハラスメント対策は、問題が起きてから対応するものではなく、起こりにくい環境を整える取り組みとして考えることが大切です。
組織の仕組みや働く環境を見直すことが、安心して働ける職場づくりにつながります。

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この記事を書いた人

木村 香菜
行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医、日本人間ドック・予防医療学会認定医。
資料一覧
*1 ハラスメント対応-国立天文台男女共同参画推進委員会
https://www2.nao.ac.jp/~open-info/gender-equality/harassment.html
*2 「ハラスメント基本情報」ハラスメントの類型と種類-あかるい職場応援団 厚生労働省
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/pawahara-six-types/
*3 職場のハラスメントがメンタルヘルスや組織に与える影響-中小企業従業者パネルデータを用いた実証分析-.労働安全衛生研究.2022;15(2):71-83. p72
https://www.jstage.jst.go.jp/article/josh/15/2/15_JOSH-2021-0021-GE/_article/-char/ja
*4 抑うつ-健康長寿ネット
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/yoku-utsu.html
*5 日本労働研究雑誌 2022年11月号(No.748)-独立行政法人 労働政策研究・研修機構
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2022/11/index.html
研究ノート(投稿) 職場におけるハラスメントに関する実証分析─見聞,被害,転職 p100
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2022/11/pdf/099-119.pdf
*6 日本労働研究雑誌 2022年11月号(No.748)-独立行政法人 労働政策研究・研修機構
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2022/11/index.html
研究ノート(投稿) 職場におけるハラスメントに関する実証分析─見聞,被害,転職 p117
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2022/11/pdf/099-119.pdf
*7 心の健康に関する取組について (METI/経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/mentalhealth.html
「心の健康」投資・実践ガイド- 経済産業省 p13
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kokoronokenkojissenguide.pdf
*8 職場のハラスメントがメンタルヘルスや組織に与える影響-中小企業従業者パネルデータを用いた実証分析-.労働安全衛生研究.2022;15(2):71-83. p81
https://www.jstage.jst.go.jp/article/josh/15/2/15_JOSH-2021-0021-GE/_article/-char/ja
*9 日本労働研究雑誌 2022年11月号(No.748)-独立行政法人 労働政策研究・研修機構
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2022/11/index.html
研究ノート(投稿) 職場におけるハラスメントに関する実証分析─見聞,被害,転職 p112
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2022/11/pdf/099-119.pdf
*10 人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~ (METI/経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/index.html
*11 雇用・労働職場におけるハラスメントの防止のために-厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
PDF:パンフレット「職場におけるハラスメント対策パンフレット」p31
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001338359.pdf
*12 内閣人事局におけるオフィス改革の取組
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/officereform.html
PDF:令和3年度 内閣人事局の執務環境整備に関する調査業務 調査報告書 p35
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/pdf/01_220331.pdf
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