SDGsへの取り組みに必要なのは、「強い危機感」と「自分事化」!
前回の記事では、現場でSDGsに向き合う小西さんのお声を掲載しました。今回は、そんな現場の提言を受け止め、正しい方向へと導くべく奮闘する、ウチダシステムズ代表取締役社長・岩田さんによるインタビュー記事となっています。
中小企業の経営者として、SDGsという大きな社会課題にどう向き合い、取り組もうとしているか。その決断の裏側にある思いに迫ります。
▼前回のSDGs推進プロジェクトリーダーへのインタビューはこちら
代表取締役社長インタビュー
-小西さんから「ミドルアップ答申」を受ける前、SDGsに対してどのようなイメージをお持ちでしたか? また、どのような流れで会社としてSDGsに取り組もうというお話になったのか流れをお教えください。
弊社は内田洋行グループでありますので「気候変動に関わる開示義務」などもあり(※)、以前からSDGsを推進するべきだと思っていました。ただ、中長期的に取り組むべきテーマであり、トップダウンで進めれば良いというものではありません。そのため「会社としてどう取り組むべきか」と思案していました。
※内田洋行グループはCSR活動の一環として「気候変動への取組み」を表明しています。
そんな折、小西のチームから「SDGsに取り組みたい」との企画案が持ち上がって参りました。
小西のようなミドル世代が、SDGsを自分たちの未来に不可欠だと自分事化し、考える機会を持ってもらいたい、その上でSDGsを推進しながら事業との整合性をどう取るのかも模索してもらいたいという思いもあり、これを会社で推進していくプロジェクトとして承認しました。
-ミドルアップ答申の「SDGsを本気で推進する」の提言に対し、判断の参考となった他社の施策などありますか? またどんなアドバイスをされましたか?
ここを参考にしたというものはありません。ただ、逆に他社がやっていることをアンチテーゼにしようと考えました。
はじめに、提案書に盛り込まれていた、「企業のイメージアップのため」という目的を、書面上からも意識上からも削除するようアドバイスしました。SDGsという社会的に解決しなければならない命題であり、企業のイメージアップという目線で語るべきことではないと思ったからです。
次に、提案資料にはSDGsの17の目標の中で「自分たちができそうなこと」についてだけゴールが設定されていたものを、17項目すべてにゴールを設定するよう伝えました。
なぜなら、SDGsは社会的な複数の問題を包括的に解決することで、社会全体に新しい物差しをもたらそうとしているわけです。つまり、17のうち一部だけを抜き出して取り組むというのは、SDGsというものの本質から大きくズレたものになってしまいます。
17項目を全て同じ度合いで遂行できるわけではないとしても、全てを網羅的に対象にしなければ「SDGsに取り組んでいるとは言えない」と伝えました。
SDGsに対し「できることだけをやる」という中小企業はたくさんありますが、「17の目標の全体を網羅し推し進める」ことを行っている会社はほとんどありません。しかし、そこにチャレンジしていくことで、社会に対して「我々はSDGsに取り組んでいます」と表明できると考えました。
-次の社内プレゼン大会「WIN-WINプロジェクト」でも今回「SDGs」をテーマに選ばれたとお聞きしております。社内イベントとしてフォーカスを当てた理由はなんですか?
例えば内田グループの気候変動に対する脱炭素目標として、2030年までにCO2を50%削減し、2050年にはカーボンニュートラルにする計画があります。
弊社では現在、営業車両をハイブリッドに切り替えており、将来的にはすべてEV車にするかもしれません。それは一定の効果をもたらすと思いますが、CO2排出量は年間300トン程度であり、削減しても非常に限定的な影響にすぎません。
SDGsという大きな枠組みで課題解決を考えた場合、我々は事業を通じて、お客様のCO2削減に貢献すべきだと考えました。加えて、環境面だけでなく、社会的な枠組みの構築や雇用環境の改善なども事業に組み込みながら取り組む必要があります。
経済的な視点からも、働き方改革などを通じてお客様の長期利益を高めれば、我々も長期的に利益を確保することができます。利益が継続的にあれば、それが投資原資となり、SDGsの達成に貢献できるはずです。
そのため、やはり我々の本業を通じてお客様のSDGsへの貢献をどうサポートするかを表明しなければなりません。我々自身が自分たちの事業の中で必ずSDGsに紐付けるという方向に考え方を変えていかないといけない。それを事業の前提にするための1つの方法論として、全社で行う「WIN-WINプロジェクト」でのテーマに設定しました。
-SDGsへの取り組みをはじめて、社内の空気に変化はありましたか?
空気が変わったという実感は実はそこまでありません。ただ、このプロジェクトがはじまって、まず研修を行いました。そこで「2030SDGs」というカードゲームなどを行い、SDGsの全体像を全社員がある程度共有できたのではないかと感じました。
次に、「自分たちのSDGs宣言」というのを全社員にやってもらいました。
これらの取り組みを通して、社員間でのSDGsに対する温度差のようなものが見えてきました。現在それらを是正するよう働きかけています。徐々にではありますが、社員全員がSDGsの17の目標達成について、リアリティを持ってイメージできるようになってきているのではないかと感じています。
-SDGsへの取り組みをはじめて、 社外からなにか反応はありましたか?
「御社ではどのように進めていらっしゃるのですか?」「最初は何からやったんですか?」といった質問はよく聞かれるようになりました。また前述のような弊社の取り組みについてご紹介すると「これを全社員でやられているんですか?」と驚かれることもありました。
-これから先の展開をどのように考えていますか?
まず、SDGsには「終わりがない」と思っています。2030年や2050年というのはあくまで通過点です。今、ウクライナ危機をはじめとした社会情勢の変化によって、SDGsそのものの議論が先送りにされているという現実があります。しかし、SDGsの議論は決して停滞させてはいけないのです。
SDGsには、周囲がどうなろうと「我々だけでもやる」という強い意志が絶対に必要だと感じています。
この社会や地球、全体の環境がベースとして全てが成り立っていることを理解し、その前提の中で事業、経済活動を行わなければならない、という認識にシフトしなければなりません。
我々ウチダシステムズが掲げているビジョンのひとつとして「需要創造型商社になる」というものがあります。
具体的に申しますと、我々が、お客様が業績を向上し続けるためのきっかけとなることです。場づくりや運用方法改善のお手伝いなどを通じてお客様の業績が上がれば、それがソリューションになります。そしてそのソリューションが集積し体系化すれば、やがてそれが社会の問題解決にも波及していくと考えます。
「連帯できるお客様をどう増やし続けられるか」というのが、結果として我々のサスティナブルな利益の源泉になってくると思います。そうして、お客様が長期的に利益を出し続けられる企業となったら、長期的に社会に投資していけるということになります。
今はまだ、我々自身にそこまで関与していくだけの体力はありません。しかし、SDGsという大きなテーマへの取り組みを経て、意識と施策を拡大し続けられるよう、会社と社員が成長できれば良いと考えています。
-会社としてSDGsにどう取り組むべきかと悩まれている方へのお言葉を頂戴できますか?
「自分だけがやっても変わらない」という価値観をいまだに耳にします。
我々が安全に経済活動を行えているのは、「健全な環境」があるからこそと言えます。しかし、今、我々はそれを自分たちでどんどん破壊しています。
我々シニア世代は「自分はいいか」と、どこか他人事のように考えがちです。しかし、自分の子ども世代にとっては確実に黄色信号であり、孫世代に至っては赤信号かもしれません。
そしてそれは必ず「食料問題」などの生命維持活動においてクリティカルなものに繋がるはずです。
意識的な部分に関するアドバイスをさせていただけるなら、このようなことを真剣に考え、もっと危機感を持っていただきたいと思います。「自分には関係ない」と思わず、人間ひとりひとりの問題であることを自覚してください。そして、遠くない未来はとても危険な状態になっているという現実をリアルにイメージし、大局観を持って取り組んでほしいと思います。
とくに今回の提案を受けた流れから見ても分かる通り、若年層ほどSDGsというものに対する理解度と危機感が高いと感じています。シニア世代の方々おかれては、若手社員にリードを任せるなり、その声に耳を傾けるなり、若年層マターで進行すべき事項であることを念頭に考えていただければいいかと存じます。
◆ウチダシステムズのSDGsに関する取り組み紹介記事はこちら
・中小企業がSDGsに取り組む意義 ~第1回 SDGsとは~
・中小企業がSDGsに取り組む意義 ~第2回 ウチダシステムズの取り組み~
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