
2026年7月以降、企業に義務付けられる障害者雇用率が「2.5%」から「2.7%」に引き上げられます。引き上げ後は、常時雇用する労働者の数が37.5人以上である事業者が、少なくとも1人以上の障害者を雇用しなければなりません。
障害者雇用率は近年段階的に引き上げられており、数年前の理解のままでは古くなっている可能性があります。自社の雇用状況を再点検してみましょう。
本記事では、障害者雇用率に関する法律のルールや、引き上げによって影響を受ける企業の範囲、障害者雇用に関する注意事項などを弁護士が解説します。
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障害者雇用率とは?
「障害者雇用率」とは、雇用する労働者の全体数に対し、事業主が雇用している障害者の割合です。「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」および関連法令により、法定雇用率以上の障害者の雇用が義務付けられています。
事業主は、法定雇用障害者数以上の対象障害者を雇用する義務を負う
事業主は、法定雇用障害者数以上の対象障害者を雇用しなければなりません(障害者雇用促進法43条1項)。障害者とそうでない者(健常者)の間で、均等な雇用機会や待遇を確保することを目的としたものです。
法定雇用障害者数は、次の式によって計算します。
法定雇用障害者数=常時雇用する労働者の数×法定雇用率
※法定雇用障害者数に1人未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。
常時雇用する労働者とは
「常時雇用する労働者」とは、次の(a)(b)をいずれも満たす労働者をいいます。
(a)所定労働時間が週20時間以上
(b)1年を超えて雇用される見込みがある、または1年を超えて雇用されている
パートやアルバイトであっても、上記(a)(b)の要件をいずれも満たしていれば、常時雇用する労働者に含まれます。
対象障害者とは
障害者雇用率に算入できる「対象障害者」とは、次の者を指します(障害者雇用促進法37条2項)。
(a)身体障害者
次の障害のうち、一定程度以上のものを有する者
・視覚障害
・聴覚または平衡機能の障害
・音声機能、言語機能、咀嚼機能の障害
・肢体不自由
・心臓、腎臓、呼吸器の機能の障害
・膀胱または直腸の機能の障害
・小腸の機能の障害
・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害
・肝臓の機能の障害
(b)知的障害者
児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医または障害者職業センターにより、知的障害があると判定された者
(c)精神障害者
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者
常時雇用する労働者と対象障害者の数え方
法定雇用障害者数を満たしているかどうかの判定に当たり、常時雇用する労働者と対象障害者の人数は、次の要領で数えます(障害者雇用促進法43条3項~5項・8項、70条)。
所定労働時間が
週20時間以上30時間未満:0.5人
週30時間以上:1人
※所定労働時間が週20時間未満の者は、障害者雇用率の分母に算入しません。
【重度身体障害者または重度知的障害者】
所定労働時間が
週10時間以上20時間未満:0.5人
週20時間以上30時間未満:1人
週30時間以上:2人
【身体障害者または知的障害者(重度者を除く)】
所定労働時間が
週20時間以上30時間未満:0.5人
週30時間以上:1人
【精神障害者】
所定労働時間が
週10時間以上30時間未満:0.5人
週30時間以上:1人
※所定労働時間が上記の時間数未満の者は、障害者雇用率の分子に算入しません。
障害者雇用率の計算例
(例)
【常時雇用する労働者の所定労働時間の内訳】
週20時間未満:20人
週20時間以上30時間未満:40人
週30時間以上:100人
【常時雇用する障害者の内訳】
(a)重度身体障害者
1人(所定労働時間は週30時間)
(b)知的障害者(重度ではない)
2人(所定労働時間は週20時間と週30時間)
(c)精神障害者
3人(所定労働時間は週10時間、週20時間、週30時間)
上記の例では、この事業者における障害者雇用率は約4.58%(=5.5人/120人×100%)です。
分母:120人
※所定労働時間が週20時間以上30時間未満の者を0.5人、週30時間以上の者を1人として計算
分子:5.5人
※次の要領で計算
重度身体障害者(週30時間):2人
重度ではない知的障害者(週20時間):0.5人
重度ではない知的障害者(週30時間):1人
精神障害者(週10時間):0.5人
精神障害者(週20時間):0.5人
精神障害者(週30時間):1人
【2026年7月施行】法定雇用率が「2.5%」から「2.7%」へ引き上げ
2026年7月1日から障碍者雇用促進法施行令が改正され、障害者の法定雇用率が次のとおり引き上げられます。
| 改正前 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 民間企業 | 2.5% | 2.7% |
| 国・地方公共団体など | 2.8% | 3.0% |
| 都道府県などの教育委員会 | 2.7% | 2.9% |
民間企業においては、法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられます。
改正前は、障害者の雇用義務は常時雇用する労働者の数が40人以上の事業主に限られていました。2026年7月以降は、常時雇用する労働者の数が37.5人以上の事業主まで障害者の雇用義務が拡大されます。
すでに障害者を雇用している民間企業においても、2026年7月以降は障害者の雇用人数を増やす必要が生じるケースもあります。自社の雇用状況を確認し、必要であれば新規採用などを検討してください。
障害者を雇用する際の注意点
民間企業が障害者を雇用する際には、特に次に挙げるポイントに留意してください。
(1)障害者の特性は、強みにもなり得る
(2)障害者に対しては合理的配慮が必要|受け入れ態勢の整備など
(3)障害者であることを理由とする差別は禁止されている
(4)障害者雇用に関する助成金などを活用する
障害者の特性は、強みにもなり得る
障害者の特性は不利なものとして捉えられがちですが、適材適所の配置によって強みとなるケースもあります。障害者ならではの感性や経験、得意分野などを活かせる役割を、本人と話し合ったうえで割り当てましょう。
障害者に対しては合理的配慮が必要|受け入れ態勢の整備など
労働者の募集や採用、さらに雇入れ後の受け入れに当たっては、障害者の特性に応じた合理的配慮を行い、必要な措置を講じなければなりません(障害者雇用促進法36条の2~36条の5)。
合理的配慮の措置を講じるに当たっては、障害者の意向を十分に尊重しなければならないとされています。日常生活の中で不便だと感じるポイント、業務の助けとなるサポートや設備などを本人と話し合い、障害者が働きやすい環境を整えましょう。
障害者雇用に関する助成金を活用する
障害者の雇用に伴って生じる経済的負担を軽減するため、政府は各種の助成金を設けています。
たとえば、次の助成金を利用できることがあります。いずれもハローワークで申請できるので、自社が受給要件を満たしているかどうかを確認してみましょう。
(a)トライアル雇用助成金*1
試行的に障害者を雇用する事業主を対象とする助成金です。
(b)特定求職者雇用開発助成金 *2*3
継続的に障害者を雇用する事業主を対象とする助成金です。

この記事を書いた人
阿部 由羅
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
https://abeyura.com/
https://x.com/abeyuralaw
参考資料
*1参考)厚生労働省「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/shougai_trial.html
*2参考)厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_konnan.html
*3参考)厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/hattatsu_nanchi.html
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