
2025年12月12日から建設業法改正が全面的に施行され、労働者の処遇改善や働き方改革などに関する変更が行われました。建設業を行う事業者は、変更点を正しく理解したうえで、必要な対応を行ってください。
本記事では、2025年12月に施行された建設業法改正について、主な変更点や事業者の対応事項などを解説します。
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【2025年12月全面施行】建設業法改正とは
2025年12月12日から、建設業法改正が全面的に施行されました。
建設業の労働者は、他の産業よりも賃金が低く、就労時間も長い傾向にあるため、担い手の確保が困難になりつつあります。
建設業は、地域インフラや住まいなどの整備に必要不可欠な役割を果たす重要な産業です。その担い手を確保するため、今回の改正では建設業労働者の処遇改善・働き方改革・生産性向上が盛り込まれました。
【2025年12月全面施行】建設業法改正の3つのポイント
今回の建設業法改正では、主に次の変更が行われました(一部、前倒しで施行されている規定も含まれます)。
(1) 労働者の処遇改善
(2) 資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止
(3) 働き方改革と生産性向上
次の項目から、各変更点の内容を解説します。
変更点1|労働者の処遇改善
1つ目の変更点は、建設業労働者の処遇改善に関するものです。次の内容が含まれています。
(a)労働者の処遇を確保する努力義務
(b)標準労務費の勧告
(c)著しく低い材料費等の見積もりの禁止
(d)工事を請け負う建設業者による原価割れ契約の禁止
労働者の処遇を確保する努力義務
建設業者に対し、労働者の適切な処遇を確保するための措置を効果的に実施する努力義務が課されました(法25条の27第2項)。
建設業者においては、労働者の知識や技能といった能力を公正に評価したうえで、それに基づく適正な賃金を支払うなどの対応が求められます。
標準労務費の勧告
中央建設業審議会は、建設工事の労務費に関する基準を作成し、その実施を勧告できるものとされました(法34条2項)。
賃金などの労務費は、建設工事の原価に含まれます。建設業者においては、原価割れ契約の禁止(後述)も踏まえつつ、標準労務費を考慮したうえで請負代金を定める必要があります。
著しく低い材料費等の見積もりの禁止
建設工事を請け負う建設業者が、経費の内訳等を記載した見積書(=材料費等記載見積書)を作成する際に記載する「材料費等」の額は、通常必要と認められる額を著しく下回るものであってはならないとされました(法20条2項)。
「材料費等」には、次の費用が含まれます。
・材料費
・労務費
・法定福利費(健康保険料等の事業主負担額)
・安全衛生経費(建設工事従事者の安全、健康の確保に関する経費)
・建設業退職金共済契約(特定業種退職金共済契約のうち、建設業に係るもの)の掛金
建設業者が見積もりを作成する際には、労務費などを過度に圧縮して金額を下げるといったことがないようにしなければなりません。
工事を請け負う建設業者による原価割れ契約の禁止
請負契約において、建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額の請負代金を定めることは「原価割れ契約」と呼ばれています。
注文者に対しては従来から、自己の取引上の地位を不当に利用して原価割れ契約を締結することが禁止されていました(法19条の3第1項)。
今回の改正により、建設工事を請け負う建設業者も、原則として原価割れ契約を締結してはならないものとされました(同条2項)。注文者・請負人の双方に対して原価割れ契約を禁止することにより、建設業労働者の待遇を確保することが意図されています。
ただし例外的に、次のいずれかに該当するときは、請負人である建設業者による原価割れ契約が許容されます。
・自らが保有する低廉な資材を用いることができる。
・先端的な技術、または蓄積された知識、技術もしくは技能を活用することにより、工事原価の低減が図られている。
・原価割れ契約を締結することについて、緊急の必要その他やむを得ない事情がある。
変更点2|資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止
2つ目の変更点は、資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せを防止するためのものです。次の内容が含まれています。
(a)請負人の注文者に対するリスク情報提供義務
(b)請負代金の変更方法を契約に定める義務
(c)工期・工事内容・請負代金の変更に関する誠実協議努力義務
請負人の注文者に対するリスク情報提供義務
建設工事を請け負う建設業者は、次の事象が発生するおそれがあると認めるときは、請負契約を締結するまでに、その旨および当該事象の状況の把握のため必要な情報を通知しなければならないとされました(法20条の2第2項)。
・主要な資機材の供給の不足もしくは遅延、または資機材の価格の高騰
・特定の建設工事の種類における労務の供給の不足または価格の高騰
従来は、工期等に影響を及ぼすリスク情報の提供は、注文者に対してのみ義務付けられていました。今回の改正により、注文者・請負人の双方にリスク情報の提供が義務付けられました。
請負代金の変更方法を契約に定める義務
建設工事の請負契約における記載事項に、価格等の変動・変更に基づいて請負代金を変更する場合の算定方法が追加されました(法19条1項8号)。
資材価格の高騰などが発生した場合に、算定方法に関する個別の協議を要することなく、スムーズにその請負代金へ反映させるための改正です。
建設業者においては、想定される価格高騰などのリスクを念頭に置いたうえで、合理的な算定方法を定めることが求められます。
工期・工事内容・請負代金の変更に関する誠実協議努力義務
注文者に対してリスク情報を通知した建設業者(請負人)は、実際にそのリスクが顕在化した場合に、工期・工事内容・請負代金の変更に関する協議を申し出ることができるとされました(法20条の2第3項)。
変更協議の申出を受けた注文者は、その申出が根拠を欠く場合その他正当な理由がある場合を除き、誠実に応ずるよう努めなければなりません(同条4項)。
変更点3|働き方改革と生産性向上
3つ目の変更点は、建設業労働者の働き方改革と生産性向上に関するものです。次の内容が含まれています。
(a)工事を請け負う建設業者による著しく短い工期設定の禁止
(b)専任技術者の設置義務の緩和・合理化
(c)特定建設業者による現場管理の効率化・適正化
工事を請け負う建設業者による著しく短い工期設定の禁止
建設工事を請け負う建設業者は、その工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して、著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならないとされました(法19条の5第2項)。
従来から注文者に対しては、著しく短い工期の設定が禁止されていました(同条1項)。今回の改正により、注文者・請負人の双方に対して著しく短い工期の設定が禁止されました。
専任技術者の設置義務の緩和・合理化
公共施設や利用者が多数に及ぶ施設などの建設工事において、ICTの活用などを要件として、専任技術者の設置義務が緩和されました(法26条3項、26条の5)。
専任技術者の設置には大きなコストが伴うところ、現場管理の効率化・合理化を目的とした行われた改正です。
特定建設業者による現場管理の効率化・適正化
「特定建設業」とは、元請けとして、一定規模以上の工事を下請事業者に発注する建設業をいいます。
特定建設業の許可を受けた者(=特定建設業者)は、建設工事の適正な施工を確保するために必要なICTの活用に関し、必要な措置を講ずるよう努めなければならないとされました(法25条の28第1項)。
また、特定建設業者が発注者から直接建設工事を請け負った際には、下請負人がICTを活用できるように指導を行うよう努めなければなりません(同条2項)。
元請けである特定建設業者は、自ら指揮を執って、ICT化による現場管理の効率化・適正化を進めることが求められます。

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この記事を書いた人
阿部 由羅
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
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