従業員1,200名を超える社会福祉法人 伸こう福祉会では、14か所の保育施設のほか、40以上の介護・障がい者福祉事業所の運営を行っています。このほど、キディ百合丘・川崎のほか複数の保育園で監視カメラを導入しました。このねらいと効果について、同法人で保育事業の責任者を務める武田様にお話しいただきました。
※株式会社セキュアと株式会社ウチダシステムズの共同プロジェクトです。
プロフィール
社会福祉法人 伸こう福祉会
保育事業部長 武田 正志 様
事業内容:保育サービス事業、介護事業、障害者支援など
所在地:神奈川県横浜市
導入商品:監視カメラシステム(SECURE VS)
導入年月:2024年3月
子どもと保育士を守るために防犯カメラの増強を決断
- インシデント発生時の検証や研修への活用による保育の質向上
- 客観的事実に基づく保護者への説明責任の強化
- 子どもと保育士を守るため、死角のない映像録画が必要だった
- 遠隔で映像を確認できるシステムであることも重要な要件であった
Q. もともとカメラ設置に消極的だった時期が長かったとお聞きしました。
武田様:これまで当法人の保育園では、不審者の侵入を抑止する目的として施設の出入り口に防犯カメラを設置していたのみでした。以前に一度、室内へのカメラの導入を検討した際には、保育士たちから監視されることのマイナスイメージが根強く、反対する声が多数を占めました。保育士の専門性や経験を信頼すべきで、安易にテクノロジーを導入することでモチベーションを下げるべきでないと慎重論が勝ったという経緯です。
しかし近年、保育施設での事故や不適切な管理が報道されるようになり、保育の安全性や質に対する社会の目が厳しくなっているのはたしかです。保護者もより安全で透明性の高い保育環境を求めるようになっています。
―子どもの安全を守るには監視を強めるべきだということですね。
武田様:いえ、“監視”という発想ではありません。本質は、子どもだけでなく、保育士を“守る”ことにもつながると判断したためです。たとえば、保育中の子どもが転倒してケガをしてしまったとします。仮に「ケガの原因は、保育士の目が行き届いていなかったのではないか」と申し立てがあっても、本人の証言以外の客観的事実に基づく回答ができるようになります。
決め手は最大限効果を高める柔軟な対応と提案力
大手セキュリティ会社を含む複数の企業に具体的な提案と見積りを依頼した結果、パートナーとして選んだのはウチダシステムズとセキュアでした。そのポイントとなったのは、武田様が実現したい意図をくみ取った上での柔軟な提案力だったと、武田様は仰います。
Q. どのような流れで当社をお選びいただいたのでしょうか。
武田様:一言で言えば、単に機器の設置を提案するだけでなく、保育施設の特性や課題を理解した上で具体的な解決策を提示してくれたためです。実は当初、私たちが検討していたのはクラウド型のシステムでした。複数の保育施設の映像を法人本部で確認するにはクラウドが便利だろうと考えていたのですが、今回の複数施設へのカメラの導入を含めたプランでは、クラウド型のシステムは想定よりも高額だったのです。
しかし、ウチダシステムズさんとセキュアさんは、長期的なランニングコストを考慮し、各施設にレコーダーを設置するオンプレ型システムを提案してくれました。このシステムでは、要件である「複数施設の遠隔での映像確認」を満たしておりました。
Q. 監視カメラの設置目的として他にこだわっていた点はありましたか?
武田様:音声の記録ですね。やはり客観的な資料として活用したかったので、音声も同時に記録できれば、得られる情報は格段に増えます。ご提案いただいた(360°)全方位フィッシュアイカメラは、要件の一つである「音声」の録音も対応しておりました。
また、担当者さんには現地調査を丁寧に繰り返し実施していただきました。ランニングコスト面も考慮しトータルのカメラ台数を削減しながも、(360°)全方位フィッシュアイカメラと通常のドーム型カメラを組み合わせて「死角」を作らないという、効率的な運用が可能なカメラの設置を実現していただきました。
私たちよりも、加藤さんと永春さん*の方がよほど設置場所にこだわっていたようにさえ思いますね。
*加藤=ウチダシステムズ営業担当、永春=セキュア営業担当
Q. 導入後のサポートについてのご評価はいかがでしょうか。
武田様:対応が丁寧な印象です。本当に些細なこと、ちょっと操作方法がわからないといった問い合わせにも素早く、細かく教えていただいたので良かったですね。
パソコンからは各施設の様子がリモートで確認できますし、自分のいる保育施設はスマートフォンからでも状況を見ることができます。この仕組みや操作もシンプルで助かっています。
設置を決めた時点では保育士からの反発も多少ありましたが、今ではすっかり慣れているようで、勤務中にカメラを意識しているような素振りはありません。
社内研修で早くも活躍、ヒヤリハットを安全の資産に変える
Q. 実際の映像はどのように活用されているのでしょうか?
武田様:施設ではこれまでも、些細なアクシデントが起きた場合には社内研修の場で報告書に基づいて再発防止の勉強会を開いてきました。室内への防犯カメラ導入以降は、この研修会が充実したと手ごたえを感じています。
ヒヤリハットは社内研修でも取りあげているのですが、より深い学びにつながっています。これまでは、事例の共有は報告書と口頭説明に頼るしかありませんでした。しかし、それでは情報が当事者の主観に左右されてしまうのは当然のことです。
防犯カメラの映像および音声という客観的な事実が加わったことで、状況が詳細に把握できるようになりました。複数のカメラの映像を見比べながら時系列を整理すると、さまざまな事実が浮かび上がってくるものです。保育士の目が行き届きにくい場所、時間帯、カメラだけが捉えていた子どもの行動など、これまで見えていなかった情報が得られます。
自分のミスをさらけ出すのは恥だという感覚もあったことでしょう。ただ、誰かを批判するのではなく、起きた事象を客観的に捉えて、再発防止につなげるうえでこれ以上の教材はないと思います。こうした積み重ねにより、もし何かアクシデントが起きても、保護者にも推測や伝聞ではなく事実関係を率直に伝えられます。保護者を含め「大人全員」で子どもを“守る”という意識が必要です。その結果、きっと信頼関係も強固になっていくはずです。
―事例が蓄積されることで、より高い安全性を実現できるのですね。
武田様:保育士たちにも良い影響が出始めていて「ちょっと映像で確認させてください」と依頼してくるケースもあります。気になったことがあれば事実関係を確認するために、映像という資産を活かしてくれているわけです。
“監視”ではなく、自分たちが“進化”するためのツールに使うという意識が、職員の間でもっと広がることを期待しています。
防犯カメラの機能として今後期待したいことは、遠方にいらっしゃる祖父母の方々を対象とした「遠隔保育参観」や「AI を活用した乳幼児突然死症候群の防止のサポート」です。そんな機能が備わったカメラがあったらぜひ導入を検討したいですね。
―安全性を追求するための取り組みのお話しをありがとうございます。保育施設に関わるさまざまなリスクを軽減するため、ソフト、ハード両面からご提案を続けられたらと思っております。
<担当営業からの解説>
保育施設は本棚や遊具の陰など死角ができやすく、そうした場所ほど、思わぬ事故が起こりやすい傾向にあります。「何かが起きた際の記録を残したい」というご要望を叶えるために、限られた台数で死角なく、最大限のパフォーマンスを発揮できるよう設置場所のシミュレーションを繰り返しました。
決め手となったのは、(360°)全方位フィッシュアイネットワークカメラ「DC-Y6C16WRX/9MP」の採用です。要所に360度撮影が可能な本製品を採り入れたことで、お客様にご満足いただけたことを嬉しく思っています。