
オフィス改革やABWというと、これまでは民間企業の取り組みというイメージが強かったテーマです。ただ最近は、その流れが自治体にも広がってきています。
その中でも分かりやすいのが、千葉市と中野区の新庁舎です。
どちらも単なる建て替えではなく、「働き方そのものを見直す」ことを前提に進められている点が特徴的です。
今回はこの2つの事例をもとに、自治体のオフィスがどう変わってきているのかを整理していきます。
千葉市は「建て替え」をきっかけに働き方を見直した
千葉市の新庁舎は、もともと旧庁舎の老朽化や本庁舎機能の分散、防災機能の課題をきっかけに整備が進められました。
新庁舎はJR京葉線「千葉みなと駅」から徒歩圏に位置し、千葉駅からのアクセスも可能な立地。この立地選定には、分散していた本庁機能を一カ所に集約し、職員同士の連携や意思決定のスピードを高める狙いがあったと考えられます。
また、災害時にも機能する拠点としての継続性を確保する観点からも、アクセス性と機能性の両立が意識されています。
プロジェクトの進め方を見ると、単に建物を新しくするというよりも、「どう働くか」を見直すことが早い段階からテーマになっていたことも分かります。*1
新庁舎の検討では、副市長や局長級で構成する検討委員会が設置され、執務室の使い方まで含めて議論が行われています。
そのうえで、令和5年1月末に新庁舎が竣工。*2
実際のオフィスでは、「対話」と「挑戦」をキーワードにABWの考え方が取り入れられています。
- 自席以外にも使える執務スペース
- 複数人で作業できるエリア
- モニターを活用した会議環境
自席エリアではグループアドレスが導入され、部署の壁をなくしたオープンな空間になっています。

https://www.city.chiba.jp/jinji/boshu/documents/zaisei.pdf
ここでポイントになるのは、レイアウトを変えただけで終わっていないことです。
関連事例を見ると、移転前から全庁で意識づくりが進められていて、 運用マニュアルの整備や働き方の浸透支援まで行われていました。
新庁舎は完成がゴールではなく、 働き方を変えるためのスタートとして扱われているのが特徴です。
中野区は「サービス」と「働き方」を同時に変えている
一方の中野区は、少し違ったアプローチを取っています。
中野区新庁舎は、中野駅新北口駅前エリアの再整備事業の一環として整備されています。中野駅はJR中央線・総武線・東京メトロ東西線が利用でき、新宿から約5分というアクセス性を持つ交通結節点。
この立地には、区民の利便性向上に加え、再開発エリアのにぎわい創出や価値向上を担う拠点とする狙いがあったと考えられます。 新庁舎では、職員の働き方だけでなく、区民が利用する窓口のあり方まで含めて見直されているのです。
特徴的なのが「なかのスマート窓口」です。
- 迷わない
- 待たない
- 動かない
- 書かない
- 行かない
という考え方をもとに、窓口の動線や手続きが整理されています。*3
来庁者にとって使いやすいだけでなく、職員側の業務効率も上がる設計になっているのがポイントです。

https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/kusei/kousou/bunyabetsu/chousha/015820020240226194309977.files/panflet.pdf
執務エリアでは、フリーアドレスやグループアドレスに加えて、
- ワークラウンジ
- ミーティングブース
- 集中ブース
など、多様な働き方に対応した空間が整備されています。

https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/kusei/jinnji/saiyo/about/shincyosya.html
さらに、中野区の新庁舎は日経ニューオフィス賞を受賞しています。*4
この賞は、働きやすさや生産性、創造性などを総合的に評価するもので、中野区は「ニューオフィス推進賞」と「クリエイティブ・オフィス賞」の両方を受賞しています。特に後者は、自治体庁舎として全国初の受賞です。
空間だけでなく、運用や働き方まで含めた取り組みが評価されている点は見逃せません。
2つの事例に共通していること
千葉市と中野区の事例を見ていると、共通しているポイントがいくつかあります。
まず、どちらもフリーアドレスやABWを取り入れていることです。
こうした働き方は、すでに自治体でも広がり始めていることが分かります。
ただ、それ以上に重要なのは、空間だけでなく「ICTや運用まで含めて設計されている」ことです。
例えば、
- モニターやオンライン会議の活用
- ペーパーレスの推進
- 働き方のルール整備
といった要素がセットになっています。
単にレイアウトを変えただけではなく、仕事の進め方そのものが変わっているのが大きな違いです。
なぜ「レイアウト変更だけ」ではうまくいかないのか
ここまでの事例を見ると、オフィス改革が単なるレイアウト変更ではないことがよく分かります。
机や席の配置を変えるだけでは、働き方はあまり変わりません。
実際、フリーアドレスを導入しても、使い方が定まらず形だけになってしまうケースもあります。
千葉市では事前に意識づくりが行われていて、
中野区では窓口業務そのものが見直されています。
どちらも、空間の前に「どう働くか」が整理されているのが特徴です。
この違いが、そのまま成果の差につながるポイントになりそうです。
千葉市と中野区の違いから見えてくること
2つの事例は似ている部分もありますが、重心は少し違います。
千葉市は、庁内の働き方を見直すことに重点を置いた「内部改革型」です。
対話や連携を促すためにオフィスが設計されています。
一方で中野区は、区民サービスと働き方を同時に変えた「統合型」です。
窓口と執務の両方を見直している点が特徴です。
この違いを見ると、オフィス改革の進め方には複数のパターンがあることが分かります。
まとめ:オフィスは「働き方を変えるための手段」になっている
千葉市と中野区の新庁舎から見えてくるのは、オフィスの役割が変わってきているということです。
これまでは、働き方に合わせてオフィスをつくるのが一般的でした。
ただ、現在ではオフィスを使って働き方を変えていく流れになっています。
そのため、オフィス改革を考えるときは、
- どんな働き方にしたいのか
- どんな業務の進め方にするのか
といった点から考えることが重要になってきます。
レイアウトや設備は、そのあとに決めていくものです。
この順番が整理できるかどうかで、オフィス改革の結果も大きく変わってきそうです。

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この記事を書いた人
そしきLab編集部
ウチダシステムズのスタッフを中心に、組織作りや場づくりについて議論を交わしています。業務の中で実際に役に立ったことなどを紹介していきます。
参考資料
*1 千葉市 新庁舎整備工事https://www.city.chiba.jp/zaiseikyoku/shisan/kanzai/choshaseibi/shinchosha_seibikouji.html?utm_source=chatgpt.com
*2 千葉市:竣工式・市民見学会を開催しました!
https://www.city.chiba.jp/zaiseikyoku/shisan/kanzai/choshaseibi/syunnkoushiki.html
*3 中野区新庁舎パンフレット
https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/kusei/kousou/bunyabetsu/chousha/015820020240226194309977.files/panflet.pdf
*4 中野区本庁舎が第38回日経ニューオフィス賞における「クリエイティブ・オフィス賞」を受賞しました | 中野区
https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/kusei/kousou/bunyabetsu/chousha/NNaward.html
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