神戸製鋼所の東京本社が高輪ゲートウェイ「THE LINKPILLAR 2」へ移転 なぜ高輪?新オフィスの働き方は?

神戸製鋼所の東京本社は、2026年7月に品川区北品川から港区高輪へ移った。場所は、高輪ゲートウェイシティにあるTHE LINKPILLAR 2だ。

同じビルには、KOBELCOグループの会社もまとまって入った。移転と同時に、社員が自分の席を持たない「ABW&完全フリーアドレス」という働き方も取り入れている。

なぜ高輪なのか。会社は、人材・駅・災害への備えの3つを理由に挙げた。もう1つ加えるなら、グループの会社が上下5階に収まる1フロアの広さである。

神戸製鋼の東京本社はどこにある? 高輪ゲートウェイ駅から徒歩3分

高輪ゲートウェイ駅・泉岳寺駅からTHE LINKPILLAR 2 4階への道順(出典:神戸製鋼所)

神戸製鋼所には本社が2つある。兵庫県神戸市の神戸本社と、東京本社だ。東京本社の住所と行き方は次のとおり。

新しい東京本社には、KOBELCOグループの会社も一緒に入る。計画では、神戸製鋼所と関係会社20社の合わせて21社が入る。

2026年7月1日時点で関係会社18社が入り、9月14日には神鋼環境ソリューションも移った。残る関係会社1社と、神戸製鋼所のエンジニアリング事業部門は移る予定となっている。

コベルコ建機やコベルコシステムの東京本社も、このビルにある。

なぜ高輪か 会社は人材と3つの駅と災害への備えを挙げた

神戸製鋼所は2024年9月の発表で、移転の理由を次のように挙げた。

  • 多様な人材の活躍と、社員エンゲージメントの向上
  • 高輪ゲートウェイ駅・泉岳寺駅・品川駅が徒歩圏にあり、将来の街の発展が期待できること
  • 災害時にも電力と熱を確保できる、BCP(災害時に仕事を止めない備え)の信頼性

同じ発表で、会社は新しい職場を「災害に強く、より機能的で、社員同士のコミュニケーションの向上につながるオフィス」にすると書いている。

駅の近さは、本社が神戸と東京の2か所にある会社にとって意味が大きい。東京本社は、神戸との行き来の起点でもあるからだ。3つの駅は、行き先がそれぞれ違う。

神戸へは、飛行機でも新幹線でも向かえる。

災害への備えは、ビルが持っている。THE LINKPILLAR 2は、街全体へ電気と熱を送るエネルギーセンターを持ち、災害のときも電気と熱を保てる。

高輪ゲートウェイシティはどんな街か 日本初の鉄道が走った土地に開いた

全面開業の日に開いた文化施設 MoN Takanawa(出典:JR東日本)

会社が理由に挙げた「将来的な街の発展性」は、JR東日本がこの街に描く計画の上にある。

高輪ゲートウェイシティは、JR東日本が品川車両基地の跡地に作った街で、2026年3月28日に全面開業した。JR東日本は、この街を「100年先の心豊かなくらしのための実験場」と呼ぶ。

KDDIやTOPPANなど、同じ街に本社や拠点を移した会社の全体像は、高輪ゲートウェイシティの入居企業をまとめた記事で扱っている。

THE LINKPILLAR 2は1フロア約3,600㎡ グループが上下5階に収まる

ニュウマン高輪 MIMURE 中央のアトリウムのイメージ(出典:ルミネ)

このビルの特徴は、1フロアの広さにある。ビルの標準的な階の広さを基準階といい、このビルの基準階は約3,600㎡で、坪にすると約1,090坪だ。

KOBELCOグループが入る8〜12階の5フロアを合わせると、計算上は約5,450坪になる。移転の発表時に報じられた約5,500坪と、ほぼ同じ広さだ。

オフィスの下、2〜3階には、商業施設ニュウマン高輪の「MIMURE(ミムレ)」が入る。2フロアで約8,000㎡の広さだ。

見どころは、料理をつくる様子そのものだ。小川珈琲が手がける11のラボラトリーでは、コーヒーやカカオをその場で煎り、パンは酵母を育てるところから店で焼く。仕込みから調理まで、客席から見える造りになっている。

施設の真ん中の吹き抜けには、直径5mの岩が運び込まれた。全周50mを超えるバーカウンターで、和牛の牛丼を出す店もある。

THE LINKPILLAR 2の入居企業 KOBELCOグループと4社

THE LINKPILLAR 2に本社を移すと公表した会社は、KOBELCOグループのほかに4社ある。本社でない拠点の入居は含めていない。

素材と機械のKOBELCOグループに、IT、生活用品、コンサルティングの会社が加わる。

このうちコムチュアも、都内5か所に分かれていたグループ各社のオフィスを、このビルに集める。同じビルに、東京のグループ拠点をまとめる会社が2つ並ぶ。

新しい東京本社では席を決めずに働く

新東京本社の執務エリア全景(出典:神戸製鋼所)

新しい東京本社では、社員が自分の席を持たない。執務エリアのほかに多目的エリアとカフェエリアを用意し、ABWと完全フリーアドレスを取り入れた。

ABWは、仕事の中身や目的に合わせて、働く場所を社員が自分で選ぶ考え方である。

会社は、強みの「総合力」と「多様な人材」を生かすには、部門や組織の枠を超えた連携と、グループの一体化が欠かせないと説明する。

同社はこの移転を、変革の取り組み「KOBELCO-X」のうち、「EX:人材戦略・従業員体験向上」の一例と位置づける。代表取締役副社長の永良哉氏も、統合報告書2026の座談会で「東京本社の移転を機にABWを導入したこともその一例です」と話した。

入居する21社には、建設機械のコベルコ建機、ITのコベルコシステム、物流のコベルコロジスティクスなど、事業の違う会社が並ぶ。

席が決まっていないので、近くに座る相手は日によって変わり、別の事業の社員と隣り合う日もありうる。

ただし、グループの会社同士が仕事をするエリアや席を分け合うかどうかは、公表されていない。

グループの会社をまとめた本社でABWを生かせるかは、どの会社の社員がどのエリアを使えるかという使い方の決めごとで変わる。会社をまたいで使える共用のエリアが広いほど、事業の違う社員が顔を合わせる場面は増える。

会社が最初に挙げた移転の理由は、社員エンゲージメントの向上だった。CBREの2024年の調査は、働く場所や働き方を社員が自分で決めることが、貢献する意欲や会社への愛着を高めるとしている。

移転は600億円の人的資本関連投資の一環

同社は2024年9月の発表で、東京本社の移転を600億円程度を見込む人的資本関連投資の一環と書いた。会社の定義では、この投資は職場環境の改善と人材不足への対応に充てるものだ。

この投資は、中期経営計画の投資の計画で、1つの行として立っている。統合報告書2026の数字は次のとおり。

オフィスの移転を、脱炭素や成長のための投資と並ぶ計画の中で、人への投資として説明した例である。

投資の計画とは別に、同社は統合報告書2026で、人に関する目標と実績も公開している。いずれも2025年度までの実績で、移転の前の姿だ。

女性管理職は、2026年度の目標まであと7人のところにいる。

発表から約2年で、東京本社の大半が高輪へ移った

移転は2024年9月の発表から、会社ごとに段階を踏んで進んだ。

発表時の目途は2026年度中だった。実際には、その年度の最初の3か月で、東京本社の大半が移り終えた。

まとめ

神戸製鋼所は、東京本社とグループの会社を、高輪ゲートウェイの1つのビルに集めた。

そのうえで、席を決めない働き方を入れた。社員はその日の仕事で座る場所を選び、事業の違うグループ会社の社員と同じビルで働く。

神戸と東京に本社を置く同社にとって、高輪は東京駅と新幹線の駅に近く、グループを1か所に集められる1フロアの広さもある場所だ。

この記事を書いた人

吉田 学

オフィスづくりの現場に12年。起業直後のマンションの一室から4,000坪超の本社移転まで、100件を超えるプロジェクトで経営者や総務・人事の方々と対話してきました。その経験を物差しに、公開情報から企業の「場づくり」の意図を読み解きます。

参考資料

神戸製鋼所・KOBELCOグループ

高輪ゲートウェイシティ・THE LINKPILLAR 2

業界データ

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