神戸製鋼所が「高輪ゲートウェイシティ THE LINKPILLAR 2」へ本社移転 なぜ高輪?狙いとオフィス移転で予想される効果は?

神戸製鋼所の東京本社移転が、いよいよ2026年6月に迫っている。移転先は、「高輪ゲートウェイシティ THE LINKPILLAR 2」。最寄り駅は、山手線として49年ぶりの新駅となった高輪ゲートウェイ駅だ。

同社は今回の移転理由として、以下の3点を挙げている。

  • 多様な人材の活躍促進
  • 社員エンゲージメント向上
  • BCP対応

このような狙いを満たす本社移転として、なぜ高輪ゲートウェイシティを選んだのか。今回のオフィス移転から透けて見える本当の狙いと期待できる効果は、どのようなものか、読み解いていく。

THE LINKPILLAR 2 完成予想図(出典:神戸製鋼所プレスリリース、画像提供:JR東日本)

高輪ゲートウェイシティ どんな街?

TAKANAWA GATEWAY CITY 街区ロゴ(出典:TAKANAWA GATEWAY CITY 公式サイト)

駅直結のまちとしては国内最大級というのが客観的な位置づけだ。JR東日本が「100年先の心豊かなくらしのための実験場」と位置づけている街区である。

山手線49年ぶりの新駅、高輪ゲートウェイ

山手線の新駅は1971年開業の西日暮里以来、49年ぶりである。1日約11,110人という山手線最少の駅が、街区完成後に13万人を見込む。駅と街区を一体で動かす設計に基づいていることが、この10倍超の伸びに表れている。

街区に集まる企業の顔ぶれ

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LiSH(TAKANAWA GATEWAY Link Scholars’ Hub)(出典:LiSH 公式サイト)

LINKPILLAR 1とLINKPILLAR 2 ── 神戸製鋼所が選んだのはどちらか

画像:kobelco linkpillar2 cgi
THE LINKPILLAR 2 外観写真(出典:クラシエ本社移転リリース)

街区の中核オフィス棟は3棟構成だ。LINKPILLAR 1のNORTHとSOUTH、そしてLINKPILLAR 2。神戸製鋼所が選んだのはLINKPILLAR 2である。

LINKPILLAR 1 NORTH/SOUTH(ツインタワー)

  • LINKPILLAR 1 NORTH:
    地上29階・地下3階
    KDDIが1〜29階を一棟借り(オフィスは9〜27階、約12,000人勤務、2025年4月28日入居開始)
  • LINKPILLAR 1 SOUTH:
    地上30階・地下3階
    オフィスはTOPPANデジタル(約4000坪)。23〜30階の上層階には、マリオット最高級ブランド「JW」の東京圏初出店となるJWマリオット・ホテル東京が入居。

JWマリオット・ホテル東京の8席だけの割烹「咲/Saki」では、シンガポールでミシュランの星を獲得した西田和峰氏らが監修する創作割烹を、東京湾の夜景を眺めながら味わえる。海外顧客や子会社・グループ会社の往訪が多い製造業大手にとって、こうしたホスピタリティの質は本社立地の隠れた価値になる。

THE LINKPILLAR 2(神戸製鋼所が選んだ建物)

LINKPILLAR 1 NORTHはKDDIの単独利用、LINKPILLAR 1 SOUTH上層には、マリオット最高級ブランドの東京圏初出店となるJWマリオット・ホテル東京も入居している。さすがにマリオットの最上級ブランドとあり、日本料理「Saki / 咲」では、ランチでも16000円からとなかなかのお値段だ。料理長はミシュランのスターシェフ、西田和峰が務めているとのこと。たまの記念日にはチャレンジしても、いいかもしれない。

一方でLINKPILLAR 2は、素材の神戸製鋼所、生活用品のクラシエ、コンサルの日立コンサルティング、SIの日本システム技術と、業種が割れている。神戸製鋼所が占有する5,500坪は街区最高層棟の延床面積208,547m²に対して大きな比重を占め、街区のなかで「製造業大手の本社」が物理的に旗を立てる場所になる。

神戸製鋼所はいま、何を目指しているのか

画像:kobelco x
画像:president message
KOBELCO-X/中期経営計画2024-2026(出典:神戸製鋼所IRサイト)

KOBELCOグループ中期経営計画2024-2026から、人的資本関連の数字を取り出す。

  • 人的資本投資:3年間で600億円(KOBELCO-X)
  • 投資領域:賃金改善・人材育成・職場環境改善・DX推進
  • 3本柱:人材EX向上・DX・企業文化改革

勝川四志彦社長メッセージでは「多様な人材と技術の組み合わせで新たな価値を創造することがKOBELCOの最大の強みだ」とされている。中計の旗印「KOBELCO-X」のXは、人材EX向上・DX・企業文化改革の3本柱を「クロス」させる構想だ。今回の本社移転は、その3本柱を物理空間の側から支える打ち手として位置づくのが自然である。

1年で動いた人的資本指標

画像:integrated report 2025
統合報告書2025 表紙(出典:神戸製鋼所IRサイト)

統合報告書20252024年版を見比べると、人的資本指標が動いている。

  • 3年未満の離職率:10.4%(2024年度)→ 2.4%(2025年度)
  • 1人あたり研修時間:33時間 → 44時間(+33%)
  • 女性管理職:74人 → 86人(+16%)
  • 外国籍従業員:+25%

離職率の急減と研修時間の積み増しが、1年で同時に動いている。中計初年度から、すでに数字が動いている領域に投資を集中していることがうかがえる。

社員クチコミから見える現場

Openworkは社員・元社員が自社を採点する社員クチコミサイトで、登録企業数は約5万社に及ぶ。総合スコアと8項目の評価が公開されており、外部から企業の組織状態を観察するうえで主要な公開情報源となっている。神戸製鋼所のOpenworkで回答者699名の集計を確認する。

  • 総合スコア:3.37/5.0(全登録企業約5万社のなかで上位5%)
  • 強み:法令順守意識3.9/風通しの良さ3.5/待遇満足度3.4
  • 課題:社員の士気2.9/人事評価の適正感2.9

中計でKOBELCO-X(人材EX向上・DX・企業文化改革のX)を掲げ、人的資本に3年600億円を投じている企業の現場で、人事評価の適正感が2.9(5点満点中)に留まっている。Openworkのスコアは過去の退職者の口コミも含む累積データなので、直近2年の現役社員だけ見れば改善している可能性はある。離職率10.4%→2.4%、研修時間+33%という指標が1年で動いているのに対し、Openwork総合スコアが動くにはまだ時間がかかる。物理的な打ち手である本社移転でエンゲージメントを高めていければ、現場の適正感もここから動いてくる、という流れの途中にいる。

隣り合う2つの「X」 ── UmiosとKOBELCO-X

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Umios(旧マルハニチロ)リブランド特設サイト(出典:Umios 公式サイト)

ここまで個別に見てきた事実を、隣接する2棟で重ねるとひとつの構造が浮かぶ。

LINKPILLAR 1 SOUTHには、マルハニチロが2026年3月に本社移転し、その翌月の2026年4月1日付で「Umios」へ社名変更した。Umiosは「umi(海)」「one(ひとつ)」「solutions(解決)」を組み合わせた造語で、海由来の食を起点にしたソリューションカンパニーへの転換を象徴している。社名そのものを変える、という打ち手だ。

その隣のLINKPILLAR 2に、神戸製鋼所が2026年6月に本社移転する。神戸製鋼所の中計2024-2026の旗印は「KOBELCO-X」──人材EX向上・DX・企業文化改革の3本柱を「X(クロス)」として束ねる構想だ。

街区で同じ時期に、業種は違うが構造的には同じ「X(クロス/変革)」を立ち上げる2社が、物理的に隣接して入る。Umios(旧マルハニチロ)は社名のレベルで、神戸製鋼所は中計の旗印のレベルで、それぞれ自社のあり方を組み替えにいく。入居企業の側でも、街区への移転を「再ブランドの場」として使う動きが、同時並行で進行している。

高輪口の連続再開発

画像:keikyu shinagawa cgi1
品川駅西口A地区 完成予想図(出典:京浜急行電鉄 プレスリリース)

高輪ゲートウェイシティの動きは、品川駅高輪口側の連続再開発の一部に位置づく。

  • 京急+トヨタ自動車の「品川駅西口地区A地区」(旧シナガワグース跡地):着工2025年5月、竣工2029年1月、地上29階・地下4階、トヨタ新東京本社入居予定
  • 北街区・南街区:2025〜2036年度にかけて順次完成

神戸製鋼所が高輪ゲートウェイ駅直結のLINKPILLAR 2に2026年6月入居するということは、高輪ゲートウェイシティ全面開業(2026年春)→品川駅西口A地区竣工(2029年1月)→南街区順次完成(〜2036年度)という時間軸の、最初のフェーズで決断したことになる。これだけの本社が一気に高輪ゲートウェイ側へ動けば、品川区・港区の旧オフィスビルにフロアが空く。中堅・中小企業が入居できる規模感のため、二次移転の連鎖も予想される。神戸製鋼所のLINKPILLAR 2入居は、その移転動態の最初のフェーズに位置する判断だ。

9年前と2026年6月

固有の時間軸を並べる。

CBREのリサーチでは、企業がオフィスを改変する最大の理由は「エンゲージメント向上」(37%)、移転先選定基準No.1は「従業員の通勤利便性」とされている。高輪ゲートウェイ駅直結+羽田・成田両空港への直結動線という条件は、この基準にそのまま合致する。

まとめ

高輪ゲートウェイシティという新進気鋭の街に、Umios(旧マルハニチロ)と神戸製鋼所が相次いで移ってきている。社名や中計の旗印を変えて、自分たちをトランスフォーメーション(X)しようとしている会社が、街づくりそのものを変革しようとしている場所に物理的に動いている、ということだ。

企業がその場所を選ぶ理由は、社員のエンゲージメントを高めるという機能的な側面だけではない。「この場所にいる意味」「この場所で自分たちが変わるんだ」という意思表示としても読める。

神戸製鋼所が2026年6月にTHE LINKPILLAR 2へ動くこの移転も、その意思表示の一つとして見ていきたい。

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この記事を書いた人

吉田 学

ウチダシステムズのスタッフを中心に、組織作りや場づくりについて議論を交わしています。業務の中で実際に役に立ったことなどを紹介していきます。

参考資料

神戸製鋼所

高輪ゲートウェイシティ/LINKPILLAR

品川駅西口(高輪口)再開発

業界データ


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そしきLab編集部

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