それは「優しい」んじゃなくて「お前なんかどうなってもいい」と思っているだけです。

かつては、「部下が育たない」と悩む管理職はそれなりにいた。
自分が「育てる立場」だと、自覚していた管理職が多かったからだ。

でも、ここ7、8年ほどで、明らかに潮目が変わった。

今の管理職の大きな悩みの一つは「部下を不快にさせないにはどうすればいいか」だ。

部下を不快にさせないことが、最重要

信じられない方もいるかも知れない。
が、これを、私は実際に現場で見た。

SaaS系の企業で、若手がクライアントに出す資料を作っていた。

上司やベテランたちが忙しかったので、やり方を教えて、過去の資料を渡して、「こういうものを作って」と依頼を出したのだ。

もちろん、読者諸兄がご想像の通り、結果として、品質的には
そのまま出せるような仕上がりではなかった。

しかしそれは織り込み済みだった。
当然のことながら、元から若手に品質は期待していない。「良いのが出てきたら儲けもの」程度だ。

若手に経験を積ませることが重要、と彼らは考えており、「たたき台っぽいもの」くらいが出てくればOKと彼らは考えていた。

しかし、上司たちは、その仕上がりに閉口した。

なぜか。

内容ではなく、それ以前の問題だったのだ。
誤字脱字がひどすぎる。おそらく全くチェックしていないのだろう。
「こいつ本当にやる気があるのか?」
というレベルで。

学校でもこんなレポートは認められないにちがいない。

当然、これは新人が叱責されると思った。
が、そうはならなかった。

酷い出来の資料だったが、彼の先輩は、若手に「配慮」をした。
「次はもうちょっと誤字を減らしてね、ありがとう。」

疑問に思ったので、「もっと言わなくていいんですか?」と聞くと、彼らは言った。

「「若手を叱るな、パワハラになる可能性がある」と言われているんでね。ちょっとした指摘にとどめているよ。」
「誤字脱字の指摘は、パワハラとは呼べないのでは?」
「パワハラってさ、こちらじゃなく「相手がどう思うか」が基準らしいんだよね。だったら、あの程度になるよ。彼らを不快にさせないことが、最重要ってことじゃない?」

彼も別に悪い人間じゃない

なるほど、と思った。

相手が何を「不快だ」「パワハラだ」と思うかについて、客観的な基準は存在しない。
であれば、できるだけリスクを取らない言い方になる。

あの様になるのも当然、というわけだ。

しかし、こんなことをしていては、若手は「ちゃんとした仕事」が
できなくなってしまうのではないだろうか。

それを尋ねると、彼らは言った。

「彼も別に悪い人間じゃないし、今までは資料とか作らせたことなかったから、まあ、仕方ないんじゃないかな。こっちで修正すればいいんだし。まあ、次からいい加減な人には資料類は頼まないけど。ちゃんとやりそうな他の若手に頼むわ。」

つまり、彼らはこう思っている。

「もともとできる人に頼もう、できないやつは適当に褒めておけ」

若手は「優しい上司」が大好き

産業能率大学総合研究所は、「2026年度 新入社員の理想の上司」についての調査を行った。

調査によれば、理想の上司とは
「安心して関われる雰囲気の中で、自分を気にかけ、優しく支えてくれる」存在を求める傾向
にあるとのこと。

「優しい上司」はとても人気なのだ。

ミスをしても叱ったりせず、厳しく品質を問われたりもしない。
無茶振りはしないし、なんなら仕事を振る前に、完璧なお膳立てをしてくれる。

そういう「優しい上司・先輩」が求められているのは事実だろう。

彼らは本当に「優しい上司・先輩」なのか?

しかし、現実の上司たちは本当に優しいのか?
と問うと、一概にそうとは言えないのではないだろうか。

極端なことを言えば、上のように「優しい」んじゃなくて「お前なんかどうなってもいい」と思っているだけなのではないだろうか。

これは言いすぎかもしれない。

が、それほど積極的に「どうなってもいい」と思っていないとしても、結果的に
「誤字脱字だらけの資料をだす若手」
を放置してしまっている現場があるのは、事実だ。

若手が自らの仕事のクオリティを振り返り、修正する貴重な機会は、こうやって失われ続ける。

上司の責任放棄なのか?

こうした状況に対して、「上司が責任を放棄している」という見方もある。

「言い方をうまく考えて、若手が自分の誤字脱字を直すように働きかけるのが上司や先輩の役割だ」
だという意見もあるだろう。
でも、ちょっと考えてみてほしい。
それって本当に上司の責任なのだろうか?

シンプルに考えれば、給料をもらっている人間が成果品に対して、
誤字脱字程度をちゃんとチェックをしないほうが、どう考えても悪いだろう。
これは技能の問題ではなく、それ以前の、プロ意識の問題だ。

言うなれば、もともと素行の悪い生徒に対して「先生の言い方が悪いから、彼は更生しないんだ」というのと同じだ。
悪いのは先生ではない。本人に決まっている。

しかも会社に入ってきている「大人」に対して、「上司の言い方が悪い」とは、どこまで幼稚なんだという話である。

断っておくが、もちろん世の中には「誤字脱字」をしない、几帳面で仕事をしっかりとやる若手の方が多いに違いない。
上のような、いい加減な若手はごく少数派だろう。

でも、会社が「若手を叱責するな」といって、そうした幼稚さに配慮すれば、「ダメ若手」と、自らを省みる「シゴデキ若手」の差は広がり続ける。

繰り返しになるが、給料をもらっている「社会人」に対して、真っ当な叱責もできないような状況を許している企業や経営者は、それは「優しい」んじゃない。

「お前たちなんかどうなってもいい」という意思表示をしているだけだ。

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この記事を書いた人

安達 裕哉

生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」88万部(https://amzn.to/49Tivyi
◯Twitter:安達裕哉
◯Facebook:安達裕哉
◯note:(生成AI時代の「ライターとマーケティング」の、実践的教科書)


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この記事を書いた人

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そしきLab編集部

【この記事は生成AIを利用し、世界のオフィスづくりや働き方に関するニュースをキュレーションしています】