「働き方改革」でオフィスはどう変わるべき?具体例をもとに解説!

「働き方改革」の導入から、はや7年。
それぞれの企業がそれに沿った取り組みを進めてきたのではないでしょうか。

ただし、本来的な意味での働き方改革は、制度を変えるだけでは実現しません。それは、オフィスのあり方そのものを見直す契機でもあります。

「長時間労働の是正」「多様な働き方」「同一労働同一賃金」というコンセプトは、オフィスのあり方に大きな影響を与える一方で、オフィスによってこそ実現できるものともいえるでしょう。

働き方改革を反映したオフィス事例に共通するのは、「働く人を支援する環境」という考え方です。
現在は、働き方改革を日常に定着させるための装置として、オフィスを再設計するべきフェーズにあるのではないでしょうか。

集中とリラックスのメリハリを重視したオフィス、出社する意味を再定義したオフィス、公平性を意識したオフィス設計など、働き方改革の意義に関連させながら、その取り組み事例をご紹介します。

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働き方改革のねらいと3本の柱

そもそも働き方改革とはどのようなものでしょうか。
また、働き方改革を実現する際に、なぜオフィスが大きな役割を担うのでしょうか。

厚生労働省の説明によると、「働き方改革」とは、働く人の1人ひとりが、それぞれの事情に応じて多様で柔軟な働き方を自分で選択できるようにするための改革です。*1

日本では、働く世代の人口が減っていることや、働く人の価値観やニーズが多様化していることが大きな課題となっています。これらの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上を図るだけでなく、働く機会を広げ、誰もが意欲や能力を十分に発揮できる環境を整えることが欠かせません。

働き方改革は、こうした状況をふまえ、多様な働き方が当たり前に選べる社会をつくることで、経済成長とその成果の分配がうまく循環する仕組みづくりを目指しています。そして、その先には、働く人1人ひとりが将来に希望を持てる社会の実現があります。

そう考えると、働き方改革によって働きやすさと働きがいが高まり、結果として従業員1人ひとりのウェルビーイングの向上につながる。それが、働き方改革の目指す姿だと捉えていいでしょう。

そうした状況を実現するための柱が、「長時間労働の是正」「多様で柔軟な働き方の実現」「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)」です。*2

なぜオフィスは大きな役割を担うのか

仕事に対する価値観や生活スタイルが多様化する現在、社会や働く環境も変化しています。*3
それにつれ、自ら将来のキャリアを考え、人生や仕事の段階に合わせて、さまざまな働き方を選びたいと考える人が増えています。
こうした状況が「働き方改革」の推進を加速させているのです。

一方で、働き方改革は、制度を整えるだけでは十分とは言えません。
それらの取り組みを制度面だけでなく、実際に働く場であるオフィスや職場環境の改善と一体で進めなければ、働き方そのものは変わりにくいからです。

たとえば、長時間労働の是正が進む中、オフィスは「長く滞在する場所」から「短時間で集中し成果を出す場所」へと役割を変えつつあります。

また、テレワークやフレックスタイムの普及など多様な働き方により、出社は義務ではなく選択となりました。だからこそオフィスには、対話や共創といった「集まる価値」が求められます。

さらに、同一労働同一賃金の考え方は、空間の使い方にも公平性を求めています。
雇用形態に関わらず、誰もが同じように能力を発揮し、正当に評価される環境づくりが必要だからです。

このように、オフィスは働き方改革を支える重要な役割を担っており、制度と環境の両方を整えることによって、はじめて働き方改革が実現し、従業員のウェルビーイングが向上していくのです。

そのための費用はどこから捻出するのか

オフィス環境を整えるためには、それ相応の「投資」(予算)が必要です。
具体的な取り組み事例をみていく前に、オフィス環境を整える際の予算について考えてみたいと思います。

総務・ファシリティマネジメントの専門家である金英範氏は、従業員のウェルビーイング実現を図るには、自社の現状を把握したうえで、十分な予算を確保する必要があると述べています。*4

同氏の試算によると、賃貸オフィスの場合、ファシリティマネジメントコスト(企業が保有・賃借する建物や設備・施設の維持、管理、運用にかかる費用)は従業員1人あたり約100万円~200万円。その内訳は以下のようになっています(図1)。

図1 ファシリティマネジメントコストの内訳(賃貸オフィスの場合)
出所:パナソニック「従業員1人あたりのウェルビーイング投資を見直そう!総務のプロが生産性やエンゲージメントを向上させる方法を解説」(2024年7月17日)
https://www2.panasonic.biz/jp/solution/office/column/157.html

この図からわかるように、ファシリティマネジメントコストの約半分は不動産コストが占めています。
これをリモートワークも選択できるハイブリッドワークに切り替えれば、オフィス規模をコンパクト化できます。

そうやってオフィス規模をコンパクト化できれば、「オフィス賃貸費」「電気空調」「清掃・警備」「メンテナンス」「家具什器」にかかる費用を削減できます。
その分を、従業員のウェルビーイングのために使うことが可能なのです。

そう考えると、ハイブリッドワークのもう1つの大きなメリットは、ハイブリッドワークによるコスト削減を単なる「節約」で終わらせず、人的投資へと再配分できる点にあるのではないでしょうか。

働き方改革の実現に向けたオフィス事例

ここからは、働き方改革のコンセプトに合致したオフィスの事例をみていきます。

日本初のABWレイアウトを採用したオフィス

最初にご紹介するのは、全国初のABWレイアウトが特徴のオフィスです。*5

ABW(Activity Based Working)は、最近注目を集めている新しいオフィス形態です。*6
ABWではオフィスをいくつかのゾーンに分け、作業内容に応じた場所を選べます。この柔軟性は、現在の多様な働き方にフィットし、働き方改革のコンセプトとも合致します。

ABWの席運用をフリーあるいはグループのどちらにするか現場と検証し、行き来が増える導線と「すぐ使える」打ち合せ拠点を分散配置し、交流・接点を仕組み化しました。*5

 図2 執務室(左図)とフリースペース(右図)
出所:ウチダシステムズ「大林道路株式会社さま 九州支店 「見晴らしがきき、風通しが良くなる」全国初ABWオフィス」(2025年12月13日)
https://uchida-systems.co.jp/office/case_office/case85/

行き来の増加と業務スピードを同時に引き上げるABWの先行モデル化によって、部門・年齢の壁を越えたコミュニケーションを増やし、連携を活性化するためのデザインです。

このように、固定席を前提とせず、業務内容に応じて誰もが最適な場所を選べる環境は、役職や所属部門による席の優劣がなくなり、すべての社員に等しく「使える場」「集まれる場」が提供されています。
部門や年齢の壁を越えたコミュニケーションを促すこうした設計は、情報や関係性の偏りを減らし、公平な協働機会を生み出しているのです。

また、会議室にはモニターを常設し、入退室統制で会議DXを実現しています。

ワークスタイルの変革を目指した事例

次の事例はオフィスに人が合わせるのではなく、「働く人が場を選べる」「働き方に合わせて場を変えられる」というスタイルへの転換によって、「ワークスタイル(働き方)」の変革を目指した事例です。*7

オフィス移転のプロジェクトでは「どんな働き方がしたいか?」「どんな働き方をすべきか?」というアプローチによって、従業員の代表者がワークショップ形式で「ありたい姿」を掘り下げるという手法をとりました。

また、定期的な組織変更に大きく左右されることのない、ユニバーサルレイアウトを構築しました。特定の部署や個人に最適化された空間ではなく、組織変更があっても利用条件が変わらないユニバーサルレイアウトを採用している点に、公正性が見出せます。

下の図3は、本社8階のレイアウトです。
コミュニケーションスペースを中心に、固定の執務スペース、フリーアドレススペース、ファミレススタイルのミーティングスペース「ダイナーブース」などが、バランスよく配置されています。

図3 本社8階のレイアウト
図4 コミュニケ―ションスペースとフリーアドレススペース(左)、ダイナーブース(右)
出所(図3・図4):内田洋行「コベルコシステム株式会社 様」(第27回 日経ニューオフィス賞「近畿ニューオフィス特別賞」受賞)
https://office.uchida.co.jp/case/kobelcosys.html

グループアドレス型ワークプレイスを採用したオフィス

固定席を設けず、90度デスクやビッグテーブルを組み合わせたグループアドレスを採用している事例もあります。*8
この事例では、偶発的対話を生むマグネットスペースを設けたり、AV機器・収納・カフェ機能を集約し、人が自然に集まる接点を点在配置しています。

こうしたレイアウトによって、営業部門と管理部門の垣根を越えた相談や確認がその場で行えるようになり、業務のスピードアップにつながっています。

さらに、営業社員の外出が多い働き方や、将来的なフリーアドレス化を見据え、余裕を持った設計とすることで、座席の効率化と働き方の選択肢の広がりを両立しています。

また、固定席を持たないことで、利用できるリソースや情報へのアクセスが特定の人に偏らず、外出が多い社員や将来の働き方の変化にも柔軟に対応できる点が、公平な働き方の選択肢を広げています。

それらが相まって、このオフィスでは周囲に声をかけやすい雰囲気が生まれ、社員が自ら動き、協力し合う組織文化への転換が進められています。

図5 グループアドレスを採用した執務室(左)とリフレッシュスペース(右)
出所:ウチダシステムズ「岡野商事株式会社さま 東京営業所 固定席を手放し、成長に備える。営業力と組織連携を最大化するグループアドレスオフィス」(2025年4月8日)
https://uchida-systems.co.jp/office/case_office/case80/

おわりに

働き方改革が進む今、オフィスは単なる業務の場ではなく、集中・共創・公平性を支える「働き方を実装する空間」へと役割を変えています。

本コラムで紹介した事例が示すように、制度だけでは実現しきれない働き方改革も、オフィス環境を見直すことで日常の行動として定着させることが可能です。

働きやすさと働きがいを両立し、従業員1人ひとりのウェルビーイングを高めていく。そのための投資として、いま改めてオフィスの価値を問い直すことが求められているのではないでしょうか。戦略・人的資本投資をあらためて見直す機会とすることが重要ではないでしょうか。

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この記事を書いた人

横内 美保子

博士(文学)。総合政策学部などで准教授、教授を歴任。専門は日本語学、日本語教育。高等教育の他、文部科学省、外務省、厚生労働省などのプログラムに関わり、日本語教師育成、教材開発、リカレント教育、外国人就労支援、ボランティアのサポートなどに携わる。パラレルワーカーとして、ウェブライター、編集者、ディレクターとしても働いている。
X:よこうちみほこ Facebook:よこうちみほこ

資料一覧

*1
厚生労働省「働き方改革関連法のあらまし(改正労働基準法編)」p.2
https://www.mhlw.go.jp/content/000611834.pdf
*2
厚生労働省「働き方改革 ~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~」p.1
https://www.mhlw.go.jp/content/000335765.pdf
*3
厚生労働省「新しい時代の働き方に関する研究会 報告書」(2023年11月13日)p.4
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001166321.pdf?_fsi=LqsjZnMF
*4
パナソニック「従業員1人あたりのウェルビーイング投資を見直そう!総務のプロが生産性やエンゲージメントを向上させる方法を解説」(2024年7月17日)
https://www2.panasonic.biz/jp/solution/office/column/157.html
*5
ウチダシステムズ「大林道路株式会社さま 九州支店 「見晴らしがきき、風通しが良くなる」全国初ABWオフィス」(2025年12月13日)
https://uchida-systems.co.jp/office/case_office/case85/
*6
オフィスの未来形、ABWって何?」(2025年2月26日)
https://uchida-systems.co.jp/worktrend/%E3%82%AA%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%81%AE%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E5%BD%A2%E3%80%81abw%E3%81%A3%E3%81%A6%E4%BD%95%EF%BC%9F/
*7
内田洋行「コベルコシステム株式会社 様」(第27回 日経ニューオフィス賞「近畿ニューオフィス特別賞」受賞)
https://office.uchida.co.jp/case/kobelcosys.html
*8
ウチダシステムズ「岡野商事株式会社さま 東京営業所 固定席を手放し、成長に備える。営業力と組織連携を最大化するグループアドレスオフィス」(2025年4月8日)
https://uchida-systems.co.jp/office/case_office/case80/


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そしきLab編集部

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