
オフィスは、それを使う従業員にとって快適なものである必要があります。
それはなぜか。人は快適な場所をオフィスから提供してもらいたいからです。
何を言っているんだ、当たり前のことじゃないか、と思われるかもしれませんが、実はこの「人が求めているものを提供する」という行為は突き詰めると奥深い行動なのです。
「アフォーダンス」という概念があります。
アメリカの心理学者が提唱したひとつの概念ですが、この「アフォーダンス」の概念を紐解いていくと、オフィス設計にあたって新しい視点が生まれます。
アフォーダンスとはどういうものかをご紹介し、オフィスにどう適用していくか考えてみたいと思います。
この音声コンテンツは、そしきlabに掲載された記事の文脈をAIが読み取り、独自に対話を重ねて構成したものです。文章の単なる読み上げではなく、内容の流れや意図を汲み取った自然な音声体験をお届けします。
※AIで作成しているため、読み上げ内容に一部誤りや不自然な表現が含まれる場合があります。
モノの意味や価値を知るということ
「アフォーダンス」とは1960年代にアメリカの心理学者リチャード・ギブソン氏がモノと人の関係について提唱したひとつの概念です。「アフォーダンス」の語源になっているのは何かを与える、提供するという意味を持つaffordという言葉です。
わたしたちはモノを認識するときに「それが何を自分にアフォード(afford)するものか」という視点を自然と持っていて、それによって周囲にあるモノの意味や価値を認識するという考え方です。
アフォーダンスについて、例えばこのような説明があります。
水は、僕らに対して呼吸作用をアフォードすることはない。水は飲むことをアフォードする。水には流動性があるので、容器に注ぎ入れることをアフォードし、溶解力があるので洗濯や入浴をアフォードする。水の表面は密度の高い大きな動物に対する支えをアフォードすることはない。水は、ぼくらにとっては「喉の渇きをいやす」、「容れ物で運搬する」、「汚れを落とす」、道具なしにはその上を「移動しない」、あるいは道具を利用してその上を「移動する」などのアフォーダンスの集合である。
(引用:佐々木正人「アフォーダンス入門」講談社学術文庫 p73)
水についてわたしたちは、例えば飲んで喉の渇きをいやすというメリットを与えてくれるものだと認識しています。一方で水の中では呼吸はできないというデメリットも知って水を使っています。
もう少し分かりやすくするために例を挙げてみましょう。
今あなたが眺めているPCやスマートフォンは、情報を集めることをあなたにアフォードしています。娯楽もアフォードします。離れている人と会話することをアフォードします。
しかし喉の渇きを癒したり空腹を満たしたりすることはアフォードしない、といった具合です。
そして実際、街中では道ゆく人に快適性を与えるための空間デザインにも利用されています。

(出所:千葉大学「身体活動を促すまちづくりデザインガイド」)
https://hpd.cpms.chiba-u.jp/activeguide/keyword/135
上の写真はシドニー市内の光景です。
噴水が設けられている公園は子どもたちに水に親しむことやそこで涼むことをアフォードしますが、そこに入って実際に水に触れることをアフォードしない、そんな場所も多いものです。
しかし上のような配置の石があると、子どもたちはその地面が水場に入ることをアフォードすると認識し、水遊びをしたくなるという仕掛けです。
もうひとつは下のようなデザインです。

(出所:千葉大学「身体活動を促すまちづくりデザインガイド」)
https://hpd.cpms.chiba-u.jp/activeguide/keyword/135
通常私たちは、植物防護柵を「座ることをアフォードするもの」と認識することはあまりありません。しかしこのような見た目や設計にすることでわたしたちは「この物体は座ることをアフォードしそうだ」と感じ、休憩するという行動を取ることができます。結果、人に快適さをアフォードする街づくりにつながるのです。
オフィスにおけるアフォーダンス
さてこの考え方をオフィスに当てはめて考えてみると、オフィスづくりの新しいヒントが見えてきます。
快適なオフィス作りのためには広い空間や自然の要素を取り入れることやフリーアドレス化で従業員の自由度を高めること、といった様々な工夫がありますが、もっと細やかなところに目が届くのです。
明確な意図を与える
例えば2022年にオフィスをリニューアルした電通デジタルの場合、従業員からはこのような意見が挙がっています。
固定アドレスの際は、空間を自分向けにアレンジするという使い方をしていました。フリーアドレスになりリニューアルされてからは、デザイン性が高く、用途によって空間を選べて楽しいなと思います。“あるけど知らない”という機能や環境はもっとありそうなので、その点は課題に感じます。
(引用:電通デジタルEXPERIENCE+「オフィス体験に見る、リアル空間のアフォーダンス」)
https://xp-plus.jp/reports/article_35/
固定アドレスとフリーアドレスがアフォードするものはそれぞれ異なり、どちらかだけが正解とは言いにくいということです。
また「あるけど知らない機能や環境」というのは無くしたいものです。
例えばどれだけ洗練されておしゃれなオフィス作りをしても、わたしたちはドアノブがなければその壁が違う部屋に入ることをアフォードするものだとは認識しません。結果、使われない場所になってしまいます。
空間やモノに明確な意図を込めて従業員がそれを認識できるようにする、これがオフィス設計におけるアフォーダンスです。
立場によって変わるアフォーダンス
ただ、同じモノであっても使う人の立場によって何をアフォードするかは異なります。
喫煙室が喫煙者と非喫煙者にアフォードするものが違うというのがとても分かりやすい話ですが、例えば高層階にある会議室は経営層にとっては重要な来客をもてなすのに適していても、一般従業員には移動の不便さを与えているだけの存在です。
柔軟性も忘れずに
このように、会社が自らのコンセプトや主義主張の強すぎる空間作りをして従業員に押し付けるのではなく、従業員を中心、主人公にして設計を進めていくのがアフォーダンスの視点から考えたオフィス作りです。
用途を明確化することで従業員が迷うことなく業務ごとに場所を選べるオフィスは利便性が高いものです。
ただ、用途の明確化のしすぎもまた良いものではなさそうです。先に紹介した電通デジタルの場合、「空間の意図が明確だといいなと思いつつ、完全に明示してしまうと新しい使い方が生まれなくなってしまう」という声もあります。*1
従業員が自ら既存の空間に新しいアフォーダンスを見出していくことで、アフォーダンスを意識したオフィスはさらに価値を増していくことでしょう。
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参考資料
*1
電通デジタルEXPERIENCE+「オフィス体験に見る、リアル空間のアフォーダンス」
https://xp-plus.jp/reports/article_35/
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