仕事の不安から自分を守ろう 副業・副収入がもたらす意外なメリットとは

「もう仕事を辞めたい」と思ったことがある人は少なくないでしょう。

一方で、転職すればすべてが解決するとも限りません。新しい人間関係、新しい業務、新しい環境。そこにもまた別の不安があります。

筆者自身、そうした不安の中で始めたのが副業でした。副業のメリットは収入だけではありません。今回は、副業が仕事の不安をやわらげた経験をお話しします。

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「会社を辞めたい」と思っても、すぐには動けない

「もう、この会社を辞めたい」

そう思ったことはないでしょうか。筆者にも、過去に会社を辞めたいと思っていた時期がありました。理由は、同じ部署に非常に苦手な人がいたからです。

仕事内容そのものが嫌いだったわけではありません。会社のすべてが嫌だったわけでもありません。

ただ、その人と同じ空間にいること、その人とやり取りをしなければならないことが、毎日の大きなストレスになっていたのです。朝、出勤前にその人の顔を思い浮かべるだけで、気持ちが重くなることもありましたし、一時期は、メールに書かれた名前さえ見るのが嫌になるほどでした。

それでも、すぐに転職しようとは思えませんでした。

なぜなら、転職した先でまた一から人間関係を築くことが怖かったからです。新しい職場に行けば、当然ながら新しい上司や同僚、お客様との関係が始まります。今の職場で人間関係に悩んでいるのに、次の職場でうまくやっていける保証はありません。

また、新しい仕事を覚えられるのかという不安もありました。

このように、「辞めたいのに辞めるのが怖い」というジレンマを抱えている人は、決して少なくないのではないでしょうか。

副業を始めて変わったのは、収入だけではなかった

仕事を辞めたいと思っていた当時、筆者は転職サイトに登録していました。

求人を眺めながら、「今の環境を変えるなら転職しかないだろうな」と考えていたからです。

しかし、実際に応募するところまでは踏み出せませんでした。

新しい職場で人間関係を一から築けるのか?

新しい仕事に馴染めるのか?

そもそも自分に転職できるだけの力があるのか?

考えれば考えるほど不安が大きくなり、求人を見ては閉じる、ということを繰り返していました。

そんなときに知ったのが、クラウドソーシングという働き方です。

もちろん、最初からしっかり稼げるとは思っていませんでした。

それでも、会社を辞める前から少しでも収入の基盤をつくっておけば、今より安心できるかもしれないと思い、クラウドソーシングで案件に応募したことが、副業の第一歩でした。

副業の一番わかりやすいメリットは、収入が増えることです。

実際、多くの人にとって、副業を始めるきっかけは「もっと収入を増やしたい」という思いではないでしょうか。

労働政策研究・研修機構の調査でも、副業する理由としてもっとも多かったのは「収入を増やしたいから」で54.5%でした。次いで、「1つの仕事だけでは収入が少なくて、生活自体ができないから」が38.2%となっています(表1)。*1

表1:副業する理由 
出所)独立行政法人 労働政策研究・研修機構「調査シリーズNo.245『副業者の就労に関する調査』」
https://www.jil.go.jp/institute/research/2024/245.html

筆者自身も、副業によって収入が増えたことは大きな安心材料になりました。

会社の給料だけに生活のすべてを預けている状態だと、職場で起きる出来事が必要以上に重く感じられます。人間関係の悩みや職場で評価されないことなどが、自分の生活や将来を大きく左右するように思えてしまうのです。 

しかし、副業による収入が少しでもあると、「仮にこの会社を辞めることになっても、完全にゼロになるわけではない」と思えるようになりました。

さらに、筆者にとって予想外だったのは、収入以外の変化です。

副業を通じて、クライアントから直接「ありがとうございます」「助かりました」と言ってもらえる機会が増えました。自分が関わった仕事について、「エンドクライアントにとても喜ばれました」と伝えてもらえたこともあります。

その言葉は、筆者にとって大きな励みになりました。当時の職場では、褒められる機会はあまり多くなかったため、副業で受け取った感謝の言葉は、とても新鮮だったのです。

会社の外にもう一つの居場所や役割があることで、「ここがすべてではない」と受け止められるようになりました。嫌なことがあっても、「別の場所では評価してくれる人がいる」と思えるようになったことが、一番の収穫でした。 

筆者にとって副業は、単にお金を増やすための手段ではなく、会社以外の場所で自分の価値を確かめられる機会でもあったのです。

企業にとっても、社員の不安を減らす視点が必要ではないか

企業側から見ると、従業員の副業に対して不安を感じることもあるかもしれません。

「副業を始めたということは、会社を辞めたいのではないか」
「本業への集中力が下がるのではないか」

このように、副業を離職の前兆のように捉えてしまうケースもあるでしょう。

しかし、副業をしている人が、必ずしも会社を辞めたいと思っているとは限りません。

実際に、副業・兼業を認める企業も珍しくなくなっています。

東京商工リサーチが2025年12月に実施した企業向けアンケート調査では、「積極的に認めている」と「条件付きで認めている」を合わせて、全企業の56.4%が兼業・副業を認めていると回答しました。

注目したいのは、副業を認める理由です。

同調査では、兼業・副業を認める理由として「従業員の収入向上に寄与するため」が71.8%で最多でした。一方で、「兼業・副業で得られるスキル・経験の本業への還元を期待」も27.3%ありました(表2)。*2

表2:兼業・副業を認める理由  
出所)東京商工リサーチ TSRデータインサイト「『兼業・副業』 容認は 中小企業 58%、大企業 33% 中小企業は賃金補填の思惑も、年齢は 40代が最多」
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202255_1527.html

たとえば筆者は、資料のデザインやAIの活用方法について、副業を通じて実践的に学ぶ機会が増えました。

両方とも、本業に活かせるスキルです。

社外で得た知識や経験が、結果として会社の仕事に還元される可能性を考えると、副業を一律に会社から心が離れているサインと見るのは、少しもったいない気がします。

会社の中でも外でも、自分の価値を育てていけるような余白がある職場ほど、社員は不安に押しつぶされずに働き続けられるのではないでしょうか。

副業は、企業にとって警戒すべきものではなく、社員の不安や成長意欲を知るきっかけにもなります。

社員を囲い込むのではなく、会社の外で得た経験も含めて、その人の力として活かしていく。これからの企業には、そのような視点も求められているのかもしれません。

仕事の不安をゼロにできなくても、逃げ道はつくれる

仕事の不安を完全になくすことは、簡単ではありません。

人間関係の悩み、将来への不安、収入への不安、自分の能力への不安など、働いている限り、何かしらの不安と向き合う場面はあると思います。

ただ、不安があること自体は、決して悪いことではありません。

不安があるからこそ、今の働き方を見直したり、自分にとって大切なものを考えたり、新しい選択肢を探したりするきっかけにもなります。

筆者にとって、副業はまさにそのような存在でした。

もちろん、副業の大きなメリットは収入が増えることです。金銭的な余裕は、心の余裕にもつながります。

しかし、筆者にとって副業のメリットはそれだけではありませんでした。

本業以外でも誰かの役に立てるという実感が、仕事の不安に飲み込まれそうになった筆者を支えてくれました。

副業は、必ずしも独立や転職を目指すためだけのものではありません。


「今の環境がすべてではない」と思える場所を持つこともまた、自分を守るための大切な方法ではないでしょうか。

この記事を書いた人

田中ぱん

学生のころから地球環境や温暖化に興味があり、大学では環境科学を学ぶ。現在は、環境や農業に関する記事を中心に執筆。臭気判定士。におい・かおり環境協会会員。

参考資料

*1
出所)独立行政法人 労働政策研究・研修機構「調査シリーズNo.245『副業者の就労に関する調査』」
https://www.jil.go.jp/institute/research/2024/245.html

*2
出所)東京商工リサーチ TSRデータインサイト 「『兼業・副業』 容認は 中小企業 58%、大企業 33% 中小企業は賃金補填の思惑も、年齢は 40代が最多」
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202255_1527.html


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