大林組九州支店の移転に込めた想い─社員とつくる“納得感あるオフィスづくり”の舞台裏

2024年から約1年半をかけた、株式会社大林組 九州支店様のオフィス移転プロジェクト。20名近くのメンバーが社員の声を基に議論を重ねながら、設計・内装・備品・ICTまでを一気通貫で刷新しました。

プロジェクトの核に据えられたのは、誰もが納得できる職場づくり。
そして合言葉は「〇JOY 〇〇〇FFICE(エンジョイオフィス)」。

本記事では、その構想から完成、そして移転後の変化に至るまでのプロセスを関係者の証言をもとに紐解いていきます。

株式会社大林組 九州支店

事業内容:国内外建設工事、地域開発・都市開発・その他建設に関する事業他所在地:福岡市中央区天神1-14-18
目的:移転
HP:https://www.obayashi.co.jp/

総務部 担当部長 総務課長兼務  吉田 哲朗
総務部 総務課 主任  岡部 純也
総務部 総務課  大石 莉紗
設計本部 九州建築設計部 建築設計第二課 課長 横田 祐介

株式会社ウチダシステムズ 九州法人営業部 課長 伊藤 秀人
株式会社ウチダシステムズ デザイン室  田村 匠
株式会社ウチダシステムズ 九州営業推進部  斉木 悠子(設計)
株式会社ウチダシステムズ 九州営業推進部 権藤 弘(ICT担当)

九州支店の移転背景と、変化の必要性

今回の移転に至った背景を教えてください。

吉田様:もともと九州支店は1970年竣工のビルに入居していました。歴史もあり、古くからの社員にとっては非常に愛着のある場所でした。ただ、やはり古い規格の執務室内やバリアフリーの観点から現在の基準にはそぐわず、特に採用活動や来客対応を考えると、見劣りする面も否めなかったんです。

ー 過去に本社オフィスのリニューアルもお手伝いさせていただきましたが、全国的にも拠点の見直しが進んでいたのでしょうか。

吉田様: はい。本社の品川をはじめ、大阪や北陸、広島なども移転やリニューアルを進めており、九州支店も自然な流れで改革の機運が高まりました。そんな中で、天神に当社が建設するビルがあり、お客様からもお引き合いがあったので、ようやく「ここでやってみよう」と本格的に動き出したのがきっかけです。

ー 採用などの元からあった課題と、会社の機運と、不動産のタイミングが合ってのご移転だったのですね。支店内では、当初どのような反応がありましたか?

吉田様: ベテラン層には「場所にも愛着があるし、正直面倒だな」という空気もありました。一方で若い社員たちは「新しいオフィス、いいな。早くやりたい!」と前向きでしたね。そのギャップをどう埋めていくかが初期段階のテーマでした。

岡部様: 私も、他拠点のリニューアル事例を視察して「自分たちもあんなオフィスをつくりたい」と素直に思えたのが大きかったです。特に名古屋支店の視察で、働き方が変わっていい変化があったという体験談を聞いたことが良い刺激になりました。

ー 他拠点の事例も参考にされたのですね。

岡部様:そうですね。四国はリモートでのヒアリングでしたが、大阪や北陸の現地には視察に行きました。単に移転するだけでなく、働き方やモチベーションの変化も含めて設計していくんだという実感を持てたのが大きかったです。

株式会社大林組 九州支店 総務部 担当部長 総務課長兼務 吉田 哲朗 様

社員の視点で見えてきた課題と本音

ー 実際にプロジェクトを進めていく中で、どのような課題が見えてきましたか?

吉田様: 歴史がある分、不要な物が多く、キャビネットに書類が山のようにありました。荷物を置ける場所があることに甘えて整理整頓が疎かになりがちで、整理してみたら「手元にあるものだけ使っている」といった実態もありました。また、会議に必要な機材やネット環境も煩雑で、使うたびに「○○が繋がらない」など、総務が呼ばれる状況も多かったです。

岡部様: 加えて、旧オフィスは4フロアに分かれていたため、日常的に顔を合わせる機会が少なく、物理的な分断がコミュニケーションの壁になっていました。古いビルなので柱が多かったりしてレイアウトの柔軟性がなく、業務スタイルに合わせた空間づくりが難しかった点も課題です。

横田様:私は本社から来た立場ですが、九州支店ならではの人間関係の近さは感じた一方で、階層構造の効率の悪さにはもったいなさを感じていました。今回の移転で2フロアに集約されたことで、より一体感のあるチームづくりが可能になると期待しています。

ー オフィスの見た目だけでなく、組織や社員の意識にも影響があったのですね。

吉田様: はい。以前から会社全体で「風通しのよい組織風土をつくろう」という声はありました。部門間の壁をなくし、役職や立場に関係なく意見を言い合える関係性が理想でした。今回の移転では、物理的な壁を取り払ったことで、少しずつですがその土台は整ってきたと感じています。

岡部様:“新しいオフィス=変化”に対して、抵抗感や不安を持つ人も当然いました。でも、他拠点の成功事例や、プロジェクトに参加することで「自分たちのオフィスをつくる」という実感が湧き、少しずつ前向きな気持ちに変わっていったように思います。

株式会社大林組 九州支店 総務部 総務課 主任 岡部 純也 様

合意形成とプロジェクト推進のリアル

ー 社員の意見を取り入れながら進めるプロジェクトでは、合意形成の難しさもあったのではないでしょうか。

吉田様: はい。各部門から正副代表を出してもらい、12部門で約20名のプロジェクトチームを編成しました。事務局からの通達や部門ごとの検討事項などを、各代表を通じて自部門に周知してくださいとお願いしていたのですが、「上司にうまく説明できない」と悩むメンバーもいて。そこで、事務局から直接、部門長に進捗の説明や情報共有の場をもつなどしてプロジェクトチームと事務局の両面から情報を周知するようにしました。

岡部様: 現場の声を丁寧に聞く一方で、すべてを拾っていたらプロジェクトが進まなくなる恐れもあります。そこで、例えば6:4で意見が別れたときは、一度事務局で持ち帰ってそれぞれのメリット・デメリットを検討したり、改めてプロジェクトメンバーにヒアリングしたりして事務局で方向性を決めて、プロジェクトチームに落とすということをしていました。どこまで事務局で決めて、どこからチームに委ねるか。私自身もこの強弱のつけ方、判断の仕方についてはとても勉強になりました。ウチダシステムズさんには、他社の事例や一般論を交えた提案をいただけたので、意見が割れた場面でも「確かに」と納得してもらいやすかったです。

ー 他にも大変だったことやお悩みはありましたか?

大石様: ABWの導入に対しても、「袖机が欲しい」「2画面モニターがないと不便」といった声がありました。でも、プロジェクトの最中に個人ロッカーのトライアルを実施するなどの工夫でうまく対応できたと思います。

ー 近年は移転やリニューアルに際し、社員の声を反映する動きが増えていますが、意見が多いぶん調整が難しくなり、プロジェクトの進行が遅れることもあります。御社でもそうしたご苦労があったかと思います。

岡部様: 「どこまで事務局で決めて、どこからチームに委ねるか」の匙加減に迷いながらも、プロジェクト会議の議題と、想定される質問をまとめて事前準備していました。「おそらくこの意見が出るだろう」と見越した上で打ち手を考えていたのも、スムーズに進められた要因だったと思います。

USS田村: 事務局の定例ミーティングをプロジェクト会議の前に必ず行っていましたよね。そこで「どこまでを事務局で決めるか」「何をプロジェクト会議に諮るか」を明確にしていたので、全体として迷いが少なく、判断も早かったと思います。

USS伊藤: 振り返ると、最初に当社のオフィスツアーにご参加いただいたときの参加者が約20名と非常に多かったので、「この人数でうまく意見をまとめられるのか」と少し不安もありました。ですが、始まってみると皆さんがしっかり発言されていて。それに対して事務局の方々が丁寧に理由を添えて応答されているのを見て、私自身も非常に勉強になりました。私たちはご提案する立場ではありましたが、逆に「こうやって合意形成していくのか」と学ばせてもらう機会も多かったです。

株式会社ウチダシステムズ 九州法人営業部 課長 伊藤 秀人

オフィスに宿る設計思想とICTの力

ー 今回のコンセプトは「〇JOY 〇〇〇FFICE(エンジョイオフィス)」だと伺いました。このコンセプトはどのように決まったのでしょうか?

岡部様: 決定は昨年の3月でした。部門を3つのグループに分けて、まずはそれぞれ「どんなオフィスにしたいか」を自由に話してもらう場を設けました。その後、各部門からアイデアを集め、代表者たちが3つのチームに分かれて話し合い、候補となるコンセプト名を出していきました。

大石様:最終的に9案まで絞りました。そこから全員で投票し、上位に残ったのが「えんJOYプロジェクト」と「GO TO OOOFFICE」でした。あるメンバーが「両方を組み合わせたら?」と提案してくれて、「エンジョイ」と「オフィス」を組み合わせて「〇JOY 〇〇〇FFICE(エンジョイオフィス)」が生まれたんです。

ー ワークショップ形式だったのですね。

USS田村: 実は1日で行った集中ワークショップでした。事前に支店長にトップインタビューをしていて、「こういう方向性を求めている」といったキーワードをメンバーに共有した上でワークショップに臨んでいます。その情報を踏まえて、各チームでキーワードを出し合い、最後は全体で発表・投票するという流れでした。
方言を入れるかどうかなどで議論が白熱しましたが、福岡出身の社員だけではないこともあり、最終的には全社員に共通する言葉として「エンジョイオフィス」にまとまりました。

ー その合意形成のスムーズさはとても珍しいですね。その時点で“円(えん)”や“縁(えにし)”といった意味も含まれていたのでしょうか?

大石様: いえ、意味づけは後から加わったものです。でも「楽しいオフィスにしたい」という気持ちは最初から皆の中にあって、それが自然とコンセプトにまとまっていきました。

吉田様: その後、ロゴも作成して可視化したことで、プロジェクトチーム内にさらに愛着が生まれました。そこから「ただのキャッチフレーズでは終わらせない。ちゃんと意味を込めていこう」という流れで、「円」や「縁」、さらには演出の「演」といった多義的な意味づけがされていきました。

ー 横田さんは設計の事務局という立場で関わっていらっしゃいましたが、どのような役割を担い、どのような点に気をつけて進めてこられたのでしょうか。“〇JOY 〇〇〇FFICE(エンジョイオフィス)”のコンセプトがどう設計に反映されたかも伺いたいです。

横田様: 私は主にプランニングに関わる立場でしたが、今回特に印象深かったのは“ジョイループ”という円形の通路レイアウトです。従来あまり見られない形だったので、導入時には多少のハレーションが起きるかもしれないという懸念もありました。

ただ、ワーキンググループ内で「〇JOY 〇〇〇FFICE(エンジョイオフィス)」というキーワードが時間をかけて共有されていたこともあり、方向性がぶれずに進められたと思います。「円(えん)」という形と「縁(えにし)」という意味を重ね合わせたこの設計が、結果として多くの共感を得られたのではないかと感じています。社員が自然と集まるような“にぎわい”や、ちょっとした工夫に楽しさを感じてもらえるようなデザインを意識しました。

株式会社大林組 設計本部 九州建築設計部 建築設計第二課 課長 横田 祐介 様

ー オフィス内のこだわりポイントについて教えてください。

横田様: 執務スペースは、意識的にデスク同士の幅を広く取りました。これが実際に使ってみると非常に快適で、窮屈さを感じにくく、リラックスして業務に取り組めています。個人的には実用的なスペースである執務エリアにこそ、快適性が求められると思っていたので、この広さはとても良かったです。

USS田村: 最初のプラン作成段階で横田さんが示してくださったシミュレーションから、既にゆとりのあるデザインになっていました。私たちもその意図を活かして計画を進めていました。

ー エントランスのデザインについても教えてください。

横田様: 限られた奥行きの中で、エントランス・ロビー・打ち合わせスペースを全て収める必要があり、かなり工夫が求められました。最終的には、突き当たりの壁を動かしてスペースを確保し、また“縁”や“繋がり”といったコンセプトを象徴するような大川組子を取り入れました。これは、九州林友会様からのご提案もきっかけとなり、多くの関係者の思いを形にしたものです。

大林組の技術力と未来を表現したエントランス

ー 事務局としてこだわったポイントはありますか?

大石様: カフェコーナーの設備選定には特に時間をかけました。コストとのバランスを考えつつ、休憩時間が充実するように複数社の機器を比較検討しました。今では多くの社員が活用してくれています。

吉田様: 机上のコンセントにも工夫を凝らしました。複数のサンプルを取り寄せて比較検討し、最終的には使い勝手の良いキューブ型を採用しました。細かいことですが、毎日の使い勝手を左右するポイントなので、こだわりましたね。

USS斉木: コードの長さや配置など、実際の運用に合わせた検証も行いました。設置した後に「使いにくい」とならないように、できる限り丁寧に設計しています。

ー ICT面での刷新について教えてください。

吉田様: 最初は既存のシステムを少しアップグレードする程度の予定でしたが、当社のDX本部からの紹介で、グループ会社が代理店を務める最新のシステムを知り、思い切って導入しました。結果として、会議室予約や無人受付など、利便性が大きく向上しました。

USS権藤: 配線やネットワーク周りについては、極力表に出さないよう丁寧に処理し、見た目にもすっきりとした仕上がりになるよう配慮しました。こうした細部へのこだわりは、他のお客様先でも重視しているポイントであり、今回も徹底して対応しました。また、配線の見え方や整理方法についても随所で工夫を凝らし、プロフェッショナルとしての品質を追求しました。

岡部様: 製品選定の際には複数の提案をいただき、メーカーの同行や実機の確認もできたので、納得して選ぶことができました。今はどの設備も問題なく運用できており、権藤さんには本当に助けていただきました。

吉田様: 当初は旧オフィスのアナログな予約方法に課題がありましたが、今はICTの力でトラブルもなく、快適に使えています。

株式会社ウチダシステムズ 九州営業推進部 権藤 弘

ー ウチダシステムズの設計メンバーとして、工夫した点や進め方についても教えてください。

USS田村: はい、私はほとんどオンラインでの参加だったため、現地の斉木と役割を分担していました。私が特に意識していたのは、資料の作り方です。オンラインでも誰にでも伝わるよう、視覚的にわかりやすい資料づくりを心がけていました。また、他社事例や一般論、品川本社の事例も織り交ぜることで、プロジェクトメンバーが「なるほど、こういう選択肢もあるんだ」と納得できるように工夫しました。

USS斉木: 私は現地に常駐していたので、田村が拾いきれない現場の空気や社員の感情的な反応を受け止めるように努めました。大石さんと密に連携して、課題の整理や段取りの確認などを通して、現場との橋渡し役を担おうと思っていました。

USS田村: 斉木には何度も現地を確認してもらいました。「前にも見たかもしれないけど、もう一度確認してほしい」とお願いすることもありました。

株式会社ウチダシステムズ デザイン室 田村 匠

ー 実際に新しいオフィスで業務を開始されてから、社員の皆さんの反応はいかがですか?

吉田様: 全体としては明るい雰囲気になったと思います。新しい環境でのモチベーションも高く、出社率が上がったように感じます。

岡部様: シンプルに「綺麗なオフィスで仕事ができるのが嬉しい」という声が多いです。集中できる環境が整っていて、在宅よりオフィスの方がいいという社員もいます。

大石様: 席数が足りないと言われていましたが、今では打ち合わせスペースも活用されていて、思っていた以上に柔軟に対応できていると思います。

株式会社大林組 九州支店 総務部 総務課 大石 莉紗 様

ー ABWへの適応状況はいかがでしょうか?

岡部様: 固定席からABWに移行したことによる不安もありましたが、概ね8割以上の社員がスムーズに適応している印象です。新たなコミュニケーションが生まれる場面もあり、良い効果が出ています。

横田様: 窓際の人気など偏りが出るかと思っていましたが、意外とバランスよく色んな席が使われています。旧オフィスでの試行と比べても、より本格的なABWが実践できていると感じています。

吉田様: 管理職も含めて、柔軟な働き方を率先して実践している姿勢が、他の社員にも良い影響を与えていると思います。

移転後の手応えとこれからの展望

ー 今後の課題や展望について教えてください。

吉田様: 今回ウチダシステムズさんと一緒に仕事ができてよかったと感じています。やはり、我々だけではどのタイミングで何をすればよいのか判断が難しかったと思います。そこをリードしてもらえたのが大きかったです。
今後は、現在のプロジェクトチームを改善チームとして継続的に活動させ、月1回程度のミーティングで状況を確認しながら、オフィス運用をブラッシュアップしていく予定です。

岡部様: 専門知見のある方々が多角的に関与してくださったことで、非常に心強く、結果的に大きな成功につながったと思います。今後は移転をゴールとせず、アクティブスペースのさらなる活用や働き方の前向きな改善提案を、支店の皆と一緒に議論しながら進めていきたいです。

大石様: 私自身も田村さんや後藤さんに日々相談させていただき、素早いレスポンスに何度も助けられました。今後の課題としては、座席予約システムの運用浸透や、2画面モニターの可動化、電子掲示板のさらなる活用などを検討しています。定期的なミーティングで改善していきたいです。

横田様: 設計支援を通じて、社員の納得感を大切にするプロセスの素晴らしさを実感しました。ジョイループにはさらなるポテンシャルがあると思うので、今後も皆さんと一緒により良い活用方法を模索していけたらと思います。

USS伊藤: 約1年半に渡るお付き合い、ありがとうございました。立派なオフィスが完成し一段落しましたが、これがスタート地点だと思っています。今後も、社員の皆さんが気持ちよく、楽しく働ける環境づくりを共に続けていけたらと願っています。ぜひ、また皆さんとご一緒できる機会を楽しみにしています。

様々な“こと”を共有するコミュニケーションスペース

この記事を書いた人

そしきLab編集部

ウチダシステムズのスタッフを中心に、組織作りや場づくりについて議論を交わしています。業務の中で実際に役に立ったことなどを紹介していきます。

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