【2026年】改正が見込まれる健康増進法 議論の行方と企業が遵守すべき義務を弁護士が解説

2020年4月に、幅広い店舗・施設等の運営者に対して受動喫煙防止義務を課す健康増進法改正が施行されました。
上記の健康増進法改正については、その施行から5年を経過した段階で検討・見直しを行うものとされています。すでに改正法の施行後5年が経過しているところ、現在では「受動喫煙対策専門委員会」において議論が行われている状況です。

健康増進法による規制は、幅広い店舗・施設等の運営者に影響します。健康増進法改正に関する議論の状況をチェックしておきましょう。

本記事では健康増進法について、現行規制の内容、受動喫煙対策専門委員会における検討状況を踏まえた今後の規制動向の見通しなどを解説します。

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【2020年4月~】健康増進法による受動喫煙防止規制の概要

2020年4月1日から施行された改正健康増進法により、受動喫煙(=他の人が吸っているたばこの煙に晒されること)を防止するための規制が導入されました。
それ以前から学校・病院・児童福祉施設・行政機関等に対しては受動喫煙防止措置が義務付けられていましたが、2020年4月からは幅広い事業者に対象が拡大されました。

現行の健康増進法では、受動喫煙の防止が「多数の者が利用する施設」(=特定施設)の管理者等に義務付けられています。遵守すべき規制の内容は、特定施設の類型に応じて次のとおりです。

第一種施設(学校・病院・児童福祉施設・行政機関の庁舎など)|原則として敷地内禁煙

「第一種施設」とは、多数の者が利用する施設のうち、次のいずれかに当たるものです(健康増進法28条5号)。

(a)学校、病院、児童福祉施設その他の受動喫煙により健康を損なうおそれが高い者が主として利用する施設として政令で定めるもの

(b)国および地方公共団体の行政機関の庁舎(行政機関がその事務を処理するために使用する施設に限る)

第一種施設は、特定屋外喫煙場所および喫煙関連研究場所を除き敷地内禁煙とされています。

※特定屋外喫煙場所:、受動喫煙を防止するために必要な措置がとられた屋外の喫煙場所
※喫煙関連研究場所:たばこに関する研究開発(喫煙を伴うものに限る)の用に供する場所

喫煙目的施設(シガーバーやスナックなど)|喫煙目的室では喫煙可

「喫煙目的施設」とは、多数の者が利用する施設のうち、次のいずれかに当たるものです(健康増進法28条7号、健康増進法施行令4条)。

(a)施設の屋内部分の全部が、専ら喫煙をする場所であること

(b)次の要件をいずれも満たすこと
・利用者に対面でたばこを販売し、施設の屋内において喫煙場所を提供することを主たる目的としている
・設備を設けて客に飲食をさせる営業を行っているが、通常主食と認められる食事を主として提供するものではない

(c)利用者に対面でたばこを販売し、または喫煙の用に供するための器具を販売し、施設の屋内において喫煙場所を提供することを主たる目的としていること(設備を設けて客に飲食をさせる営業を行うものを除く)

たとえばシガーバーやスナック、たばこ販売店などが喫煙目的施設に当たります。

喫煙目的施設では「喫煙目的室」を設けることができます(健康増進法35条)。喫煙目的室内では喫煙ができ、同時に飲食をすることも可能です。喫煙目的室以外の屋内場所では、喫煙してはなりません。

なお、屋内場所の全部を喫煙目的室とすることも可能です。

喫煙目的室は、その構造および設備が、たばこの煙の流出を防止するための技術的基準に適合していなければなりません。

第二種施設(通常の飲食店など)|喫煙専用室等を除き、屋内禁煙

「第二種施設」とは、多数の者が利用する施設のうち、第一種施設にも喫煙目的施設にも当たらないものです(健康増進法28条6号)。たとえば、ほとんどの飲食店は第二種施設に当たります。

第二種施設では、喫煙専用室および喫煙関連研究場所を除き、屋内での喫煙が禁止されています。
「喫煙専用室」は、屋内に設置される喫煙ブースなどが想定されています。その構造および設備が、たばこの煙の流出を防止するための技術的基準に適合していなければなりません。

喫煙目的施設の喫煙目的室とは異なり、第二種施設の喫煙専用室では、飲食等をしながら喫煙をすることはできません。

経過措置|加熱式たばこ・既存飲食店の喫煙可能室

加熱式たばこについては、改正時において受動喫煙による長期的な健康影響を予測することが困難でした。そのため当面の間、喫煙と飲食等を行うことができる「加熱式たばこ専用室」の設置が認められています。

また、次の要件をすべて満たす飲食店(=既存特定飲食提供施設)については、飲食等をしながら喫煙ができる「喫煙可能室」の設置が認められています。

(a)2020年4月1日時点で営業している

(b)資本金または出資の総額が5000万円以下

(c)客席面積が100平方メートル以下

喫煙可能室には、20歳未満の者を立ち入らせてはなりません。店舗の全部を喫煙可能室とすることもできますが、その場合は20歳未満の者は入店不可となります。

受動喫煙防止規制によって得られた成果と課題*1

受動喫煙対策専門委員会の議事録および資料によれば、改正健康増進法による受動喫煙防止規制によって一定の成果が上がったことが指摘されています。
たとえば厚生労働省が行った調査によれば、飲食店において過去1か月間で受動喫煙を経験した人の割合は、2019年では29.6%だったのに対し、2022年では14.8%、2023年では16%と大幅に減少したとのことです。

その一方で、現行の受動喫煙防止規制は複雑であり、その内容を正しく理解していない事業者が多いという問題点が指摘されています。

(例)
・喫煙目的施設において、本来は認められていない主食の提供を行っている。
・掲示すべき標識が掲示されていない。
・喫煙可能室について、20歳未満の立ち入り制限が徹底されていない。
など

また、加熱式たばこや喫煙可能室などの経過措置については、その妥当性について再検証を求める意見が述べられています。

健康増進法の検討・見直しに関する今後の展望

現行の健康増進法に基づく受動喫煙防止規制は一定の成果を上げた面があるものの、制度の複雑性ゆえに周知・理解が不十分である点や、経過措置の妥当性などについて問題が指摘されています。

これらの指摘を踏まえて、今後は経過措置の見直しや段階的廃止などを含めて、制度の整理・明確化の動きが進むものと考えられます。加熱式たばこについても、近年における科学的知見の蓄積を踏まえて、規制の在り方が見直される可能性が高いでしょう。

飲食店などの事業者においては、今後も健康増進法の改正動向を注視しつつ、営業形態に応じた受動喫煙防止措置を講じることが求められます。

この記事を書いた人

阿部 由羅

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
https://abeyura.com/
https://x.com/abeyuralaw

参考資料

*1参考)厚生労働省「受動喫煙対策専門委員会」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-kousei_127752_00008.html


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