定年後再雇用制度が「期待できないおじさん」を量産している?

近年「黒字リストラ」という言葉が流行り始めています。

業績は黒字でありながらも、ミドル・シニア層に希望退職を募るという現象で、大企業に多く見られるようになりました。

企業業績が限界を迎えリストラに踏み切る、そんな光景なら皆さんご存知かと思いますが、企業が黒字業績の中で希望退職に踏み切るのはなぜでしょう。

そこには「期待できないおじさん」の存在がありそうです。

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「黒字リストラ」の現実

「業績が悪化しているのでやむを得ずリストラを実行する」そんなことはこれまでも多く見られました。これを「後ろ向きなリストラ」だとすれば、現在進んでいるのは業績が黒字であるにもかかわらず人員整理をする「前向きなリストラ」と言えるでしょう。

パナソニックホールディングスは2027年3月期までに、1万人の人員削減を実施すると発表しました。*1
また、みずほフィナンシャルホールディングスは今後10年で、約1万5,000人の事務職員のうち5,000人を削減するとしています。*2
その分の資金をAIの本格導入に充てるともしています。

また、特定の年代を希望退職の対象とする企業もあります。*3
三菱電機の対象年齢は53歳以上、三菱ケミカルは50歳以上です。明治ホールディングスも50歳以上が対象で、募集人数は定めていません。

これらの企業だけでなく多くの大企業でリストラが進み、2025年は合計で1万7,875人(前年比78.5%増)に達しています。

出所:東京商工リサーチ「2025年「早期・希望退職募集」は 1万7,875人 、リーマン・ショック以降で3番目の高水準に」
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202373_1527.html

しかも早期・希望退職募集が判明した企業の43社のうち、東証プライム上場企業が33社、全体の約8割にのぼっています。また、この43社のうち約8割が「黒字リストラ」状態です。*4
人数でいけばプライム上場企業だけで1万7,245人の募集人数です。大企業ほど黒字リストラが進められています。

大量リストラの裏に「期待できないおじさん」

パーソル総合研究所の調査によれば、実は約3割の企業が50〜60代の社員を「やや過剰」と感じています。役職定年を迎えて以降の年頃でしょうか。

出所:パーソル総合研究所「企業の60代社員の活用施策に関する調査」
https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/60s-worker2.pdf p13

正社員全体では不足を感じているにもかかわらず、50代〜60代の社員は「過剰」と感じています。

なぜおじさんたちを過剰と感じるのか

その大きな理由は、「職務」よりも「モチベーションの低下」「生産性」にあるといいます。

50代後半・60代の社員の課題
出所:パーソル総合研究所「企業の60代社員の活用施策に関する調査」
https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/60s-worker2.pdf p18

「モチベーションの低下」や「生産性に見合わない処遇水準の高さ」が「生産性の低さ」を際立たせていると考えられます。

さらに厳しい現実があります。

年功序列がおじさんたちの過剰感を強めている

まず、多くの企業で「高度専門職」の需要、そして不足感が増しています。
そのような企業では、50〜60代の正社員は高度専門職として期待されにくい、という事実もあるのです。

出所:パーソル総合研究所「企業の60代社員の活用施策に関する調査」
https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/60s-worker2.pdf p22

実際、年功的給与体系の度合いが強い企業ほど、50〜60代の過剰感を強めています。*5

誤解を恐れずに言ってしまえば「今使えるスキルを持たないおじさんは、長く社内にいても今後への期待が持てず、コストがかかるだけの存在」というわけです。
もっと言えば、その分デジタルやAIに投資した方がいい、とも捉えられていることでしょう。

定年後再雇用の実態

では、それより上の世代にあたる定年後再雇用について見ていきましょう。こちらは2025年4月以降、なんらかの形で65歳まで働けるような措置を講じなければならない、とされました。しかし企業はこのような対応を取っています。

まず約6割の企業が定年を60歳としたままで、また、約半数の企業が定年後再雇用の上限を65歳としています。*6

さらに厚生労働省は70歳まで働ける社会を意識していますが、実際には約半数の企業が「一定の基準を満たす者のみ対応する」としています。

出所:パーソル総合研究所「企業の60代社員の活用施策に関する調査」
https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/60s-worker2.pdf p26

「期待できないおじさん」の延長にあると考えられます。なお、70歳までの就業機会の確保の条件は、

  1. 本人の就業意欲(68.9%)
  2. 人事評価・成績(68.5%)
  3. 健康状態(61.9%)
  4. 担当業務・役割(職務のニーズの有無など)(52.4%)

となっています。

年功序列的給与システムにかまけて、現役時代をのんべんだらりんと過ごしていたおじさんはいらない、ということです。また、今必要な職務とミスマッチするおじさんも不要、という厳しい見方です。

学び直しは遅くても50代から、若手の下で働きながら学ぶ勇気を

「令和の大リストラ」の時に、こんな話を聞いたことがあります。

長年社内にいて、「あなたの強みはなんですか?」と聞いたところ、管理職であったこと以外にないおじさんたちが実に多いということです。これは社外に出るとなんの力にもなりません。

特にテクノロジー分野に関しては、「最近のことはようわからん」とならずに、自らニュースをチェックし、興味があれば実行し、場合によっては若い管理職から学ぶ姿勢を抵抗なく取れることが重要です。時折見られる「新しもの好きおじさん」こそ会話が通じるありがたい存在です。

年功的給与体系はあなたの努力の賜物ではなく、単なる会社の制度に乗っかっているだけということを忘れないでください。「この分野なら個人事業主にもなれそうだ」とすら思える強みを早く手に入れることが重要です。

この記事を書いた人

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後TBSに入社、主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として国内外の各種市場、産業など幅広く担当し、アジア、欧米でも取材活動にあたる。その後人材開発などにも携わりフリー。取材経験や各種統計の分析を元に各種メディア、経済誌・専門紙に寄稿。趣味はサックス演奏と野球観戦。
X(旧Twitter):清水 沙矢香 FaceBook:清水 沙矢香

【参考資料】

*1
日経ビジネス「黒字リストラとは? AIも影響、業績好調でも戦略的人員削減の波」
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00081/110500889/

*2
日本経済新聞「みずほFG、10年で事務職を最大5000人削減 AI活用で他部門に再配置」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB26C000W6A220C2000000/

*3
東京商工リサーチ「上場の早期・希望退職募集41社 約8割がプライム 明治HDやオリンパスが実施発表、黒字リストラが恒常化」
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201999_1527.html

*4
東京商工リサーチ「2025年「早期・希望退職募集」は 1万7,875人 、リーマン・ショック以降で3番目の高水準に」
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202373_1527.html

*5
パーソル総合研究所「企業の60代社員の活用施策に関する調査」
https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/60s-worker2.pdf p23

*6
パーソル総合研究所「企業の60代社員の活用施策に関する調査」
https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/60s-worker2.pdf p25


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そしきLab編集部

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