創立50周年に向けた校舎リノベーション。その第一歩となった備品調査がもたらした“見える化”の価値

創立50周年という大きな節目を迎える学校法人智辯学園 智辯学園和歌山中学高等学校校舎リノベーションを進めるなかで、計画の前提となったのが「今ある備品をどう把握し、どう活用するか」という課題でした。

長年にわたり使い続けられている机や椅子、収納棚などの備品は、教育活動を支える重要な資産です。しかし、その数量や状態を正確に把握することは容易ではありません。

今回は、創立50周年に向けた校舎リノベーション計画に先立つ「既存備品調査サービス」を活用した経緯、そして調査結果が今後の施設運営にもたらす価値についてお話を伺いました。

学校法人智辯学園 智辯学園和歌山中学高等学校

高校教頭 兼 入試広報部長 栗山 一平 様
事務長           倉本 健太 様

事業内容:私立の併設型中高一貫教育校
所在地:和歌山県和歌山市冬野2066-1
実施内容:既存備品調査サービス
HP:https://www.chiben.ac.jp/wakayama/

株式会社ウチダシステムズ
大阪公共営業部 部長  李勝熙
大阪公共営業部 営業課 小山誠人
大阪公共営業部 営業課 林祐介

 創立50周年に向けて始まった校舎リノベーション

Point
  • 創立50周年に向け、「交流と体験」をコンセプトにした校舎リノベーションを推進
  • 改修計画を進める中で、備品の数量や状態を把握できていないという課題が顕在化
  • 備品調査によって校内資産を可視化し、校舎改修だけでなく今後の施設運営・備品管理の基盤を構築

栗山様:本校では2028年に創立50周年という大きな節目を迎えます。その節目に向けて、記念式典や記念誌の制作だけではなく、教育内容の見直しや学習環境の整備を含めたさまざまな取り組みが検討されてきました。その大きな柱の一つが、今回の校舎改修計画です。

当初は校舎を一度取り壊し、更地にして建て替える案もありました。ただ、近年は資材価格の高騰もあり、建設コストは大きく上昇しています。そうした状況の中で改めて専門業者に校舎の状態を確認していただいたところ、建物の躯体自体は非常に堅牢で、今後も長く活用できるという診断結果でした。

「使えるものは使う」。
これは学園経営層からも示されていた方針です。

学校運営においては、保護者の皆さまからお預かりしている大切な資金をどのように活用するかが常に問われます。だからこそ、単純にすべてを新しくするのではなく、活かせるものは活かしながら、子どもたちにとってより良い教育環境を整備することを優先したいと考えました。
その結果、建て替えではなく「改修」という形でプロジェクトを進めることになったのです。

栗山様:実は突然始まった話ではありません。智辯学園には奈良県五條市に智辯学園中学校・高等学校がありますが、奈良校は和歌山校より先に開校しており、すでに50周年を迎えています。その際、校舎は全面的に改築され、新しい校舎へと生まれ変わりました。

そのため学園内では以前から、「次は和歌山校をどうするのか」という議論が続いていました。節目ごとに構想が話し合われ、少しずつ具体化されながら、ようやく形として見えてきたというのが実際のところです。

栗山様:単に校舎をきれいにすることではありません。今回の改修では、今の教育だけでなく、10年後、20年後の教育も見据えながら環境を整えていきたいと考えています。

子どもたちにとって本当に必要な学びの環境とは何か。これからの教育に求められる機能とは何か。そうした視点で校舎全体を見直しています。
見た目を新しくすることが目的ではなく、教育活動そのものをより充実させることが目的です。今の教育に必要な学びを提供できる環境を整えたい。その思いが今回の計画の根底にあります。

高校教頭 兼 入試広報部長 栗山 一平 様

コンセプトは「交流と体験」

栗山様:大きなコンセプトとして掲げているのが、「交流」と「体験」です。
まず交流についてですが、現在は中学校と高校で職員室が分かれています。そのため、何か打ち合わせをしようとすると、まず相手の予定を確認して、場所を確保してという手順が必要になります。

例えば、中学校の教員と高校の教員が話をしたい場合、一方の職員室へ移動しなければなりません。電話やTeamsで予定を調整し、ようやく時間を決めても、今度は会議スペースが空いていないこともあります。
「ここは埋まっています」「では別の場所で」といったやり取りが発生し、ちょっとした打ち合わせでも会議の設定に思った以上に時間や労力がかかっていました。

そこで今回の改修では、中学・高校の教員が同じフロアで働ける環境を整備しようと考えています。教員同士がもっと気軽にコミュニケーションを取れるようになれば、打ち合わせのための調整コストも減りますし、日常的な情報共有もしやすくなります。
教育活動をより良くしていくためには、まず教員同士の交流が活発であることが大切だと考えています。それが結果的に子供達の成長につながるわけです。

栗山様:そうですね。新しい職員室は校舎の中心に配置する計画です。どの場所からでも生徒がアクセスしやすくなるので、生徒と先生の距離も今まで以上に近くなると思っています。

また、最近の学校施設では、用途を固定した部屋だけではなく、誰でも気軽に立ち寄れるようなコモンズスペース*が注目されています。本校でも、特定の目的がなくても自然と人が集まり、会話が生まれるような場所をつくりたいと考えています。

例えば、大学のキャンパスのように、昼休みに集まって食事をしたり、友人同士で話をしたり、生徒と先生が立ち話をしたりするような空間です。
本校は自然に恵まれた環境にありますので、屋外空間も活用しながら、人と人とのつながりが生まれる場を増やしていきたいと思っています。

*コモンズスペース:学生が主体的に学び合い、議論するための協働学習スペースのこと

栗山様:これからの時代、知識を得るだけではなく、実際に体験することの価値がますます大きくなると考えています。
校舎リノベーションの大きな柱の一つとして考えているのが、実験室やものづくりのスペースを集約したラボの整備です。もちろん、これまでも実験室はありました。ただ、それぞれが独立して存在している状態でしたので、今回の改修ではそれらを再構成し、子どもたちがより主体的に活動できる環境にしたいと考えています。

教科書やデジタル教材を通じて学ぶことはもちろん大切です。しかし、それだけではなく、自分の手を動かして実験をしたり、ものを作ったり、試行錯誤したりする経験も同じくらい重要です。ラボに行けば、何か新しいことに挑戦できる。そんな場所をつくりたいと思っています。

また、本校の環境的な特徴も活かしたいと考えています。計画しているラボの一部は、校舎の外へ出やすい場所に配置する予定です。自然とつながる立地を活かして、植物を育てたり、観察をしたり、屋外での学びにつなげたりすることもできます。
教室の中だけで完結するのではなく、校舎全体、さらには自然環境そのものを学びのフィールドとして活用していきたいという思いがあります。

栗山様:そうですね。今回の改修は単に古くなった施設を新しくするためのものではありません。教員同士、生徒同士、そして生徒と先生が自然に交流できる環境をつくること。そして、知識を得るだけではなく、自ら体験しながら学べる環境を整えること。その二つを実現するための校舎リノベーションだと考えています。
だからこそ、「交流」と「体験」を今回のコンセプトに掲げています。

見えてきた備品管理の課題

倉本様:一番大きかったのは、改築ではなく改修だったということです。新しい校舎をゼロから建てるのであれば、ある意味すべてを新しく考えることができます。しかし今回は既存の校舎を活かす計画です。建物の躯体はそのまま利用しますし、多くのスペースも既存の環境を前提に考えなければなりません。
新たに大きく空間を確保できる場所は限られています。その制約の中で、どうすれば教育活動をより充実させられるかを考える必要がありました。

そうした中で自然と出てきたのが、「今あるものをどう活かすのか」という課題です。

倉本様:そうですね。学園としても「使えるものは使う」という方針がありましたので、当然ながら机や椅子、収納棚などの備品についても、まずは現状を把握する必要がありました。
ところが、いざ調べようとしてもハードルが高くて。私は2025年10月から事務長を務めていますが、それ以前から施設に関する情報は担当者間の引き継ぎで管理されてきました。

もちろん過去の資料はあります。ただ、「どこに何があるのか」「いくつあるのか」「今どのような状態なのか」といった情報を一覧で把握できるものはありませんでした。備品について調べようと思えば購入履歴をたどるしかありません。しかし、その購入履歴がどこにあるのかを探すところから始まるような状況でした。
正直なところ、どこに何があるのかも分からない。ましてや、それが今後も使える状態なのかどうかはさらに分からない。そんな状態だったと思います。

事務長 倉本 健太 様

倉本様:本校の場合でお話しすると、最終的な決裁は当然、管理職や事務長、場合によっては学園の理事長まで上がります。ただ、購入の発案自体は現場からスタートすることが多いですね。

例えば教員から「こういう備品が必要だ」という要望が上がり、それをもとに検討が始まる。場合によっては生徒や保護者の声がきっかけになることもあります。
公立学校であれば、教育委員会なども含めた全体予算の中で導入が検討されるケースが多いと思いますが、私立学校はもう少し現場主導で動く部分があります。その柔軟さは良い面でもありますが、一方で購入の入口が増えることで、管理の難しさにもつながっているのかもしれません。

USS 李:民間企業の場合ですと、一定金額以上の備品は資産管理台帳に登録し、定期的な棚卸しの対象として管理されるケースが一般的です。
ただ、学校現場ではそこまで厳密に管理されているケースは私どもの経験上あまり多くありません。校舎改修やリノベーションのタイミングになって初めて、「何がどこにあり、数量がいくつあるのか」「いつ導入されたものなのか」を整理したいというご相談をいただくことも少なくありません。
今回お話しいただいた内容も、多くの学校に共通する課題の一つだと感じています。


倉本様:特にここ10年くらいで状況は大きく変わったと思います。以前は学校としてまとめて購入することが多かったのですが、今はネット通販でさまざまなものが購入できます。
必要なものがあれば申請し、承認を受けて購入する。場合によっては翌日には届く。そういう時代になりました。スピード感という意味では非常に便利です。ただその反面、「本当に今必要なのか」「学校全体で見たときに同じものがどこかにないのか」といった確認をする機会は減っているかもしれません。
結果として、事務部門が把握しきれていない備品が少しずつ増えてきたのではないかと思います。

実際に職員室の椅子が壊れたときに、「予備がどこかにあったはずだ」と探しに行くことがあります。見つかることもありますし、あると思っていたものが見つからないこともあります。「在庫があると思っていたけれど実際はなかったので、新しく購入する」ということも珍しくありませんでした。
少し恥ずかしい話ですが、そういったことが日常的に起きていたのです。
校舎改修では既存備品の活用が前提になります。そのため、数量や状態を客観的に把握することが非常に重要になりました。

なぜ備品調査サービスを導入したのか

USS 小山:何度か学校をご訪問し、校舎をご案内いただく中で、古い家具と新しい家具が入り混じっている状況を拝見していました。その時点では細かく確認していたわけではありませんが、今回のような大規模なリノベーションを進めるとなると、必ずどこかで備品の整理が必要になるだろうと感じていました。

また、「使えるものは使う」というお考えも伺っていましたので、現状を把握しないまま計画を進めるのは難しいのではないかと思ったんです。
そこで、「これは一度しっかり調査した方が良いのではないでしょうか」とご提案させていただきました。

大阪公共営業部 営業課 小山誠人

栗山様:正直、「これは必要だな」と思いました。校舎改修という大きな計画そのものには必死に取り組んでいましたし、「使えるものは使う」という方針も共有されていました。ただ、その一方で、教員としては今の教育に必要なものは導入したいという思いもあります。
また、改修期間中には仮設校舎への移転もありますし、改修後には新しいレイアウトの校舎へ備品を戻していくことになります。そのときに、「足りなかった」「余り過ぎた」ということは起こるだろうと思っていました。

ただ、何を調べるべきなのか、誰が調べるのかというところまでは考えが及んでいませんでした。小山さんから提案をいただいたときに、「これは初期の段階でやるべきことだ」と気付かされました。

栗山様:おそらく私や事務長、それからシステム担当、総務担当などが中心になって進めていたと思います。ただ、実際に数を数えるとなると、各教室の担当教員にも協力してもらう必要があり、かなりの労力となります。

そうすると次に出てくるのが、「使える」「使えない」を誰が判断するのかという問題です。教員の立場からすると、やはり新しいものに替えたいという気持ちがあります。一方で、法人としては「まだ使えるのではないか」という考え方もあります。
その間に立つ私たちが、何百、何千という備品を一つひとつ確認しながら判断するのは現実的ではありません。だからこそ、第三者の専門的な視点で状態を評価してもらえることに大きな価値を感じました。

栗山様:一番大きかったのは、教員の主観だけで判断しなくて済むことでした。法人からは、「使えるものは使う」「本当に使えないものだけを更新する」という考え方が示されていました。ただ、現場だけで判断すると、どうしても主観が入ります。
その点、専門の方に見ていただいて、状態ごとにランク付けをしてもらえるのであれば、判断材料として非常に価値があると思いました。

また、最終的にデータとして整理していただけることも大きかったですね。教室ごとの状況も確認できますし、備品ごとの集計もできます。施設管理を行う立場としては、「今どこに何があるのか」が一覧で見えるだけでも大きな意味があります。

備品リストサンプル

倉本様:サービス内容だけでなく、最終的にどのような成果物が納品されるのかというサンプルを事前に見せていただけたことが大きかったです。「こういう形でデータを整理します」という完成イメージがあったので、法人側にも説明しやすかったですね。もし口頭説明だけだったら難しかったと思います。

栗山様:もちろん費用はかかります。ただ、自分たちで同じことをやろうとした場合を考えると、決して高いとは感じませんでした。

何より大きかったのは、無駄な購入を防げる可能性があることです。理事長にも説明したのですが、この調査によって本来まだ使える備品を買い替えずに済むのであれば、それだけで十分価値があります。
私たちとしては、「調査費用がかかる」というよりも、「将来の無駄な支出を防ぐための投資」という考え方で導入を判断しました。

USS 李:調査そのものについては、成果物もご確認いただいておりますが、何か改善点や「こうするともっと良くなる」というご意見があれば、ぜひ率直にお聞かせいただければと思います。

栗山様:大前提として、非常にやりやすかったという印象があります。学校は子どもたちが活動する場所ですので、どうしても調査を行える時間帯に制約があります。今回は事前に「この時間帯なら生徒がいない」「ここには教員がいるが調査は入っていただける」といった調整をしながら進めていただきました。

その結果、2日間で集中的に調査を終えることができましたので、現場としては非常に助かりました。長期間にわたって調査が続くよりも、短期間で一気に終えられたので負担は少なかったですね。

USS 李:例えば事前準備の部分で、「こういった情報があればもっと進めやすかった」といったことはありましたか。

栗山様:学校の場合は、調査に入っていただく際に、校舎内、教室内に生徒がいるかいないかが非常に重要になります。
ですので、

  • どのような作業を行うのか
  • 生徒がいても実施できる作業なのか
  • 生徒がいない方が良い作業なのか
  • 教員の立ち会いが必要なのか

といったことが事前に項目で整理されていると、学校側も日程調整を含めた準備がしやすいと思います。
ですので、学校という環境で、企業と異なる事情から、作業内容と学校側の状況を事前に照らし合わせられるような資料があると、さらにスムーズになるかもしれません。

大阪公共営業部 部長 李勝熙

調査結果を未来の学校づくりにつなげる

栗山様:まず大きいのは、施設管理の基礎データとして使えるようになったことですね。今までは、「どこに何があるのか」が分からない状態でした。今回の調査で、その土台が初めてできたと思っています。
今後、新しい備品の購入申請が上がってきたときも、「その教室には今どんな備品があるのか」「本当に買い替えが必要なのか」という判断がしやすくなると思います。

改修が終わったあとも、新しい備品を導入することはありますし、逆に廃棄するものも出てきます。今回作っていただいたデータを起点にして、「増えた」「減った」「買い替えた」という管理ができるようになりますね。

今までは、そのスタートライン自体がありませんでした。だからこそ、施設管理という意味では非常に価値のある成果物になったと思っています。

倉本様:今回の調査によって、学校の現状を把握していただいたというのは大きいですね。その上で、今あるものとこれから必要なものの両方を踏まえた提案をいただけるようになると思っています。

校舎が完成したら終わりではなく、その後も教育環境は変化していきます。だからこそ、今回の調査結果を起点に、学校の状況を一緒に見ながら継続的に相談できる関係であってほしいと思っています。

例えば今回、「使える」と判断した備品も、10年後、15年後には状況が変わっているかもしれません。そのときに、「当時は使えると判断したけれど、今はどうだろう」という相談ができるとありがたいですね。
今回の調査で終わりではなく、このデータを活用しながら学校の環境づくりを継続していく。そんな関係が築けたらありがたいですね。

USS 林:今回、備品調査の部分を含めて関わらせていただきましたが、備品の現状を把握できたことで、今後の校舎改修や職員室づくりについても、より具体的なご提案ができるようになったと思っています。
生徒の皆さまはもちろん、先生方にとっても使いやすく、これからの教育に役立つ環境づくりにつながるよう、レイアウトや備品計画も含めて引き続きご提案していきたいと思います。校舎改修はまだこれからが本番ですので、引き続きしっかりとお手伝いさせていただきます。

USS 李:今回のインタビューでは、サービスに対するご評価だけでなく、学校現場が抱える課題や、より良い教育環境づくりに向けた考え方についても多くのお話を伺うことができました。
また、備品調査をどのように活用していくのか、そして学校運営の中でどのような価値につながっていくのかという視点も共有いただき、私たちにとっても非常に学びの多い時間となりました。

今回いただいたご意見を今後のサービス改善にも活かしながら、備品調査にとどまらず、創立50周年に向けた校舎リノベーション全体を通じて、より良い教育環境づくりのお手伝いができればと考えています。今後ともよろしくお願いいたします。

大阪公共営業部 営業課 林祐介

まとめ

創立50周年に向けた校舎リノベーションを進める学校法人智辯学園 智辯学園和歌山小学校・中学高等学校様。その取り組みの裏側では、「今ある資産を正しく把握する」という地道ながら重要な課題がありました。

備品調査によって得られたのは、単なる備品リストではありません。学校全体の資産を可視化し、将来に向けた施設運営の基盤となる情報です。
これから本格化する校舎リノベーションにおいても、その成果は大きな力になるでしょう。

そして今回の取り組みは、多くの学校が抱える備品管理や施設運営の課題に対する一つのヒントにもなりそうです。

この記事を書いた人

そしきLab編集部

ウチダシステムズのスタッフを中心に、組織作りや場づくりについて議論を交わしています。業務の中で実際に役に立ったことなどを紹介していきます。


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