
オフィスを変えるとき、いちばん難しいのは家具やレイアウトではありません。「何のために変えるのか」を、社員と一緒に言葉にし、納得感のあるかたちまで落とし込めるかどうか——そこに、完成後の使われ方が決まります。
株式会社大興ネクスタ様は、創業50周年を機に本社オフィスをリニューアルしました。テーマは「未来をひらく」。その言葉は、一部の担当者だけで決めたものではありません。社員の声から始まった小さな改善、価値観の言語化、全員参加のワークショップ——「みんなで決める」文化のなかで積み上げられた結果です。
普段から社内で主体的に議論してきた会社が、あえて外部の伴走を入れて目的とコンセプトをつくった意味とは何か。そのプロセスと変化を伺いました。
常務取締役 町田 守靖 様
事業開発本部 ソリューション営業部 営業課 課長 渡辺 竜太 様
管理部 情報システム課 チーフ 瀬谷 成美 様
事業内容:不動産の分譲、売買、仲介業、賃貸管理ほか
所在地:東京都練馬区関町東2-13-12
内容:本社リニューアル(2026年)
HP:https://www.daiko-nexta.co.jp/
株式会社ウチダシステムズ
首都圏法人営業部 営業1課 課長 小西 俊夫
首都圏法人営業部 営業1課 熊谷 惣太
デザイン室 デザイン2課 儀武 里佳子
VECTOR推進部 課長 太田 理絵
※2026年竣工時
創業50周年へ向け、社員の声から始めた3年の改善
ーオフィスを大きく変えようと考え始めたきっかけを教えてください。
町田様:創業50周年という節目も大きかったですし、タイミングが合って仕上げていただけた、という面もあります。ただ、プロジェクト自体が動き出したのは、実は3年ほど前からでした。いきなり全面改修というより、会社全体を良くしていく小さな動きを繰り返しながら、少しずつ進んできたイメージです。
ーその3年のなかでは、オフィスリニューアルの前に、ミッション・ビジョン・バリュー・マネジメントポリシー(MVV-Mp)の刷新、人事制度の見直しもあったと伺いました。オフィスの話とどうつながったのでしょうか。
町田様:中期経営計画を策定する中で、人事制度は変えなければいけないと思っていました。みんなが「何をすればいいのか」を理解できる、公平な物差しをつくろうということで、外部の協力も得ながら進めました。
これまでのビジョンも良かったのですが、企業活動との乖離が目立つようになってきました。そこで、多くの社員に参画頂き、新たなMVV-Mpの見直しを進めました。価値観を言葉にすることが先にあって、その延長で必然的に「働く場」も変えていこう、という流れだったと思います。
渡辺様:MVVの策定メンバーを募集すると聞き、会社の方向性を考える貴重な機会だと感じ、自分も積極的に関わりたいと思い参加しました。 最初は勉強会という形でスタートし、多くの社員が参加して意見を出し合いました。社員全体が関わり、チームで進める形です。今回のオフィス改修も、同じように全員で考えながら進んだと感じています。

参考:大興ネクスタ様公式note(https://note.com/daiko_nexta/n/n226493239acf)
ー価値観や制度を整えたうえで、オフィス自体はどのように手をつけていかれたのでしょうか。
町田様:社内でもオフィスの建て替えや全面的なリニューアルに期待する声はあったのですが、いきなり全面改修まで進む状況ではなかった。だから、できるところから進めていったんです。トイレを快適にしたり、休憩室をきれいにしたり。
20数年使ってきたオフィスを一気に変えるのは規模が大きくて、すぐには踏み切れませんでした。それでも「50周年できれいにしよう」「変えよう」という機運は強かった。一方でハード面への不安もあり、「これから3年くらいかけて変わっていくのだろうな」という感覚が、当時はあったと思います。

ーその「できることから」の改善は、どんな声を起点に進んだのでしょうか。
渡辺様:プロジェクトが発足したとき、まずは社員アンケートを実施し、「働くうえで困っていること」を一つひとつ洗い出しました。その声に優先順位をつけながら改善していった流れです。休憩室、会議室、トイレ等、少しずつ着手し、社員の声を起点に少しずつ進めていきました。実際に変わると「やってよかった」という声も大きく、我々としても手応えがありました。
ーボトムアップで一つひとつ解消していった一方で、全面改修の前には、まだ残っていたストレスや課題もあったのではないでしょうか。
渡辺様:入社以来、部署異動のたびにレイアウト変更が必要だったり、固定席が中心だったことで部署間のコミュニケーションに壁を感じることもありました。また、2階と3階で働くメンバーが自然と分かれてしまい、一体感をつくりにくいという課題もありました。オフィスの老朽化も進んでいたため、お客様をお迎えする環境として改善したいという思いは以前からありました。特に改善したかったのは、コミュニケーションの取りやすさと、来客時にも自信を持ってご案内できるオフィス環境でした。
瀬谷様:情報システム課の目線だと、以前はデスク下の配線が絡まって分かりにくい状態でした。今はOAフロアになり、ノートパソコン中心になったので、使いやすさは目に見えて変わっています。
USS小西:お出迎えの美観は、私たちも人一倍気になるところです。これは私たちの取組みですが、週2回の掃除を仕組みにしたり、椅子の背にジャケットをかけない、といったルールを置くこともあります。御社もお客様が毎日いらっしゃるので、「普段からきれいに保とう」という文化が根づきやすい部分はあると思います。

社員投票とVECTORで決めたテーマ「未来をひらく」
ー全面的にオフィスを変えるにあたり、複数社を比較検討されたと伺いました。依頼先には何を求めていましたか。
瀬谷様:いちばんの軸になったのは、フリーアドレスの導入です。ウチダシステムズさんのセミナーで、自然とコミュニケーションが生まれる仕組みの話を聞いたときに、渡辺も言っていた2階と3階の温度差や、コミュニケーションの取りにくさがフリーアドレスで解消できるのではと感じていました。
渡辺様:私たちが重視していたのは、単にデザインやレイアウトを提案する会社ではなく、オフィスをどう使い、どんな働き方を実現したいのかというコンセプトづくりから、一緒に考えて伴走していただけることでした。社員の意見を取り入れながら進めたいという思いがあったので、そのプロセスを大切にしてくれる会社にお願いしたいと考えていました。
ーそのなかで、ウチダシステムズを選んだ決め手を教えてください。
瀬谷様:プロジェクトメンバーのなかでは、フリーアドレスに変わることへの社員の不安がいちばんの懸念でした。自分の席がなくなることや、集中したい人とコミュニケーションしたい人で働き方が違うことなどです。そこをくみ取ってくれて、ワークショップなどのサポートが手厚いと感じたのが、個人的には決め手でした。
渡辺様:プレゼンに対する姿勢も大きかったです。当時はフリーアドレスを導入するかどうかも決まっておらず、私自身も不安がありました。そのため、フリーアドレスありきではなく、「なぜ導入するのか」「本当に自社に合うのか」というところから一緒に考えていただける会社を求めていました。実際に導入するかどうかも、レイアウトを決める最後の段階まで議論を重ねました。そうした私たちの悩みや課題を、プレゼンの段階からしっかり理解し、スライドや説明に反映していただいていたのが印象的でした。「この会社なら一緒にプロジェクトを進められる」と感じたことが、大きな決め手になりました。
ー選定後、テーマ「未来をひらく」までは、どのような手順で進めたのでしょうか。
USS太田:最初に、皆さんから「こう進めたい」という声を聞き、そのためにどんなオフィスがよいか、というところからつくっていきました。フリーアドレスにするかどうかの整理も含め、社員の皆さんや代表の方と議論しながらテーマを決めています。
フリーアドレスありきではなく、やるかやらないかも含めて「何のためのリニューアルか」から一緒に議論できたのが、VECTORとしてとてもよかった点です。

ー「未来をひらく」は、ミッションの『「ひと と かち」未来へつなぐ』などとどうつながっていますか。導いた過程や、「ひらく」がひらがなである点も気になります。
町田様:MVV-Mpをつくる過程から落ちてきていると思います。さまざまな案を社内投票で決めたのですが、結果として「未来をひらく」を選んだ人が多かった。いちばんしっくりくるものを選んでくれた、という感じです。
渡辺様:テーマを決めるにあたって、ウチダシステムズさんのオフィスを見学させていただいたことは非常に参考になりました。それまではPJメンバーが中心となって「どんなオフィスにしたいか」を考えていましたが、実際に空間を見て、そこでの働き方をイメージすることで、社員から「こういうオフィスにしたい」「こういう働き方ができるといい」という具体的な意見が出るようになり、社員みんなでつくっていくという雰囲気に変わった瞬間だったと思います。
USS小西:皆さんと「どんなオフィスにするのか」とコンセプトづくりをするとき、インプットがないままスタートするのはなかなか難しいと思います。視察のあとに議論する、という流れが大切で。なぜこのスペースをつくったのかというプロセスも含めてお伝えしたので、自分たちならどうできるか、自分たちの規模ならどう展開できるかを考えていただく機会になったと思います。
渡辺様:PJメンバーでは、これまでにもさまざまなメーカーのショールームを見学し、「こういう家具を使いたいね」「こういう設備があるといいね」という話はしていました。ただウチダシステムズさんのオフィスでは、モノを見るだけではなく、「こういう空間で、こういう働き方をしたい」という、その先のイメージを考えるきっかけになりました。
町田様:広さが違うから、自分たちに置き換えたときにどう反映されるかを考える難しさがあったり、そぎ落とさなければいけない部分もありましたけど、楽しかったですね。

空間・運用・ICTを一体で整えたリニューアル
ー「未来をひらく」というテーマのもと、コンセプトは三つに定められたと伺っています。空間づくりでこだわった点、大変だった点があれば教えてください。
【コンセプト】①快適で整えられた働きやすい状態 ②柔軟性と一体感が共存する状態 ③信頼と誇りを感じられ魅せたくなる状態
USS儀武:3つのなかで重点を置いたのは、一体感やコミュニケーションを深められるスペースづくりです。2階と3階で働き方が違うなか、3階ではみなさんが動きながらコミュニケーションできる場をつくりたい、というのを一番意識しました。3階のビッグテーブルまわりは広めにして、気軽に話したり動きながら仕事できるんじゃないか、と思っています。
ーカラースキームでは、どんな点を意識されましたか。
USS儀武:木目を多めにすることや、植栽、床のカーペットなどもご提案しました。最初の提案と皆さんのお好みが違う部分もあったので、「どう考えられますか」と投げかけて、意見をいただきながら進めていましたね。
渡辺様:提案どおりに進めていれば、もう少し短期間で済んだかもしれません(笑)でも、その時間があったから納得できたんだと思います。
USS儀武:相対化するから見えてくる部分は、間違いなくありますね。
ー実際に使ってみて、お気に入りの場所や、社員の評価が高い場所はありますか。
町田様:ファミレス席ですね。社内のコミュニケーションも取りやすいですし、来客時に会議室を使わなくても簡単にそこで話ができてしまう、というメリットもあります。
USS小西:もともとあそこは、会議室から出たあと少し話す場所、という想定でした。それが、社員同士でも集まる使い方に広がっているということですね。
瀬谷様:私はハイテーブルです。システム関係の相談に来る人が多くて、同じ目線で画面を見ながら対応できる。動きやすいのも助かります。
ー移転で面積を広げるのではなく、いながらにしてリニューアルする場合、ビルの制約のなかで開放感を出すのが難しいとよく伺います。そのあたりの工夫はありましたか。
USS儀武:ご要望もありましたが、3階は倉庫だったところの壁を撤去してカタログスペースにすることで、フロア全体の一体感が出たと思います。誰がどこにいるか分かる、見通しの良いオフィスになったのではないでしょうか。

ーハードやインテリアとあわせて、運用ルールも整理されたと伺いました。どのように決めていったのでしょうか。
USS太田:事務局の皆さんを中心に行った最後の運用ルール決めにも参加させていただきました。場所の使い方やルールも大事ですが、「このオフィスでどんな働き方をしてほしいか」「どんなシーンを思い描くか」を先に整理し、そのために必要なルールは何か、とテーマに紐づけて進めたのが特徴的でしたね。規律ありきではなく、理想の状態を保つための規律、という順序です。
ー運用ルールとオフィスマナーを分けているのも印象的でした。例えば会議室利用後のテーブル清掃は、ルールにしてもよさそうなものをマナーにしている背景があれば教えてください。
渡辺様:ルールにすると義務感が出てしまいますが、マナーとして共有することで、一人ひとりが意識して行動できるものになると考えました。
USS太田:ルールとして決めてしまうと、急ぎで席を立つときなど、悪気がなくても守れない瞬間が出てきます。そのときに意図と違う方向で受け取られてしまう可能性もあるので、心がけとして柔らかく受け取りやすくする、という切り分けを選ばれました。
ー空間とあわせて、ICTまわりも大きく変えられたと伺いました。
瀬谷様:クラウドPBXへの移行や、1階への受付タブレット設置など、小さなことかもしれませんが、働き方としては変わってきたなと感じます。それを機に、7月からDXプロジェクトも立ち上げました。フリーアドレス化に伴い、デスクトップを使っていた社員はPCをサーバー室に置いて遠隔で使えるようにしたり、ノートパソコンへの移行も進めました。
簡単ではありませんでしたが、喜んでいただけて取り組んだ価値を感じています。もともとICTを変えたいタイミングでもあり、自分自身の成長にもつながりました。
USS熊谷:オフィスだけ変えてデバイスが古いままだと、フリーアドレスなのにデスクトップに縛られる、ノートにしたのに持ち運ぶ先がない、といったちぐはぐが起きがちです。御社は空間とICTを一体で動かされたからこそ、コミュニケーションの取りやすさや雰囲気の明るさにつながっているのだと思います。

来客・採用に出た効果と、これからのDX推進
ー改装前に感じていた美観や、お客様をお出迎えするうえでのストレスは、どのように変化しましたか?
渡辺様:以前とは大きく変わりました。今では自信を持ってお客様をご案内できるオフィスになり、「ぜひ見てもらいたい」と思える環境になりました。メンバーにも積極的にお客様を呼ぼうと伝えられるようになったことは、大きな変化だと感じています。
ー採用面ではいかがでしょう。オフィスリニューアルの効果は感じられていますか。
町田様:かなり効果が発揮されている、と感じています。公式noteでも制度やイベントの話とあわせてオフィスのことも発信しています。面接に来られる、特に若い方は必ず見てくださり、記事のなかから質問を受けることもあります。影響力はあるな、と。
社内の雰囲気も、前より賑やかになったように感じます。集中できる環境でありながらも、ビッグテーブルでついでに打ち合わせしている、といった使い方も生まれています。みんな工夫して使っていますね。
ーDX推進では、デバイス刷新のうえで、積み残した課題にも着手されているのでしょうか。
瀬谷様:社内アンケートで、それぞれが感じているところを出してもらい、どう育てていくかに着手しています。これから具体策が出てくる段階です。DXとまでいわなくても、今使っているソフトウェアの使い方など、すぐ着手できることも含めて考えています。
USS太田:アンケートから入って、ニーズを拾い、課題を潰していく。その進め方は、最後まで一貫しているな、とお聞きしていました。御社らしいなと感じます。
ー最後に、ウチダシステムズを他社に勧めるとしたら、どんな会社に勧めますか。
渡辺様:不動産業界は、まだまだアナログな部分が残る業界です。だからこそ、働き方やオフィス環境を見直したいと考えている企業には、今回の私たちの取り組みが一つの参考になると思います。社員の声を取り入れながら、一緒に理想の働き方を考えてくれるパートナーを探している会社には、ウチダシステムズさんをおすすめできると感じています。
USS小西:つくって終わりではないので、働いている姿のなかから、また新しい課題や希望が見えてくると思っています。実は先ほど2階にお邪魔したとき、エントランスのルーバーにぬいぐるみが2つ掛かっているのを見かけました。つくった場所をお客さまに育てていただくのは、つくった身としてはすごく嬉しいんです。これからも並走しながら、都度一緒に解決していくお付き合いができたら、と思っています。
USS熊谷:お客様からもたくさんのことを教えていただいたプロジェクトでした。今後も分からないことがあればすぐ駆けつけて情報を集め、お手伝いできる関係性を続けていきたいです。DX推進の話もありますし、何かあればご連絡ください。長いお付き合いができたら嬉しいです。

創業50周年を前に、社員の声から始めた小さな改善と、価値観の言語化。その延長で、全員参加とVECTORの伴走によって「未来をひらく」オフィスがかたちになりました。
つくる過程に社員が関わり、完成後も育てていく——その姿勢が、次の50年をひらく実践になっていると言えるでしょう。


この記事を書いた人

そしきLab編集部
ウチダシステムズのスタッフを中心に、組織作りや場づくりについて議論を交わしています。業務の中で実際に役に立ったことなどを紹介していきます。

