コンプライアンスが昭和な会社は「内乱」で変われるか

コンプライアンスが昭和な会社で働いている。

・本社が地方
・同族経営
・中小企業
・歴史だけは古い
そんな会社は、まぁ、こんなものだろう。地方においては珍しくないはずだ。

過去にも
・いまだに女子社員がお茶汲みをさせられている
・仕事の手を止めて、いちいち起立して来客に挨拶しなければならない
ことをネタにして記事(https://uchida-systems.co.jp/lab/13976/)を書いたが、その後も驚くことの連続である。

昨年末に初めて参加した忘年会では、上司が取締役から一気飲みを強要されている様子を見て、思わず止めに入ってしまった。
すっかり場を白けさせたが、一気飲みの強要は今どき普通にアウトである。

だいたい一気飲み以前の問題として、社員がそれぞれビール瓶や日本酒を片手に絶えず席を移動しながら、乾杯と返杯を延々繰り返さないといけないことがすでにアルコールハラスメントなのだ。
弊社では今だにそれが酒席のマナーとされているようだが、首都圏で働く友人や家族からは、とっくに絶滅した風景だと聞いている。

つい先日、さらに驚きが更新される出来事があった。
「来月から中途入社の新人さんが来ますので、回覧です」
と言って、総務の御局様が持ってきたのは、なんと新入社員の個人情報がてんこ盛りのプロフィール情報だ。氏名と年齢くらいなら事前に共有しておくのも分かるが、「誰の紹介で入社するのか」や、住所まで載せているのはアウトが過ぎる。いいかげんにして欲しい。

思わず背筋が寒くなって、
「なんですかコレ? ひょっとして、私が入社する時にもこんなのを回したんですか?」
と聞きに行ったところ、「回覧を回すのは、本社の基幹部門に新人が入社するときだけ」との返事だった。
新規事業部に配属が決まっていた私は対象外だったそうだが、そういう問題ではない。
御局様の悪びれない様子を見ると、昭和からの習慣をただ漫然と続けてきたのだろう。意識の時代遅れ感がヤバすぎる。

一応、会社としても「流石にそろそろ色んな面でマズイ」と重い腰を上げたようで、かつては強制だった飲み会への参加を任意にしたり、社員間の年賀状のやりとり(そのために全社員の住所を年末に配布していた)を廃止にしたりはしたそうだ。

しかし、まだ手付かずの大問題が残っている。いまだ社内に横行しているパワハラである。
そう思っていた矢先、社内で「ハラスメント研修」が実施された。

研修の内容は、以下のようなことだ。

・ハラスメントは人権侵害であること
・どのような行為がハラスメントに該当するのか
・ハラスメントを受けた被害者はどのような心理状態に陥るのか
・会社がハラスメントを放置した場合のリスクとは
・相談窓口の存在

私は先生の正面に座りながら、眠気を噛み殺すのに苦労していた。私は今のところ露骨なハラスメントの当事者ではないため、どうにも話が眠かったのだ。
もっとも、入社直後からまともな指導もマニュアルもなく、未経験の業務を山ほど渡され、「あとはよろしく」と放置されたことがハラスメントに当たらないと言い切れるかどうかは怪しいが。

あれをどう定義するかはともかく、私は踏ん張った。持ち前の負けん気と、積み上げてきたスキルで乗り切ったのだ。そして、実力を見せることで周囲の態度を変えさせた。

けれど、あれは私が氷河期世代だったから乗り越えられたのだと思う。理不尽を飲み込んで、踏ん張る思考回路が染みついてしまっている。
もしもこれが「石の上には3分」しか居られないZ世代だったら、おそらく入社直後に辞めているに違いない。

先生から
「もしあなたがハラスメントを受けたら、どうしますか?」
と聞かれた時、私は心の中で即答した。
「実力で殴り返す!」
ともかくがむしゃらに働いて、成果を見せつけ、二度と私に向かって偉そうな口をきかせない。

そのうえで、
「ねぇ、今どんな気持ち?」
と、聞いてやるのだ。

パワハラしてきた相手よりも、私の方がよっぽどヤベェ奴なのは分かっている。
心の声をうっかりそのまま口に出したら「むしろお前こそハラスメントに気をつけろ」と注意されそうなので、その場では無難に「さっさと転職します」と答えておいた。

実際、前職ではそうしている。
ソリが合わないナチュラル・ボーン・パワハラ上司に対し、成果でぶんなぐって黙らせてから、とっとと転職先を探して辞めた。私は、環境が合わなければ動けばいいと思っている。

けれど、同僚たちは違った。
「えー。仕事は辞めたくないよね」
と、言う人がほとんどだったのだ。地方は慢性的な人手不足で、仕事はいくらでもあるというのに、彼女たちは慣れた環境を離れたくないと言う。

続けて、こうも言った。
「だいたい、なんで間違っている側(加害者)が今まで通りに働き続けられて、正しい側(被害者)が出ていかなきゃいけないの? そんなのおかしいじゃない」
なるほど、と私は思った。だけど、私は、その「正しい側」という言葉には引っかかりを覚えてしまう。
「正しい側」なんて、ないんじゃないのか? だって、ハラスメントの加害者とされる人たちもまた、自分のことを正しいと信じているのだから。

研修を終えた後、「私が受けてきたことはパワハラだと分かった。加害者の処罰を求める」と声を上げた人たちがいる。どうやら研修を受けて、それまで「おかしい」とは感じつつも言語化できず、もやもやしたまま形になっていなかった感情に輪郭ができたようだ。
実は、私の上司もその一人だ。彼女は創業家の人間であり、役員であり、そして女性だ。
彼女はこれまで数年に渡り、取締役(古参社員)たちから「女のくせに生意気だ」「ワガママを言うな」「でしゃばるんじゃない」と、吊し上げられてきた。
しかしそれを見ていた彼女の家族たち(会長、社長、専務など役員一同)は、ハラスメントがどれほどヒートアップしても、誰も止めようとしなかった。「女が我慢すればいい」と考えていたのだろう。
つまり、この会社に根強く蔓延する男尊女卑思想やハラスメントは、会社の問題でありながら、実はファミリーの問題でもあったということだ。

講習を受けて、彼女はようやく自分を深刻なハラスメントの被害者だと自覚したようだ。相談窓口が設置されたことで、彼女は今、被害を申告する準備をしている。
だが顔色は優れない。
彼女が誰よりも罰したい相手は、それまで自分が愛してきた、そして愛されていると思ってきた家族なのだから。

オーナー家の一員として、これまで恵まれた暮らしを送ってきた彼女は、良く言えば明るく素直で、悪く言えば甘ちゃんだ。
戦うと決めることは、まず相手を憎む自分を受け入れなければならない。他人を罰してやらなければ気が済まないと思うとき、人は自分の中の黒さも直視することになる。
そのため、これまで心に負の感情を棲まわせることなく生きてきた彼女は、自分の中に生まれた毒で自家中毒に陥っているのだろう。

それでも、家族の問題に気づいてしまったからには、もう元の自分には戻れないと覚悟を決めているようだ。
おそらく、告発された取締役は反発するだろうし、家族とも衝突することになるだろう。

果たして、これから彼女が起こす内乱をきっかけに、この昭和な会社は変われるのだろうか。成り行きを見守りたいと思う。

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この記事を書いた人

マダムユキ

note作家 & ライター
https://note.com/flat9_yuki


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そしきLab編集部

【この記事は生成AIを利用し、世界のオフィスづくりや働き方に関するニュースをキュレーションしています】