
2025年5月の法改正で、50人未満事業場にもストレスチェックの義務化が拡大されました。
一方で、「形骸化している」、「やる意味がわからない」という声がみられることもあるのではないでしょうか。
ストレスチェックに意味がないと感じられるときには、制度そのものではなく活用のされ方に原因がある可能性があります。
この記事では、制度の本来の目的と、オフィス環境や職場改善につなげる実践的な視点について解説します。
この音声コンテンツは、記事の文脈をAIが読み取り独自に対話を重ねて構成したものです。文章の読み上げではなく、流れや意図を汲み取った自然な音声体験をお届けします。※AIで作成しているため、一部誤りや不自然な表現が含まれる場合があります。
ストレスチェック制度とは何か
まずはストレスチェック制度の概要について解説します。
ストレスチェックの基本的な仕組み
ストレスチェックは、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐため、心理的な負担の程度を把握するための検査のことを指します。*1
以下のような質問票を用いて、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。*2

ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
→PDF:ストレスチェック制度 簡単導入マニュアル-厚生労働省 p5
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf
質問票は、医師などの実施者あるいはその補助をする実施事務従事者によって回収されます。回収された質問票をもとに、医師などの実施者がストレスの程度を評価します。
そして、ストレス状態が高い方など、医師の面接指導が必要な方が選ばれ、適切な対応を受けることになります。*3
また、集団としておかれているストレスの状況などについての分析も努力義務とされています。*4
なお、努力義務は簡単に言えば、「できればやってほしいけど、やらなくても罰は当たらない」という、法的なお願いに近いものです。*5
ストレスチェックの2つの目的
ストレスチェック制度の目的を、うつ病などの精神疾患のスクリーニングだと思われることも多いかもしれません。
実際に、厚生労働省が行ったアンケート調査では、事業者も労働者も、一定の割合で「ストレスチェック制度の目的はうつ病などのスクリーニングだ」という認識を持っているということが明らかになっています。*6
しかしながら、ストレスチェックはメンタル疾患の診断を目的としているわけではありません。ストレスチェックの第一の目的は、メンタルヘルス不調が現れる前に予防する、いわゆる一次予防です。*7
そして、もう一つ重要な目的は、集団分析を行い、集団としてのストレスの傾向を把握し、職場環境の見直しにつなげるというものです。*4
ストレスチェックには、これらの2点の目的があることを理解しておきましょう。
2025年改正で何が変わったのか
ストレスチェックは、メンタルヘルス不調の発生を防ぐことを目的として、2015年に義務化されました。当初は労働者数が50人未満の事業場に関しては努力義務とされていました。
しかし、近年では精神障害の労災支給決定件数が増加傾向にあることや、小規模な事業場でも多数発生しているという実情もみられます。
事業場の規模にかかわらず、メンタルヘルス対策が課題であるという背景もあり、2025年に公布された改正労働安全衛生法によって、労働者数50人未満の事業場でもストレスチェックが義務付けられました。*8
なぜ「ストレスチェックは意味がない」と言われるのか
では、ここでストレスチェックには意味がないと言われてしまう理由について考えてみましょう。
やらされ感が生じる
ストレスチェックを意味あるものにするためには、事業者と従業員のどちらもストレスチェックの目的や仕組みを理解することが大切です。目的や仕組みをわかっていないと、「やらされ感」が生まれやすくなってしまう可能性があるからです。
特に、小さな規模の事業所の場合には、ストレスチェックを導入するときにはどのように実施すればよいのかがわからないという混乱も想定されます。*9
プライバシーへの懸念
ストレスチェックの根幹には、「本人の同意なく会社に結果が知らされない」という信頼性があります。*10
プライバシーの確保が難しいのではないかといった懸念や、会社に結果を知らされてしまうと不利益になるのではないかという恐れから、従業員が本当のことを答えないという場合もあるかもしれません。
結果の活用が難しい
特に小さな事業所の場合、ストレスチェックの担当者を割り当てることができない場合もあるでしょう。
そのようなケースでは、誰が主体となり、どのように集団分析の結果を社内に展開し、職場環境の改善に繋げていくかが不明確になるという課題もあります。*9
ストレスチェックの結果はどれくらい活用されているのか
ここでは、ストレスチェックがどれくらい行われているのか、さらにその結果はどの程度活用されているのかをみていきましょう。
厚生労働省による2024年度の調査の結果、メンタルヘルス対策の一環としてストレスチェックを実施している事業者は全体では65%程度でした。
ただし、事業者の規模によって実施率には差があり、従業員数が多い企業では約9割が実施している一方、50人未満の小規模事業者では約6割にとどまっています。*11
また、ストレスチェックを実施した事業者のうち、結果を分析した事業所は約75%、そのうち、結果を職場改善などに活用した割合は約77%でした。*12
ストレスチェックを「意味あるもの」に変える5ステップ
さて、ここでストレスチェックを有意義なものにするための方法について解説します。
目的とプライバシーの保護の周知徹底
まずは、従業員がストレスチェックにきちんと答えるための土台づくりをしましょう。
ストレスチェックを受ける目的と、個人のプライバシーは保たれる旨を従業員に周知することが大切です。
原則、ストレスチェックを実施する際には、質問票は医師などの実施者、あるいはその補助をする実施事務従事者が回収します。そのため、第三者や人事権を持つ職員が記入・入力を終えた質問票の内容を閲覧することはありません。*3
結果は、ストレスチェックの実施者が集積・分析し、その結果が事業者に提供されます。
ただし、集団規模つまりチェックを受ける対象者が10人未満の場合は、個人が特定されてしまうおそれがあります。原則として、10人以上の集団を集計の対象としましょう。
そして、全員の同意がない限り、結果の提供を受けることは避けましょう。*4
受検率を向上させる
ストレスチェックを受けることは、企業側にとっては義務ではありません。
しかし、受検率が低くなると、その後に行われる集団分析の際に正確な解釈ができないことにつながってしまう可能性があります。そのため、なるべく多くの従業員の方に受検してもらえるような工夫をしましょう。
例えば、Web方式と質問紙方式などの実施方法を選択できるようにすることや、ストレスチェック実施時期を繁忙期からずらすなどの方法があります。*13
メンタルヘルス対策の実施
ストレスチェックの結果、高ストレス状態にある従業員に対しては、医師による面接指導を受ける必要があると判断される場合があります。
面接をきちんと受けてもらうためには、高ストレス者に対する相談窓口に関する配布物を結果と一緒に送ることや、Webによる面接指導にすることなどの方法が考えられます。*14
集団として結果を分析する
ストレスチェックを行ったら、部署ごとなど集団としてのストレス傾向を把握することも重要です。過去との比較や、残業時間や休業者の人数なども一緒に分析できるとよいでしょう。*14
職業性ストレス簡易調査票の結果は、「仕事のストレス判定図」を使って職場全体の傾向(集団分析)として確認します。
分析では、「仕事の量と裁量のバランス」と「上司・同僚からの支援」の2つの視点から数値を整理し、全国平均と比較することで、その職場のストレス状態を把握します。
さらに、これらを組み合わせて算出される「総合健康リスク」は、職場のストレスが従業員の健康にどの程度影響しているかを示す指標です。数値が高いほど、心理的ストレス反応や体調不良、医療機関受診などのリスクが高い状態を意味し、改善が必要な目安となります。*15
職場環境の改善につなげる
集団分析の結果や、その他の情報を合わせて職場の状況を分析し、職場環境の改善につなげましょう。もし集団分析の結果の見方がわからないなどがあれば、産業保健総合支援センター(さんぽセンター)などに相談してみるのもよいでしょう。*16
実際に、会社の人事担当者では集団分析結果の解釈が難しかったものの、さんぽセンターのメンタルヘルス対策の促進員からの具体的な助言を得ることができたという会社もあります。*17
職場環境や身体の負担度、疲労感などに課題がみられる部署がある際には、その具体的な課題を抽出し、改善につなげることも大切です。例えば、職場の暑熱対策や、重量物取扱い作業に関する人員配置の見直しや、管理職研修の実施などが挙げられます。*18
まとめ|ストレスチェックは「意味がない制度」ではない
ストレスチェックに意味がないと感じられる背景には、制度がうまく活用されていないことがあると考えられます。
ストレスチェックは、意味のない制度ではなく、職場環境を見直すためのヒントを得るための仕組みです。
オフィス環境の整備を含めた総合的な対策を行うことで、従業員の健康維持だけでなく、生産性の向上にもつながるでしょう。

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この記事を書いた人

木村 香菜
行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医、日本人間ドック・予防医療学会認定医。
資料一覧
*1 ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
→PDF:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて p1
https://www.mhlw.go.jp/content/000917251.pdf
*2 ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
→PDF:ストレスチェック制度 簡単導入マニュアル-厚生労働省 p5
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf
*3 ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
→PDF:ストレスチェック制度 簡単導入マニュアル-厚生労働省 p4
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf
*4 ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
→PDF:ストレスチェック制度 簡単導入マニュアル-厚生労働省 p6
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf
*5 努力義務規定|参議院法制局
https://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column101.htm
*6 ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
→PDF:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて p5
https://www.mhlw.go.jp/content/000917251.pdf
*7 ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
→PDF:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて p3
https://www.mhlw.go.jp/content/000917251.pdf
*8 「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」作成ワーキンググループ|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_62372.html
→ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」作成ワーキンググループ 第4回資料|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65743.html
→小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル (素案)p4
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001592574.pdf
*9 現場の声・現場の視点②50人未満事業場のストレス義務化を契機とした産業保健支援の拡がりに向けて〜現場実践から見えた課題と展望〜.2025;48(5):472-475. p473
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfjrnl/48/5/48_472/_pdf/-char/ja
*10 ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
→PDF:ストレスチェック制度 簡単導入マニュアル-厚生労働省 p7
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf
*11 令和6年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r06-46-50b.html
→PDF:令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況 p4
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r06-46-50_gaikyo.pdf
*12 令和6年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r06-46-50b.html
→PDF:令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況 p5
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r06-46-50_gaikyo.pdf
*13 ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
→PDF:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて p7
https://www.mhlw.go.jp/content/000917251.pdf
*14 ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
→PDF:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて p8
https://www.mhlw.go.jp/content/000917251.pdf
*15 ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
→PDF:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて p9
https://www.mhlw.go.jp/content/000917251.pdf
*16 産業保健総合支援センター(さんぽセンター)
https://www.johas.go.jp/shisetsu/tabid/578/Default.aspx
*17 ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
→PDF:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて p19
https://www.mhlw.go.jp/content/000917251.pdf
*18 ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
→PDF:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて p23
https://www.mhlw.go.jp/content/000917251.pdf
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