休憩室が変われば働き方が変わる|健康と生産性を支えるオフィスの空間づくりとは

働き方改革や健康経営への関心が高まるなかで、意外に見過ごされがちなのが「休憩の質」です。

労働基準法では、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えることが義務付けられています*1

労働基準法
第三十四条
第一項 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
……
第三項 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
引用)e-Gov 法令検索「労働基準法」*1
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049

しかし、休憩時間を確保したところで、休憩の質が高くなければ、従業員の心身の回復や業務の効率向上にはつながりません*2

本稿では、休憩が従業員の心身や集中力、生産性などに与える影響を解説するとともに、オフィスの改装・移転を契機に「休憩室」を見直す意義、および休憩の質を向上させる空間づくりのポイントを紹介します。

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休憩の質が心身と集中力に与える影響

まず、休憩の質が従業員の心身や業務パフォーマンスにどのように影響するかを見ていきましょう。

調査データが示す「休憩不足」のリスク

全国の正規雇用就業者(男女:20~69歳)2000人を対象としたパーソル総合研究所の調査によると、休憩の満足度が低い層では肉体的・精神的疲労感を感じやすく、業務への集中度も低下することが示されています。

引用)パーソル総合研究所「調査・研究>調査レポート>はたらく人の休憩に関する定量調査>調査報告書(全文)」P.42
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/break/
https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/break.pdf
引用)パーソル総合研究所「調査・研究>調査レポート>はたらく人の休憩に関する定量調査>調査報告書(全文)」*2P.53
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/break/
https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/break.pdf

特に、プレゼンティズム(出勤しているが生産性の低い状態)の発生率は休憩の質と密接に関係しており、適切な休憩を取れていない従業員ほど本来のパフォーマンスを発揮できていない傾向があります。

引用)パーソル総合研究所「調査・研究>調査レポート>はたらく人の休憩に関する定量調査>調査報告書(全文)」*2P.44
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/break/
https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/break.pdf

これらは従業員個人の問題にとどまらず、企業の生産性にも直結する深刻な課題です。

さらに、休憩の過ごし方はプレゼンティズムの発生割合にも影響することが明らかになっています(66)。

引用)パーソル総合研究所「調査・研究>調査レポート>はたらく人の休憩に関する定量調査>調査報告書(全文)」*2P.66
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/break/
https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/break.pdf
筆者注:休憩の過ごし方の分類
  • 仮眠タイプ:仮眠・瞑想
  • 不本意タイプ:仕事を継続・強制的な休憩
  • 自己投資タイプ:身体を動かす・自己啓発
  • ひとり時間タイプ:一人で飲食・趣味に没頭
  • エンタメ没頭タイプ:音楽を聴く・スマホゲームで遊ぶ
  • 交流タイプ:上司同僚と会話や食事・ランチミーティング

出所)パーソル総合研究所「調査・研究>調査レポート>はたらく人の休憩に関する定量調査>調査報告書(全文)」*2P.55
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/break/
https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/break.pdf

このように、休憩は単なる「制度」や「義務」ではなく、「質」が求められる領域です。従業員の健康と集中力を維持し、企業の生産性を高めるためには、休憩に関する「制度」だけでなく、「質」を高める総合的な見直しが不可欠だといえます。

職場文化と空間設計が休憩の質を左右する

休憩の質は、職場の文化や休憩室の在り方にも影響されます。
パーソル総合研究所の調査では、職場や周囲の理解・協力があると、休憩の質が高くなる傾向があることが示されています。

引用)パーソル総合研究所「調査・研究>調査レポート>はたらく人の休憩に関する定量調査>調査報告書(全文)」*2P.52
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/break/
https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/break.pdf

こうした休憩に親和的な職場文化に加えて、気兼ねなく休める「空間設計」も休憩の質を高める重要な要素といえます。
例えば、休憩スペースと執務エリアが明確に分かれているだけで、心理的切り替えがしやすくなります。視線を遮るパーティションや照明・色彩によるゾーニングでも、休憩のしやすさは変わってくるでしょう。
つまり、制度・文化・空間の相乗効果で休憩の質を高めることが、従業員の健康を守り、企業の生産性を高める鍵となるのです。

オフィス改装・移転時にこそ「休憩室」の再設計を

ここからは、休憩室の整備が戦略的に重要である理由と、実際に休憩室を設計する際の工夫や運用のヒントを紹介します。

休憩室に投資すべき理由

オフィスの改装・移転は、単なるレイアウト変更ではなく、働き方そのものを見直す絶好の機会です。なかでも休憩室の整備は、従業員の健康や生産性を支える空間づくりとして戦略的な意味を持ちます。

休憩室の整備は法的義務ではありませんが*3、経営の観点からは極めて重要です。快適な休憩環境があることで従業員は心身の疲労を効果的にリセットでき、業務への集中力が高まることから、生産性の向上につながります。長時間労働による不調の予防や、離職率の低下にも寄与すると考えられます。
さらに、誰もが気軽に利用できる休憩室は、部署や役職を越えた交流の場としても機能し、社内コミュニケーションの活性化を促す効果も期待できます。

このように、休憩室は単なる「休む場所」ではなく、組織文化や働き方を象徴する空間であるともいえます。
したがって、休憩室は「コスト」ではなく、従業員のパフォーマンスを最大化するための「戦略的資産」と捉えるべきです。

従業員が利用しやすい休憩室をつくるポイント*4

それでは、従業員が自然と足を運びたくなる休憩室をつくるには、どのような工夫が必要でしょうか。オフィスの改装・移転の際に意識したい設計や運用のヒントを以下にまとめました。

立ち寄りやすい場所に設置する

休憩室が執務エリアから極端に離れている、あるいは、役員室の前など心理的に入りづらい場所にあると、なかなか利用率が上がりません。ロッカールームと同じフロアに設けるなど動線に配慮した設計にすると、気軽に立ち寄れる空間になります。

多様な過ごし方に対応できるレイアウトにする

休憩時間を一人で静かに過ごしたい人もいれば、同僚との会話を楽しみたい人もいます。個室的なスペースとオープンな交流スペースの両方を設けるなどの工夫をすると、従業員の好みに応じた利用が可能になります。

視線や音に配慮する

周囲の目や騒音が気になる環境では、心身が休まりません。落ち着いて利用できる雰囲気を整えるために、パーティションによるゾーニングや吸音材の使用なども考えてみるとよいでしょう。

照明やオブジェで心理的安心感を演出する

安らげる空間をつくるには、視覚的な工夫も効果的です。暖色系の照明やオフィスグリーン(観葉植物や造花など)を取り入れると、ストレスを和らげてリラックスしやすい雰囲気が生まれます*5

従業員の声を反映する

設計段階から利用者である従業員の意見を取り入れることで、休憩室への愛着や利用意欲が高まります。「自分たちの空間」として認識してもらうことで、定着性の向上を図りましょう。

快適さを維持する簡単なルールを設定する

清潔な空間は、安心して休むための基本条件です。「ゴミは分別して捨てる」「使ったあとはテーブルを拭く」などのルールを設定することで、誰もが気持ちよく利用できるようになります。あわせて、「長時間の占有を避ける」「混雑時は席を譲り合う」などのマナーも啓発すると、より効果的です。

表:休憩室の設計・運用の工夫および期待される効果

工夫のポイント具体例期待される効果
立ち寄りやすい場所に設置ロッカールームや給湯室の近く、従業員の動線上に配置利用率の向上、心理的ハードルの低下
多様な過ごし方に対応個室的なスペースと交流スペースを併設幅広いニーズへの対応、満足度の向上
視線や音への配慮パーティションや吸音材によるゾーニング落ち着きや安心感の向上
照明やオブジェによる演出暖色系の照明、観葉植物などの設置ストレス軽減、リラックス効果
従業員の声を反映ヒアリングやアンケートの実施、休憩室設置後は意見箱等の設置利用意欲や定着性の向上
快適さを維持するルール設定ゴミの分別やテーブルを拭くなどのルール、譲り合いの啓発清潔感の維持、トラブル防止

まとめ|休憩室改革は未来の働き方改革につながる投資

従業員のパフォーマンスを支える「休憩の質」は、働き方改革や健康経営においても重要なテーマといえます。しかし、制度として休憩時間を設けるだけでは不十分です。従業員の健康維持や生産性向上を図るためには、「利用したくなる」「安心して休める」空間を整えることが大変重要です。

オフィスの改装・移転は、こうした空間作りの絶好のチャンスです。休憩室を単なる設備ではなく、戦略的な資産と捉えることで、企業は従業員のウェルビーイングを支え、持続的な成長の土台を築くことができます。また、休憩室の設計は経営者からの一方的な施策ではなく、従業員の声を反映した共創プロセスであるべきです。誰もが安心して休める空間は、職場の信頼関係や心理的安全性にもつながり、結果として組織全体の活力を高めます。

企業が持続的に成長するためには、制度やテクノロジーだけではなく、「従業員が心身ともに健やかに働ける環境」を整備することが欠かせません。休憩室改革は、その第一歩といえます。働く人に寄り添う空間設計は、企業の在り方をより良い方向へと進化させていくでしょう。

この記事を書いた人

中西 真理

公立大学薬学部卒。薬剤師。薬学修士。医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。

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参考資料

*1
出所)e-Gov 法令検索「労働基準法」34条
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049

*2
出所)パーソル総合研究所「調査・研究>調査レポート>はたらく人の休憩に関する定量調査>調査報告書(全文)」
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/break/
https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/break.pdf

*3
出所)e-Gov 法令検索「労働安全衛生法事務所衛生基準規則」19条
https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000043/

*4
出所)ウチダシステムズ「そしきLab>オフィス・働き方>社員に使われるオフィスの休憩室をつくるポイント8選【事例あり】」
https://uchida-systems.co.jp/lab/9618/

*5
出所)市原真希,他「照明計画と知的生産性に関する研究」大成建設技術センター報.2010,43,P.54-1~54-8
https://www.taisei.co.jp/giken/report/2010_43/paper/A043_054.pdf


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そしきLab編集部

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