
ある日突然、社員が無断欠勤をした。そして見知らぬ業者からの電話で、その社員の離職意向を伝えられたーー。
近頃よく耳にする「退職代行」。離職したい社員が上司や人事と直接顔を合わせてその意向を伝えるのではなく、本人に代わって会社に連絡を取り、退職に必要な手続きをするサービスです。
若手の利用が多くなっています。
会社側としては本人に連絡すら取れない状況のまま離職されるわけですから、ただただ困惑するだけでしょう。
若手はなぜ退職代行を使うのか、退職代行を使われた時にはどう対応すれば良いか考えてみましょう。
この音声コンテンツは、記事の文脈をAIが読み取り独自に対話を重ねて構成したものです。文章の読み上げではなく、流れや意図を汲み取った自然な音声体験をお届けします。※AIで作成しているため、一部誤りや不自然な表現が含まれる場合があります。
退職代行の利用状況
東京商工リサーチが2025年の6月に実施したアンケート調査では、「退職代行」業者から従業員の退職手続きの連絡を受けた企業は全体で7.2%、大企業では15.7%にのぼりました。

(出所:東京商工リサーチ「「退職代行」による退職、大企業の15.7%が経験 利用年代は20代が約6割、50代以上も約1割」)
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201481_1527.html
そして退職代行を利用した退職者の年代は、20代が圧倒的に多くなっています。

(出所:東京商工リサーチ「「退職代行」による退職、大企業の15.7%が経験 利用年代は20代が約6割、50代以上も約1割」)
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201481_1527.html
退職代行を利用した従業員の離職が業務に影響しています。
具体的な事象として多いのは、
- 退職者の業務をカバーするため、従業員の残業が発生した(31.1%)
- 退職代行を活用した理由について検証した(30.3%)
- 引き継ぎが円滑にできず、商品・サービスの提供に影響がでた(23.4%)
- 退職代行を活用しない退職手続きより時間がかかった(21.8%)
となっています。*1
退職代行を選ぶ若手社員の事情とは?
会社側としては困惑してしまう退職代行サービスですが、ここで利用する側の考え方についてみていきましょう。
こちらはマイナビが2024年7月に、直近1年に転職した個人を対象に実施した調査です。
退職代行の利用率は、直近1年間(2023年6月以降)に転職した人で16.6%でした。*2
こちらの調査では20代から40代と、幅広い世代になっています。
職種では「営業」が25.9%で最も高く、「クリエイター・エンジニア」が18.8%、「企画・経営・管理・事務」が17.0%と続いています。

(出所:株式会社マイナビ「退職代行サービスに関する調査レポート(2024年)」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20241003_86953/
そして退職代行を利用した離職者の動機です。

(出所:株式会社マイナビ「退職代行サービスに関する調査レポート(2024年)」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20241003_86953/
「退職を引き留められそうだったから」「自分から退職を言い出せる環境ではなかったから」が上位に来ています。
ただこれには環境というだけでなく、若い世代独特の感覚があるように筆者は感じます。
退職代行を使う若手の「本来の性質」
若手ほど退職代行を使う傾向が見えてきました。理由も明らかになってきましたが、深掘りすると、いくつかの要素が見えてきます。
デジタル・ネイティブであるということ
まず、若手社員は「デジタル・ネイティブ」であり、特に学生時代からSNSでのコミュニケーションがメインになっている世代です。実際、社会もそのように進化してきました。
博報堂が今年3月に実施した調査によると、暮らしの中で「オンラインでも構わない」シチュエーションと考えるものは以下のようになっています。

https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/117775/
最も多いのが「授業参観」、そして「ご祝儀の受け渡し」となっていますが、それに次いで「退職届の提出」(41.9%)がきており、特に「10~20代」が他の世代より非常に多くなっているのです。
離職の意向を面と向かって伝える場合、当然その理由を聞かれます。一方で離職を考えるということは、介護など余程の外部環境がない限り、今勤めている会社になんらかの不満があるということですから、後ろめたさを感じていると考えられます。
その心理状態で、嘘の理由をでっちあげるにしても正直に話すとしても大きな「気まずさ」を感じ、自分たちのメインツールであるデジタル上で済ませたいという気持ちが強くなるのは不自然なことではありません。
電話が苦手「1億回やってもできない」
上記のように深刻なことを伝える時に対面を苦手とする、SNSが生活のメインになっている世代では、対面どころか「電話」に対する恐怖心すらあります。
電話対応のストレスを理由に「1億回やってもできない」と言い残し、退職したという新入社員の話も紹介されています。*3
そもそも固定電話という概念が彼らにはありません。
それに、携帯電話なら相手が誰かは分かります。メールやSNSのメッセージも同様です。これがデフォルトになっている世代では、そうでない固定電話では「誰が何のためにかけてきたかわからない電話」が恐怖になっているという考え方もあります。*4
余裕ができた時、気が向いた時に返事をすれば良いSNSとは訳が違うのです。
そうすると電話はおろか、対面などもってのほか、となるのは自然なことです。
退職代行を使われたら?
では、退職代行を使われた場合、会社側はどう対応すべきでしょうか?
退職代行の3つの種類
まず退職代行には3つのパターンがあります。*5
- 弁護士事務所=さまざまな理由によって会社側との平穏な交渉ができなかったり、会社に行きたくなかったりする人の依頼を受けて、日程の調整や引き継ぎなどの交渉や調整を行う。弁護士資格を持つ者のみに可能。
- 退職代表ユニオン=企業規模が小さく社内に労働組合がない場合、労働者が加入できる外部の労働組合。会社に対する団体交渉権が認められているため、退職日の調整や未払い賃金の支払い請求などの直接交渉が可能。(裁判は不可)
- 民間の退職代行サービス=できることは、「本人に代わって、会社に退職届を提出する」ことだけ。弁護士事務所や退職代行ユニオンとは異なり、依頼者の代弁者として会社との交渉にあたることはできない。
ことし10月に業界大手の「モームリ」が警視庁の家宅捜索を受けるという事件がありました。容疑は離職を希望する依頼者に違法に弁護士を紹介した「弁護士法違反」というものです。*6
弁護士法では、弁護士でない者が報酬を得るために法的な交渉を第三者にあっせん(周旋)する行為および弁護士があっせんを受けることを禁じています。
もちろん全ての退職代行業者がこのような違法状態にあるかどうかはわかりませんが、弁護士事務所やユニオンでない場合、業者の素性を調べて慎重に対応する必要があります。
委任状や身分証明書を確認する
また、パーソルビジネスプロセスデザインは以下の点を指摘しています。*5
まれではありますが、嫌がらせ目的に第三者が退職代行を使っている可能性があるということです。
退職代行を利用している段階で本人と接触することは難しいでしょう。しかし退職代行がどのような形態であっても、退職代行の依頼を受ける際には必ず委任状や従業員本人の身分証明書のコピーを作っています。よって退職代行にそれらの書類の提示を求めれば、本当の依頼かどうか確認することができます。
そして先ほどもご紹介したように、民間の退職代行サービスは離職の意向を伝えることはできても、条件交渉や法的な介入をする資格はない、ということに留意してください。
正直なところ、退職代行を利用してまで離職を申し出る社員を引き留めるのは基本的に不可能と考えて良いでしょう。
ただ、どのような業者から連絡が来ているのか、特に民間の代行業者の場合は本人が離職を希望している証拠をきっちりと取って、確認できれば速やかに手続きを進めましょう。
早めの対処が、他の従業員への影響を最小限に留める手段です。
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参考資料
*1
東京商工リサーチ「「退職代行」による退職、大企業の15.7%が経験 利用年代は20代が約6割、50代以上も約1割」
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201481_1527.html
*2
株式会社マイナビ「退職代行サービスに関する調査レポート(2024年)」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20241003_86953/
*3
Yahoo!ニュース「20代の7割以上が「電話に苦手意識」 もう電話での連絡はやめるべきか? 企業の対応は?」
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/4e9eb43a4d5322f02ea8584a9db764ea70b75503
*4
東洋経済オンライン「営業なのに「電話が怖い…」、若者に広がる「電話恐怖症」のリアル。電話が苦手な部下に上司はどう対応すればいいのか?」
https://toyokeizai.net/articles/-/880458
*5
パーソルビジネスプロセスデザイン「退職代行を使われたら?会社としてとるべき対応を解説」
https://www.persol-bd.co.jp/service/product/s-miteras/column/retirement-agency/
*6
日本経済新聞「「退職代行モームリ」を家宅捜索、報酬目的で弁護士紹介疑い 警視庁」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD2214B0S5A021C2000000/
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