オフィス照明で職場が変わる|色温度や輝度で作業効率は変わる?どんな種類がある?

「オフィスの照明」と聞いて、どのような光景を思い浮かべるでしょうか。蛍光灯が整然と並ぶ天井、白く均一な光が広がる室内、そして昼夜を問わず明るく保たれた空間―このようなイメージを持つ方も多いことでしょう。

しかし、オフィス照明は「明るければそれでよい」というものではありません。照明の明るさ(照度)や色調、自然光の取り入れ方によって、働く人の集中力や気分、さらには健康状態にまで影響がおよぶこともあるのです。一方で、照明設計が適切であれば、オフィスの快適性が高まるだけではなく、作業効率の向上や心身の健康にもつながります*1

本稿では、照明がもたらす生理的・心理的な影響を整理しながら、働きやすい職場環境を実現する照明設計のヒントを紹介します。

照明の照度・色調によるオフィスの雰囲気の違い(例)

イラスト:みんちりえ( https://min-chi.material.jp/*2
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オフィス照明が健康や作業効率におよぼす影響

照明環境が人の健康や作業効率に与える影響は、科学的に明らかにされています。ここでは、照度・色調・自然光の3つの観点から、その影響を見ていきましょう。

照度(明るさ)

照度が不足していると、目の疲れや集中力の低下をまねきやすくなります。特に長時間のパソコン作業では、適切な照度が確保されていないと眼精疲労や肩こりの原因になることもあります。

一方で、照度が高い環境では、作業効率が向上する傾向があると報告されています*3。これは、明るい照明によって覚醒度が高まり*4、注意力や判断力が維持しやすくなることが影響していると考えられます。

ただし、過度な明るさは眩しさやストレスの原因にもなるため、バランスが大切です。

色調(光の色味)

照明の色調も、人の心理面・生理面に大きく影響します。

例えば、暖色系(オレンジや黄色がかった光)で暗めの照明のもとでは、疲労感や眠気が増す傾向がありますが、心身がリラックスした状態になりやすいため、メンタル面への負担は少ないとされています。一方、寒色系(青白い光)の照明は覚醒度を高め、集中力を維持しやすい環境を作り出します*4

オフィスでは、作業内容や時間帯に応じて色調を調整することで、より快適な職場環境の実現につながります。

引用)市原真希,他「照明計画と知的生産性に関する研究」大成建設技術センター報.2010,43,P.54-1~54-8*4 図11
https://www.taisei.co.jp/giken/report/2010_43/paper/A043_054.pdf
筆者注

照度*5
750lx=やや精密な視作業をする際の推奨照度
375lx=やや粗~普通の視作業をする際に必要とされる照度

色調(色温度)*5,6
5000K=自然光に近い昼白色
3000K=オレンジがかった温かみのある色
4000K=温かみのある白色

自然光の有無

自然光は、オフィス空間において単なる「明るさ」以上の役割を果たします。

国内の建設技術研究機関などによる実験では、午前中に自然光を浴びた人たちは人工照明のみの環境で過ごした人たちに比べて、眠気の訴えが少なく、覚醒度や集中力の主観評価が高いという結果が得られています。さらに、作業効率の主観評価も向上しており、自然光の活用が働く人のパフォーマンスに良い影響をもたらすことが示されています*4

また、大学の睡眠研究チームによる調査では、照明の照度や色調を自然光の変化に合わせて調整することで、睡眠の質が改善されることが明らかにされています*7。質の高い睡眠は、翌日の覚醒度や集中力の維持にもつながるため、日中の作業効率の向上にもつながります。

さらに、自然光の不足は季節性うつ(冬季うつ)との関連が指摘されており、精神的な健康にも影響をおよぼす可能性があります*8。気分の落ち込みや意欲の低下は、業務への取り組み方にも影響するため、照明環境の整備はメンタルヘルスの観点からも重要です。

このようなことから、窓の配置やブラインドの使い方を工夫して適度に自然光を取り入れる照明設計は、働く人の心身の安定と生産性の向上に役立つ有効な手段といえます。

オフィスの改装・移転時に考えたい照明設計

オフィスの改装や移転は、照明環境を見直す絶好の機会です。ここからは、快適で健康的、かつ作業効率の上がる空間を作るために、特に意識したいポイントを整理していきます。

照度・色調をコントロールできる照明の導入

室内全体を照らす照明は、照度や色調を自由に調整できるタイプを導入するのがおすすめです。時間帯や作業内容に応じて光の強さや色味を変えることで、より快適な照明環境を実現できます。

自然光の変化に合わせて、朝は寒色系で高照度、夕方は暖色系で低照度に切り替えると、体内リズムが整って睡眠の質の向上にもつながります*6,7

スケジュール機能やタイマー機能が搭載された照明システムを活用すれば、時間帯に応じた調光・調色が可能になるため、手間なく快適な光環境を保てます。

壁や天井の色にも配慮する

室内の明るさは、照明の照度だけではなく、壁や天井の色にも大きく左右されます*9

白やベージュなどの淡い色は光をよく反射するため、空間全体の輝度(明るさ)を高める効果があります。一方で、グレーやネイビーなどの暗い色は光を吸収しやすく、同じ照明でも照度が不足しがちになります。

そのため、空間全体の明るさを最適化するために、照明設計と内装の色選びは切り離さずに検討することが重要です。

空間の目的に応じて照度・色調を変える

オフィス内には、集中して作業をするゾーン、リラックスする休憩ゾーン、打ち合わせを行うミーティングゾーンなど、用途の異なる空間が共存しています。それぞれの目的に応じて照度や色調を調節すると、空間の機能性と快適性を高められます。

例えば、集中ゾーンでは寒色系かつ高照度の照明を採用することで、覚醒度を高めて作業効率を向上させる効果が期待できます。一方、休憩ゾーンでは暖色系でやや抑えた照度の照明を使うことで、心身をリラックスさせる空間を作り出せます*4

このようなメリハリのある照明設計をすると、「オン」「オフ」の切り替えがしやすくなるため、職場全体の快適性がより高まります。

自然光を取り入れる工夫

窓の配置やブラインドの使い方を工夫することで、自然光を効果的に取り入れられます。特に、南向きの窓は日照時間が長く、自然光の恩恵を受けやすい一方で、直射日光の影響でまぶしさを感じやすく、また、高温になりやすいため、設計段階での配慮が必要です。

ブラインドやロールスクリーンは、直射日光によるまぶしさや熱の影響を抑えつつ、やわらかい光を室内に取り込むための調光ツールとして有用です。

自然光をうまく活用すれば、照明にかかる費用や環境負荷の削減にもつながるため、オフィスの快適性と企業の持続可能性の両面にメリットをもたらします。

個人差にはタスクライトで対応

年齢や視力、作業内容によって、必要な照度は変わってきます*10

例えば、細かい作業をする場合や加齢にともなう視機能の低下がある場合などは、より高い照度を必要とする傾向があります。このような個別のニーズには、デスクに設置するタスクライト(補助照明)で対応するのが効果的です。

調光・調色可能なタスクライトなら、手もとの明るさを個々で調整できるため、オフィス全体の照明環境を変えることなく、従業員それぞれの状況に応じた快適性を確保できます。

こうした工夫は、作業効率の向上や疲労の軽減にもつながります。

オフィス照明のゾーニング例

空間の種類
(用途)
推奨照度/色合い設計のポイント
ワークスペース(パソコン操作、書類作成など)750ルクス/昼白色~温白色作業面と室内の明るさに差が少ない照明配置。チラつき・反射対策も重要。
会議室(打ち合わせ、プレゼンテーションなど)500ルクス/昼白色~電球色(内装にあわせる)表情を見やすく集中しやすい照明。プロジェクター使用に備え、調光可能な設計が望ましい。
休憩スペース(リラックス、軽い会話など)200~300ルクス/暖色系暖色系の照明で落ち着いた雰囲気を演出。過度な明るさを避け、心理的な安心感を重視。
エントランス(来客対応、通行など)500ルクス/温白色~電球色温かさのある照明で好印象に。案内表示やサインが見やすい照度を確保。
通路・廊下・階段(移動、誘導など)150ルクス/温白色~電球色ある程度の照度を確保して安全性に配慮。色合いを寒色系にする場合は、高照度が望ましい。
出所)Panasonic「電気・建築設備>照明器具>P.L.A.M.>照明設計資料>オフィスの照明」(https://www2.panasonic.biz/jp/lighting/plam/manual/plan/office/)を参考に筆者作成

まとめ|オフィス照明は「働く人の心と身体を支える光」

オフィス照明は、働く人の集中力や心身の健康にも影響を与える重要な環境因子です。快適な照明環境は、企業の生産性や持続可能性を支える基盤ともいえるでしょう。

2028年1月以降、蛍光灯の製造・輸出入は全面禁止になるとされています*11。これは、照明環境を根本的に見直す絶好のチャンスでもあります。

オフィス照明は、単なる設備ではなく職場の質を左右する「戦略的な設計要素」です。この機会にその価値を再認識し、よりよい職場環境の実現に向けて一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

中西 真理

公立大学薬学部卒。薬剤師。薬学修士。医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。

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参考資料

*1
出所)厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>雇用・労働>労働基準>労災補償>労災疾病臨床研究補助金事業>研究成果について>令和元年度新規採択課題>4-2.事務所衛生基準規則に関する研究>令和元年度成果>事務所衛生基準規則に関する研究―妥当性と国際基準との調和 令和元年度 総括・分担研究報告書」P.76-P.99
https://www.mhlw.go.jp/content/001123196.pdf

*2
出所)【フリー素材】みんちりえ【背景イラスト配布サイト】「フリー素材>背景(写実系)>会社のオフィス」
https://min-chi.material.jp/fm/bg_c/medium_office/

*3
出所)小堀富次雄「生産性を考慮に入れた照明経済-経済照度の算出-」照明学会雑誌.1971,55(10),P.601-606
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jieij1917/55/10/55_10_601/_pdf

*4
出所)市原真希,他「照明計画と知的生産性に関する研究」大成建設技術センター報.2010,43,P.54-1~54-8
https://www.taisei.co.jp/giken/report/2010_43/paper/A043_054.pdf

*5
出所)Panasonic「電気・建築設備>照明器具>P.L.A.M.>照明設計資料>オフィスの照明」
https://www2.panasonic.biz/jp/lighting/plam/manual/plan/office/

*6
出所)一般社団法人日本照明工業会「LED照明ナビトップ>LED照明の機能と、人の健康やパフォーマンスと密接な関係をもつ光の話 サーカディアンリズムとLED照明の調光・調色機能」
https://www.jlma.or.jp/led-navi/contents/cont41_circadian.htm

*7
出所)東京都市大学「トピックス一覧(プレスリリース)>トピックス詳細(プレスリリース)>自然光の変化に合わせた室内照明の健康維持への貢献を検証~在宅勤務時代における睡眠の質の向上に向けて~」
https://www.tcu.ac.jp/news/all/20210427-36168/

*8
出所)文部科学省「政策・審議会>審議会情報>科学技術・学術審議会>資源調査分科会>光資源を活用し、創造する科学技術の振興-持続可能な「光の世紀」に向けて->第3章 健康なくらしに寄与する光 2 光の治療的応用―光による生体リズム調節―」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/attach/1333542.htm

*9
出所)厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>雇用・労働>労働基準>労災補償>労災疾病臨床研究補助金事業>研究成果について>令和元年度新規採択課題>4-2.事務所衛生基準規則に関する研究>令和元年度成果>事務所衛生基準規則に関する研究―妥当性と国際基準との調和 令和元年度 総括・分担研究報告書」P.76-P.80
https://www.mhlw.go.jp/content/001123196.pdf

*10
出所)厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」P.17
https://www.mhlw.go.jp/content/000539604.pdf

*11
出所)一般社団法人日本照明工業会「LED照明ナビトップ>蛍光ランプをご使用の皆様へ 全ての一般照明用蛍光ランプ(蛍光灯)について製造・輸出入の禁止が決定」
https://www.jlma.or.jp/led-navi/contents/cont09_mercuryLamp.htm


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この記事を書いた人

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そしきLab編集部

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