【医師が解説】15分の昼寝が午後のパフォーマンスを変える?企業が「ナップスペース」を導入すべき理由とは

近年、健康経営の流れの中で、パワーナップという考え方に注目が集まっています。上手に昼寝をすることで、日中の活力を高める効果が期待できます。

今回の記事では、昼寝によるパフォーマンス向上のメカニズム、昼寝を取り入れた企業の実例、さらに省スペースでも昼寝の場所であるナップスペースを確保できる工夫をご紹介します。

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昼寝の科学的な効用

まずは、昼寝にはどのような効用があるのかについてみていきましょう。

パワーナップとは何か

15〜30分間の短い仮眠によって、仕事上でのエラーや事故が減少し、さらに仕事の満足度の向上、疾病予防や収益改善に役立つことが期待されています。*1
そこで、昼下がりの仮眠、つまり昼寝を積極的にとることで、日中の活力を高めようとする取り組みが近年みられるようになってきています。
このような昼寝がパワーナップと呼ばれているのです。

昼寝の効果、適切な時間は

昼寝にはどのような効果があるのか、さらにどれくらいの時間をかけるとよいのでしょうか。

もともと、人の体温は夕方に最高となり、早朝に最低となるという1日のリズムがあります。
海外の高速道路での居眠り運転が起きやすい時間を調べた研究では、以下のような傾向がみられました。*2

  • 午前4〜6時付近が最多
  • 14〜16時に2つ目のピークあり
  • 18〜20時には眠気や居眠り事故はほぼ発生せず

こうした研究からも、眠気には2つのピークがあると考えられています。

さらに、朝の起床時間から夜の就寝時間までのほぼ真ん中あたり、ちょうど昼食後の時間に眠気が生じることも明らかになっています。
そのため、22時に就寝体制に入る人の場合には、13〜14時あたりに、お昼の眠気がピークになると予想されます。
パワーナップは、こうした昼下がりの眠気を予防する効果が期待されています。

昼寝時間を1時間以上とる方では、心血管疾患や高血圧、メタボリック症候群、アルツハイマー病などのリスクが高まることが報告されています。
逆に、昼寝時間が30分以内であれば、心血管疾患やそれに伴う死亡リスク、アルツハイマー病の罹患リスクも低下するとされています。*3

昼寝で深く眠ってしまうことはNG?

昼寝であまりに長い時間をとってしまうと、自律神経系に関する悪影響が現れることが懸念されます。
私たちの眠りは、浅いものから深いものまで、N1、N2、N3と分けられています。*4
N3の段階では、心拍数や呼吸数、体温など、自律神経系が司るさまざまな体の活動は低下し、安定しています。*4
しかし、起きたタイミングで姿勢を変えたり活動を開始したりすることによって、交感神経系の活動が急激に高まる方向に働きます。
その結果、起床直後には心筋梗塞や心臓を主因とした突然死、脳卒中などが起こりやすくなることが知られています。

昼寝から目覚めた直後にも同様のことがいえます。*3
寝起きに起こりやすい病気を予防しつつパワーナップとして昼寝をとるためには、深い睡眠になる前に目覚めると良いと考えられます。
若い方の場合は、昼寝の長さを15分程度にすると、こうした深い睡眠に入ることの悪影響を予防することができるでしょう。
65歳以上の方の場合には、深い眠りになりにくいため、30分程度の昼寝でも眠気の防止や作業成績の改善、夜の睡眠の質の改善が見込めることも報告されています。

昼寝の場合には、寝付くまでの時間が5分ほどと考えられるので、15〜20分を昼寝のために確保するとよいでしょう。
上手に昼寝を取り入れることで、眠気の解消と午後からのパフォーマンスの向上の両方が期待できます。*5

昼寝が企業の利益と健康経営を支える理由

さて、ここまで昼寝の効能について述べてきました。
次に、企業の利益にとっても昼寝や仮眠が大切である理由について解説しましょう。

昼寝と企業の利益との関連性

近年、「健康経営」という考え方が重要になりつつあります。
これは、従業員の健康を維持し向上させる取り組みが、将来的に企業の利益性を高めることにもつながる投資にもなる、という考え方のもと、従業員の健康管理を経営的な視点からもみて戦略的に取り組むというものです。*6

健康経営の取り組みの目標には、健康問題による出勤時の生産性低下(プレゼティーズム)、健康問題による欠勤(アブセンティーズム)の解消などがあります。*7

従業員の心身の健康を維持し、生き生きと働くためには、オフィスでの休憩や気分転換も欠かせません。
その方法の一つとして、仮眠をとることも挙げられます。
休憩や気分転換をすることで、心身症の予防や改善が期待できます。
休める空間を作ることが従業員の信頼や心理的安全性にもつながります。

また、健康経営は、単なる社員の福利厚生にとどまらず、企業の競争力そのものを高める経営戦略の一環ともなります。

日本の企業でパワーナップを取り入れている例

日本の企業でも、パワーナップを取り入れている事例があります。
繊維製品を主に生産している会社であり、より良い睡眠によってパフォーマンスの向上や健康の維持などを目指しています。

自社に予約制の仮眠ルームを設け、12〜15時を仮眠推奨タイムとしてパワーナップをとることができるようにしています。
女性専用ルームも完備しているとのことです。
集中力の向上や作業時間の短縮、眠気やストレスの軽減などの高評価が得られています。
仮眠室導入後には、従業員の約9割が「ストレスや眠気の解消につながった」と評価していました。*8

昼寝スペースを導入する工夫とは

昼寝の効果が理解できていても、オフィスに昼寝や仮眠をとる「ナップスペース」を設けることは難しいと感じる経営者の方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、以下のような方法をご紹介しましょう。

立ったままでも昼寝ができる仮眠ボックスもある

スペースが乏しい中でも仮眠ができる製品として、立ったままでも仮眠ができるものが開発されています。
特許取得済みの製品で、小型個室、遮音設計がとられています。
立った姿勢でも一定のリラクゼーション効果が得られるという声も多く聞かれているそうです。*9
こうした工夫も、日本のオフィス事情にフィットした現実的な選択肢の一つとなるのではないでしょうか。

リクライニングチェアでの昼寝にもベッドと同等の効果が期待できるのか

昼寝専用のベッドや椅子、ボックスなどが用意できない場合の、実践的な方法がいくつか検討されています。
机にうつ伏せになる方法は、お腹が机に圧迫されたり腰への負担が懸念されるなどの理由から、おすすめしてもよいかどうか疑問が残ります。
一方、椅子の背もたれを倒し、体を地面に対して45°ほどの角度にした姿勢は実用性がありそうです。*10
例えば、専用の枕に頭を乗せて20分の昼寝をとった場合には、昼寝なしよりも、眠気や疲労感が改善したという報告があります。
これらの効果は、ベッドでの昼寝の際とほぼ変わりなく得られるということでした。

オフィス移転・設計時に「ナップスペース」を取り入れるヒント

ここからは、オフィスの移転や設計時に、昼寝空間である「ナップスペース」を取り入れるヒントについて述べていきます。

適切なスペースや設備内容を決める

まずは、空間の設計を行っていきます。
従業員の数やニーズに合わせ、ベッドを置くのか、リクライニングチェアを置くのか、またはソファなどを置くのかなどを決めましょう。
新たに休憩室を設ける際には、衛生委員会などで調査や審議、検討することが望ましいですね。*11

可能であれば男女別のスペースを設ける

労働安全衛生規則の第六百十六条では、仮眠室に関して、以下のように定められています。

「事業者は、夜間に労働者に睡眠を与える必要のあるとき、又は労働者が就業の途中に仮眠することのできる機会があるときは、適当な睡眠又は仮眠の場所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない。

2 事業者は、前項の場所には、寝具、かやその他必要な用品を備え、かつ、疾病感染を予防する措置を講じなければならない。」*12

そのため、昼寝のために仮眠室を設ける場合には、感染症などに配慮した設計にするほか、男女を区別することが望ましいでしょう。
スペース的に難しい場合には、パーテーションなどでの空間の分離なども考慮するとよいのではないでしょうか。
できる限り「休める空間」を用意することが、社員の信頼・心理的安全性にもつながります。

まとめ

パフォーマンスを高めるための休息という発想は、これからの企業に必要不可欠となるでしょう。
ナップスペースは福利厚生ではなく、経営戦略の一部として考えられます。
御社のオフィスは「集中する場所」だけでなく、「回復できる場所」になっているでしょうか。
今回の記事が、従業員が適切に昼寝できるようなオフィス作りの参考になれば幸いです。

この記事を書いた人

木村 香菜

行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医、日本人間ドック・予防医療学会認定医。

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資料一覧

*1 昼寝の功罪とパワーナップ.睡眠と環境.2024;18(1):17-24. p18
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsleepenvi/18/1/18_3/_pdf/-char/ja

*2 昼寝の功罪とパワーナップ.睡眠と環境.2024;18(1):17-24. p19
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsleepenvi/18/1/18_3/_pdf/-char/ja

*3 昼寝の功罪とパワーナップ.睡眠と環境.2024;18(1):17-24. p20
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsleepenvi/18/1/18_3/_pdf/-char/ja

*4 ノンレム睡眠とレム睡眠:小山純正-一般社団法人 日本睡眠学会
https://www.jssr.jp/basicofsleep2

*5 昼寝の功罪とパワーナップ.睡眠と環境.2024;18(1):17-24. p21
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsleepenvi/18/1/18_3/_pdf/-char/ja

*6 健康経営 オフィス レポート p2
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieioffice_report.pdf

*7 健康経営 オフィス レポート p11
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieioffice_report.pdf

*8 第8回 健康投資ワーキンググループ(METI/経済産業省)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/008.html
PDF;
参考資料5 樋口委員提出資料
健康経営 先進企業事例集 p13
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/008_s05_00.pdf

*9 特許庁広報誌「とっきょ」Vol.61(2024年)
VOL.13
立ったまま良質な睡眠が取れるオフィス空間用の仮眠ボックス
人体収納用構造体及び睡眠用筐体(特許第7273496号)など
https://www.jpo.go.jp/news/koho/kohoshi/vol61/09_page1.html

*10 昼寝椅子における短時間仮眠が 睡眠の質,パフォーマンス,眠気に及ぼす影響.労働科学.2019;95(2):56-67. p57
https://www.jstage.jst.go.jp/article/isljsl/95/2/95_56/_pdf/-char/ja

*11 職場における労働衛生基準が変わりました|群馬労働局
https://jsite.mhlw.go.jp/gunma-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/anzen_eisei/jimusyosoku.html
→PDF:職場における労働衛生基準が変わりました-厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署p5
https://jsite.mhlw.go.jp/gunma-roudoukyoku/content/contents/001104500.pdf

*12 労働安全衛生規則(◆昭和47年09月30日労働省令第32号) (睡眠及び仮眠の設備) 第六百十六条
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=74003000&dataType=0&pageNo=11


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