
人間とロボットが同じオフィスで働く—それがふつうの時代に突入しつつあります。
現代のオフィス環境は、かつてないほどの変革期を迎えているのです。
その背景にあるのは、生産年齢人口の減少や先端技術の進展。今後、施設内搬送、清掃、警備などのバックヤード業務をロボットが担うことが増えていくでしょう。
こうした状況は、コスト削減や生産性向上、さらには社員のエンゲージメント向上など、さまざまな効果を産むと考えられています。
そこで、経済産業省が推進する「ロボットフレンドリー環境」という概念がオフィス移転の際に重要な意味を持ち始めています。
それはどのような概念なのでしょうか。また、どのような取り組み事例があるのでしょうか。
この音声コンテンツは、記事の文脈をAIが読み取り独自に対話を重ねて構成したものです。文章の読み上げではなく、流れや意図を汲み取った自然な音声体験をお届けします。※AIで作成しているため、一部誤りや不自然な表現が含まれる場合があります。
ロボットフレンドリーな環境はなぜ必要?
「ロボットフレンドリーな環境の実現」とは、ロボット導入にあたって、ユーザー側の業務プロセスや施設環境を、ロボットを導入しやすい環境へと変革することを指します。*1
これまでロボットメーカーやロボットSIer(システムインテグレーター)は、さまざまなユーザーの多様な希望を個別にきいてロボットやロボットシステムをカスタマイズしていました。
ロボットSIerとは、導入される現場に合わせてロボットシステムをつくる人のことです。*2
その結果、特定のユーザー向けとなったロボットは高コストで、ロボットの社会実装が難しいという状況が生じていました(図1)。*3

出所)デジタル庁(ロボットフレンドリー施設推進機構)「人と共存したロボットの社会実装に向けた課題と現在の取り組みについて」p.4
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/968f930c-8ae0-4380-a50c-b3eac0fe3f4e/2bdf9b2f/20230614_meeting_mobility_roadmap_agenda_04.pdf
しかし、ここで順番を変えたらどうなるでしょう。
既にある環境に後からロボットを導入させていくのではなく、まずはロボットを導入しやすい業務フローやロボットフレンドリーな施設環境を整え、そこにロボットを導入するのです。
そうすれば、ロボットをカスタマイズする必要がなくなりますから、ロボットの仕様が統一化されていき、その価格を下げることができます。そして、市場が拡大し、社会実装が加速する。
それがロボットフレンドリーな環境を整える目的です(図2)。

出所)デジタル庁(ロボットフレンドリー施設推進機構)「人と共存したロボットの社会実装に向けた課題と現在の取り組みについて」p.4
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/968f930c-8ae0-4380-a50c-b3eac0fe3f4e/2bdf9b2f/20230614_meeting_mobility_roadmap_agenda_04.pdf
ロボットフレンドリー施設推進機構の5つの規格とは
経済産業省は、2019年度に「ロボット実装モデル構築推進タスクフォース(TF)」を設置し、「ロボットによる社会変革推進計画」を策定。2020年度からは「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」として、ロボットフレンドリーな環境(以下、「ロボフレ環境」)の整備に取り組んでいます。*1, *4
ロボットフレンドリー施設推進機構(RFA)とは
ロボットフレンドリー施設推進機構(以下、「RFA」)は、あらゆるタイプの施設を対象に、ロボフレ環境の構築を支援するための組織です。*5
規格やガイドラインの制定、マニュアルの発行によって、ベンダーやメーカーが異なるために発生する開発コストや導入コストを下げることを目指しています。
RFAは、ある特定の領域に関係する企業や専門家が自主的に集まって協議し、その合意によって制定された5つのフォーラム規格を発行しています。
その内容をみていきましょう。
「ロボット・エレベーター連携インタフェイス定義 RFA B 0001 : 2022」
ロボットがエレベーターと連携しながらサービスを行っている施設は、特にRFAが発足した2022年以降、年々増え続けており、2024年には全国で74の施設がこうした連携サービスを導入しています。*4
アセットタイプ別に導入施設数をみるとオフィスの増加が著しく、2024年には全国で35の施設が既に導入しています(図3)。

出典)ロボットフレンドリー施設推進機構「お知らせ>ロボットフレンドリーな環境に関する統計について」(2025年6月26日)
https://robot-friendly.org/information/20250626_stats/
ロボット・エレベーター連携に関するRFAの規格は、安価で安全なロボット・エレベーター連携システムを速やかに構築することを目指しています。*5
ロボットは、ロボットサーバーとエレベーターサーバーの間の連携動作によって、メーカーの異なるエレベーターでも、フロアをまたいで自律移動が行えるようになります。
ロボット・エレベーターの主体はあくまでロボット。ロボットが自らエレベーターにコマンドを送信し、エレベーターからの返答をもとに判断して、行動します(図4)。

出所)経済産業省「ロボットフレンドリー 施設編 ロボットフレンドリーな施設環境を目指して」p.2
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/robot/2503_facilitybook.pdf
「ロボット・セキュリティ連携インタフェイス定義 RFA B 0002 : 2023」
これは安価で安全なロボット・セキュリティ連携システムを速やかに構築するためのインタフェイス規格で、以下のようなプロセスがフローチャートで示されています。
ロボットが待機位置へ移動 → 扉の利用登録 → 扉の警備解除 → 扉に対する開要求 → ロボットの通過開始 → 通過完了 → 扉閉状態の確認 → 扉の警備セット → 扉の利用登録解除
また、ロボットシステムとセキュリティシステムとの間のコマンドを定義し、各パラメーターの設定例に関しても記載しています。

出所)経済産業省「ロボットフレンドリー 施設編 ロボットフレンドリーな施設環境を目指して」p.3
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/robot/2503_facilitybook.pdf
「サービスロボットの移動の円滑化 ― 物理環境の分類と指標 建築物およびその敷地内 RFA B 0003 : 2024」
この規格の目的は、建築物やその敷地内でのサービスロボットの移動を円滑化することです。
建築物内での車輪付きロボットの移動を対象とした「ロボフレレベル」(3区分)を規定しており、レベルを計測してマップを色分けすれば、ロボフレ環境を一目で把握することができる「ロボフレマップ」をつくることができます(図6)。
こうした取り組みによって、ロボットメーカーが導入のたびに施設の計測を行う手続きが不要になるため、導入にかかる時間を削減し、施設側・メーカー側の両方の負担を軽減することが期待できます。

出所)経済産業省「ロボットフレンドリー 施設編 ロボットフレンドリーな施設環境を目指して」p.4
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/robot/2503_facilitybook.pdf
「サービスロボットの移動の円滑化 ― ロボットが共有して利用する画像標識 RFA B 0005 : 2024」
この規格では、建築物およびその敷地内におけるサービスロボットの移動を円滑化するために、各社のロボットが共有して利用する画像標識「共有マーカー」を規定しています。

出所)経済産業省「ロボットフレンドリー 施設編 ロボットフレンドリーな施設環境を目指して」p.5
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/robot/2503_facilitybook.pdf
共有マーカーを活用すれば、1つのマーカーを複数のロボットが参照できるようになるため、必要最低限のマーカーだけを施設内に表示することで、きれいな外観を保ちながらロボットを活用することができます。
「ロボット群管理インタフェイス定義 RFA B 0004 : 2024」
複数種・複数台のロボットが1つの建物施設内の特定エリアで同じ時間に活動する場合、ロボット同士がかち合ってしまい、デッドロック(膠着状態)に陥って動けなくなる可能性があります。
そこで、リソース管理サーバーを活用してロボットをスムーズに運用するための規格が、群管理インタフェイス定義です(図8)。

出所)経済産業省「ロボットフレンドリー 施設編 ロボットフレンドリーな施設環境を目指して」p.5
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/robot/2503_facilitybook.pdf
オフィスビルへの導入事例
東京・竹芝の「東京ポートシティ竹芝」は、さまざまな種類のロボットが導入されている、大型複合施設です。*6
コンセプトは、「リアルタイムのデータを活用した最先端の都市型スマートビル」。
このビルに導入されているのが、三菱電機ビルソリューションズの「ロボット移動支援サービス」です。自走式サービスロボットとエレベーターなどを連携させ、警備ロボットや配送ロボットのスムーズなビル内移動をサポートしています。*7
このサービスでは、ロボットから送信される配車リクエストや位置情報に応じて最適なエレベーターを呼び出し、ロボットに対して配車号機や戸開閉情報の通知、乗車・降車タイミングの指示などを行います。*6
こうして人手に頼らず、ロボットがエレベーターを使ってビル内を移動するという環境が実現します。

出所)三菱電機ビルソリューションズ「スマートシティ・ビルソリューション ロボット移動支援サービス」
https://www.mebs.co.jp/smartcity-buildsolution/ville-feuille/robot-assistant/
「東京ポートシティ竹芝」では、自律移動警備ロボット“SQ-2”が下層階を巡回しているほか、ロボフレ環境のさらなる充実を目指し、各種ロボットを使った先進的な実証実験も行われています。

出所)三菱電機ビルソリューソンズ「東京ポートシティ竹芝」https://www.mebs.co.jp/cases/elevator/gallery/94_tokyo_portcity_takeshiba.html
おわりに
人とロボットが共に働くオフィスは、もはや未来の話ではありません。
ロボットフレンドリーな設計は、単なる効率化ではなく、持続可能で柔軟な職場づくりにつながります。
人とロボットが互いの強みを活かしてともに働くロボフレ環境の整備を、今こそ検討してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人

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資料一覧
*1
出所)経済産業省「今年度も、ロボットフレンドリーな環境の実現に向けた取組を強力に推進しています」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/robot/230929_robotfriendly.html
*2
出所)経済産業省関東経済産業局「ロボットに命を吹き込む仕事。ロボットシステムインテグレーター」p.2
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/iot_robot/data/180316robot.pdf
*3
出所)デジタル庁(ロボットフレンドリー施設推進機構)「人と共存したロボットの社会実装に向けた課題と現在の取り組みについて」p.4, 10
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/968f930c-8ae0-4380-a50c-b3eac0fe3f4e/2bdf9b2f/20230614_meeting_mobility_roadmap_agenda_04.pdf
*4
出所)ロボットフレンドリー施設推進機構「お知らせ>ロボットフレンドリーな環境に関する統計について」(2025年6月26日)
https://robot-friendly.org/information/20250626_stats/
*5
出所)経済産業省「ロボットフレンドリー 施設編 ロボットフレンドリーな施設環境を目指して」p.2, 3, 4, 5
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/robot/2503_facilitybook.pdf
*6
出所)三菱電機「特集論文 国内の昇降機設備及びロボット移動支援サービス納入事例」
https://www.giho.mitsubishielectric.co.jp/giho/pdf/2021/2110110.pdf
*7
出所)三菱電機ビルソリューションズ「スマートシティ・ビルソリューション ロボット移動支援サービス」
https://www.mebs.co.jp/smartcity-buildsolution/ville-feuille/robot-assistant/
*8
出所)三菱電機ビルソリューソンズ「東京ポートシティ竹芝」https://www.mebs.co.jp/cases/elevator/gallery/94_tokyo_portcity_takeshiba.html
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