大損害につながることも 会社を守るための雷サージ対策とは

近年、全国的に落雷の発生数が増加しています。

気象会社のデータによれば、過去10年間で落雷件数は1.7倍以上になっています。

そしてもう一つ、見落とされがちなのが「雷サージ」による被害です。

今回は、オフィスにおける雷サージ対策の重要性と、経営リスクの観点から考える「雷への備え方」について掘り下げます。

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なぜ今、「雷対策」が必要なのか

ここ数年、「雷が増えた気がする」と感じている方も多いのではないでしょうか。

筆者の体感としても雷が発生する日が増えたと感じますし、実際、今この原稿を書いている最中も雷がなっています。

気象サービス会社・日本気象の調査によると、2024年までの過去8年間で7月・8月の落雷件数は、近畿地方で約2倍、関東地方では約5倍に増加しています。全国の年間落雷件数は10年前と比較すると、1.7倍になっているというデータもあります。

観測技術の進化によって、これまで見逃されていた落雷も正確に記録されるようになったため、「単純に増えた」とは言い切れない面もあります。

それでも、雷が従来少なかった地域や季節に出現するようになったこと、逆に雷の少なくなった地域もあることから、気候変動が雷の発生パターンに影響を及ぼしている可能性は高いと考えられます。

つまり、私たちは「雷が多い地域に住んでいないから大丈夫」「今は冬だから大丈夫」という従来の感覚を見直す必要があります。

雷は一般的に、地表面が温まりやすく上昇気流が活発になる7月~8月に多く発生します。しかし、日本海側では冬に多くなる傾向があり、夏場の雷よりもエネルギーが強くなることも多いため、夏場に注意しておけば大丈夫というわけではありません(図1)。*1, *2, *3

図1:月別の雷日数の平年値
出所)気象庁「雷の観測と統計」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/thunder1-1.html

雷はもはや、経営リスクの一つとして捉える時代に入っています。

雷による機器損傷は、業務停止・データ損失・修復コストといった二次被害を引き起こすため、オフィスインフラの設計段階での備えが欠かせません。

雷サージがオフィス機器に及ぼす影響

雷が直接建物に落ちなくても、オフィスの中で被害が起きることがあります。その主な原因が「雷サージ」です。

雷サージとは、落雷によって発生した一時的な高電圧・大電流が、電線や通信ケーブルを通じて屋内に侵入する現象です。
一般的に落雷点から2km以内では、電源線や通信線、テレビアンテナなどを伝って建物内に電流が流れ込み、機器内部の電子回路を破壊する可能性があります(図2)。*3, *4

図2:雷サージの概要
出所)NTT株式会社「雷サージとは?発生の仕組み・電圧や被害、対策を詳しく解説」
https://www.rd.ntt/se/media/article/0034.html

雷被害でイメージするのは、直接的な落雷ではないでしょうか。実は、被害の99%は非直撃雷です。*3

一般家庭ではテレビやインターネット機器が壊れることがありますが、オフィスではその影響がさらに深刻です。サーバー、複合機、電話交換機、監視カメラ、空調制御装置、照明システムなど、今やあらゆる設備が電気と通信でつながっています。

つまり、雷サージがひとたび侵入すれば、会社の生命線である情報とインフラが同時に停止するリスクがあるのです。

オフィスの電源トラブルは、単なる機器の故障ではなく、「業務を止めるリスク」「顧客との信頼を損なうリスク」「社員の安全を脅かすリスク」の3つが重なります。

雷サージ対策は、万が一に備える保険ではなく、企業活動を継続するための経営インフラそのものと捉える必要があります。たとえ1回の落雷でも、システム障害によって1時間業務が止まれば、その損失は電気設備の修理費をはるかに上回るでしょう。

損害保険料率算出機構によると、雷を原因とする2022年度の保険金支払い総額は147億円を突破し、2009年度と比べて実に6倍以上に膨れ上がっています。さらに、業務停止・納期遅延・信頼失墜といった、間接損害が発生することも忘れてはいけません。*5

オフィスにおける雷サージ防御の基本

多くの方が「避雷針があれば安心」と考えがちですが、避雷針は建物の外部で雷電流を受け、地面に埋めている金属の電極へ放電させるための外部雷保護であり、主として直撃雷への対策です。

一方、雷サージは落雷に伴って電源線・通信線・アンテナ系などを通じて屋内に生じる過電圧・過電流で、機器の誤動作や絶縁破壊を引き起こします。

このため、屋内側の保護としては、外部雷保護とは目的も構成も異なるサージ対策が必要です。避雷針だけでは、オフィス機器の被害を防ぎ切れません。*4 ,*6

まず挙げられるのが、SPD(Surge Protective Device)の設置です。

SPDを電源線や通信回線など、各系統に設置すると、侵入した雷サージは機器を通らずに逃げ道(バイパス)を通ってアースへ流れるため、機器側の被害を抑制できます。

さらに、接地の等電位化(等電位ボンディング)も重要です。電源アースや通信アースなどの電位を共通化しておけば、雷サージが侵入した場合でもシステム全体のアース電位が同じように上昇し、絶縁破壊が生じません。必要に応じて、絶縁トランスを使い、交流電力や通信信号は通しつつ、サージのみ遮断する方法を併用することも有効です。*4, *6

筆者が勤務していた会社でも、SPDが設置されており、雷が鳴った次の日にはSDPが故障していないかシステム担当者が見回りに来ていました。

当時は「毎回毎回、見回りに来て大変だな」としか思っていませんでしたが、故障したSDPを放置して雷サージの被害が発生してしまえば、その復旧作業は何倍にも大変になるでしょう。

SPDは、一度設置すれば終わりではありません。

SPD自体が故障する可能性も十分あるため、定期的な点検や雷の多い季節後の確認が必要です。筆者の元職場のように、担当者が「雷の翌日はSPDをチェックする」ルールを徹底していたのは、単なる習慣ではなく、リスクマネジメントの一環だったのです。

日常生活で知っておきたい雷の豆知識

オフィスの雷対策が「設備を守る」ための備えだとすれば、日常生活での雷対策は「命を守る」ための知恵です。

身の回りで実際に起きた事例や最新技術を通じて、雷とどう付き合うかをあらためて考えてみましょう。

雷は「監視」できる時代に

雷は突発的に発生する現象ですが、近年では「監視」と「予測」が可能になりつつあります。

例えば、大阪・関西万博会場から約12キロ離れた大阪・梅田では、気象会社が雷リスクをリアルタイムで監視していました。落雷の可能性を検知すると、20分前に会場へ警報を発令し、大屋根リングの遊歩道への立ち入りを制限していたのです。*7

同様に、気象庁が提供する「雷ナウキャスト」も有効です。「雷ナウキャスト」は1km格子単位で雷を解析し、10〜60分先までの落雷リスクを予測できるシステムで、誰でも確認できます(図3)。*8

図3:雷ナウキャスト
出所)気象庁「雷ナウキャストとは」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/thunder2-1.html

テクノロジーを上手に使うことで、雷は「避けられない災害」から「準備できる自然現象」に変わりつつあります。

学校にも広がる雷探知レーダーの活用

近年では、教育現場でも雷への備えが進んでいます。

全国屈指の進学校である灘中学・灘高等学校では、半径50kmの落雷を検知できるレーダーを設置しており、リスクが高まると、職員室とグラウンドにあるランプが点滅し、屋外活動は中止となります。*7

科学的根拠に基づいた判断と安全第一の文化づくりが、子どもたちの命を守っているのです。

気象予報士が教える「雷から命を守る行動」

気象予報士の片平敦氏は、「ゴロゴロと音が聞こえた時点で、すでに雷の射程圏内です」と述べています。

雷は音が聞こえる距離まで接近している場合、落雷する可能性が十分あります。木の下での雨宿りは厳禁で、避雷針のある建物や車の中が安全です。

また、スマートフォンの雨雲レーダーや「雷ナウキャスト」を併用することで、危険の接近を可視化できます。

五感とデジタルの両方を使いこなすことが、有効な手段です。*7, *8

一瞬の災害から守る仕組みが企業の未来を守る

雷は避けられない自然現象ですが、その被害は減らすことができます。「起きてから対処する」姿勢ではなく、「起きる前に備える」という考え方がこれからの時代には欠かせません。

オフィスづくりを通して、そんな発想の転換を進めることこそ、これからの企業に求められる姿勢ではないでしょうか。

この記事を書いた人

田中ぱん

学生のころから地球環境や温暖化に興味があり、大学では環境科学を学ぶ。現在は、環境や農業に関する記事を中心に執筆。臭気判定士。におい・かおり環境協会会員。

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参考資料

*1
出所)産経新聞「『自分は大丈夫は禁物』増える落雷、10年で1.7倍に 多発する夏本番へ『備え強化を』」
https://www.sankei.com/article/20250610-JCLUJ35YRVJ7NMULVC5R76ATL4/

*2
出所)気象庁「雷の観測と統計」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/thunder1-1.html

*3
出所)公益社団法人 全国市有物件災害共済会「公共施設のための雷害対策ガイドブック」P2, P9, P15, P24
https://city-net.or.jp/wp-content/uploads/2022/12/00_koukyou_raigaitaisaku.pdf

*4
出所)NTT株式会社「雷サージとは?発生の仕組み・電圧や被害、対策を詳しく解説」
https://www.rd.ntt/se/media/article/0034.html

*5
出所)日本経済新聞「都市の雷、地球温暖化で16%増 建物・家電など損害保険の支払額6倍」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG025XU0S5A700C2000000/?msockid=2e2c8031d26e604e351f924ed37661bc

*6
出所)パワーアカデミー「第35回 避雷針の仕組み 避雷針は、雷を避けるのでなく誘うもの。」
https://www.power-academy.jp/electronics/familiar/fam03500.html

*7
出所)関西テレビ放送「去年の落雷は400万回以上!『大屋根リング』『灘高校』にも光る監視の目 最新鋭は『空飛ぶ避雷針』」
https://www.ktv.jp/news/feature/250625-rakurai/

*8
出所)気象庁「雷ナウキャストとは」https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/thunder2-1.html


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そしきLab編集部

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