【医師が解説】オフィスの色彩が社員の集中力・創造性を変える?色と脳の科学から考える空間設計

オフィスの壁や机の色合いが、働く人の気分や集中力に大きく影響していることをご存じでしょうか。
色は視覚情報として脳に伝わり、自律神経や感情、さらには作業効率にも作用します。

今回の記事では、青や緑といった色の心理的効果に加え、近年の研究で注目される明度の違いが集中や創造性に及ぼす影響を医学的に解説します。

さらに、会議室・個人デスク・休憩スペースといったシーンに応じた色彩設計の工夫を紹介し、オフィス環境を彩ることで生産性と快適性を高めるヒントを提案します。

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色と脳の科学

ここでは、色がどのように認識されているのか、また私たちにどういった心理的・生理的な影響を与えるのかを説明します。

色が認識されるメカニズム

実は、物自体には色があるわけではありません。
物が光の波長を反射し、人間の脳がそれを色として認識するのです。

例として、レモンを見た際の色の認識の仕方をみていきましょう。
光がレモンに当たると、光の一部はレモンに吸収され、残りは反射されます。
反射された光は、目の角膜という最も外側の部分から目に入ります。
角膜は光を瞳孔に導きます。
次に、光は瞳孔から水晶体へと入っていきます。
水晶体は、目の奥にあり神経細胞の層である網膜まで光を集めます。*1

なお、網膜には、光を感知して反応する、桿体(かんたい)細胞と錐体(すいたい)細胞の2種類があります。
錐体細胞には色を感知する分子である光色素が含まれています。
感知する色には、赤、青、緑があり、それぞれの錐体は眼に見える光である可視光の異なる波長に反応します。

レモンから反射された光は、赤と緑の錐体細胞を活性化します。
錐体は、視神経を通じて脳の視覚野という部分に信号を送ります。
最終的に、活性化した錐体細胞の数と信号の強さを、脳が処理します。
すると、人間はレモンが黄色であると視覚的に認識するのです。

色によってもたらされる心理的・生理的影響

色には、ただその物質の性状を認識するために役立つだけでなく、感情処理や自律神経系の活動を調整する役割があることも知られています。

例えば、緑や青といったいわゆる寒色は、心を落ち着かせる効果が示されています。
特に、青は大脳辺縁系という脳の一部を介して感情的な落ち着きをもたらし、リラックス状態である副交感神経優位の状態へと促すことが報告されています。
また、緑は自然環境を思わせることで穏やかさや安心感を与え、副交感神経系の活動を促すことが知られています。

逆に、暖色である赤は、心理的な緊張を増加させることが示されており、ストレスを軽くしたい場面では避けられることも多いです。
しかし、赤にはモチベーションを高め、積極的な行動を促すという効果もあるとされています。*2
そのため、使い方次第では仕事のやる気を高め、生産性アップにもつながるでしょう。

色彩と集中力・創造性の関係

色には、色相と明度、彩度という3つの性質があり、これらを色の三属性と呼びます。*3
なかでも、明度は色の明るさの度合いを表現したものです。*4
例えば、明度の違いによって、同じ青でも、より暗いものをダークブルー、明るいものをライトブルーなどと呼びます。

学習するにあたって、色彩環境は大きな影響を与えるのではないかと考えられています。
その仮説を検証するため、さまざまな研究が行われています。
赤色や青色、黄色の3色について、明度の変化も合わせ、学習効率に違いをもたらすのかを調べる研究もあります。*5

この研究の結果、知識や技能を習得することを目的とした学習に適している色彩環境としては、ダークブルーやライトブルーだと確認されました。
青色の心理的な効果として、集中力を高め、作業の効率をアップさせるともいわれています。
なかでも、ダークブルーは眼に入ってくる刺激が少なく、落ち着いた印象を与えることから、一つのことに集中する学習には適しています。

また、学習が創造性を重視する分野の場合、ライトレッドやライトイエローなど、明度が高い有彩色が適しているという結果も得られました。*6

このように、壁や床、机の色などを調整することで、集中力や創造性の向上が期待できます。

働く場面ごとの色彩戦略

次に、働く場面ごとにはどのような色彩戦略をとると良いのか説明します。

会議室

積極的に意見を交わし、ブレーンストーミングなどを行う場では、アイデア創出が求められることも多いでしょう。
創作に適した環境を構築するためには、ライトレッドやライトイエローを使用してみましょう。*6
机や壁紙、床の色などでこれらの色彩を取り入れてみるとよいのではないでしょうか。

株式会社陣中 様
https://office.uchida-systems.co.jp/case/case56/

一通り、皆の意見が出揃い、収束させていくような会議の場合は、よりリラックスできるような環境が望ましいと考えられます。
その場合は、青や緑などの寒色系の色彩環境に身を置くことで、心を落ち着かせることができるでしょう。
特に、緑は安心感や穏やかさなどの肯定的な感情をもたらしてくれます。*2

株式会社リガク 山梨工場 様
https://office.uchida-systems.co.jp/case/case84/

会議の種類や議論の段階、目的に合わせ、色彩環境も可変できる設計が理想的といえるでしょう。

個人デスク

一方、個人のデスクにおいてはどのような色彩環境が望ましいのでしょうか。
比較的短時間に集中して行われる情報処理の活動が、色によってどのように変わるのかを調べた研究があります。*7

結果、黄色をメインとしたブースで最も脳の活動量も課題正答率も高かったというデータが得られました。
しかし、黄色ブースの知的活動は脳の活動を高め、課題の正答率を高めるものの、疲労感も強まるとも指摘されています。

一方で、白や青ブースでは、短期間の課題成績や脳活動においては、黄や赤には劣っていたものの、居心地性は高評価である傾向がみられました。

こうしたデータからは、長時間の作業も行われるような個人デスクの場合、青や白を基調とすると安定した作業環境が維持できることが伺えます。
一方で、集中が必要となる時間には、視線の先に黄色の小物などを配置するなど、黄色もアクセントとして取り入れてみるとよいでしょう。

このように、長時間作業と短時間集中の場合とで、色を切り替えられるような工夫をしてみましょう。

株式会社大林組 横浜支店 様
https://office.uchida-systems.co.jp/case/case58/

休憩スペース

休憩スペースでは、ストレス軽減やリフレッシュ効果を期待したいですね。*8
そのため、休憩スペースでは心と身体を回復させるような色彩を取り入れることが大切です。 観葉植物などのグリーンを配置することで、緑によるリラックス効果を得られるでしょう。 ただし、グリーンを取り入れるとしても、インテリアとしてはあまり好ましくないという研究データもあるため、その点には注意が必要かもしれません。*9
壁紙には、白やアイボリーなどの落ち着いた色を取り入れると良いでしょう。*10

創英国際特許法律事務所 武蔵野オフィス 様
https://office.uchida-systems.co.jp/case/case77/

まとめ

色彩は目に見える環境要素であり、脳と心に直接働きかけるものです。
色彩をうまく用いることで、作業効率をアップさせたり、作業を続けやすくなったりといったメリットもあります。

特に、オフィス移転やリニューアル時は色を戦略的に活用すべきタイミングです。
色彩の効果を理解し、適切な場所に使用することは、従業員の集中力・創造性を引き出す投資となります。
次のレイアウト更新や壁面リニューアルのタイミングで、まずは会議室と個人デスク周りから色のチューニングを試してみましょう。

この記事を書いた人

木村 香菜

行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医、日本人間ドック・予防医療学会認定医。

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資料一覧

*1 How Humans See In Color – American Academy of Ophthalmology
https://www.aao.org/eye-health/tips-prevention/how-humans-see-in-color

*2 Takemura Y, Kido K, Morozumi T, Sanuki T, Yao T, Mukai Y. Effects of Different Visual Color Stimuli on Stress Responses in Patients with Dental Phobia. Journal of Clinical Medicine. 2025; 14(19):6745. https://doi.org/10.3390/jcm14196745
https://www.mdpi.com/2077-0383/14/19/6745

*3 色の三属性 | 武蔵野美術大学 造形ファイル
https://zokeifile.musabi.ac.jp/%e8%89%b2%e3%81%ae%e4%b8%89%e5%b1%9e%e6%80%a7/

*4 明度 – めいど | 武蔵野美術大学 造形ファイル
https://zokeifile.musabi.ac.jp/%E6%98%8E%E5%BA%A6/

*5 色彩環境が学習活動にもたらす影響.徳島文理大学研究紀要.2023;105:1-6. p1
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tokusimabunriu/105/0/105_1/_pdf/-char/ja

*6 色彩環境が学習活動にもたらす影響.徳島文理大学研究紀要.2023;105:1-6. p5
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tokusimabunriu/105/0/105_1/_pdf/-char/ja

*7 ブース空間における色彩環境が情報処理活動に与える影響.日本建築学会計画系論文集.2016;81(720):293-301. p299
https://www.jstage.jst.go.jp/article/aija/81/720/81_293/_pdf

*8 オフィス改革ガイドブック | 内閣官房 p18
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/pdf/02_250331.pdf

*9 オフィス空間における室内緑化のストレス緩和に関する研究.職業能力開発研究誌.2017;33(1):69-75. p75
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasvet/33/1/33_69/_pdf/-char/ja

*10 オフィス空間における室内緑化のストレス緩和に関する研究.職業能力開発研究誌.2017;33(1):69-75. p74
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasvet/33/1/33_69/_pdf/-char/ja


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この記事を書いた人

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