【医師が解説】オフィスチェアの選び方は?働き方を工夫し健康を守ろう!

近年、オフィスワーカーの「座りすぎ」が健康に与える影響が注目されています。
長時間の座位行動は、腰痛や肩こりだけでなく、心臓病や糖尿病、さらにはがんなど、さまざまな病気のリスク増加とも関連しています。

この記事では、医師の視点から、姿勢・体圧分散・可動性など健康面に配慮した「オフィスチェア」の選び方を解説し、スタンディングデスクやバランスボールなどのアプローチも取り上げます。

働きながら健康を守るために、ぜひ参考にしてみてください。

長時間の座りっぱなしがもたらす健康リスク

会社で働く方の中には、長時間パソコンに向かう作業をしているケースがあるかもしれません。
あるいは、テレワークの普及で、通勤時間がなくなったことでさらに一日中ほぼ座りっぱなしになってしまったという方も多いのではないでしょうか。

しかし、長時間座っていることで、肥満や心疾患、糖尿病、がん、さらには全ての原因による死亡のリスクが高まる可能性があります。*1
こうした健康リスクを軽減するため、WHO(世界保健機関)の「身体活動および座位行動に関するガイドライン」では、成人の場合は座る時間をなるべく減らし、その時間を他の運動などに使うことが推奨されています。*2

さて、座りっぱなしは全身の健康問題にもつながりますが、腰痛の原因となることも忘れてはいけません。
日本では、厚生労働省による「職場における腰痛予防対策指針」で、長時間の座ったままの姿勢が職場での腰痛発生の原因の一つになると述べられています。*3

そのため、こまめに休憩を挟むことや、姿勢を変えるようにするといった工夫が大切とされています。*4

医師が提案する「オフィスチェア」の条件

とはいえ、事務系の仕事やPC作業中心の仕事の方においては、椅子に座った姿勢が長くなることはほぼ不可避かと思われます。

そこで、オフィスの環境改善として、スタンディングデスクの導入や、オフィスの動線の工夫などで座りすぎを解消する試みもなされています。*5
加えて、オフィスあるいは在宅ワーク時の椅子を工夫することで、快適にかつ健康的に仕事をすることができるでしょう。

作業環境管理の面からは、以下のような条件を満たす椅子を選ぶことが大切です。*6

  • 安定して座ることができ、移動しやすいもの
  • 座面の高さや背もたれが調整できるもの

作業姿勢の観点からは、以下のような点に注意しましょう。*7

  • 椅子に深く正しく座り、足は足裏の全体が接するようにする
  • 長時間同じ姿勢にならないよう、ときおり、立ち上がるか立ち作業をする
  • PC作業をする場合には、ディスプレイが眼から40cm以上の距離をとる

人の腰椎は、前に向かって膨らむ、前彎カーブをとっています。
しかし、脱力した際の座り姿勢では、骨盤が後ろに大きく傾き、腰椎の前彎が著しく減少します。
このような姿勢は、腰痛悪化につながる不良姿勢の一つであると報告されています。

そこで、胸の辺りはリラックスしつつ、骨盤が軽度前傾し、腰椎は自然な前彎を保つようにすれば、腰痛になりにくいと考えられます。*8

これらのような作業環境や姿勢をとることができる椅子は、腰痛や他の健康問題を予防するために役立つでしょう。

先進的なオフィスチェアの健康的活用法を紹介

さて、ここからは、近年開発が進められている、新しいオフィスチェアについてご紹介しましょう。

バランスボールチェア

バランスボールは、以前から医療用のリハビリ道具として使用されてきました。
ダイエット効果、体幹強化に効果的であることや、バランス能力・腰痛の予防などの健康面に改善をもたらすことも報告されています。*9
バランスボール上で運動をしながらの作業効率を調べた研究では、体幹筋を適度に動かしながら、作業効率を下げずに仕事ができる可能性が示唆されています。

一方、バランスボールそのものをオフィスに配置することは、場所の問題などから難しい場合もあります。
そこで、バランスボールによる運動を再現し、かつ場所も取らないオフィスチェアの開発が進められています。
在宅ワークの方で、スペース的に余裕がある場合にはバランスボールを活用しても良いのではないでしょうか。

アクティブワークステーション

電動昇降式デスクやスタンディングデスクやバイクデスク、サイクリングデスクなど、座りっぱなしにならないようにちょっとした身体の動きを促すワークステーションのことを、アクティブワークステーションといいます。*10

アクティブワークステーションによる健康と仕事のパフォーマンスへのプラス効果に関して検討した研究では、アクティブワークステーションは、座っている時間を減少させ、エネルギー消費量を増加させることがわかりました。*11

一方で、仕事のパフォーマンスへの悪影響はなく、認知機能への急性影響もなかったということです。
しかし、コンピューター作業のパフォーマンスに関しては明確な知見はなく、今後も検証が望まれる点であると結論付けられています。

アクティブワークステーションは、特に導入コストやスペースの問題もあるため、部署や働き方に応じた柔軟な導入が望ましいでしょう。

膝当て付き前傾座面椅子

腰椎の自然な前彎カーブを取れるように座ることは大切ですが、多くの人にとっては体幹の筋肉の疲労につながるため難しい場合があります。
膝当てを取り付けた前傾座面椅子は自然な腰のカーブを保ちつつ、体幹筋の疲労は軽くできることが示唆されています。*12

膝当てを椅子に装着することは難しいかもしれませんが、前に傾斜がついたクッションなどを座面に置くことで、同じような環境を再現できるでしょう。

医師の視点で考える「働きながら健康を守る椅子の使い方」

これまで述べてきたような椅子が用意できない場合にも、健康を守るためにはこれらの方法を試してみるとよいでしょう。

30分に1度立ち上がる

まずは、仕事を1時間以内で1サイクルとします。
そして、サイクルとサイクルの間では、10から15分ほどの休憩をはさみましょう。*7
できれば、1時間のサイクル中にも小休止を取りましょう。
タイマーやアプリなどを利用し、30分に1度ほど立ち上がることをおすすめします。

座ったままできるストレッチやエクササイズをする

肩回しや首回しは、座ったまま、オフィスでも行いやすいかと思います。
ここでは、座ったままでできるバランス調整エクササイズをご紹介します。

椅子に腰掛けて、足踏みをするように、お尻を左右交互に上げ下げします。
左右交互に各3回×3セット行いましょう。*13

引用)*13 運送業務で働く人のための 腰痛予防のポイントとエクササイズ|中央労働災害防止協会 p33
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000041115_3.pdf

足台や姿勢補正クッションなどの補助アイテムを使用する

適切な姿勢が保てるように、足台や姿勢補正クッションなどのアイテムを用いるのもよいでしょう。

まとめ

オフィスチェアは、単なる家具ではなく健康の土台となる大切なものです。
働き方が多様化する今こそ、個々の体に合った椅子と座り方を見直し、さらには座りっぱなしにならない工夫をしていくべきと考えられます。

健康と集中力を両立する環境づくりに役立つ椅子の導入を、オフィス移転や改装のタイミングで検討してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

木村 香菜

行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医、日本人間ドック・予防医療学会認定医。

メルマガ限定で配信中

プロが教える“オフィス移転の成功ポイント”

  • 組織づくり・ワークプレイスのトレンドを素早くキャッチ
  • セミナーやイベント情報をいち早くお届け
  • 無料相談会やオフィス診断サービスを優先的にご案内!
無料でメルマガを登録する

資料一覧

*1 van der Ploeg HP, Chey T, Korda RJ, Banks E, Bauman A. Sitting time and all-cause mortality risk in 222 497 Australian adults. Arch Intern Med. 2012 Mar 26;172(6):494-500. doi: 10.1001/archinternmed.2011.2174. PMID: 22450936.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22450936/

*2 身体活動および座位行動に関する ガイドライン WHO
https://www.nibn.go.jp/eiken/info/pdf/WHO_undo_guideline2020.pdf

*3 職場における腰痛予防対策指針|厚生労働省 p11
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002shqg-att/2r9852000002shvs.pdf

*4 職場における腰痛予防対策指針|厚生労働省 p12
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002shqg-att/2r9852000002shvs.pdf

*5 働く人が職場で活動的に過ごすためのポイント|健康づくりの身体活動・運動ガイド2023 p3 事例9
https://www.mhlw.go.jp/content/001195870.pdf

*6 情報機器作業における労働衛生 管理のためのガイドライン|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 p4
https://www.mhlw.go.jp/content/000580827.pdf

*7 情報機器作業における労働衛生 管理のためのガイドライン|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 p5
https://www.mhlw.go.jp/content/000580827.pdf

*8 膝当てを取り付けた前傾座面椅子と従来の椅子間における座位時の体幹筋活動と脊椎カーブの比較.理学療法科学.2011;26(2):263-267. p264
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/26/2/26_2_263/_pdf

*9 腰痛予防用チェア開発のためのバランスボール使用時の筋電計測と認知試験評価.日本機械学会論文集.2021;87(898):1-14.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/transjsme/87/898/87_20-00295/_pdf/-char/ja

*10 改訂第 2 版 『身体活動のメッツ(METs)表』 成人版 p27
https://www.nibn.go.jp/activities/documents/2024Compendium_table_adult_ver1_1_5.pdf

*11 Torbeyns T, Bailey S, Bos I, Meeusen R. Active workstations to fight sedentary behaviour. Sports Med. 2014 Sep;44(9):1261-73. doi: 10.1007/s40279-014-0202-x. PMID: 24842828.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24842828/

*12 膝当てを取り付けた前傾座面椅子と従来の椅子間における座位時の体幹筋活動と脊椎カーブの比較.理学療法科学.2011;26(2):263-267. p263
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/26/2/26_2_263/_pdf

*13 運送業務で働く人のための 腰痛予防のポイントとエクササイズ|中央労働災害防止協会 p33
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000041115_3.pdf


組織力の強化や組織文化が根付くオフィス作りをお考えなら、ウチダシステムズにご相談ください。

企画コンサルティングから設計、構築、運用までトータルな製品・サービス・システムをご提供しています。お客様の課題に寄り添った提案が得意です。

この記事を書いた人

アバター

そしきLab編集部

【この記事は生成AIを利用し、世界のオフィスづくりや働き方に関するニュースをキュレーションしています】