休息も働き方の一部 「勤務間インターバル制度」の最新動向

睡眠には1日の活動で蓄積した疲労やストレスからの回復を促すという、重要な役割があると指摘されています。
一方で、20-59歳の年齢層でみると、推奨される睡眠時間を確保できていない人が40%を超えるという統計があります。
従業員はしっかり休息がとれているのでしょうか。

働き方改革が推進される今、勤務終了から次の勤務開始までの休息時間をどう確保するかは、企業にとって避けて通れない課題となっています。
そこで最近、注目を集めているのが、勤務終了から次の勤務開始までの「インターバル時間」を一定時間確保する「勤務間インターバル制度」です。

2026年を目途に労働基準法などの改正が検討され、制度の義務化も議論されるなど、対応は待ったなしの状況です。
従業員の健康確保と生産性向上を両立させるために、企業はいま何を考え、どう動くべきなのでしょうか。

睡眠時間の重要性と適正睡眠時間

睡眠は健康にとって大切な要素です。
その睡眠が不足すると、どのようなリスクが生じるのでしょうか。
また、適正な睡眠時間の目安はどの程度で、日本人はその睡眠時間が確保できているのでしょうか。

睡眠不足のリスク

睡眠時間が極端に短いと、肥満、高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管疾患、認知症、うつ病などの発症リスクが高まることが、近年の研究で明らかになってきています。*1

日本人の男性労働者約4万人を7年間追跡した調査研究では、睡眠時間が1日5時間未満の人は、5時間以上の人と比べて、肥満になるリスクもメタボリックシンドロームの発症リスクも上昇することが報告されています。

日本の男性労働者2,282人を対象に14年間追跡した調査研究では、睡眠時間が1日6時間未満の人は、7時間以上8時間未満の人と比べて、心筋梗塞、狭心症などの心血管疾患の発症リスクがほぼ5倍になることが報告されています。

また、脳波を用いて実際の睡眠時間を正確に測定した研究では、40~64歳の成人で、睡眠時間が短くなるほど総死亡率が上昇することが明確に示されました。
働き盛りのこの世代は特に睡眠不足に陥りやすく、健康を維持・向上させるためには、十分な睡眠時間を確保することが非常に重要だと考えられています。

適正睡眠時間は?

では、どの程度の睡眠が推奨されているのでしょうか。
複数の調査結果を総合すると、1日あたり7時間前後の睡眠をとっている人が、生活習慣病やうつ病の発症、さらには死亡に至るリスクが最も低いとされています。

また、これまで明らかになった科学的知見によると、成人では、おおよそ6〜8時間が適正な睡眠時間と考えられるため、1日の睡眠時間が少なくとも6時間以上確保できるように努めることが推奨されます。

国が推進する「健康日本21(第三次)」の目標では、睡眠時間が十分に確保できている者の増加が掲げられ、目標値として睡眠時間が6~9時間(60歳以上は6~8時間)の人の割合を60%にすることを目指しています。*2

ただし、適正な睡眠時間には個人差があり、日中の活動量も違います。*1
したがって、日中の眠気や疲れの残り具合を手がかりに、自分にとって本当に必要な睡眠時間を見つけていくことが必要です。

日本人の睡眠時間

では、睡眠時間はどの程度とれているのでしょうか。
厚生労働省の「令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要」によると、1日の平均睡眠時間が6時間以上9時間未満(60歳以上については6時間以上8時間未満)の者の割合は56.0%でした。*2
男女別にみると、男性56.1%、女性55.9%です。

図1 日本人の睡眠時間
出所)厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要」p.20
https://ww2w.mhlw.go.jp/content/10900000/001603146.pdf

一方で、20-59歳に限定して睡眠時間が6時間未満の人の割合をみると、男性では42.8%、女性では40.9%となっています。
また、睡眠時間が6時間未満の人は、男女ともに40-59歳の割合が高い傾向にあります。
男性は、40-49歳が45.5%、50-59歳が48.3%に上ります。女性も40-49歳が41.4%、50-59歳が49.1%と、年代によっては男女とも半数近くの睡眠時間が6時間未満という状況があるのです。

「勤務間インターバル制度」とは

「勤務間インターバル制度」とは、終業時刻から次の始業時刻の間に、一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を設けることで、従業員の生活時間や睡眠時間を確保しようとする制度です。*3

「勤務間インターバル制度」の例

「勤務間インターバル制度」を導入した場合、例えば次の図2のような働き方が考えられます。*4

図2 「勤務間インターバル制度」の例
出所)厚生労働省「労働条件分科会(第193回)参考資料3」p.90
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001378513.pdf

残業後も11時間の休息時間を確保するために、残業時間に応じて始業時刻を繰り下げるという方法です。
この他に、8時~10時は働いていなくても「働いたものとみなす」という方法もあります。

「勤務間インターバル制度」のメリットと効果

「勤務間インターバル制度」には、以下のようなメリットがあります。*5

  1. 従業員の健康維持・向上
    インターバル時間が短くなるにつれてストレス反応が高くなること、起床するときにも疲労感が残ることが研究結果から明らかになっています。
    十分な睡眠時間を確保するためにも、適切なインターバル時間を設けることが、従業員の健康維持・向上につながります。
  2. 従業員の定着・確保
    現在は労働人口が減少しており、人材の確保・定着は重要な経営課題です。
    十分なインターバル時間を確保し、ワーク・ライフ・バランスの充実を図ることが、職場環境の改善、魅力的な職場づくりにつながります。
    また、その結果、人材の定着・確保や離職者が減少することも期待できます。
  3. 生産性の向上
    十分なインターバル時間を確保すれば、仕事とプライベートのそれぞれに集中できるようになり、生活にメリハリをつけることができるようになります。
    その結果、仕事への集中度が高まり、製品・サービスの品質水準が向上するだけでなく、生産性の向上にもつながります。

実際に「勤務間インターバル制度」を導入した企業からは、以下のような声が聞かれます。

  • 従業員の体調がよくなった。
  • 40%を超えていた離職率が6%にまで減少し、人材獲得にも大きな成果をあげている。
  • 定時で仕事を切り上げる意識が非常に高くなり、無駄な時間外労働がなくなった。
  • 従業員アンケートでは、回答者の7割が「勤務間インターバル制度」などの取り組みによって生産性が高まったと回答している。

「勤務間インターバル制度」の導入状況

2019年4月に「労働時間等設定改善法」(労働時間等の改善に関する特別措置法)が改正され、「勤務間インターバル制度」の導入が事業主の努力義務となっています。*4
制度の導入は進んでいるのでしょうか。

次の図3は、「勤務間インターバル制度」の導入状況を表しています。

図3 「勤務間インターバル制度」の導入状況
出所)厚生労働省「労働条件分科会(第193回)参考資料3」p.91
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001378513.pdf

2024年の導入率はわずか5.7%、「導入を予定又は検討している」は15.6%で、それらを合わせても21.3%にすぎません。

「勤務間インターバル制度」改正の方向性と取り組みの方向性

2026年を目途に労働基準法などの改正が検討されており、「勤務間インターバル制度」についても議論されています。*6

労働基準法などの改正を前提とした「労働基準関係法制研究会」の報告書に記載されている方向性をみていきましょう。*4

抜本的な導入促進と義務化を視野に

報告書には、「勤務間インターバル制度」の抜本的な導入促進と、義務化、法規制の強化について検討する必要があるという方向性が示されています。

まず基本は、勤務終了から次の勤務開始まで「11時間の休息時間」を確保することを原則とする案です。

ただし、すべての職種で一律に適用するのは難しいため、制度の対象外とする職種を設けたり、やむを得ず11時間を確保できなかった場合の代替措置を用意したりするなど、法令や各企業の労使合意によって柔軟に運用することが想定されています。

インターバル時間を確保できなかった場合の代替措置については、健康観察や面接指導といった事後的なフォローにとどまるのではなく、代償休暇の付与など、実際に労働から解放される時間を確保することが望ましいとされています。
また、代替措置を認める回数の上限については、各事業場で労使協議により定めるべきだという考え方も示されています。

一方で、勤務間インターバルを11時間より短く設定する代わりに、柔軟な対応の範囲を限定するという考え方もあります。
また、制度の導入にあたっては、すぐに全面実施するのではなく、一定の経過措置期間を設け、段階的に施行していく案も検討されています。

いずれの場合も、多くの企業が無理なく制度を導入できる形でスタートし、徐々に実効性を高めていくことが重要とされています。

義務化の度合い

また、勤務間インターバル制度をどこまで「義務」とするかについても、いくつかの考え方が示されています。

たとえば、労働基準法によって強制的な義務として定める案がある一方、労働時間等設定改善法などで制度の導入を義務づけたり、勤務間インターバルを確保するよう事業主に配慮を求める規定を設けたりする案もあります。

さらに、労働基準法上、勤務間インターバル制度を就業規則の記載事項に位置づけ、行政指導などを通じて普及を図る方法や、現在ある抽象的な努力義務を、より具体的な内容に整理するという考え方も示されています。

このように、義務化の在り方には複数の選択肢があり、さまざまな手段を踏まえた慎重な検討が必要だと述べられてます。

企業が早急に取り組むべきこと

勤務間インターバル制度が義務化されれば、企業の対応不足は大きなリスクになります。*6
パーソルは、罰則を回避し競争力を維持するために、以下のような準備を早めにすることを提唱しています。

  • PCログなどの客観的データを活用して勤務間インターバルの実態を把握・可視化すること
  • 法改正を待たずにインターバル時間を確保するための具体的なルールを盛り込んだ就業規則を整備し試行運用を始めること
  • インターバル不足が起きやすい部署では業務配分の見直しや属人化の解消を進め、残業そのものを減らすこと
  • 制度は健康確保を目的とした「義務」となる可能性が高いため、単なる努力義務と捉えず、リスク回避の準備を進めること

おわりに

「勤務間インターバル制度」に関しては、単なる制度対応に終始するのではなく、「休息も働き方の一部」と捉える発想の転換が企業に求められています。

法改正を見据え、従業員の健康と生産性を守る仕組みづくりに、今こそ主体的に取り組んでみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

横内 美保子

博士(文学)。総合政策学部などで准教授、教授を歴任。専門は日本語学、日本語教育。高等教育の他、文部科学省、外務省、厚生労働省などのプログラムに関わり、日本語教師育成、教材開発、リカレント教育、外国人就労支援、ボランティアのサポートなどに携わる。パラレルワーカーとして、ウェブライター、編集者、ディレクターとしても働いている。
X:よこうちみほこ Facebook:よこうちみほこ

資料一覧

*1
出所)健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(2024年2月)p.11
https://www.dietitian.or.jp/trends/upload/data/342_Guide.pdf
*2
出所)厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要」p.20
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001603146.pdf
*3
出所)厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト「勤務間インターバル制度とは」
https://work-holiday.mhlw.go.jp/interval/
*4
出所)厚生労働省「労働条件分科会(第193回)参考資料3」p.16 p.90, 91 p.94
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001378513.pdf
*5
出所)厚生労働省「勤務間インターバル制度が従業員の働き方 休み方を変える」p.2
https://work-holiday.mhlw.go.jp/material/pdf/category1/0104004.pdf
*6
出所)パーソル ビジネスプロセスデザイン「2026年法改正?勤務間インターバルの義務化と対策について解説」(公開:2025年12月4日 更新日:2025年12月11日) 
https://www.persol-bd.co.jp/service/product/s-miteras/column/interval/


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