
働き方改革が進むなかで、私たちのワークスタイルはますます多様になっています。
しかし、集中力や効率を追い求めるだけでは、長く健やかに働き続けることは難しくなりつつあります。
近年注目される「リカバリー(回復)」という視点は、仕事で生じた心身の負荷を適切に癒し、翌日のパフォーマンスを高めるための重要な要素です。
この記事では、リカバリーを前提としたオフィスづくりや働き方を紹介します。
この音声コンテンツは、記事の文脈をAIが読み取り独自に対話を重ねて構成したものです。文章の読み上げではなく、流れや意図を汲み取った自然な音声体験をお届けします。※AIで作成しているため、一部誤りや不自然な表現が含まれる場合があります。
リカバリーの定義や意義
ここでは、リカバリー経験とはどのようなものか、その意義などについて解説します。
リカバリー経験とは | なぜ仕事から離れる時間が必要なのか
働く人におけるリカバリー経験とは、仕事によって生じた心身の負荷を、就業時間以外の活動によって回復させるプロセスのことです。*1
リカバリー経験によって、心身の健康が保たれ、ワーク・エンゲージメントや仕事のパフォーマンスに良い影響が現れます。*2
近年は、働き方・休み方改革が日本でも推進されるようになってきています。
そうした流れのなかで、疲労の回復や仕事のパフォーマンスを維持するための効率的な休み方の重要性がますます増しています。*1
勤務時間内にもリカバリーは必要? |マイクロブレイクの科学
疲労からのリカバリー、つまり回復のためには、就業時間外に仕事から精神的にも離れ、心理的な距離を保つことなどが重要であるとされています。*2
例えば、就業時間以外に身体的運動や社会的活動をすることで、リカバリー経験が促されることが明らかになっています。*2
本来リカバリーは就業時間外の活動を指します。
しかし、オフィス環境の工夫によって業務中に回復を挟むことも生産性向上の鍵になると考えられます。
例えば、頭をフル回転させるような仕事や、集中力を強く使うタスクを続けると、頭が疲れてしまう認知疲労が進みます。
そして、パフォーマンスの低下が引き起こされることが知られています。*3
こうした生産性の低下を改善するために、特に事務作業(ルーチンタスク)または、創造的なタスクの場合、マイクロブレイクをとることが勧められます。 マイクロブレイクは、仕事の合間に、10分以内ほどの短い休憩時間をとることです。 マイクロブレイクを適度にとることで、活力を高め、疲労感を軽減できるでしょう。*4
このように、リカバリー経験によってもたらされる良い効果は、就業時間の後のみならず、短時間の休息や職場の環境を整えることでも得られるといえるでしょう。
医学的・科学的知見を「オフィス環境」に生かす
仕事で疲れたときに、ふとリラックスし、ストレスを和らげることができる環境としては、以下のようなものが挙げられます。
外を眺めることができる窓
仕事に集中して疲れたときに、窓からの眺めを楽しむことによってリラックスし、ストレスをやわらげ、知的生産性を高めることに大きな効果があると考えられます。*5
また、長時間のVDT(visual display terminals:情報機器)作業に従事し、目の疲れを感じた際にも、屋外の遠景に目の焦点を合わせることで、疲れ目の改善効果を感じられるでしょう。*5,6
植物などのオフィスグリーン
オフィスにグリーンを配置することにより、ストレス軽減やリフレッシュ効果の促進が期待できます。7 ただし、あまりにも多すぎる観葉植物などのグリーンは、かえって好ましくない印象を与えてしまうこともあります。*8
オフィスに設置するグリーンは適切な量に留めておくと良いでしょう。
香り(アロマ)
アロマを取り入れることも、快適なオフィスづくりに役立つでしょう。
例えば、グレープフルーツの香りは交感神経を刺激することで、スッキリとした気分になると報告されています。
一方で、ラベンダーの香りは副交感神経の活動を高め、ストレスを軽減するとされています。*9
会議室や執務室など、効率よく作業を進めることが求められる空間ではスッキリとする香りを、休憩室などリラックスが求められる空間では安心するような香りを用いると良いかもしれません。
ただし、香りの感じ方には個人差があるため、従業員の意見も取り入れながら香りを使用するようにしましょう。
リラックスを妨げる要因
一方で、ストレスを感じやすくする要因としては以下のようなものが挙げられます。*5
- 窓からの眺望が好ましくない
- 埃まみれの人工植物
- 照明環境が悪い
- 趣味の悪いインテリア
- 視線が気になって落ち着かないレイアウト
- 散らかったデスクや掲示物が多い空間
窓からの眺めに関しては、企業の努力のみでは変えることが難しい場合もあるでしょう。
しかし、オフィスの清掃をこまめに行う、パーテーションを適切に配置するなどして、これらの要因をできるだけ取り除くようにしたいですね。
「リカバリーできるオフィス」がもたらす経済的なインパクト
休憩時間を有効に利用し、心と身体をリカバリーすることができるオフィスには、以下のようなメリットがあります。
生産性への効果
多くのオフィスでは、お昼休みが従業員にとっての大きな休憩時間になっています。
お昼休みに仮眠をとる、食堂で休憩スペースを利用した方では、昼休みの疲労回復度が高いと自己評価しており、さらに作業効率が向上したと考えている傾向がみられたという報告もあります。*10
離職率の低下・エンゲージメント向上
厚生労働省による調査では、働きやすい職場の要因として、残業が少ないことに次いで柔軟な有休制度が導入・推進されていることが挙げられています。*11
心身ともに疲労から回復するための有給休暇取得ができるような職場では、離職率の低下やエンゲージメントの向上が見込めます。
企業のブランド価値の向上
休憩をとりやすいオフィスを設計することは、企業の「働きやすさ」を示す大きなアピールポイントになります。
働く人の健康や快適性を重視した職場には、以下のような効果が期待できます。
- 働く環境の改善
- 知的生産性の向上
- 優秀な人材の確保
結果として企業のブランド価値を高めます。
さらに、こうしたオフィス環境への投資は、中長期的には不動産価値に反映される可能性もあります。*12
他社事例
ある不動産会社では、商業施設において、従業員が快適に過ごせるように、カフェのような癒しの空間をコンセプトにした従業員休憩室のリニューアルを進めています。
今後も、従業員のモチベーションを高める職場環境作りに注力していく方針です。*13
このように、適切なリカバリーができる職場は、従業員の健康・エンゲージメント・生産性を高め、結果として企業価値や採用力の向上にもつながっていきます。
リカバリーを前提とした働き方の実践例
それでは、ここでは具体的にリカバリー、つまり職場や自宅で回復を取りやすい働き方の実践例について解説します。
小休憩制度を取り入れる
お昼休みなどの長い休み以外にも、例えば10:00-10:15、15:00-15:10を休憩時間として、仕事にメリハリをつけて働く意識付けを行うといった方法があります。*14
休める場所の整備
事業者は、疲労やストレスを効果的に癒すことができるように、できれば横になって休むことができる設備を備えた休憩室等を確保することが推奨されています。*15
可能な範囲で、飲食や雑談、仮眠、安静などで気分転換できる場所を用意できると良いでしょう。*16
出社・在宅でのリカバリー差を埋める工夫
出社している従業員と、在宅ワークをしている従業員の間には、リカバリーできるかどうかという点でも違いが生じます。
まず、在宅ワークの従業員の場合、オフィスに比べるとついつい暗い部屋で作業をしがちになってしまうかもしれません。
そのため、テレワークのガイドラインを参考にし、作業を行うのに支障がない十分な明るさがあるかどうか、従業員に周知しましょう。*17
また、テレワークの際の作業管理として、1時間くらいの作業の間に1、2回の小休止をとることも推奨されています。*18
従業員向けの教育や研修を行う
長時間労働が続くと仕事の効率が低下し、健康障害リスクも高まります。
そのため、仕事以外の時間の重要性や、有給休暇の取得を従業員に促すことも大切です。
教育や研修、社内報などでの周知も有効と考えられます。*19
まとめ
仕事の生産性や創造性を高めるためには、「がんばる」だけでなく、適切に休み、心身を回復させる視点が欠かせません。
科学的な知見を取り入れた環境整備や、短時間休息の制度化など、リカバリーを前提とした仕組みづくりは、従業員の健康保持だけでなく、離職防止や企業価値の向上にもつながります。
リカバリーの視点を組み込んだオフィス作りは、これからの働き方に求められる休み方改革を支える大きな力となるでしょう。
この記事を書いた人

木村 香菜
行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医、日本人間ドック・予防医療学会認定医。

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資料一覧
*1 若年正社員におけるリカバリー経験のプロセスに関する探索的検討.産業・組織心理学研究.2023;36(2):143-156. p143
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaiop/36/2/36_143/_pdf/-char/ja
*2 若年正社員におけるリカバリー経験のプロセスに関する探索的検討.産業・組織心理学研究.2023;36(2):143-156. p144
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaiop/36/2/36_143/_pdf/-char/ja
*3 Chao Wang, et Al.Compensatory Neural Activity in Response to Cognitive Fatigue.Journal of Neuroscience 6 April 2016, 36 (14) 3919-3924.
https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.3652-15.2016
*4 Albulescu P, Macsinga I, Rusu A, Sulea C, Bodnaru A, Tulbure BT. “Give me a break!” A systematic review and meta-analysis on the efficacy of micro-breaks for increasing well-being and performance. PLoS One. 2022 Aug 31;17(8):e0272460.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9432722/
*5 オフィス空間における視覚的品質の評価に関する研究 学生を被験者とした評価グリッド法による視覚的品質の評価.技能科学研究.2018;34(1):110-120. p112
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jptsci/34/0/34_110/_pdf/-char/ja
*6 情報機器作業[安全衛生キーワード]-厚生労働省
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo30_1.html
*7 オフィス改革ガイドブック | 内閣官房 p18
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/pdf/02_250331.pdf
*8 オフィス空間における室内緑化のストレス緩和に関する研究.職業能力開発研究誌.2017;33(1):69-75. p75
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasvet/33/1/33_69/_pdf/-char/ja
*9 アロマテラピーとそのリハビリテーションへの利用の可能性について.保健医療学雑誌.2018;9 (2):127-133. p129
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jalliedhealthsci/9/2/9_127/_pdf
*10 昼休みの利用空間環境が知的生産性に与える影響に関する研究.空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集.2014;8:41-44. p44
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shasetaikai/2014.8/0/2014.8_41/_pdf/-char/ja
*11 「令和7年版 労働経済の分析」を公表します|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_63870.html
→PDF:令和 7年版労働経済の分析 p157
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/25/dl/25-1.pdf
*12 Ⅱ.分野別の取組-国土交通省 p32(6枚目のスライド)
https://www.mlit.go.jp/common/001296855.pdf
(検索結果 – 国土交通省のHPで「分野別の取組」と検索してヒット)
https://www.mlit.go.jp/mlit-search.html?q=%E5%88%86%E9%87%8E%E5%88%A5%E3%81%AE%E5%8F%96%E7%B5%84
*13 Ⅱ.分野別の取組-国土交通省 p34(8枚目のスライド)
https://www.mlit.go.jp/common/001296855.pdf
(検索結果 – 国土交通省のHPで「分野別の取組」と検索してヒット)
https://www.mlit.go.jp/mlit-search.html?q=%E5%88%86%E9%87%8E%E5%88%A5%E3%81%AE%E5%8F%96%E7%B5%84
*14 サイト内検索 | 千葉労働局
https://jsite.mhlw.go.jp/chiba-roudoukyoku/site_kensaku.html
→(検索結果「働き方・休み方改善 ワンポイント事例集」と検索してヒット)
働き方・休み方改善 ワンポイント事例集 p2
https://jsite.mhlw.go.jp/chiba-roudoukyoku/content/contents/000367191.pdf
*15 ・「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」について(◆平成04年07月01日基発第392号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb2144&dataType=1&pageNo=1
*16 健康経営 オフィス レポート p4
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieioffice_report.pdf
*17 テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン |厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/guideline.html
→テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン p20
https://www.mhlw.go.jp/content/000759469.pdf
*18 ポストコロナ」時代におけるテレワークの在り方検討タスクフォース(第1回)|総務省
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/post-corona_digital/02ryutsu18_04000001.html
→資料5 いまさら聞けないテレワークの常識 p47
https://www.soumu.go.jp/main_content/000748251.pdf
*19 意識に問題あり | 働き方・休み方改善ポータルサイト-厚生労働省
https://work-holiday.mhlw.go.jp/thematic/category_1.html
→一般社員の意識「休んでもやることがない、早く帰ってもやることがない」
具体的課題1参照
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