オフィス回帰が進行中|サテライトオフィスやシェアオフィスは今後どうなる?

コロナ禍を経てテレワークは一定程度定着したものの、いま多くの企業で「オフィス回帰」の動きが進んでいます。

そんな中、サテライトオフィスやシェアオフィスは、どのような役割を果たすのでしょうか。

本記事は音声でもお楽しみいただけます!
この音声コンテンツは、記事の文脈をAIが読み取り独自に対話を重ねて構成したものです。文章の読み上げではなく、流れや意図を汲み取った自然な音声体験をお届けします。※AIで作成しているため、一部誤りや不自然な表現が含まれる場合があります。

2025年のテレワーク状況

2025年7月時点のパーソル総合研究所の調査によると、図1に示すように全国のテレワーク実施率は22.5%で、前年同期と比べてほぼ横ばいの状態が続いています。*1

図1:従業員のテレワーク実施率推移
出所)株式会社パーソル総合研究所「第十回・テレワークに関する調査」P.9
https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/telework-survey10.pdf

図1を見ると、コロナ禍以降、テレワークは一定の水準で定着していることがわかります。ここでは、2025年のテレワーク状況とサテライトオフィス・シェアオフィスという新しいオフィスの在り方について、この調査結果をもとに考察してみます。

従業員1万人以上の大手企業では、実施率が34.6%と高水準を維持しているものの、前年からは3.6ポイント減少しており、テレワークの縮小傾向が見られます。

また、テレワーカーの約半数(49.4%)が週1日以下の頻度でしかテレワークを行っておらず、これは前年の43.6%から増加しています。

さらに、35.8%の人が「テレワークの頻度が減った」と回答しており、実施率の横ばいの裏で、実際にはテレワークの活用が後退している実態が浮かび上がります。

この背景には、企業の方針転換があると考えられます。特に大手企業では「原則出社指示」を出す割合が前年比3.6ポイント増の24.4%に達しており、出社回帰の動きがじわじわと広がっていることがうかがえます。

一方で、テレワークを「今後も続けたい」と考える従業員は82.2%と過去最高を記録しており、企業の方針と従業員の希望との間にギャップが生じていることが明らかになっています。この乖離は、今後の人材確保や従業員満足度に影響を及ぼす可能性が高く、企業にとっては無視できない課題となるでしょう。*1

こうしたデータを総合すると、筆者自身は、現在進行している「オフィス回帰」は、単に元の働き方に戻る動きではないと感じています。「リモート or 出社」という二者択一の段階はすでに過ぎ、「本社オフィス」「在宅」「サテライトオフィス・シェアオフィス」という三つの場を、どう組み合わせて設計するかがポイントになるのではないでしょうか。

三つの働く場をどう組み合わせるか

ここでは、サテライトオフィスやシェアオフィスが生み出す価値と、国の事業や実証研究、ユニークな事例を手がかりに、働く場所の組み合わせのヒントを探っていきます。

サテライトオフィスやシェアオフィスのメリットを、箇条書きで見てみましょう。*2, *3, *4

生産性向上・移動時間の削減
営業先や自宅の近くに拠点を置くことで、本社との往復時間を削減し、社員の移動のストレスや疲労を軽減できます。作業時間にもゆとりが生まれ、生産性向上も期待できます。

コスト削減
大きな本社や支店を増やすのではなく、サテライトオフィスやシェアオフィスを利用することで、初期投資を抑えつつ、必要なときに必要なだけ拠点を持てばコストを抑えられます。従業員の交通費の削減にもつながります。

ワークライフバランスと離職防止
自宅や生活圏に近い拠点を用意することで、育児・介護と仕事を両立しやすくなり、優秀な人材の離職を防ぎやすくなります。

人材確保
従業員が働きやすい環境を整えることで、育児や介護などで制約を抱えている人にもアプローチできます。

BCP(事業継続計画)対策
災害や感染症などで本社が機能しなくなっても、複数拠点があれば事業を継続しやすくなります。一極集中リスクを和らげる「保険」としての役割もあります。

企業イメージの向上・地方創生
柔軟な働き方を推進する企業としてのイメージアップが図れますし、都市部に本社を構える企業が地方にサテライトオフィスを設置することは、地方創生への貢献にもつながります。

このように、サテライトオフィスやシェアオフィスは、企業の成長と従業員の幸福を両立させる「戦略的インフラ」として、その価値を高める側面もあります。

地方と都市をつなぐ「お試しサテライトオフィス」

国や自治体もサテライトオフィスを後押しする取り組みを進めています。

自治体が企業にとって魅力的なサテライトオフィスを提供するためには、企業側にどのようなニーズがあるのか把握する必要があります。

この課題を解決するために、総務省は2018年から「お試しサテライトオフィス」という取り組みを行っています。*5

この取り組みを積極的に行っている自治体のひとつが、福岡県北九州市です。同市は「おためしBIZ推進事業」を推進しています。

実際にこの事業の利用者からは多くの人・場所とのつながりが生まれました」「多くの企業・金融機関・大学・スタートアップ等とのミートアップが実現し、ビジネスに繋がっています」との声が寄せられています。*6

地方自治体にとっても、この取り組みは都市部企業の具体的なニーズを把握し、誘致戦略をブラッシュアップする絶好の機会となっているのです。

ユニークなシェアオフィス事例

最近のシェアオフィスは、単なる作業スペースを超えて、独自のコンセプトで差別化を図る施設が増えています。ここでは、個人的に気になったユニークな事例をふたつご紹介します。

まず、ANAグループが手掛ける「ANA WORK CABIN」です。このシェアオフィスの最大の特徴は、空港ラウンジや滑走路をイメージした上質な空間デザインです(図2)。*7

図2:ANA WORK CABIN 3階ラウンジ
出所)LIVE ANA GROUP「なんばとなんばで働く人々に貢献したい。ANAファシリティーズが描く『ANAスカイコネクトなんば』と地域の未来」
https://www.anahd.co.jp/ana_news/2025/10/15/20251015-2.html

受付には空港グランドスタッフ経験者を配置し、ANAグループならではの高いホスピタリティを提供しています。*7

正直なところ、筆者は空港ラウンジを利用したことがないので想像でしかないのですが、ゆったりとしたくつろぎ空間で仕事ができるというのは、なんとも贅沢な体験ではないでしょうか。

もうひとつの事例が愛媛県鬼北町のサテライトオフィスです。「自然と調和しながら、豊かに働く」をテーマに、奈良川のせせらぎと田園風景を眺めながら仕事ができる環境を提供しています。

最も特徴的なのは、サテライトオフィスとしては珍しい宿泊機能を完備していることです。

個人的に、オフィス、しかも行政が管理していると聞くと、単に業務をこなすための無機質な場所というイメージを持ってしまいます。このサテライトオフィスのように、心身ともにリフレッシュしながら集中的に仕事に取り組める環境はとても魅力的です(図3)。*8

図3:宿泊機能を有するサテライトオフィスの内観
出所)鬼北町「鬼北町サテライトオフィス『Be-INN』について」
https://www.town.kihoku.ehime.jp/soshiki/kikaku/20717.html

これらの事例をみると、シェアオフィスが単なる「場所貸し」から、利用者のライフスタイルや価値観に寄り添う「体験提供」へと進化している印象を受けます。

シェアオフィスの「得意な仕事」

シェアオフィスの使い方を考えるうえで参考になる、おもしろい論文があります。早稲田大学・日建設計・鹿島建設などの共同研究で、シェアオフィス設計者・利用者の行動内容や知的生産性を調査したものです。

この研究では、次のような傾向が報告されています。*9

  • シェアオフィスでは、事務作業・アイデア出し・アイデアまとめに費やす時間が、自社オフィスの1.4〜1.9倍程度多く、こうした「単独で行う行動」が全体の98%を占めていた。
  • アイデア出し・アイデアまとめ・集中・リフレッシュはシェアオフィスのほうが「しやすい」、一方で会議やコミュニケーションは自社オフィスのほうが「しやすい」と回答されている。
  • 利用者へのヒアリングでは、「いつもと違う環境だから気分転換になっていい」「シェアオフィスでは思考作業が捗る」といった声が挙がっている。

論文のまとめとして、研究者は「業務の内容やフェーズに応じて、自社オフィスとシェアオフィスを使い分けることが、知的生産性の向上につながると考えられる」と述べています。

この結果を踏まえると、シェアオフィスは「どんな仕事にも使える万能空間」というよりも、アイデア出しや集中が求められる“考える仕事”に向いた場として位置づけると、オフィス全体の設計を考えやすくなりそうです。

これからのオフィス予測

現在進行している「オフィス回帰」の動きは、これからどのような未来につながるのでしょうか。

前述の通り、テレワーク実施率は横ばいを維持しつつも実質的な出社回帰が進んでいることがわかりました。

これは、実は新しい働き方への過渡期を示しているのかもしれません。

在宅勤務では確かに通勤時間が削減され、柔軟な働き方が可能になりました。

一方で、「チームの一体感が感じられない」「相手の気持ちがわかりにくく不安」といったデメリットも浮き彫りになっています。*1

実際、筆者の周囲でも「完全リモートは理想的だと思っていたが、実際にやってみると孤独感や停滞感を感じた」という声を多く聞きます。特に若手社員からは「先輩の仕事ぶりを間近で見られない」「雑談から学ぶ機会がない」といった悩みも聞かれました。

こうした結果を踏まえると、これからのオフィスは「選択と集中」の時代になると予測します。「本社オフィス」「自宅」「サテライトオフィス・シェアオフィス」の3つの働く場を、業務内容や個人の事情に応じて使い分けるハイブリッドワークが今より定着するでしょう。

多様な働き方の選択肢が広がれば、働く人々の価値観やライフスタイルにも、より柔軟性と豊かさがもたらされるはずです。

この予測があたっているかどうかは、未来になってみないとわかりません。

これからの働き方が、個人の幸福と組織の成長を両立させるものへと進化していくなら、それはきっと、誰もが「自分らしく働ける場所」を見つけられる時代の到来を意味しているのだと思います。

この記事を書いた人

田中ぱん

学生のころから地球環境や温暖化に興味があり、大学では環境科学を学ぶ。現在は、環境や農業に関する記事を中心に執筆。臭気判定士。におい・かおり環境協会会員。

メルマガ限定で配信中

プロが教える“オフィス移転の成功ポイント”

  • 組織づくり・ワークプレイスのトレンドを素早くキャッチ
  • セミナーやイベント情報をいち早くお届け
  • 無料相談会やオフィス診断サービスを優先的にご案内!
無料でメルマガを登録する

参考資料

*1
出所)株式会社パーソル総合研究所「第十回・テレワークに関する調査」P.4, P.9, P.10, P.12, P.20~P.21
https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/telework-survey10.pdf

*2
出所)NTTドコモビジネス「シェアオフィスとは?歴史やメリット・活用事例について解説」
https://www.ntt.com/business/services/bs-ss-crm/work-style-innovation/droppin/lp/dc16.html

*3
出所)株式会社 日立ソリューションズ・クリエイト「サテライトオフィスとは? 企業の課題とメリット・デメリット 」
https://www.hitachi-solutions-create.co.jp/column/reform/satellite-office.html

*4
出所)KDDI株式会社「サテライトオフィスとは? 企業戦略における意味とメリットを徹底解説」
https://biz.kddi.com/content/column/smartwork/what-is-satellite-office/

*5
出所)総務省「地域力の創造・地方の再生|お試しサテライトオフィス-地方でのお試し勤務を支援します!」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/satellite-office.html

*6
出所)北九州市「令和7年度北九州市おためしサテライトオフィス公式サイト」
https://www.otameshi-kitaq.jp/

*7
出所)LIVE ANA GROUP「なんばとなんばで働く人々に貢献したい。ANAファシリティーズが描く『ANAスカイコネクトなんば』と地域の未来」
https://www.anahd.co.jp/ana_news/2025/10/15/20251015-2.html

*8
出所)鬼北町「 鬼北町サテライトオフィス「Be-INN」について」
https://www.town.kihoku.ehime.jp/soshiki/kikaku/20717.html

*9
出所)令和元年度大会(札幌)学術講演論文集 第8巻 性能検証・実態調査 編「シェアオフィスの利用による執務者の快適性と生産性に関する研究 (その2)知的生産性に影響を与える要因の考察およびヒアリング調査結果」永島 啓陽, 中村 聡遂, 森田 健太郎, 髙井 映見, 對馬 聖菜, 尾方 壮行, 田辺 新一, 井上 大嗣, 田中 宏昌, 木虎 久隆, 橋本 果歩 P.345~P346, P.348
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shasetaikai/2019.8/0/2019.8_345/_pdf


組織力の強化や組織文化が根付くオフィス作りをお考えなら、ウチダシステムズにご相談ください。

企画コンサルティングから設計、構築、運用までトータルな製品・サービス・システムをご提供しています。お客様の課題に寄り添った提案が得意です。

この記事を書いた人

アバター

そしきLab編集部

【この記事は生成AIを利用し、世界のオフィスづくりや働き方に関するニュースをキュレーションしています】