
オフィスで「午後になると頭がぼんやりする」、「会議中に集中が続かない」と感じることはありませんか。
実はその背景には、室内の二酸化炭素濃度の上昇が関わっている可能性があります。
オフィスの空気は、働く人のパフォーマンスを左右する見えない要素です。
そこで、今回の記事では、呼吸と脳の働きの関係や、二酸化炭素が集中力・判断力に与える影響を医学的に解説します。
さらに、空気の質を改善するためのオフィス設計を紹介し、「空気から働き方を変える」視点を提案します。
この音声コンテンツは、記事の文脈をAIが読み取り独自に対話を重ねて構成したものです。文章の読み上げではなく、流れや意図を汲み取った自然な音声体験をお届けします。※AIで作成しているため、一部誤りや不自然な表現が含まれる場合があります。
呼吸と脳の働き
空気の組成は、窒素が約80%、酸素が約20%、アルゴンが約1%、二酸化炭素は0.03%となっています。*1
そして、人間は呼吸によって空気を身体に取り入れ、生きています。
私たちの身体の細胞の一つ一つのエネルギー代謝の中心的役割をはたすのは、アデノシン三リン酸(ATP)というリボヌクレオチドです。*2
酸素は、このATPを生成し、心臓や脳などの臓器の機能を保つという重要な作用を持っています。*3
一方で、二酸化炭素にも、血液のpHバランスを保つ、呼吸の働きを調整する、ヘモグロビンと酸素の親和性を調節するなどの大切な働きがあります。
なお、pHとは血液が酸性かアルカリ性かを示す値のことです。
ただし、何らかの原因で血液中の二酸化炭素が異常に濃くなってしまうと、さまざまな障害が生じます。
動脈を流れる血液の中に含まれる二酸化炭素の圧が、42mmHgを超える場合には、高炭酸ガス血症と定義されます。
二酸化炭素の圧が45mmHgを超え、酸素の圧力が60mmHg未満の場合には、高炭酸ガス性呼吸不全と診断されます。*4
二酸化炭素が脳の活動に与える影響についても、さまざまな研究が行われています。
例えば、高炭酸ガス血症が起こると、脳の代謝活動が低下することが知られています。
また、脳が低い覚醒状態になる、つまりリラックスし、眠気を感じるような状態になるという報告もあります。
さらに、軽い高炭酸ガス血症は、睡眠の持続時間と効率を改善する可能性があるとも報告されています。*5
つまり、二酸化炭素濃度が高い環境は眠気や頭の重さにつながる懸念があるということになります。
そのため、集中力が要求されるような場面で二酸化炭素濃度が高い環境に身を置いていることは、不適切である可能性があります。
オフィスで起こる二酸化炭素濃度の上昇
ここからは、二酸化炭素濃度がオフィスで高まる原因とその影響について紹介します。
二酸化炭素濃度が上昇する原因
日本では、オフィスの二酸化炭素濃度は1000ppm以下が基準とされています。
なお、ppmとは濃度や割合を示しており、100万分の1を表しています。6 つまり、二酸化炭素濃度1000ppmとは、空気の中のうち、0.1%が二酸化炭素であることになります。 この濃度は、建築物環境衛生管理基準によって定められています。
アメリカの一般的なオフィス100箇所を対象とした調査では、屋外の濃度を400ppmと仮定した場合、室内の二酸化炭素濃度が1000ppmを超えたのはわずか5%だったとされています。
一方で、会議や一部の乗り物などでは、一時的にではあれど高濃度の二酸化炭素濃度になることも示唆されています。
例えば、30〜90分会議を行うと、会議室の二酸化炭素濃度は1900ppmに達することもあります。*8
オフィスで二酸化炭素が上昇する要因としては、以下のようなものが考えられています。
- 気密性が高い構造であること
- 換気率が低いことなど
こうした要因などによって、一時的あるいは長時間、オフィスの二酸化炭素濃度が上昇する可能性があります。
室内の二酸化炭素濃度と集中力との関係
日本でも、室内の二酸化炭素濃度と知的生産性を調べた研究があります。
例えば、室内の二酸化炭素濃度を、600ppm、1500ppm、3500ppmでそれぞれ一定に保った状態と、600ppmから1500ppmあるいは3500ppmに変化させたときの心理的反応や、作業効率を調査したものもあります。*9
調査の結果、二酸化炭素濃度が上がるにつれ、作業量が減少する傾向があることがわかりました。*10

https://www.jstage.jst.go.jp/article/shasetaikai/2018.8/0/2018.8_169/_article/-char/ja
ひいては、二酸化炭素濃度が高いことは、作業性、つまり業務の質や効率に影響を与える可能性が示唆されました。*10
また、アメリカの研究で、室内の二酸化炭素濃度を600、1000、2500ppmにした場合、コンピューターによる意思決定能力テストや健康状態などがどのように変わるのかも調べられています。
この結果、600ppmと比較し、1000ppmの場合には意思決定パフォーマンスが中程度に低下、2500ppmの場合は大幅な低下がみられたとのことです。
ただし、2500ppmでは集中力の指標は改善しており、これは過集中を示している可能性があるのではと考えられました。*8
仕事効率と経済的インパクト
通常の室内環境における範囲内で二酸化炭素濃度が高い場合、空気の質が悪いと感じること、場合によっては頭痛や粘膜炎症などの有病率の増加のほか、仕事のパフォーマンスの低下や欠勤の増加と関連していることも示されています。*8
屋外換気率が低いオフィスで二酸化炭素濃度が上昇すると、集中力低下によるヒューマンエラーや判断ミスにもつながりかねないと考えられます。
特に、1000ppm程度の二酸化炭素に短時間さらされると、二酸化炭素そのものによる、意思決定能力や問題解決能力などの生産性への影響が示唆されています。
このような影響が、個人のレベルから社会経済へも波及することが懸念されており、慎重な対応が必要であると考えられています。*11
こうした理由からも、「空気の質」が企業のパフォーマンスを左右する要素の一つであると認識すべきでしょう。
企業ができる空気質改善の工夫
ここからは、企業が取り組むことができる空気の質改善の工夫をご紹介します。
二酸化炭素濃度を適正に保つための法令
オフィスには空気調和設備を設けていることが大半だと考えられます。
このような場合は、二酸化炭素の量は1000ppm以下にするように空気を浄化することが必要とされています。*7
また、店舗や事務所などで、述べ面積が3000平方メートル以上のものなどは、特定建築物とみなされます。*12
多くのオフィスは特定建築物に該当すると想定されますので、空気環境を2ヶ月以内に1回、検知管方式による二酸化炭素測定器によって測定することが義務付けられています。*6
オフィスレイアウトと工夫
オフィスでのレイアウトの工夫によって、二酸化炭素濃度の上昇防止が期待できます。
まずは、人が密集しすぎないようにする配置をとりましょう。
人が増えるほど、排出される二酸化炭素の量も多くなります。
事務室内で二酸化炭素濃度が高くなる主な原因は、人の呼気だと考えられています。
そのため、事務所のスペースに対する実際の在室人数が妥当であれば 1000ppm を超えないように管理することは可能です。
仮に一時的に超えた場合でも、二酸化炭素濃度の制御が適切に行われていれば、比較的短時間で 1000ppm 以下になると考えられています。*13
また、換気を阻害しないパーティションの配置も重要です。
空気の入口(給気口)と出口(排気口)の場所を確認し、空気の流れに平行になるように配置します。
高いパーティションと壁で囲まれている空間の場合、二酸化炭素濃度を測定しましょう。
もし、濃度が高い場合には空気清浄機やファン(扇風機、サーキュレータ、エアコンの送風機能など)を使い、空気の滞留を防ぎ、換気を改善するようにします。*14

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001054177.pdf
個人レベル、オフィスレベルとしても、機械換気・自然換気の組み合わせを意識することが大切です。
特に、会議室や集中ブースでは特に意識するようにしたいですね。
また、二酸化炭素濃度測定器センサーなどを導入することもよいでしょう。
数値でみえるようになり、二酸化炭素濃度を意識するようになるという心理的な効果も期待できるでしょう。
まとめ
二酸化炭素濃度は、目に見えない職場のリスクとなりえます。
ゆえに、健康経営の一環として、空気の質に投資する価値は十分にあります。
法令や基準を守ることはもちろんですが、オフィスごとの取り組みや意識付けも快適な空間を作るためには大切だと考えられます。
オフィス移転やリニューアルのタイミングで、空気質改善は社員の健康と生産性を守る重要な視点という認識を持ち、レイアウトなどに工夫をしてみるとよいのではないでしょうか。
この記事を書いた人

木村 香菜
行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医、日本人間ドック・予防医療学会認定医。

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資料一覧
*1 私たちのくらし:大気-独立行政法人 環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/taiki/kids/aozora/kurashi_04.html
*2 生き物のエネルギー通貨ATP.1化学と教育.1998;46(6):334-337. p334
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/46/6/46_KJ00003520445/_pdf/-char/ja
*3 Physiology, Oxygen Transport – StatPearls – NCBI Bookshelf
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK538336/
*4 Physiology, Carbon Dioxide Retention – StatPearls – NCBI Bookshelf
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK482456/
*5 Xu F, Uh J, Brier MR, Hart J Jr, Yezhuvath US, Gu H, Yang Y, Lu H. The influence of carbon dioxide on brain activity and metabolism in conscious humans. J Cereb Blood Flow Metab. 2011 Jan;31(1):58-67. doi: 10.1038/jcbfm.2010.153. Epub 2010 Sep 15. PMID: 20842164; PMCID: PMC3049465.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3049465/
*6 残留農薬などの基準値でppmという単位を耳にしますが、どれくらいの量ですか?【食品安全FAQ】-東京都保健医療局
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/anzen/anzen/food_faq/zanryu/zanryu03
*7 建築物環境衛生管理基準について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei10/
*8 Satish U, Mendell MJ, Shekhar K, Hotchi T, Sullivan D, Streufert S, Fisk WJ. Is CO2 an indoor pollutant? Direct effects of low-to-moderate CO2 concentrations on human decision-making performance. Environ Health Perspect. 2012 Dec;120(12):1671-7. doi: 10.1289/ehp.1104789. Epub 2012 Sep 20. PMID: 23008272; PMCID: PMC3548274.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3548274/
*9 CO2 濃度変化及び温熱環境が作業性と生理心理量に及ぼす影響.空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集(2018.9.12-14(名古屋)) p170
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shasetaikai/2018.8/0/2018.8_169/_article/-char/ja
*10 CO2 濃度変化及び温熱環境が作業性と生理心理量に及ぼす影響.空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集(2018.9.12-14(名古屋)) p171
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shasetaikai/2018.8/0/2018.8_169/_article/-char/ja
*11 室内環境中における二酸化炭素の吸入曝露によるヒトへの影響.室内環境.2018;21(2):113-120. p113
https://www.jstage.jst.go.jp/article/siej/21/2/21_113/_pdf
*12 建築物衛生のページ|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000132645.html
*13 事務所作業に係る労働衛生管理及び快適な職場環境整備に関する検討会報告書 p23
https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000662898.pdf
*14 建築衛生の動向と課題-厚生労働省 p35
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001054177.pdf
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