
オフィス環境を整えることで従業員のメンタルと身体の健康が保たれ、生産性向上、すなわちプレゼンティーズムの改善につながることが明らかになっています。
この記事では、医師の視点から健康経営オフィスの効果を解説し、オフィス移転やリニューアルを活用する際のポイントを提案します。
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※AIで作成しているため、読み上げ内容に一部誤りや不自然な表現が含まれる場合があります。
医師がみる健康経営オフィスと従業員の心身の健康との関係
まずは、健康経営オフィスとは何か、さらに従業員の心身の健康にどのような影響を与えるのかを解説します。
健康経営オフィスとは
健康経営とは、従業員の健康を維持・向上させる取り組みです。
従業員の健康管理を経営的な視点から考え、戦略的に実践することで、将来的に会社の利益を高める投資として位置づけられます。*1
健康経営によって従業員、ひいては組織全体が活性化され、最終的には企業の業績や価値の向上にも結びつくことが期待されています。
また、国民のQOL(生活の質)向上や、国民医療費の適正化など、社会課題の解決にも貢献することができると考えられています。
こういった健康経営の視点から、環境を整えたものが健康経営オフィスです。
健康経営オフィスを作ることで、健康を保持・増進する行動を促し従業員の心身のバランスを保ち、活力をアップさせ、一人一人が最大限のパフォーマンスを発揮できることを目指しています。*2
身体や心の不調とオフィス環境の相関
多くの従業員にとって、オフィスは1日の大半を過ごすことになる場所です。
そのため、オフィスでの働き方は従業員の健康に大きな影響を及ぼすこともあります。
例えば、オフィスで長時間同じ体勢でパソコン作業や書類作業を行うことは、頭痛や腰痛、肩こり、眼精疲労の原因となります。*3
また、適切な感染症対策が取られていない場合には、職場で風邪やインフルエンザなどの感染症が流行してしまう懸念もあります。
プレゼンティーズムとコスト試算の紹介
健康経営について考える上では、「プレゼンティーズム」という概念についても知っておきましょう。
プレゼンティーズムとは、欠勤には至らないため表面上は明らかになりにくいものの、健康問題が理由で生産性が低下した状態のことを指します。*4
プレゼンティーズムは、労働損失をもたらすことが知られています。
例えば、平成31年に行われた調査では、何らかの健康上の不調によってプレゼンティーズムに該当する方は調査された人数の33.6%だったことが報告されています。
具体的には、プレゼンティーズムによる労働損失額は以下のようになっていました。*5
- 精神の不調によるもの:約3.5兆円
- 頚部痛・肩こり:約3.1兆円
- 腰痛:約3.0兆円
- 睡眠に関する不調:約2.4兆円
- 眼の不調:約1.8兆円
これらの額をみると、従業員の健康問題が重大な経済損失につながることが分かりますね。
なお、実際に健康問題が原因となる欠勤のことは「アブセンティーズム」と呼ばれます。
プレゼンティーズムとアブセンティーズムは、いずれも従業員のパフォーマンス損失を表す指標です。*4
経済省レポートが示す「健康経営オフィス」の効果
経済産業省による調査レポートで、オフィスにどのような環境が求められているのかについて解説します。
オフィスに求められる環境とは
従業員の健康を支えるオフィス環境づくりには、いくつかの視点が大切です。
例えば、オフィスの緑化などによって、空間が快適だと感じられるようにすることが挙げられます。
オフィスで光や音、香りなどを快適と感じることによって、腰痛や眼精疲労などの運動器・感覚器障害の予防や改善効果が期待できると考えられます。*6
また、自然に立ち仕事スペースの設置など、身体を動かせる仕組みを設けることで、座っている時間を減らし、腰痛や生活習慣病の予防や改善に貢献することも考えられます。*7
オフィスを清潔に保つことも、感染症などの予防につながり、安心して働くための基本となります。
オフィス環境を整えることによって、従業員の働き方や行動に変化がもたらされ、健康の保持増進効果が期待できます。
そして、最終的にはプレゼンティーズムやアブセンティーズムの解消にもつながることが示されているのです。*4
実際のオフィスデザインとその効果
ここでは、実際に企業がどのようなオフィス作りをしているのか実例をご紹介します。
ある流通大手企業は、オフィス内にボルダリングウォールを設置することで、従業員の体を動かすことを促しています。
また、食堂での健康メニューを提供、月に1回食堂で野菜の販売などの取り組みによって、従業員が健康的な食生活をとることができるようにサポートしています。*8
ある食品会社では、従業員が自発的に会社の敷地内の清掃活動に取り組むといった活動を毎朝行っています。
この清掃活動は従業員どうし並びに地域住民とのコミュニケーションをとることに役立っています。
加えて、地域住民にも開放している健康パビリオンもあり、健康意識を高めることにも役立っています。
従業員の充実したライフワークバランスを高めるため、オフィス移転を期に従業員のデスク幅を1.5倍に広くしました。
デスクが広がり、作業効率が向上し、無理のない姿勢で仕事ができるようになりました。
結果として、従業員の快適性や満足感も向上しました。*9
さらに診療所をオフィス内に設けることで、ちょっとした体調不良などでも気軽に診察を受けられる環境を整えています。
健康状態をチェックすることもできるようになっており、従業員の健康意識を高めることに役立っています。
オフィス移転・リニューアルを健康経営のチャンスに変えるためには
健康経営に取り組みたいという思いがある場合、オフィス移転やリニューアルは絶好のチャンスになります。
以下のような工夫をすることによって、オフィスを健康投資の一環として活用していきましょう。
個人の作業環境を整える
多くのオフィスではデスクトップ型あるいはノート型パソコンなどの情報機器を用いていることが多いと考えられます。
そこで、個人のPC環境をまずは整えていきましょう。
なお、情報機器を用いた事務所作業においては、作業に適した環境がガイドラインで定められています。
例えば、机の上の照度(明るさ)は300ルクス以上が目安、太陽光が差し込むときには窓にブラインドをつけるなどの照明の工夫がすすめられています。10 さらに、ディスプレイは眼から40cm以上の距離を保ち、画面の上端は眼の高さまでというように推奨されています。*11
コミュニケーションの場を設ける
適度なリフレッシュのために、従業員同士のコミュニケーションは大切です。
コミュニケーションの場として、カフェスペースを設けることも良いかもしれません。
適切な感染症対策をとった上で、安らげる場所を設置できると良いですね。
感染症対策としては、休憩スペースの使用前後には手指消毒を行う、換気をこまめに行う、あるいは24時間換気システムを設置する、などが考えられます。*12
運動不足解消のための場所を設置
ボルダリングの壁面設置のような大掛かりな設備は、なかなかハードルが高いかもしれません。
しかし、ヨガマットを敷くことができるような場所を用意するだけで、従業員が休憩の時間などに適度なストレッチを行うなどもできるでしょう。
まとめ
今回の記事では、健康経営オフィスがどのように役立つのか、さらにはその具体的な例をご紹介しました。
大規模な修繕をしたり、大きなスペースを用意したりすることは難しい場合もあるでしょう。
そこで、まずは、従業員が快適に働ける環境づくりから始めるのも良いでしょう。
PC作業が多い企業も多いと考えられますので、デスクの高さや照明、椅子の調整などの工夫からスタートしてみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人

木村 香菜
行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医、日本人間ドック・予防医療学会認定医。

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資料一覧
*1 健康経営 オフィス レポート p2
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieioffice_report.pdf
*2 健康経営関連資料・データ(METI/経済産業省)(その他の項目 健康経営オフィスレポートに記載)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkokeiei_data.html
*3 2.パソコン作業による疲れの原因|パソコン利用のアクション・チェックポイント-独立行政法人労働安全衛生総合研究所
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/doc/houkoku/2007_02/checkpoint_jp/02_pasokonsagyou.html
*4 健康経営 オフィス レポート p7
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieioffice_report.pdf
*5 痛みを抱える就労者の実態把握および汎用性のある評価尺度の基礎的検討.厚生労働省科学研究費補助金 慢性の痛み政策研究事業 令和元年度-3年度 分担研究報告書 p52−53
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202115001B-buntan7.pdf
*6 健康経営 オフィス レポート p4
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieioffice_report.pdf
*7 健康経営 オフィス レポート p5
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieioffice_report.pdf
*8 健康経営 オフィス レポート p13
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieioffice_report.pdf
*9 健康経営 オフィス レポート p14
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieioffice_report.pdf
*10 情報機器作業における労働衛生 管理のためのガイドライン p3
https://www.mhlw.go.jp/content/000580827.pdf
*11 情報機器作業における労働衛生 管理のためのガイドライン p5
https://www.mhlw.go.jp/content/000580827.pdf
*12 新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html
組織力の強化や組織文化が根付くオフィス作りをお考えなら、ウチダシステムズにご相談ください。
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