
新しい働き方として注目されている「ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」は、固定席を廃止し、自由な場所で働くスタイルである。そんなイメージを持つ人も多いかもしれませんが、ABWは単なるフリーアドレスとは異なります。
今回は、ABWの定義やフリーアドレスとの違い、導入のメリット・デメリット、実践を支援するサービスまで解説します。
この音声コンテンツは、記事の文脈をAIが読み取り独自に対話を重ねて構成したものです。文章の読み上げではなく、流れや意図を汲み取った自然な音声体験をお届けします。※AIで作成しているため、一部誤りや不自然な表現が含まれる場合があります。
ABWとは?フリーアドレスと何が違う?
ABW(Activity-Based Working)という概念は、オフィスの変革を検討している企業にとって耳にする機会が増えていますが、その意味が正しく理解されているとは限りません。
欧州の専門家がABWについてまとめた冊子によると、「様々な種類の活動を支援するために設計された多様な職場環境を従業員が共有して利用する働き方」と定義されています。
ここで注目すべきは、ABWが「オフィスの形」ではなく「働き方そのもの」に焦点を当てた概念であるという点です。
では、よく混同されがちな「フリーアドレス」とは何が違うのでしょうか?
フリーアドレスは、席を自由に選択できるものの、働き方に応じて環境を選べる選択肢と権利がありません。
一方、ABW の概念では固定席も許容されます。
また、ABWには「固定席型ABW」と呼ばれるスタイルも存在します。これは、座席の自由度こそ低いものの、働く場所の選択肢が豊富な点が特徴です。各自に専用のデスクが割り当てられている一方で、必要に応じて集中ブースやカフェスペース、協業スペースなど、目的に応じた多様なワークスペースを活用することができます(図1)。*1, *2

出所)稲水 伸行「活動に合わせた職場環境の選択が 個人と組織にもたらす影響 ─ Activity Based Working/Office とクリエイティビテ」日本労働研究雑誌 2019年8月号 P.56
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2019/08/pdf/052-062.pdf
「今日は資料づくりに集中したいからブースにこもろう」「午後は他部署と協議があるからカフェエリアに移動しよう」といったように、働き方を選ぶ自由があるというのは非常に魅力的に感じます。
ABWを導入するメリット
ABWをオフィスに導入すると、従来の固定席オフィスにはないメリットが得られます。
クリエイティビティ
職場環境の選択が 個人と組織にもたらす影響を分析した論文によると、選択度が高いほど、個人のクリエイティビティが高くなる傾向があると述べられています1(図2)。*2

出所)稲水 伸行「活動に合わせた職場環境の選択が 個人と組織にもたらす影響 ─ Activity Based Working/Office とクリエイティビテ」日本労働研究雑誌 2019年8月号 P.60
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2019/08/pdf/052-062.pdf
逆に、単純なフリーアドレスのみでは効果が出ない、または逆効果になる可能性もあるとも述べられています。*2
筆者は、部署ごとに島を作るタイプのオフィスレイアウトしか経験したことがありません。
フリーアドレスを経験したことがあるとすれば、職場の飲み会のときの座席くらいです。
「あの人の近くに行きたいけど空いていない」
「あの人とできるだけ離れた所が良い」
「私の隣だけ席が空いているけど、もしかして嫌われてる?」
などなど、いろいろな思惑が重なって、たった数時間の間どこに座るかを決めるのが小さなストレスでした。
これが、1日中、しかも毎日出勤のときに悩まなければならないと思うと、仕事以外のことが気になって集中できないでしょう。もちろんワーカーの性格にもよるでしょうが、筆者の感覚としては、単純なフリーアドレスのみの場合にクリエイティビティが低下することも納得できます。
業務効率改善
ABWの場合、ワーカーは、自身の業務に最適な場所を「自宅」「オフィス内の各エリア」「サードプレイス」などから自ら選んで働くことができます。
業務内容に応じて働く場所を自ら選ぶことで、ワーカーの自律性が高まり、生産性の向上が期待でき、さらには、組織全体の能動的な変革にもつながります。*3
この「選べる」という自由は、単なる移動の自由ではなく、自分で判断する力を育てるトレーニングにもなるのではないでしょうか。その積み重ねで自律的な組織文化を作り出せるのでしょう。
コミュニケーション
ABWの場合、組織の垣根を越えたつながりを促進する効果があります。
人と人の交流を生むオフィス設計によって、新しいアイデアや価値創出が期待できます。*3
三人寄れば文殊の知恵という言葉があるように、人との交流を通して一人では思いつかないような良いアイデアが生まれる可能性は十分あります。
オフィス価値の最大化
働く場所が多様化すれば、オフィススペースの見直しが可能となり、テナント料や光熱費などのコスト削減につながります。*4
ただし、ABWの目的は節約そのものではなく、出社状況や働き方に応じて設備投資を最適化することにあります。削減したコストは、ICTの導入や職場環境の改善に再投資され、結果として企業価値や従業員満足度の向上も期待できます。*3
人材確保
育児・介護・地理的制約のある人にとって、時間や場所に縛られないABWは、魅力的です。
これは、人材の採用や定着において大きな強みとなり、多様な人材の確保にもつながります。*3
少子高齢化が進む日本では、今後ますます「誰もが無理なく働き続けられる仕組み」が重要になります。企業の持続可能性を高める戦略としてもABWは有効です。
ABWを導入するデメリット
メリットがあれば、もちろんデメリットもあります。
マネジメント
ABWでは働く場所や時間の自由度が高まる一方で、業務の進行状況や従業員の動きを把握しづらくなり、マネジメントが難しくなるという課題があります。*4
ABWでは、物理的な姿が見えないことに不安を覚える管理者も少なくないでしょう。実際、筆者の知人で管理業務を行っている人も、マネジメントの難しさは体感しているとのべていました。
コミュニケーション
ABWでは、チャットツールなどを活用するため効率よくやり取りできるという利点がある一方で、コミュニケーションの機会そのものが少なくなる可能性があります。
文章や電話によるやり取りは、対面で行うコミュニケーションよりも細かいニュアンスが伝わり辛く、行き違いが生じやすいと感じる人も多いのではないでしょうか。
ABWではこのようなデメリットが生じることを忘れてはいけません。
セキュリティサービス
ABWでは、働く場所を従業員が自由に選べるため、資料の持ち出しによる情報漏えいのリスクが高まる可能性があります。*4
カフェで仕事をしている人を見かけますが、後ろから見れば内容が丸見えという場面がよくあります。小さなスマホ画面であっても、内容を確認しようと思えばできてしまいます。ABW導入の有無に限らず、セキュリティには気を付けたいところです。
ABWを支援するサービスも登場
ABWの実践に向けて、単にオフィスを設計するだけではなく、「どう運用し、どう改善し続けるか」が重要になっています。
日本人の多くは固定席に慣れてしまっているため、ABWを導入しても結局これまでと変わらない働き方になる可能性も十分にあります。
近年ではABWの導入を支援する総合支援サービスが登場しており、このようなサービスを利用して改革することも有効です。
例えば、株式会社内田洋行が提供する「Smart Office Navigator」は、ABWを支援するさまざまな機能が備わっています。
会議室やミーティングエリアの空き状況を一元的に把握できるほか、社員の予定・在席・位置情報を可視化することで、「会いたい人が今どこにいるのか」「空いている場所はどこか」といった情報を直感的に把握できるようになります。
業務に応じた働く場の選択をスムーズにし、ABWの基本である「自ら働き方を選ぶ」スタイルを技術面から支援します。
また、Microsoft 365環境との連携によってグループ企業間での会議室検索や予約も可能となり、部署や会社の垣根を越えた協業や交流の促進にも貢献します。
会議室の利用状況は、フロアマップ上に可視化され、予約管理や混雑状況の把握もリアルタイムで行えます。さらに、サイネージとの連携により、フロア内の共用ディスプレイから会議室の空き状況をその場で確認することも可能です(図3)。*5

出所)株式会社内田洋行株式会社「内田洋行、KDDIグループ13,000名が働く新本社にSmart Office Navigatorを導入」
https://uchida-systems.co.jp/wp/wp-content/uploads/2026/02/image1.png
SmartOfficeNavigatorに蓄積される利用実績や予約データは、ダッシュボード上で可視化され、将来的なオフィス改善やリニューアル判断のための意思決定にも活用されています。
ABWを単なる理想論で終わらせないためには、こうした仕組みの整備と、現場に根づいた運用の工夫が欠かせません。テクノロジーを活用した見える化や運用支援の進化が、働く場と人の関係をより豊かにしていくことが期待されます。
ABWは“働き方”そのものを変える考え方
ABWは、単なるオフィスのレイアウト変更ではなく、「どこで、どのように働くか」を社員自身が選択する働き方の転換を意味します。
クリエイティビティの向上や業務効率化、柔軟な働き方の実現といったメリットがある一方で、マネジメントやセキュリティなどの課題にも目を向ける必要があります。
こうしたABWを成功させるためには、制度や文化の整備に加えて、運用を支えるツールやシステムの導入も重要です。働き方の多様化が進むいま、ABWは企業が持続可能に成長するための一つの有効な選択肢となるでしょう。

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この記事を書いた人
田中ぱん
学生のころから地球環境や温暖化に興味があり、大学では環境科学を学ぶ。現在は、環境や農業に関する記事を中心に執筆。臭気判定士。におい・かおり環境協会会員。
参考資料
*1
出所)山本 雅康「Juriaan Meelの『The Activity-Based Working Practice Guide』におけるABWの考え方」人間工学 2022 年 58 巻 Supplement 号 P.1~P.2
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jje/58/Supplement/58_S1G3-01/_pdf/-char/ja
*2
出所)稲水 伸行「活動に合わせた職場環境の選択が 個人と組織にもたらす影響 ─ Activity Based Working/Office とクリエイティビテ」日本労働研究雑誌 2019年8月号 P.56~P.60
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2019/08/pdf/052-062.pdf
*3
出所)東京都「ABWオフィス促進事業 」
https://abw-sokushin.jp/
*4
出所)株式会社kubell 「『ABW』とは?新しい働き方のメリット・デメリットや導入手順を事例付きで解説」
https://go.chatwork.com/ja/column/work_evolution/work-evolution-389.html
*5
出所)株式会社内田洋行株式会社「内田洋行、KDDIグループ13,000名が働く新本社にSmartOfficeNavigatorを導入」
https://www.uchida.co.jp/company/news/press/251110a.html
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