【医師が解説】「集中力を保つ脳の仕組み」から考えるオフィス設計とは

集中力を長く維持できるかどうかは、仕事の生産性を左右する大きな要素です。
しかし、私たちの脳は、集中できる時間に限りがあります。

今回の記事では、脳の前頭前野やドーパミンなどの神経伝達物質の働きに着目し、「なぜ集中が途切れるのか」「どうすれば脳が再び集中できるのか」を医学的視点から解説します。

さらに、適度に身体を動かすような仕組み作り、空間デザインや香り、照明といった、脳のメカニズムに即したオフィス設計を紹介します。
そして、働き方の多様化に応じた「集中を支える空間づくり」のヒントを提案します。

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脳の集中力を保つ仕組み

まずは、集中力を維持するメカニズムについて解説します。

前頭前野の役割と集中力の関係

集中力を司る部位として、脳の前の方にある前頭前野(ぜんとうぜんや)という領域が挙げられます。
前頭前野は人間の大脳のなかでは最も新しく、高度に進化した部分で、大脳皮質の約3分の1の体積を占めています。
前頭前野にはさまざまな働きがありますが、集中力を高める役割や、一時的に情報を記憶するワーキングメモリーの役割などを果たしています。*1

しかしながら、疲労に伴い、脳のこうした機能にも影響が現れます。
例えば、注意力や集中力が低下し、脳タスクにおいてエラーが増加することが知られています。*2
分子イメージングの観点からみると、疲労した脳ではグルコース(ブドウ糖)の代謝が低下し、脳活動を調整する神経機構も変化することがわかっています。

神経伝達物質と集中の関係

集中力を理解するためには、神経伝達物質についても知っておきましょう。

神経伝達物質は、神経細胞どうしの情報交換に欠かせないものです。
例えば、ドーパミンは、やる気を高めたり、集中力を調節するなどの働きを持っています。
また、ノルエピネフリンは注意力や集中力を高める作用が知られています。
一方、γ-アミノ酪酸(GABA) は過剰な刺激を抑制し、脳の活動を調節して集中力を高める役割も果たします。*3

これらのような神経伝達物質の分泌バランスがうまく保たれ、人は物事に集中することができるのです。
逆に、これらのバランスが乱れると、集中力が低下する可能性があります。

人の集中持続時間と集中力の回復方法

人が集中力を保つことができる時間については、さまざまな研究が行われています。
授業中に維持できる集中力は、10分間が最も高く、その後は徐々に低下していくという報告もあります。*4

集中力を回復するためには、効果的な休憩も必要です。
一般的には、休憩というと安静、つまりじっとすることが思い浮かぶかもしれません。
しかし、監視作業やVDT(Visual Display Terminal)などの動きが少ない作業では、安静よりも軽い運動の方が心身の疲労回復や作業成績の向上にも有効といわれています。*5

集中を妨げる環境要因

次に、集中力を妨げてしまう環境要因についてみていきます。

通話の声などの音の要因

話し声やキーボード音など、ちょっとした音でも気になってしまう人もいるでしょう。
通話の多い作業を、静かなゾーンで行うと、他の方の集中を妨げる可能性があります。*6

不適切な温熱環境

オフィスの空気の質や温度、匂いなどのさまざまな室内環境要因とプロダクテビティ、つまり生産性には相関があるのではと考えられています。
オフィス環境における生産性を高めるためには、集中して仕事に取り組むことができることも大切な要素であると考えられます。

一方で、オフィスの温熱環境が悪くなり、暑すぎたり寒すぎたりすると働く人が不快になってしまうことがあります。
このような環境では、作業効率の低下や注意力の散漫につながるおそれがあります。*7

休養をとる時間がない

労働の負荷がかかると、疲労によって集中力の低下やミスが増加する恐れがあります。
不調者が増えることを防ぐためには、必要に応じて休養をとることが大切です。
しかし、休養をとる時間を確保することができないような場合には、集中力の低下につながる可能性があります。*8

集中力を高めるオフィス設計のポイント〜ABWも考慮して〜

さて、ここからは集中力を高めるオフィス設計のポイントについて提案していきます。
近年では、オフィスの内外での活動に応じて、柔軟に働くことを前提とした「アクティビティ・ベースド・ワーキング(Activity-based Working、 ABW)という考え方が注目されています。
ABWは、従業員などの働き手が、そのときどきの業務内容に応じて最適な場所を選び、移動しながら働くことを前提としている新しい働き方です。*9

集中を促す空間デザイン

ABWの考え方を取り入れる際には、自分が行おうとする業務に合わせ、適宜、作業場所を移動することが効果的と考えられます。*10

その場合、ソロワーク席や、集中ブースを設置することで集中力を維持する効果が期待できます。 また、座席の配置の工夫として、「背面対向(背中合わせでチーム)」を基本とするなどもありますね。*11

また、集中の妨げになるような音の対策をとることもよいでしょう。
WEB会議ブースなどを設けることで、周囲の音を遮断した上でのWEB会議が可能となります。*12

感覚刺激への配慮

視覚や嗅覚、聴覚といった感覚刺激と、作業効率には相関関係があると考えられています。
仕事における課題に取り組む際、これらの刺激を加えることで、覚醒状態を維持することができます。*13

例えば、適切な照明に調整する、室内の香りを心地よく保つなどの方法が挙げられます。
ラベンダーやカモミール、ローズマリーのエッセンシャルオイルや、コーヒーを思わせる香りの吸入によってストレスが軽減され、仕事や作業の効率が上がることが示されています。

一方で、ペパーミントの使用は、集中力を短期間向上させる効果があるものの、記憶力の向上には役立たないことも示唆されています。

いずれにしても、照明などの視覚的な要素や、心地よい室内の香りなどの感覚刺激によっても、集中力が高められる効果が期待できるのではと考えられます。

脳の回復を助ける仕掛け

集中とリラックスの切り替えができる環境も、脳の回復に役立つと考えられます。
一人一人のモチベーションの向上につながり、働きやすくなると感じることで、健康的なオフィスへの改革にも貢献することでしょう。*14

また、歩行などの「積極的休憩」をとることができるオフィスも集中力を回復させることに繋がります。

長時間座り続けることで、作業への持続的な集中力が妨げられるという脳の特性があります。
運動によって、脳の淡蒼球(たんそうきゅう)という場所を動かし、やる気を起こす原動力になるともいわれています。
立ったり歩いたりするなどで身体を動かすことや、いつもと違う景色を見ることなど、変化を促進することで、淡蒼球は活性化し、仕事の効率が高まると考えられています。*15

例えば、1時間に1度、2〜3分だけでも席を立つ、などの工夫などがあるでしょう。

まとめ

集中力は、個人の努力だけでなく、環境によって大きく左右されるものです。
特に多様な働き方が進む今、誰もが心地よく働けるオフィス環境の整備は、生産性向上だけでなく、社員の健康や満足度にもつながります。
脳の仕組みに基づいたオフィス設計は、医学的にも理にかなったアプローチといえるでしょう。

また、近年ではABWが広まりつつあり、場所や姿勢を柔軟に選べる働き方が今後ますます重要になると考えられます。
そうしたなかでも集中力を保つことができるオフィス作りに取り組む企業は、とても魅力的となるでしょう。

企業が人を中心に考え、集中とリラックスのバランスが取れる空間づくりを意識することが、これからの時代のスタンダードになるのではないでしょうか。

この記事を書いた人

木村 香菜

行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医、日本人間ドック・予防医療学会認定医。

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資料一覧

*1 ストレスと脳 | 生物学科 | 東邦大学
https://www.toho-u.ac.jp/sci/bio/column/029758.html

*2 1.疲労の科学・脳科学と抗疲労製品の開発.2013;Japanese Journal of Biological Psychiatry;24(4): 200-210. p203
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbpjjpp/24/4/24_200/_pdf

*3 Neurotransmitters: What They Are, Functions & Types-Clevelandclinic
https://my.clevelandclinic.org/health/articles/22513-neurotransmitters

*4 西野直樹, 飯尾淳.反復作業におけるヒューマンエラーと集中力の関係. 一般社団法人 社会情報学.2024;2024:197-200. p198
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ssiproceedings/2024/0/2024_197/_pdf/-char/en
(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/ssiproceedings/list/-char/ja に記載あります)

*5 軽運動が監視作業時の覚醒水準と疲労の回復に及ぼす効果.スポーツ心理学研究.2010;37(2):75-87. p76
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspopsy/37/2/37_2010-060/_pdf

*6 ”適所行動” ABW に関わる人間工学.人間工学.2025;61(supplement):3B02-02 2ページ目
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jje/61/Supplement/61_3B01-01/_pdf

*7 オフィス作業の知的集中を高める統合温熱制御の提案.空気調和・衛生工学会論文集.2019;266:1-10. p1
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shase/44/266/44_1/_pdf/-char/en

*8 IT業におけるストレス対処への支援-厚生労働省 中央労働災害防止協会 p27
https://kokoro.mhlw.go.jp/brochure/supporter/files/stresstaisyo22-it.pdf

*9 ”適所行動” ABW に関わる人間工学.人間工学.2025;61(supplement):3B02-02 1ページ目
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jje/61/Supplement/61_3B01-01/_pdf

*10 オフィス改革ガイドブック | 内閣官房 p6
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/pdf/02_250331.pdf
(内閣官房ホームページ検索で「オフィス改革ガイドブック」でヒットします(2025年9月10日時点))
https://www.cas.go.jp/ja_cas/search.html?q=%E3%82%AA%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%B9%E6%94%B9%E9%9D%A9%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF+%7C+%E5%86%85%E9%96%A3%E5%AE%98%E6%88%BF&ie=utf-8&page=1

*11 オフィス改革ガイドブック | 内閣官房 p46
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/pdf/02_250331.pdf
(内閣官房ホームページ検索で「オフィス改革ガイドブック」でヒットします(2025年9月10日時点))
https://www.cas.go.jp/ja_cas/search.html?q=%E3%82%AA%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%B9%E6%94%B9%E9%9D%A9%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF+%7C+%E5%86%85%E9%96%A3%E5%AE%98%E6%88%BF&ie=utf-8&page=1

*12 オフィス改革ガイドブック | 内閣官房 p18
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/pdf/02_250331.pdf
(内閣官房ホームページ検索で「オフィス改革ガイドブック」でヒットします(2025年9月10日時点))
https://www.cas.go.jp/ja_cas/search.html?q=%E3%82%AA%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%B9%E6%94%B9%E9%9D%A9%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF+%7C+%E5%86%85%E9%96%A3%E5%AE%98%E6%88%BF&ie=utf-8&page=1

*13 Li M, Kim N. Exploring multisensory home office design in virtual reality: Effects on task performance, heart rate, and emotion. Acta Psychol (Amst). 2024 Oct;250:104536. doi: 10.1016/j.actpsy.2024.104536. Epub 2024 Oct 28. PMID: 39503105.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0001691824004141?via%3Dihub
(2.2. Sensory stimuli and task performance を参照しています)

*14 オフィス改革ガイドブック | 内閣官房 p61
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/pdf/02_250331.pdf
(内閣官房ホームページ検索で「オフィス改革ガイドブック」でヒットします(2025年9月10日時点))
https://www.cas.go.jp/ja_cas/search.html?q=%E3%82%AA%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%B9%E6%94%B9%E9%9D%A9%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF+%7C+%E5%86%85%E9%96%A3%E5%AE%98%E6%88%BF&ie=utf-8&page=1

*15 知的生産性が向上するウェルネスオフィスサービス.サービスソロジー.2019;6(1):4-11. p10
https://www.jstage.jst.go.jp/article/serviceology/6/1/6_4/_pdf/-char/ja


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