
健康診断が近づくと、「少しでも数値を良くしたい」との思いから、食事の内容を見直したり、お酒を控えたりする方も少なくありません。少し古い調査ですが、健診前に生活習慣を改めた経験が「ある」と答えた人は約6割にのぼり、その内容は「食事制限系」(46.7%)、「禁酒系」(41.2%)が上位を占めています*1。
左:健康診断日前に生活習慣を改めた経験がありますか?
右:健康診断の前日に取り組んだ内容

しかし、生活習慣の改善が検査値に反映されるとは限りません。また、数値を良くしようとする行為が、かえって病気の発見を遅らせることもあります。
この記事では、健康診断直前の行動で、「一時的に変化する可能性がある項目」および「変化がほとんど期待できない項目」を解説します。「健康診断前にやるべきではない行動」も紹介しますので、健診を正しく活用するためのヒントとしてお役立てください。
この音声コンテンツは、記事の文脈をAIが読み取り独自に対話を重ねて構成したものです。文章の読み上げではなく、流れや意図を汲み取った自然な音声体験をお届けします。※AIで作成しているため、一部誤りや不自然な表現が含まれる場合があります。
健康診断1週間前の行動|影響を受けやすい検査値、影響を受けにくい検査値
健康診断前に限らず、生活習慣を見直すことはとても良いことです。ただし、生活習慣の改善が検査値にどのように影響するかを知っておくと、「がんばったのに意味がなかった」という誤解を防ぎやすくなります。
お酒を控える|γ-GTPは下がりにくいが、AST・ALTは下がる可能性がある
γ-GTPは、飲酒量が多いと数値が高くなります。しかし、γ-GTPの半減期(血液中の濃度が半分になるまでの期間)は2〜4週間程度*2なので、数日〜1週間程度の禁酒では大きな変化は期待できません。
一方、γ-GTPと同じく肝機能の指標とされるAST(GOT)・ALT(GPT)は、半減期が数時間〜2日程度*3と短いため、肝機能自体に問題がなければ1週間程度の禁酒でも下がる可能性があります。
https://www.gme.co.jp/column/column144_gamma-gt-is-an-sos-for-the-liver.html
https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/91.html
塩分を控える|血圧が下がる可能性がある
食塩摂取量と血圧は関連があるため、塩分を控えると血圧が下がる可能性があります。実際海外の研究では、減塩で収縮期血圧が5.5mg下がったことや、減塩をして7日目には安定した血圧降下作用が得られたこと*4が報告されています。
ただし、海外の人に比べて日本人は塩分摂取量が多い*5ため、同様の効果を得るためにはかなり厳しい塩分制限が必要と考えられます。
健康的な食事を意識する|空腹時血糖値・中性脂肪は下がるが、LDLコレステロール値はあまり影響を受けない
空腹時血糖値や中性脂肪は、食事内容や空腹時間の影響を受けやすい項目です。そのため、暴飲暴食を避け、栄養バランスの良い食事を心がけると、基礎疾患(糖尿病や脂質異常症など)がない限り正常な範囲に落ち着くことが多いです。
一方、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)は、空腹時血糖値や中性脂肪のように短期間で変化するものではありません。LDLコレステロールを減らすためには、月単位で生活を改善する必要があります。
甘い物を控える|HbA1cは変化しない
HbA1cは、赤血球の色素(ヘモグロビンA)にどれくらいブドウ糖が結合しているかを表す指標で、血糖値が高いほど数値が高くなります。HbA1cが反映するのは、過去1~2ヵ月の平均的な血糖の状態なので、直前に糖分の摂取を控えても数値はほとんど変わりません。
なお、甘い物を控えると、食事が原因で上昇していた空腹時血糖値や中性脂肪の値については改善する可能性があります。ただし、基礎疾患がある場合は、糖分摂取を控えても短期間で改善するのは難しいでしょう。
健康診断1週間前の行動と数値への影響
| 行動 | 改善する可能性がある項目 | 変化を期待できない項目 |
|---|---|---|
| お酒を控える | AST(GOT)・ALT(GPT) | γ-GTP |
| 塩分を控える | 血圧 | ― |
| 健康的な食事を意識する | 空腹時血糖値・中性脂肪 | LDLコレステロール |
| 甘い物を控える | 空腹時血糖値・中性脂肪 | HbA1c |
健康診断前にやるべきではない行動
健康診断前に良かれと思って行ったことが、かえって検査値に悪影響をおよぼしたり、病気の見逃しにつながったりすることもあります。ここからは、避けるべき行為を理由とともに解説します。
絶食・水分制限|脱水で検査値に影響が出るおそれがある
体重を落とすなどの目的で、極端な食事制限・水分制限をすると脱水を起こしやすくなります。体内の水分量が極端に減ると血液が濃縮された状態になるため、ヘモグロビン値(貧血の指標となる項目)が高くなることがあります。また、尿酸値にも影響することがあります*6*7。
下剤の使用|便秘の原因を見落とすおそれがある
体重を減らすために、下剤を濫用して排便を促すのも避けるべきです。「便」は排泄物であり体の一部ではないため、排出したところで根本的な解決にはなりません。
便秘は、腸管が狭くなるような病気―例えば「がん」など―が原因で生じることもあります。重大な疾患を見落とさないためにも、市販薬の使用は最小限にしましょう。
胃薬の使用|受診のタイミングを逃すおそれがある
胃薬を使用しても、通常は検査結果に大きな影響はありません。しかし、市販薬で胃痛や胸やけなどが一時的に改善すると、健康診断で異常を指摘されても受診のタイミングを逃してしまうおそれがあります。検査結果を活かすためにも胃薬の長期連用は避け、再検査をすすめられた場合は早めに医療機関を受診するようにしましょう。
鉄剤の使用|出血性疾患を見逃すおそれがある
貧血は、鉄分の摂取不足だけではなく、出血を伴う疾患(胃潰瘍など)が原因で生じることもあります。市販の鉄剤やサプリメントを服用すると、数日程度で血清鉄(Fe)が高くなることもある*8ため、「異常なし」と判定されてしまう可能性が否定できません。原因そのものを解決するためにも、鉄剤の安易な服用は避けるようにしましょう。
激しい運動|たんぱく尿などが出るおそれがある
激しい運動をすると、腎臓に異常がなくても一時的にたんぱく尿が出ることがあります。また、強い運動負荷により筋肉の細胞が傷つくと、細胞内に含まれる酵素(AST(GOT)、LDH、CK)の数値が上昇することもあります*9。このようなことから、健康診断前に激しい運動をするのはできるだけ避けるべきでしょう。
健康診断前に避けるべき行為とその理由
| 避けるべき行為 | 避けるべき理由 |
|---|---|
| 極端な絶食・水分制限 | 脱水で血液が濃縮される/ヘモグロビン値が高く出ることがある/尿酸値に影響する |
| 下剤の使用 | がんなど腸管が狭くなる病気を見落とすおそれがある |
| 胃薬の使用 | 症状が一時的に改善して受診のタイミングを逃すおそれがある |
| 鉄剤の使用 | 血清鉄が高くなることがある/出血を伴う疾患を見落とすおそれがある |
| 激しい運動 | たんぱく尿が出ることがある/AST・LDH・CKが上昇することがある |
まとめ|「悪あがき」はせず、ありのままの受診を
健康診断前の1週間の行動で、一時的に変化する検査値もあります。しかし、直前の調整で検査値が「正常」の範囲内に収まっても、体の状態が「良くなった」とはいえません。むしろ、重大な疾患を見逃すリスクにつながることもあります。
健康診断は、日頃の生活習慣を振り返り、体の変化に気づくきっかけとなるものです。ありのままの状態で受診し、今後の健康管理に役立てていくことが、健康診断の価値を最大化する方法といえるでしょう。

この記事を書いた人

中西 真理
公立大学薬学部卒。薬剤師。薬学修士。医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。
参考資料
*1
出所)マイナビニュース「ワーク&ライフ>健康診断前日までに『悪あがき』をした経験がある人は6割―何をした?」
https://news.mynavi.jp/article/20190307-784723/
*2
出所)GME医学検査研究所「γ-GTが高いのはなぜ?肝臓のSOSサインと正しい対処法!正常値と高値、低値の意味を解説【生活習慣病の知識vol.10】」
https://www.gme.co.jp/column/column144_gamma-gt-is-an-sos-for-the-liver.html
*3
出所)CRCグループ「CRC>よくある検査のご質問>ASTとALTの違いは?AST/ALT比について教えてください。」
https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/91.html
*4
出所)Cochrane「コクランのエビデンス>正常血圧および高血圧の人に対する減塩食の血圧、ホルモン、脂質に対する効果」
https://www.cochrane.org/ja/evidence/CD004022_effect-low-salt-diet-blood-pressure-and-some-hormones-and-lipids-people-normal-and-elevated-blood
*5
出所)厚生労働省「健康的で持続可能な食環境戦略イニシアチブ>食塩のとりすぎ問題とは」
https://sustainable-nutrition.mhlw.go.jp/contents/sodium/sodium-overdose
*6
出所)日本離床学会「学術・研究活動>離床Q&A>Q&AVol.152【検査値の解釈が変わる!】HbやAlbを見る前に、先に見るべきデータとは」
https://www.rishou.org/activity-new/qa/qa-vol-152#
*7
出所)日本医事新報社「Web医事新報を読む>ヘマトクリット値・尿酸値を脱水の指標にできる?」
https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_3889
*8
出所)エーザイ「医療用医薬品一覧>ハ>フェロミア>【フェロミア】半減期や最高血中濃度などの血中濃度の推移を教えてください。」
https://faq-medical.eisai.jp/faq/show/302?back=front%2Fcategory%3Ashow&category_id=56&page=2&site_domain=faq&sort=sort_access&sort_order=desc
*9
出所)東邦大学医療センター大橋病院臨床検査部「よくあるご質問>運動したのですが、採血の成績に影響がありますか?」
https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/ohashi/kensa/common_question/index.html
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