「同じミスを繰り返す人」は、なぜ同じミスを繰り返してしまうのだろうか?

先日、ある方から、子供の勉強についての相談を受けた。

曰く、「子供が漢字を苦手としている。何回漢字の練習をしても、同じ間違いをする」
とのことで、どうしたら良いのか途方に暮れている、とのことだった。

確かに、子供に漢字の練習をさせるのは、大変なことだ。
しかも、その効果が見えない、となればさらに心にくるものがあるだろう。

私はその方の相談を聞きながら、「そういえば、社会人になっても「同じミスを繰り返してしまう人」は存在していたなあ」と思いだしていた。

私がコンサルタントをやっていたころ、一人の新人が「同じミスを繰り返す人」だった。

例えば、「エクセルに数値を入力する」という仕事がある。
今週の活動などを、様々な情報ソースから集計して、一覧表にまとめる、というそれほど難しくない仕事である。

だが、彼にとってはそうではなかったようだ。
皆で彼の作った表を読み合わせると、

「絶対に」どこかの数値に間違いが発見されるのだ。

もちろん、それは会議で指摘される。

と、彼は素直に
「あ、すいません、直します」
といって、それを修正するのだ。
でも、毎回毎回、彼は間違いをした。
間違いの場所の個数には差はあれど、必ずミスがあった。

それが何回か続いたとき、彼の上司はその新人を叱った。

「いい加減に、ミスをなくすにはどうしたらいいか、きちんと考えて再発防止をしなさい」と。

そして周囲から改善のための提案がなされた。
やり方はいくらでもあった。例えば、以下のような提案がなされた。

・間違いやすい部分について、チェックリストを作る
・チェックを2回行う
・マクロなどで自動化する

当人も「がんばります」と言った。

しかし、こうした活動にもかかわらず、また彼はミスをした。その次の回。
皆はすっかりあきれてしまい、彼は評価を大きく落とした。

「彼には重要な仕事を頼めない」
という評価が固定されてしまった。

こういった「ミスを繰り返す人」は、実は子供に限らず、大勢存在している。
そして、上司たちの悩みの種にもなっている。

彼らに対する疑問は、シンプルだ。
「なぜ、あれほど言われているのに、同じミスを繰り返すのか?」だ。

そして、もう一つ
「なぜ、改善策をとらないのか?」である。

そう。
ミスを繰り返す人の多くは、人から言われた「改善策」をやらない。
ガミガミ言われても、本当にやらないのだ。

冒頭の子供も、
「間違えたところを辞書で調べなさい」と言ってもやらないし、
「間違えた漢字を書き直すときには、答えをよく見て、正確に書き直して」
と言っても、やらないという。

ではどうしているのかというと、間違えた漢字を書き直す時も、正しい漢字を書くのではなく「なんとなく自分の中で「合っていそうな」漢字を新たに生み出して」しまうので、間違いが正されないのだそうだ。

そもそもこの子は、「自分の漢字に関する記憶が間違っている」と認識していない。
そのため、「自分が書いた文字の間違い」を発見することができない。

こうした人々に共通するのが、

・ミスを繰り返すことへの危機感のなさ
・セルフチェック能力の低さ

の2点である。

ミスを指摘されても、それが致命的だとは思っていないので、「ミスを怒られた」とは認識するが、「ミスをなくさなければならない」とは認識しない。

「次は注意しよう」と一瞬は思うのかもしれないが、その重要度が低いので、具体的な仕事の手順(漢字の練習の手順も同じだが)に結び付かない。

結果的に、次の作業も、本人の注意力だよりになってしまい、同じミスを繰り返す。

そしてその「注意力」についても、ミスを繰り返す人は、セルフチェック能力の低さが目立つ。

セルフチェック能力の低さは、本質的には「自分のやっていることを客観的に見る能力」が低いということである。

彼らは自分の行為を構造化してみる能力が、おしなべて低い。

ミスを減らすためには、原因を追究する必要があり、

「目的を決めていない」
「手順が悪い」
「注目ポイントが間違っている」
「間違って覚えていた」

など、自分の思考や動作を、客観的に分解してみないとわからないのだが、
勉強や仕事を構造で見ていない人は、

「気持ちが乗っていなかった」
「注意が散漫だった」
「周りがうるさかった」

など、定性的な部分だけに注目してしまいがちである。

これは「考える力が弱い人」にありがちな傾向である。

心理学者の今井むつみは、著書「算数文章題が解けない子供たち」にて、考える力の弱さを
「認知処理の負荷をコントロールしながら推論をする能力」の低さだと定義している。

つまり、因果関係を推定したり、一時的に記憶を保持したり、自分のミスを確認するなど、脳に負荷がかかる作業に慣れていないのである。

これは一朝一夕にクリアできることではなく、時間をかけて育てないといけない能力でもある。

こうしたことから、職場で「ミスを繰り返す人」に対しては、
以下の対処しかできない。

まず、「危機感のなさ」に関して。
危機感がないだけで、思考力が強い人に対しては、強い危機感を植え付けることで、ミスを解消可能である。

例えば、昔の職場で「遅刻」を何度も繰り返す人がいた。
といっても、一度遅刻をすると、ひと月ほどは遅刻をしなくなるのだが、しばらくたつとまた遅刻をした。

上司は彼に警告をした。
「今度遅刻をしたら、今期の評価を下げる」と。

それでも彼の遅刻はなかなか、治らなかった。

上司は深く悩んだ末に、「次に遅刻をしたら、指導力不足ということで、私を減給にする」
と、身を捨てた試みを行った。

すると、驚いたことに遅刻が治った。
彼は二度と、遅刻をしなかった。

これは、「自分ごとには危機感を抱きにくい」が、「他人が傷つくのには危機感を感じる」という責任感の強い人物に有効だった話であり、一般化はできない。

だが、当人が何に危機感を感じるのかを判断すれば、これは何とかなる。
そして時には「減給」や「降格」も有効である。

考える力があるのに、ミスが減らない人には、強く警告することが最善手となる。

しかし、「考える力が弱い人」に関しては、危機感を煽る方法は有効ではない。
本人が追いつめられるだけである。

その場合は、以下の2つしか選択肢がない。

1.時間をかけて細かく指導する
2.その仕事から外す

現実的には、大人に対しては、1.の選択肢は費用対効果が合わないので、2.がとられることが多い。

採用ミスが原因なので、採用に際して「認知能力のテスト」などを採用すべきである。(なお、認知能力のテスト成績は、仕事のできと相関が高いことが実験などで確かめられている)

一方で、子供は1.の手段で辛抱強く育成することが推奨される。
親の時間や、個別指導塾へ通わせるなどのリソースを投下する必要性はあるが、子供の将来を考えると、リソースの投下を惜しむべきではないだろう。

この記事を書いた人

安達 裕哉

生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」88万部(https://amzn.to/49Tivyi
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◯note:(生成AI時代の「ライターとマーケティング」の、実践的教科書)


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