
女性が長く働き続けるためには、本人の努力だけでなく、職場環境の支えが不可欠です。
月経周期や妊娠、更年期など、女性の体調はホルモンの影響を受けやすく、仕事のパフォーマンスに影響が及ぶことが報告されています。
こうした変化を前提にした環境設計は、一部の人への配慮ではなく、組織全体の持続可能性を高める施策といえます。
この記事では医師としての知見と実体験をもとに、女性の健康とオフィス環境の関係を考察します。
この音声コンテンツは、記事の文脈をAIが読み取り独自に対話を重ねて構成したものです。文章の読み上げではなく、流れや意図を汲み取った自然な音声体験をお届けします。※AIで作成しているため、一部誤りや不自然な表現が含まれる場合があります。
女性の体調変化とホルモンの医学的背景
女性の体調は、ホルモンバランスの変動と密接に関係しています。
月経周期による変化
卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)は、女性ホルモンと呼ばれています。
月経周期のなかでは、女性ホルモンのバランスによって気分や体調の変化が起こります。
これらのホルモンのバランスは、約1ヶ月の周期で大きく変動します。
例えば、排卵期の前のいわゆる卵胞期には気分が安定する一方で、月経前にはイライラ感がつのる、怒りっぽくなる、うつっぽくなるなどの感情面の変化がみられます。*1
仕事の面でも、月経前の身体のだるさや眠気が仕事に影響を与えることもあります。*2
これらのような月経開始前に起こる心身のさまざまな不快症状は、月経前症候群(PMS)と呼ばれています。*1
妊娠期の変化
妊娠中、特に15週目までの初期にはプロゲステロンの影響で眠気が強まります。
また、深い眠りであるノンレム睡眠の時間が短くなる、夜に眼が覚めやすくなることなどで日中に強い眠気を感じる妊婦さんも少なくありません。*3
16〜27週の妊娠中期の段階では腰痛に悩まされる方や、貧血になる方もいます。 全期間を通し、早産の兆候がみられる際には仕事に対するドクターストップがかかる場合もあります。*4
更年期の変化
更年期は、閉経から前後5年間の10年間ほどの時期のことです。
日本人では、50歳ほどで閉経を迎える方が多いため、だいたい45〜55歳の時期が更年期にあたります。
この時期には女性ホルモンの分泌量が低下するため、さまざまな症状が現れることがあります。
例えば、汗をかきやすくなる、疲れやすい、手足の冷え、肩や腰などの関節の痛み、イライラ感、気持ちが落ちこむ、眠れなくなるなどの、多岐にわたる症状があります。
50歳前後の場合、職場で長期的なキャリアを形成している女性も少なくありません。
そのような方が更年期に悩まされて離職すると、職場にとってもダメージが生じうることが想定されます。*5
経済的インパクトと企業への影響
女性の健康問題は、個人の問題にはとどまりません。
ここでは、もう少し広い視点から女性の健康についてみていきます。
パフォーマンスの低下による経済損失
約半数の女性がPMSや月経痛などの不快な症状である月経随伴症状、更年期障害により仕事のパフォーマンスの低下をきたしています。*6
また、月経随伴症状や更年期症状、婦人科がん、不妊治療といった女性特有の症状による経済損失は年間約3.4兆円であるというデータもあります。*7
これは、決して小さな数字ではありません。
健康課題への対応は、生産性損失の抑制と人的資本の維持という観点からも、検討すべき経営課題といえます。
更年期症状による離職にともなう問題
更年期症状によって仕事をやめたという方がアンケートを受けた女性全体の約7%だったという報告があります。*8
さらに、更年期症状を経験した40〜59歳の働く男女の調査で、更年期症状が原因で離職した女性が46万人に上ると推計されています。*9
更年期にあたるような年齢層の方が離職してしまうことは、個人のキャリア断念という点のほか、管理職層の損失といった組織としてのダメージにもつながってしまいます。
また、抜けてしまった従業員の方の穴を埋めるための採用・育成コストも考慮すると、女性の離職はなるべく避けたいものといえます。*7
医学的背景から考える女性が働きやすいオフィス環境
女性の健康を守るためのオフィス設計として着目すべき点をみていきましょう。
温度調節がしやすい環境づくり
更年期の症状や月経前症候群、月経困難症などへの配慮の一つとして、ここでは温度調節について考えてみます。
更年期の症状のひとつに、手足や腰が冷えやすいことが挙げられます。*5
その一方で、更年期の女性は、青年期の女性と比べると寒さの変化を感じにくいため、寒い環境から離れようとする行動に遅れが生じる可能性があるとする研究データもあります。*10
もちろん環境温度や自分の手足の温度の感じ方には個人差があるため、空調システムでの一律な調整は難しい場合もあるでしょう。
ただし、オーストラリアでの研究では、職場の温度を制御できることによって、更年期症状の報告率が低くなることも報告されています。*11
これらを踏まえ、以下のような配慮が考えられます。*12
- 窓際や通気の良い場所など、空調調整が可能な座席への配置
- デスク用の小型扇風機や冷却グッズの支給
- 足元ヒーターやブランケットの貸し出し
また、月経時にはトイレや休憩室にすぐアクセスできる座席がよいと考える従業員もいるかもしれません。
可能であれば、それぞれの従業員の体調に合わせ、座席を移動できるようなオフィス設計が望ましいといえるでしょう。*13
眠気や睡眠不足への対策
月経前や妊娠時の眠気や睡眠不足による仕事のパフォーマンス低下を防ぐために、時差出勤やフレックスタイムの導入などの取り組みが有効な場合があります。*12
また、睡眠不足による集中力や記憶力の低下に対しては、あらかじめ作業の細分化やタスク管理ツールの導入などでミスを減らすような工夫を取り入れるのも一つの方法です。*13
これらのような制度的なサポートのほか、仮眠室や休憩室の設置をするといったオフィス設計も挙げられます。
長時間座位を避ける方法
28週目以降の妊娠後期には、下半身にむくみや皮膚に近い静脈が膨らむ静脈瘤が出ることがあります。
長時間の座り姿勢や歩行はこれらの症状を悪化させる可能性があるため、避けたいものです。*4
長時間同じ姿勢をとることを防ぐためには、座位・立位作業の交替が可能な作業環境にすること(昇降デスクなど)の導入などの検討も有効と考えられます。*13
これらの方法は、大規模な改修を伴わなくても、既存のオフィス環境の中で段階的に導入可能な取り組みといえます。
一方で、温度管理や休養スペースの整備はコストがかかる施策に見えるかもしれません。
しかし、離職防止やパフォーマンス低下の抑制という観点からみれば、中長期的には合理的な投資といえます。
取り組むことができる具体例を筆者の体験を交えて紹介
女性の体調変化に合わせたオフィス設計について述べてきましたが、全てを叶えることが難しい場合もあります。
そこで、ここでは女性医師として現在も病院で勤務している筆者の例をご紹介し、改善案を提案します。
妊娠時の仮眠室の使用
第一子を妊娠したときには、筆者はがん専門病院で研修医として勤務していました。
つわりなどはそれほどひどくはなかったものの、特に昼食後の眠気が激しく、さらに妊娠が後期になるにつれて全身の疲れやすさを感じやすくなりました。
そこで、昼食後はやや長めの昼休みをとり、医師専用の仮眠室で午後の休憩をするようにしていました。
ほかのスタッフの方々の理解もあり、短時間の仮眠をすることができたおかげで午後の勤務も特に支障なくこなすことができました。
ただし、一点のみヒヤリとすることがありました。
仮眠室は男女共有で、広い部屋にベッドが10台ほど並べられており、それぞれがカーテンで各ベッドが仕切られただけという簡素なものだったことが原因です。
照明を落とした部屋では、各ブースが使用中であるかどうかもはっきりせず、誤ってカーテンを開けられてしまうことがありました。
当時は男性医師の割合が高かったこともあり、利用時に心理的な緊張を感じることもありました。
改善提案例
妊娠中に限らず、月経時特有の眠気や、更年期の睡眠不足で、日中にどうしても眠たくなる方は女性もいます。
そのため、仮眠室や休憩室の設置は有効と考えられます。
しかし、できればプライバシーに配慮した半個室ブースが望ましいでしょう。
男女のゾーニングや、開閉構造の工夫も、心理的な安全性を確保するうえで大切です。
短時間でも安心して休める空間を設けることで、身体の休息につながり、ひいては企業としての生産性アップにも貢献するのではないでしょうか。
まとめ
女性の体調変化は医学的に説明可能な生理的現象であり、本人の努力や根性で克服できる問題ではありません。
月経、妊娠、更年期といったライフステージは、多くの女性が経験するものです。それらを前提とした環境整備は、一部の人への配慮ではなく、組織全体の生産性を守る施策といえます。
人的資本を守るという視点から、空間設計を含めた職場環境の見直しは、これからの企業にとってより重要なテーマの一つといえるでしょう。

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この記事を書いた人

木村 香菜
行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医、日本人間ドック・予防医療学会認定医。
資料一覧
*1 女性ホルモンとうまく付き合っていくには?〜増える月経トラブルとその対処法を基礎から知ろう〜-厚生労働省 健康21アクション支援システム〜健康づくりサポートネット〜
https://kennet.mhlw.go.jp/slp/event/womens_health/2021/lecture1
*2 月経について | 女性特有の健康課題-厚生労働省 働く女性の心とからだの応援サイト
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/menstruation.html
*3 女性の睡眠障害-健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~
厚生労働省
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-005
*4 妊娠・出産・産後の不調 | 女性特有の健康課題-厚生労働省 働く女性の心とからだの応援サイト
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/pregnancy.html
*5 更年期 | 女性特有の健康課題-厚生労働省働く女性の心とからだの応援サイト
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/menopause.html
*6 【調査報告】「働く女性の健康増進に関する調査2018(最終報告)」 | 日本医療政策機構
https://hgpi.org/research/809.html
PDF:【調査報告】「働く女性の健康増進に関する調査2018(最終報告)(日本語)」 | 日本医療政策機構 p9
https://hgpi.org/wp-content/uploads/1b0a5e05061baa3441756a25b2a4786c.pdf
*7 女性の健康の取組について-METI/経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/jyoseinokenko.html
PDF:女性特有の健康課題による経済損失の試算と 健康経営の必要性について 経済産業庁 p2
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/jyosei_keizaisonshitsu.pdf
*8 女性の健康の取組について-METI/経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/jyoseinokenko.html
PDF:女性特有の健康課題による経済損失の試算と 健康経営の必要性について 経済産業庁 p11
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/jyosei_keizaisonshitsu.pdf
*9 JILPTリサーチアイ第70回「働く女性の更年期離職」-独立行政法人 労働政策研究・研修機構
https://www.jil.go.jp/researcheye/bn/070_211105.html
*10 温熱環境のステップ変化が人体の生理的心理的反応に与える影響に関する基礎的研究-青年女子と更年期女子との差異についての考察.人間-生活環境系シンポジウム報告集34.2010. p250
https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F11079735&contentNo=1
*11 令和6年度 厚生労働省科学研究費補助金 職場における女性の健康保持増進のための効果的な産業保健活動の確立に向けた研究
PDF:分担研究報告書 論文レビュー 更年期症状に対して職場が取り組むべき支援や配慮に関する文献調査 p15
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/24100_R6%E5%8E%9A%E5%8A%B4%E7%A7%91%E7%A0%94%EF%BC%88%E5%A5%B3%E6%80%A7%E7%94%A3%E6%A5%AD%E4%BF%9D%E5%81%A5%EF%BC%89%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8_%E5%88%86%E6%8B%85%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8_%E3%83%AC%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC%EF%BC%88%E5%8E%9F%E7%94%B0%EF%BC%89.pdf
*12 令和6年度 厚生労働省科学研究費補助金 職場における女性の健康保持増進のための効果的な産業保健活動の確立に向けた研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/177342
PDF:表2 女性の健康管理 症状別配慮集(案)p1
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/24012_R6%E5%8E%9A%E5%8A%B4%E7%A7%91%E7%A0%94%EF%BC%88%E5%A5%B3%E6%80%A7%E7%94%A3%E6%A5%AD%E4%BF%9D%E5%81%A5%EF%BC%89%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8_%E7%B7%8F%E6%8B%AC%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%EF%BC%88%E7%AB%8B%E7%9F%B3%EF%BC%89_%E8%A1%A8%EF%BC%92%E7%97%87%E7%8A%B6%E5%88%A5%E9%85%8D%E6%85%AE%E9%9B%86.pdf
*13 令和6年度 厚生労働省科学研究費補助金 職場における女性の健康保持増進のための効果的な産業保健活動の確立に向けた研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/177342
PDF:表2 女性の健康管理 症状別配慮集(案)p2
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/24012_R6%E5%8E%9A%E5%8A%B4%E7%A7%91%E7%A0%94%EF%BC%88%E5%A5%B3%E6%80%A7%E7%94%A3%E6%A5%AD%E4%BF%9D%E5%81%A5%EF%BC%89%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8_%E7%B7%8F%E6%8B%AC%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%EF%BC%88%E7%AB%8B%E7%9F%B3%EF%BC%89_%E8%A1%A8%EF%BC%92%E7%97%87%E7%8A%B6%E5%88%A5%E9%85%8D%E6%85%AE%E9%9B%86.pdf
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