【弁護士が解説】2026年からカスハラ対策が義務化 オフィスや企業での対応は何をすべき?

2026年12月までに改正労働施策総合推進法が施行され、企業にカスタマーハラスメント対策が義務付けられます。従業員をカスハラから守るため、効果的な対策を講じましょう。

本記事では、企業が講ずべきカスハラ対策のポイントを弁護士が解説します。

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カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?

「カスタマーハラスメント(カスハラ)」とは、顧客や取引先が企業や店舗などに対して、正当な理由なく理不尽なクレームや要求を行うことをいいます。

企業が提供する商品やサービスなどに欠陥があれば、そのことを批判したり、改善を求めたりするのは自然なことです。

しかし、企業側に何ら落ち度がないのに言いがかりをつけたり、些細なミスに対して過剰な要求をしたりする人も見受けられます。
このようなカスハラに対応する従業員は、精神的に大きく疲弊してしまいます。うつ病などの精神疾患を発症したり、嫌気が差して離職したりする人も出ている状況です。

近年では、カスハラが社会的に問題視されるようになりました。企業は従業員を守るべき、顧客の過剰な要求に従う必要はないという考え方が浸透してきています。
企業としては、適切にカスハラ防止対策を講じて、自社の従業員を守ることが求められます。

カスハラに当たる行為の具体例

カスハラに当たると考えられるのは、以下に挙げるような行為です。

(1)要求内容が妥当であるかにかかわらず、行為自体が不当であるためカスハラに当たるもの
・身体的な攻撃(暴行、傷害)
・精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)
・威圧的な言動
・土下座の要求
・過度に繰り返し行う言動、しつこい言動
・拘束的な行動(不退去、居座り、監禁)
・差別的な言動
・性的な言動
・従業員個人への攻撃、要求

(2)要求内容が不当な場合に限り、カスハラに当たるもの
・商品交換の要求
・金銭補償の要求
・謝罪の要求(土下座の要求を除く)

【2026年中施行】企業におけるカスハラ対策が義務化

2025年6月11日、企業に対してカスハラ対策を義務付ける改正労働施策総合推進法が公布されました。改正法は公布日から1年6か月以内に施行される予定です。

企業としては、遅くとも改正法の施行日までにカスハラ対策を開始する必要があります。

抑止措置を講ずべき行為(カスハラ)の要件

改正労働施策総合推進法では、事業主(企業など)に対し、以下の要件を満たす言動を抑/止するための措置等を講じることを義務付けています(改正法33条1項)。

(a)職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であること

(b)労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えたものであること

(c)労働者の就業環境が害するものであること

どのような行為がカスハラに当たり得るのかについては、前掲の「カスハラに当たる行為の具体例」をご参照ください。

カスハラに関する相談等を理由とする不利益な取扱いは禁止

事業主は、労働者がカスハラに関する相談を行ったこと、または事業主によるカスハラ対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いをしてはなりません(改正法33条2項)。

事業主としては、労働者がカスハラに関する相談等をしやすいように、待遇の保証などを含めた十分な配慮を行うことが求められます。

企業が実施すべきカスハラ対策のポイント

企業が実施すべきカスハラ対策の具体的な内容は、改正労働施策総合推進法の施行に向けて今後制定される指針で定められる予定です(改正法33条4項)。

現時点(2026年1月)では、厚生労働省が「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(カスハラ対策マニュアル)を公表しています。*1
同マニュアルを参考にして、自社の状況に適したカスハラ対策を講じましょう。

カスハラ対策マニュアルでは、企業が具体的に取り組むべき対策として以下の事項を挙げています。

(1)カスタマーハラスメントを想定した事前の準備
(a)事業主の基本方針・基本姿勢の明確化、従業員への周知・啓発
(b)従業員(被害者)のための相談対応体制の整備
(c)対応方法、手順の策定
(d)社内対応ルールの従業員等への教育・研修

(2)カスタマーハラスメントが実際に起こった際の対応
(a)事実関係の正確な確認と事案への対応
(b)従業員への配慮の措置
(c)再発防止のための取組

(3)上記の各措置と併せて講ずべき措置

カスタマーハラスメントを想定した事前の準備

企業はカスタマーハラスメントの発生を想定して、平時から以下の事前準備を行うことが求められます。

(a)事業主の基本方針・基本姿勢の明確化、従業員への周知・啓発
経営陣がカスハラ対策への取り組みに関する基本方針や基本姿勢を明確に示しつつ、その内容や対応の在り方などを従業員に周知・啓発し、教育します。

(b)従業員(被害者)のための相談対応体制の整備
カスハラの被害を受けた従業員のために相談窓口を設置し、広く周知します。
窓口担当者に対しては研修などを行い、カスハラが発生した際には適切な対応ができるようにしておきます。

(c)対応方法、手順の策定
カスハラが発生した際の対応に関する体制や方法などを、あらかじめ決めておきます。

(d)社内対応ルールの従業員等への教育・研修
・従業員向けの教育や研修を行い、カスハラが発生した際の具体的な対応に関する習熟度を高めます。

カスタマーハラスメントが実際に起こった際の対応

実際にカスハラが発生した際には、企業は以下の対応を行うことが求められます。

(a)事実関係の正確な確認と事案への対応
顧客や従業員などから聞き取った情報を基に、カスハラが事実であるかどうかを確かな証拠や証言に基づいて確認します。

(b)従業員への配慮の措置
複数名で組織的に対応する、メンタルのケアを行うなど、カスハラの被害を受けた従業員に対する配慮の措置を行います。

(c)再発防止のための取組
カスハラの再発を防ぐため、定期的に見直しや改善を行いつつ、カスハラ防止の取り組みを継続的に行います。

上記の各措置と併せて講ずべき措置

これまで挙げた各措置と併せて、企業にはカスハラについて相談した従業員等のプライバシーを保護するための措置を講じることが求められます。

また、カスハラについて相談したこと等を理由として、相談者に対して不利益な取扱いをしてはならない旨も定める必要があります。
不利益な取扱いの禁止は、2026年中に施行される改正労働施策総合推進法でも法定されている事項です。

上記の各定めについては、社内広報や研修などを通じて従業員に周知することが求められます。

まとめ

カスハラ防止対策を講じることは、従業員をカスハラの被害から守るために必要不可欠です。

適切なカスハラ防止対策を講じれば、働きやすい職場作り、さらには従業員の離職率の低下やパフォーマンス向上に繋がります。
企業は改正労働施策総合推進法の施行を見据えて、自社におけるカスハラ防止対策の充実化を図りましょう。

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この記事を書いた人

阿部 由羅

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
https://abeyura.com/
https://x.com/abeyuralaw

参考資料

*1参考)厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf


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この記事を書いた人

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そしきLab編集部

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