
高い能力や専門性を有する人材を確保したいなら、「裁量労働制」を導入することが効果的と考えられます。
ただし裁量労働制を導入する際には、労働時間やパフォーマンスの管理方法を工夫しなければなりません。自社に合った運用方法をよく検討しましょう。
本記事では、企業が裁量労働制を導入するメリットやデメリット、裁量労働制を導入すべきか否かの判断基準、導入に必要な手続きなどを解説します。
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裁量労働制とは?
「裁量労働制」とは、業務の進め方や時間配分などについて、労働者に裁量を与える制度です。
裁量労働制で働く労働者には「みなし労働時間」が適用されます。実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間働いたとみなすというものです。
「定時」によって縛ることなく、労働者に自由な働き方を認める点に裁量労働制の特徴があります。
2種類の裁量労働制|専門業務型と企画業務型
労働基準法では、以下の2種類の裁量労働制が認められています。
(1)専門業務型裁量労働制*1
法令で指定された20の業務につき認められた裁量労働制です。
(2)企画業務型裁量労働制*2
事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析の業務につき認められた裁量労働制です。
専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制では、導入に必要な手続きが異なります。詳しくは「裁量労働制の導入に必要な手続き」で解説します。
裁量労働制を導入するメリット
裁量労働制が適用される労働者は、勤務時間や業務の進め方を自由に決められるので、ライフスタイルや性格などに合わせた働き方ができるようになります。
特に高い能力や専門性を有する人材は、自由な働き方を好み、裁量労働制を魅力的だと感じる傾向にあります。こうした人材を確保したい場合は、裁量労働制が有力な選択肢となるでしょう。
裁量労働制を導入するデメリット
裁量労働制で働く労働者に対しては、使用者が業務の進め方や時間配分を具体的に指示することはできません。また、勤務時間も人によってまちまちになります。
上記の各点から言えるのは、定時で勤務する労働者に比べると、裁量労働制で働く労働者には使用者側の管理が及びにくいということです。裁量労働制を導入する場合は、この課題を克服することが必須条件となります。
裁量労働制は導入すべき?判断基準を解説
裁量労働制は、すべての労働者や職場に適した制度ではありません。企業が裁量労働制を導入すべきか否かは、自社の労働者や職場の状況を踏まえて総合的に判断すべきです。
具体的には、以下の3つの観点から裁量労働制の適否を検討するとよいでしょう。
(1)業務の内容・性質
(2)労働時間やパフォーマンスの管理体制を整えられるか
(3)労働者が裁量労働制を求めているか
業務の内容・性質
裁量労働制が適しているのは、勤務時間を柔軟に定めても問題ない業務です。
たとえば、研究開発職・デザイナー・コンサルタントなどは裁量労働制に適していると考えられます。これに対して、顧客対応時間が決まっている営業職や店舗スタッフなどは、裁量労働制に向いていません。
また、「労働者に裁量を与えた方が業務の効率化に繋がるか」という視点も大切です。
専門職をはじめとして、個々の労働者が自分で考えて働くべき業務は裁量労働制に向いていると考えられます。これに対して、比較的単純である業務は、上司の指示やマニュアルなどに沿って行う方が効率的なので、裁量労働制には不向きです。
労働時間やパフォーマンスの管理体制を整えられるか
使用者は、裁量労働制で働く労働者に自由な働き方を認める中でも、労働時間やパフォーマンスを適切に管理しなければなりません。具体的には、以下のような体制を整えることが求められます。
【労働時間の管理】
・実際の労働時間を把握できる仕組み(勤怠管理システム、労働者に対するヒアリングなど)
・労働時間が多い労働者の健康や福祉を確保する仕組み(労働時間の制限、休暇制度の充実化、医師による面接指導、保健指導など)
【パフォーマンスの管理】
・成果に焦点を当てた評価制度
など
これらの体制を適切に整備できるのであれば、裁量労働制を導入する環境は整っていると言えます。一方、これらの体制の整備が難しい場合は、裁量労働制の導入は時期尚早と言わざるを得ません。
労働者が裁量労働制を求めているか
裁量労働制を導入することにより、労働者が働きづらくなったり、モチベーションを落としてしまったりしては本末転倒です。
企業が裁量労働制の導入を検討する際には、対象として想定する労働者の意向を確認することをお勧めします。もし多くの労働者が否定的な意見を表明するようであれば、裁量労働制の導入は見送った方がよいかもしれません。
裁量労働制の導入に必要な手続き
裁量労働制を導入する際には、労働基準法に従った手続きを踏む必要があります。必要な手続きは、専門業務型と裁量労働制で一部異なる点にご注意ください。
専門業務型裁量労働制の導入手続き
専門業務型裁量労働制を導入する際には、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合、または事業場の労働者の過半数を代表する者と労使協定を締結する必要があります。
専門業務型裁量労働制の労使協定で定めるべき事項は、以下のとおりです。
(1)対象とする業務
(2)みなし労働時間
(3)業務の遂行の手段や時間配分の決定等に関し、使用者が労働者に具体的な指示をしないこと
(4)健康・福祉確保措置の内容(勤務間インターバルの確保、労働時間の制限、特別休暇の付与、医師による面接指導、保健指導など)
(5)労働者からの苦情を処理するために実施する措置の内容(窓口の設置など)
(6)適用に当たり、労働者本人の同意を得なければならないこと
(7)適用に労働者が同意をしなかった場合に、不利益な取り扱いをしてはならないこと
(8)適用に関する同意の撤回の手続き(申出先、申出方法など)
(9)労使協定の有効期間(3年以内とすることが望ましい)
(10)以下の事項の記録を、有効期間中および期間満了後3年間保存すること
・労働時間の状況
・健康・福祉確保措置の実施状況
・苦情処理措置の実施状況
・同意、同意の撤回
労使協定の締結後は、以下の手続きを行います。
- 労働契約または就業規則に、裁量労働制に関する事項を定める。就業規則を変更した場合は、変更後の内容を労働者に周知する。
- 労働基準監督署に労使協定を届け出る。
- 専門業務型裁量労働制の対象とする労働者の同意を得る。
企画業務型裁量労働制の導入手続き
企画業務型裁量労働制を導入する際には、労使委員会による決議が必要です。
労使委員会の委員のうち半数以上は、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合、または事業場の労働者の過半数を代表する者によって指名された者としなければなりません。
企画業務型裁量労働制の労使委員会決議では、以下の事項を定めます。
(1)対象とする業務
(2)対象労働者の範囲
(3)みなし労働時間
(4)健康・福祉確保措置の内容(勤務間インターバルの確保、労働時間の制限、特別休暇の付与、医師による面接指導、保健指導など)
(5)労働者からの苦情を処理するために実施する措置の内容(窓口の設置など)
(6)適用に当たり、労働者本人の同意を得なければならないこと
(7)適用に労働者が同意をしなかった場合に、不利益な取り扱いをしてはならないこと
(8)適用に関する同意の撤回の手続き(申出先、申出方法など)
(9)賃金制度や評価制度を変更する場合に、労使委員会に対して変更内容を説明すること
(10)労使委員会決議の有効期間(3年以内とすることが望ましい)
(11)以下の事項の記録を、有効期間中および期間満了後3年間保存すること
・労働時間の状況
・健康・福祉確保措置の実施状況
・苦情処理措置の実施状況
・同意、同意の撤回
労使委員会決議を行った後は、以下の手続きを行います。
- 労働契約または就業規則に、裁量労働制に関する事項を定める。就業規則を変更した場合は、変更後の内容を労働者に周知する。
- 労働基準監督署に労使委員会決議を届け出る。
- 企画業務型裁量労働制の対象とする労働者の同意を得る。
まとめ
裁量労働制を適切に導入・運用すれば、高い能力や専門性を有する人材の確保に繋がる可能性があります。
自社の業務内容や雇用の状況などを分析したうえで、裁量労働制の導入環境が整っていると思われるなら、積極的に導入を検討してください。

この記事を書いた人
阿部 由羅
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
https://abeyura.com/
https://x.com/abeyuralaw
参考資料
*1参考)厚生労働省「専門業務型裁量労働制について」
https://www.mhlw.go.jp/content/001164346.pdf
*2参考)厚生労働省「企画業務型裁量労働制について」
https://www.mhlw.go.jp/content/001164442.pdf
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