そしきLab編集部 
多様化する働き方、進化する経営の現場。コロナ禍を経て、私たちの「仕事」のあり方は大きく変わりました。その象徴が「ハイブリッドワーク」――出社と在宅、さらにサテライトオフィスを組み合わせた働き方です。
当社におけるハイブリッドワークとは、出社・在宅勤務・サテライトオフィス（自社および外部）を組み合わせた柔軟な働き方を指します。
具体的には、東京本社勤務を中心に、自社サテライトオフィス（HANARE、神奈川支店、川崎ウチダシステムなど）や、野村不動産「H¹T」・ザイマックス「ZXY」など外部シェアオフィスを活用する形です。営業メンバーは顧客訪問の合間に最寄りの拠点を利用し、移動効率を高めています。
一方で、「在宅勤務」の取り入れ方については課題が多く、現在もっとも検討を要する領域となっています。
現場と経営者が直面する”答えなき問い”―多様な意見とスタンスの混在
経営者と現場が同じ方向を向くこと、それはどんな時代でも簡単ではありません。
特にハイブリッドワークやリモート勤務が進む現代、社内外で「何が正解なのか」分からなくなっているという声が多く聞かれます。
「今の情報発信は比較的ニュートラル。でも、右にも左にも大きく振れているわけではない」
弊社の代表取締役・岩田正晴はそう考えます。
世の中の記事や論文も、様々な立場や結論が交錯し、読み手としては「結局どうすればいいの？」という迷いに直面しがちです。
現場では、「問いを立てること」「相手に聞くこと」がますます重要になっています。「お客様も、あまりにも抽象的な問いや材料が多いと答えに迷う。だからこそ『うちはこういうことをやっていますが、御社はどうですか？』と問いを置くだけでも意味がある」といいます。
多様な意見が共存し、正解が一つではない時代だからこそ、企業としてのスタンス――「この会社はこう考えている」という指針が、読者やお客様の選択を後押しします。「問い」を発信すること自体が、企業にとって大きな価値となっているのです。
セルフマネジメントと組織の弱さ 在宅勤務が映し出すリアル
コロナ禍を経て急速に広がった在宅勤務。ハイブリッドワークは、単なる働き方の”便利さ”を超えて、組織や個人の本質をあぶり出しました。
「在宅をきちんと活用できているのは、ごく一部。セルフマネジメントができる人だけが成果を出せる」
岩田はそのように考えています。
一方で、リモートワークに慣れ、「楽」を覚えたことで、業務へのコミットメントや組織への貢献度が低下してしまう人も少なくありません。
実際、特定の曜日になると出社人数が極端に減り、事務所が閑散とする現象もみられます。
「最大公約数的に言えば、”もう在宅はやめてほしい”という思いもある」
「在宅はセルフマネジメントできる人に限定すべき」
経営者視点から見れば、時間ではなく成果・結果で評価すべきだという一方で、そんな現場感覚も本音ではあります。
「在宅でも成果を出せる仕事がある一方で、出社でこそパフォーマンスが最大化できる職種があることも意識してほしいのです。プロ意識を持って仕事に臨むのであれば、この原則は外してほしくありません」
岩田は常々、そのように語っています。
個々の裁量が増すなかで、全員が自由を享受できるわけではありません。一定の規律や組織文化がなければ、成果主義もうまく機能しません。リモートワークは、組織の強さと弱さ、双方を映し出す鏡でもあります。
オフィスワークの再考―誠実な人ほど困り、学びづらい構造へ
一方で、オフィス勤務においても新たな課題が生まれています。
誠実に仕事を進めようとする人ほど、上司の承認や確認を丁寧に得ようとして時間がかかり、結果としてお客様対応が遅れることがあります。
また、上司や連携先が近くにいないことで相談しづらい状況が起きています。
成果が出ていない人ほど孤立しがちで、自分の仕事ぶりを他者に見せたがらない。
若手社員の中には、電話応対を周囲に聞かれないように離席して対応するケースもあり、先輩がリアルタイムでフィードバックできる機会が減っています。
かつては「隣で電話を聞いて学ぶ」ような偶発的な学びが生まれていましたが、今はそれが起きにくい。
このように、誠実な人ほど困り、学ぶべき人が学べない構造ができてしまっており、オフィスワークのあり方自体を見直す必要があります。
対面コミュニケーションの再定義―チームで成果を生み出す仕組みについて
リモートワークの普及は、対面コミュニケーションの価値を再評価するきっかけでした。
「当社は、対面コミュニケーションを活性化させることが使命」
そしてその背景に不可欠な要素は、「チームとして働きやすい状態」「メンバーが安心して助け合える雰囲気」であると、岩田は考えます。
「組織に報酬を払うのは、単に”工数”や”時間”だけではありません。無言の存在感やチームへの影響力、そこにいてくれることで生まれる安心感にも価値がある。特に大規模な組織になるほど、個人プレーに偏りやすくなり、密なコミュニケーションが失われがちです」
リアルな場での「空気感」や「風土」「イノベーション創出」は、オンラインだけでは十分に生み出せない部分が多く残ります。だからこそ、「”早く会社に行ってみんなに会いたい”と思える会社であり続けたい」と強調します。
「成果主義」と「働きやすさ」のバランスは、極めて繊細なテーマです。どちらか一方に振り切るのではなく、両者の”いいとこ取り”を目指す―。それこそが、今の時代の経営に求められている姿勢であるという考えです。
グループアドレス導入―チーム連携を高める実験的チャレンジ
11月11日（火）の朝礼で発表した「グループアドレス化」は、こうした課題意識をもとにした新しい取り組みです。
営業部や営業アシスタント部門、人事総務部や財務部などのバックオフィス部門を中心に取り入れました。
元々弊社では、2016年の移転時は固定席、2018年に試験的にフリーアドレス、2020年からABW（Activity Based Working）を導入した経緯があります。
しかしコロナ以降、コミュニケーションが希薄化し、特に若手層はフリーアドレスしか経験していません。
そこで今回は、同じ組織ごとに島を固める「グループアドレス方式」を試験導入し、チームコミュニケーションの量と質を高める仮説検証を行います。
この変更は固定席への回帰ではなく、組織連携と情報共有を再活性化するための実験的施策です。
「問いを立てる」組織へ―自分たちのスタンスを示す発信こそ価値がある
これまでの経営や働き方の議論のなかで、特に重要なのが「問いを立てる力」です。お客様にも、社員にも、問いを立てて、考えてもらう。それが実は、企業発信の最も大きな価値の源泉になります。
問いかけ型の情報発信は、読み手が自分ごととして考え、納得し、行動に移すきっかけを生み出します。
「うちはこういうやり方です、御社はどうですか？」
こうしたスタンスを打ち出すことで、記事が単なる情報提供から、組織の価値観や考え方の共有、さらには社内向けのメッセージとしても機能します。
組織内で共感が生まれ、「自分ごと化」された問いがあることで、社員一人ひとりの行動が変わり、組織全体が自律的に動き出す。まさに「問いを立てる」文化が、次世代組織の強さにつながるのです。
経営者は、すべての人に寄り添うことはできません。価値観や働き方が合わない場合には、「環境を変える」という選択肢も当然あり得る。そうした潔さも含め、「うちはこうする」というスタンスを明確に示すことが、経営者にとっても、これからの時代にも必要であると信じています。
変わる組織、変わらぬ思い―300人規模企業が今、守るべきもの
組織が成長し、規模が大きくなるほど、コミュニケーションの質や文化の伝承が課題になります。
「昔は、結婚や身近な出来事をみんなで祝う温かさがあった。それが今は希薄になりつつある」
岩田にはそのような寂しさがあります。
寂しさと言うよりも、ある意味での矛盾かもしれません。
「時代というものかもしれませんが、私はこう考えます。訃報は当然、会社に届け出るものです。社員の悲しみを共有し、皆でバックアップする為に不可欠な情報だからです。当然、無条件の休暇が必要です」
その上で岩田は、こう考えます。
「だからこそ、婚姻や出産、育児、介護も会社に届けるべきと考えています。人生の特別なイベントには、特別な支援が必要だからです。」
一方で、現代の組織は多様なバックグラウンドを持つ社員が集まり、個人の事情や価値観も多様化しています。ハイブリッドワークやリモートワークを活かしつつ、どうやって「組織らしさ」を守るのか。
そのためには、仕組みや制度だけでなく、経営者自身が明確なビジョンを持ち、率直に発信し続ける姿勢こそが重要になります。
「価値観やスタンスが合わない人がいれば、無理に引き留めない」
言葉だけで捉えると、そんな冷たい考え方も組織にとって健全な成長の一部であるとします。
「”うちはこうする”というスタンスを明示し、納得できる人たちと新しい組織文化を育てていく」
その先にこそ、強いチームワークと高い成果が生まれると信じているからです。
私たちは、より良い働き方を模索するお客様に良い支援を行うためにも、自社自身が変化を恐れずチャレンジし続ける必要があります。今回のグループアドレス化もその一環であり、働く環境づくりの答えを自ら検証していくプロセスです。
組織は常に変わります。しかし、変わらない「思い」や「価値観」こそが、どんな時代にも企業を支える根幹であり続けるのではないでしょうか。
この記事を書いた人
そしきLab編集部
ウチダシステムズのスタッフを中心に、組織作りや場づくりについて議論を交わしています。業務の中で実際に役に立ったことなどを紹介していきます。
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