従業員のメンタルにも影響する「テクノストレス」実態を知って対策を考えよう

PC、タブレット、スマートフォン…いまやわたしたちは、これらのスクリーンなしには業務を進めることができません。

ただ一方でスクリーンタイム(デジタル機器の画面を見ている時間)が長くなることによって、眼精疲労だけでなく従業員のメンタルにも悪影響を及ぼすことがわかっています。

長時間のデジタル機器での作業によって引き起こされる疲労などの症状は「テクノストレス」と呼ばれ問題になっています。メンタルヘルスとの相関関係もあるため、オフィス環境や働き方によって少しでも改善できるよう、ここで考えてみましょう。

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スクリーンタイムが健康に及ぼす影響

長時間パソコンで作業していると、目が疲れてきたり肩が凝ってきたりする人は多いことと思います。
しかしパソコンなどの画面を長時間見続けることは、他にも悪影響があることがわかっています。*1*2

例えば画面をじっと見つめるため結膜、角膜が乾燥していわゆる「ドライアイ」になったり、同じ姿勢を取り続けなければならないことから肉体的疲労だけでなく精神的な疲労も生じます。またスクリーンタイムが長時間に及ぶと、脳疲労から集中力や記憶力が低下します。
さらには自律神経の乱れを引き起こし無気力、不安、イライラといったメンタル症状に繋がります。
これらの疲労は「テクノストレス」と呼ばれています。

年代とスクリーンタイム

そしてパーソル総合研究所の調査によれば、スクリーンタイムは若い世代ほど長い傾向にあります。

年代別スクリーンタイムの長さ
(出所:パーソル総合研究所「テクノストレスが20代若手社員のメンタルヘルスに及ぼす影響」)
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/thinktank-column/202502270001/

20代では仕事のある日のスクリーンタイムが平均5.2時間なのに対し、仕事のない日のスクリーンタイムが5.3時間と、休日の方が長いという特徴もあります。

スクリーンタイムと疲労・ストレスの相関

また、同じ調査によると、スクリーンタイムと疲労やストレス反応にも相関関係が見られます。

20代正社員・公務員(非管理職)のスクリーンタイムと症状悪化リスク
(出所:パーソル総合研究所「テクノストレスが20代若手社員のメンタルヘルスに及ぼす影響」)
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/thinktank-column/202502270001/

スクリーンタイムが長い上位20%(週52時間以上、1日平均7.4時間以上)の20代若手社員は、下位20%の20代若手社員と比べ、脳疲労や眼精疲労の発生率が1.5倍、メンタル症状(不安感)の発生率が1.6倍も高という調査結果が出ています。

その他、集中力が続かない(脳疲労)、首筋や肩がこる(眼精疲労)が発生する割合も、スクリーンタイムが長いほど高くなっています。

スクリーンタイムの長い若手層には、より注意が必要だということになります。

「テクノ依存」と「テクノ不安」

そしてテクノストレスがメンタルに与える影響については、「テクノ依存」と「テクノ不安」という相反する症状も指摘されています。

テクノ依存は「コンピュータに中毒的に没頭することによって人間的な感性が乏しくなり、機械的な思考をするコミュニケーションの下手な人間性を作り上げる病態」をさします。
一方のテクノ不安は、「コンピュータ操作の技能不足から生じる不安感などが、コンピュータ忌避という精神状態を作り上げ、それがうつ病や神経症などを引き起こす病態」のことです。*3

テクノ依存とテクノ不安
(出所:労働政策研究・研修機構「IT 化とストレス」春日伸予)
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2011/04/pdf/034-037.pdf p34

テクノ依存はインターネット依存と同時に語られることが多く、ある程度知られていることですが、自覚がないパターンと自覚のあるパターンがあります。
自覚のある人は過度のコンピュータ作業による疲労や睡眠不足で社会生活に弊害が生じ「コンピュータ作業をやめなくては」という気持ちが存在するもののやめられない、という状況です。
自覚があるうちに改善する方法を考えたいところです。

見逃されがちな「テクノ不安」

一方でIT技術の進化は非常に早く、機器やシステムを使いこなせない、ついていけないという苦手意識が続き、ストレスを抱えるのがテクノ不安です。中高年を中心に増えています。*4

端末を上手く扱えないストレスもそうですが、もたもたしている自分への周囲の視線も気になるようになり、焦りがさらにミスを呼ぶ…そのようにしてストレスは増大していきます。
また苦手を克服しようと深夜や休日まで練習を続けてしまい、さらに状況を悪化させてしまうこともあります。

職場でどんな対策ができる?

スクリーンタイムの長さやテクノ依存については、従業員の休日の生活まで把握することはできませんから、なかなか管理は難しいことと思います。

ただ、例えばテクノストレスについて周知する、外光をなるべく取り入れモニターの輝度を低くするなどの工夫があると良いでしょう。

なおテクノ依存と同時に語られるインターネット依存については、アルコール依存症の治療で有名な久里浜医療センターがチェックリスト(Kimberly Youngらによる)を公開しています。

IAT : Internet Addiction Test (インターネット依存度テスト)
(出所:久里浜医療センター)
https://kurihama.hosp.go.jp/hospital/screening/iat.html

20の質問に回答し、総合得点でインターネット依存と治療の必要性を判断するというものです。

またテクノ不安については本人から言い出しにくい可能性が高いことでしょう。技術や新しいシステムについていけていない自分が悪い、と捉えてしまい、蓄積されたストレスを後回しにしてしまう傾向があると考えられます。
これについては、従来のストレスチェックにテクノストレスの項目を付け加えるなどの工夫をするのが良いかもしれません。

特にテクノ不安はパニック障害やうつ病など、長期休職を要する重大な精神疾患を招きかねません。発見次第、早めに医療機関の受診に繋げる必要があります。

個人で予防する方法も周知しよう

また、下のような予防方法もあります。*5

  • 目が疲れたら、PCから離れて遠くを見る=見通しの良いオフィス設計が必要でしょう。
  • 根を詰めて90分働いたら10分休み=人が緊張したままでいられるのはせいぜい90分くらいです。
  • ため息を大きくつく=ゆっくり長く息を吐くことで副交感神経が優位になり、心身の緊張を和らげてくれます。

残念なことに現代は、デジタル機器なしでは仕事はおろか生活も不便なものになってしまう時代です。今後はもっと仕事や生活のあらゆるところにデジタル機器が浸透してくることでしょう。

まずテクノストレスという現象について知り、予防のためにオフィスレイアウトでできること、個人でできることを積極的に考え取り入れていきたいものです。
また女性の場合は生理不順などの症状が加わることもありますので、より注意が必要です。

この記事を書いた人

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後TBSに入社、主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として国内外の各種市場、産業など幅広く担当し、アジア、欧米でも取材活動にあたる。その後人材開発などにも携わりフリー。取材経験や各種統計の分析を元に各種メディア、経済誌・専門紙に寄稿。趣味はサックス演奏と野球観戦。
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参考資料

*1
時事メディカル「VDT症候群(テクノストレス)」
https://medical.jiji.com/medical/011-0234-12

*2
パーソル総合研究所「テクノストレスが20代若手社員のメンタルヘルスに及ぼす影響」
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/thinktank-column/202502270001/

*3
労働政策研究・研修機構「IT 化とストレス」春日伸予
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2011/04/pdf/034-037.pdf p34

*4
ヨミドクター「パソコンを使って顧客対応、中高年に「テクノストレス」発生中」
https://www.yomiuri.co.jp/yomidr/article/20200302-OYTET50020/

*5
日経クロステック「第3回 ITエンジニアの職業病 ──テクノストレス・テクノ依存症・テクノストレス眼症」
https://xtech.nikkei.com/it/article/COLUMN/20071207/289038/


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そしきLab編集部

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