教職員の学びが変わると、教育が変わる─兵庫県立総合教育センターのフューチャークラスルーム導入事例

教職員が学ぶ環境が変われば、その指導方法も変わり、ひいては生徒の学びも変化します。
兵庫県立総合教育センター様では、教職員の研修環境を抜本的に見直し、新たにフューチャークラスルーム(FCR) 🄬を導入しました。ICTを活用したこの研修空間は、単なる設備の刷新にとどまらず、「より実践的な学び」を提供することを目的としています。

従来の研修室では、講義型のスタイルが主流で、グループワークや個別ワークが難しいという課題がありました。しかしFCRでは、可動式の家具やリアルサイズで投影できる無線投影システムを活用し、より柔軟な研修環境を実現しています。本記事では、その導入の背景や効果、現場の声を詳しくお届けします。

Future Class Room®= 学習者が主体的・能動的に学習に取り組む新しい教育・学習スタイル(アクティブラーニング)を実現するため、先端のICT環境、フレキシブルなファニチュア、多拠点との連携設備などを備えた、未来の学習空間

兵庫県立総合教育センター

(中央)情報教育研修課 主任指導主事兼 情報教育研修課長 安本 靖史
(中央右隣)情報教育研修課 指導主事 難波 伸也
(右から2番目)情報教育研修課 主任指導主事 原口 攻一郎
(中央左隣)総務課 課長 松枝 志朗
(左から2番目)総務課 副主任 松本 真優

事業内容:教育関係職員の研修及び教育に関する専門的技術的事項の研究
所在地:兵庫県加東市山国2006-107
導入商品:アクティブラーニング教室【Future Class Room®】(2024年)
HP:https://www.hyogo-c.ed.jp/~kenshu/

(右)株式会社ウチダシステムズ 公共事業部 大阪公共営業部 次長 李 勝熙
(左)公共事業部 大阪公共営業部 川出 直

 なぜフューチャークラスルームが必要だったのか? 兵庫県立総合教育センターの挑戦

Point
  • 従来の講義型研修から参加型の学びに変えるために、フレキシブルなレイアウトと無線投影システムを導入
  • 受講者はリアルサイズの投影やタッチディスプレイで、実際の教育現場をシミュレーションしながら学べるように
  • 受講者同士の意見交換や発表が活発になり、理解が深まるとともに、講師の負担も軽減

Q. 兵庫県立総合教育センターの役割について教えてください。

松枝様:当センターは、小・中・高・特別支援学校の教職員が研修を受ける場として運営しています。特に、初任者や中堅の教職員を対象に、最新の教育手法やICTを活用した授業設計について学ぶ機会を提供し、県内の教育の質の向上をめざしています。

FCR導入前の研修環境における課題は何だったのでしょうか?

難波様:従来の研修室では、受講者が前を向き、スライドを見ながら講義を聞くスタイルが一般的でした。近年では個別最適な学びや協働的な学びの重要性が高まり、教職員がこれからの学びをどのように自校で実践できるか、考えるきっかけとなる研修環境が求められるようになっています。

原口様:最近の研修ではグループワークの重要性も高まっているのですが、以前の研修室は長机だったのでレイアウトを変えることができず、受講者が実際の授業の場面を具体的にイメージしにくい状況でした。日頃から、研修設備のよさや効果が十分に発揮されていないと感じていたんです。

実際の研修の際は、具体的にどのような不便さがありましたか?

難波様:研修室のレイアウトを変えられず、グループワークを円滑に進めるのが難しい場面が多くありましたね。

原口様:ICT設備は整っていたものの、十分に活用できていなかったんです。例えば、大型モニターやプロジェクターはありますが、遠くて見えにくかったり、講師が指しているところが受講者の自席に近いモニターではわからなかったり。

こうした課題を解決するために、フューチャークラスルームの導入を検討されたのですね。

松本様:今後の教育現場では『主体的、対話的で深い学び』が重視されるようになっており、それに対応した研修環境の整備が必要だという共通認識がありました。そこで、研修室の設備やレイアウトを見直し、ICTを活用しながら、より柔軟で効果的な学びが実現できる環境を整えていくことにしました。

情報教育研修課 指導主事|難波 伸也 様

研修環境が劇的に進化! フューチャークラスルームの特長とは?

Q. フューチャークラスルームの導入に際して、特にこだわったポイントは何でしょうか?

難波様:こだわったポイントは、この大きなボードにリアルサイズで投影することができる点ですね。今までだったら実物の大きさを比較するのが難しかったのですが、これは並べて表示し、実際の大きさを体感できるので、非常に有用だと感じています。

原口様:研修でポスターを制作した際の話ですが、画面上でデザインしているときは気にならなかった部分も、リアルサイズで投影してみることで『学校に貼るならどう見えるか』という視点が欠けていることに気づけます。『廊下に貼るには文字が小さい』とか。これまではこうした体験ができなかったので、研修の中に実践的な要素はずっと取り入れたいと思っていました。

実践的な要素は体験として学べて良いですね。他にこだわったところはありますか?

原口様:新しく導入したモバイルタッチディスプレイを活用することで、グループワークも活性化しています。受講者のタブレットからの接続も簡単ですし、モニターの向きも自由に変えられるので、研修内容に合わせてフレキシブルに使っています。機器の操作で立ち止まってしまうと研修への参加意欲が削がれてしまうので、直観的に操作できるのは大変好評です。

USS 李:実際にデモ機を数週間使っていただいたので、納得してご導入いただけたと思っています。

モバイルタッチディスプレイを使った研修のデモンストレーション
株式会社ウチダシステムズ 公共事業部 大阪公共営業部 次長|李 勝熙

実際に受講者の反応はどうでしたか?

難波様:導入直後から、「新たな学習形態の有用性に気付いた」「視認性が向上し、理解しやすくなった」という声が多く寄せられています。特に、研修室のどの位置からでもモニターが見やすくなり、集中力を維持しやすくなったという意見が多かったですね。

フューチャークラスルームの導入により、研修の進め方にどのような変化がありましたか?

安本様:講師が一方的に話すのではなく、受講者同士のコミュニケーションを促進する研修スタイルへと移行しました。例えば、受講者が自分の考えをすぐに画面上で共有し、それをもとに意見を交わすことで、より深い理解につながるようになったと感じています。

情報教育研修課 主任指導主事兼 情報教育研修課長|安本 靖史 様

導入までの道のり─乗り越えた課題と意思決定の裏側

Q. フューチャークラスルームの導入にあたって、どのような課題がありましたか?

難波様:研修環境を大きく変えるには予算の確保が必要ですが、新しい学びのために設備を新しくすることの重要性を理解してもらうのは簡単ではありませんでした。

予算の確保に関して、どのような苦労がありましたか?

難波様:上司を含む職員の方々に、何度も説明を重ねる必要がありました。今までの研修とは異なる形になることを理解してもらうために、イメージ図を何度も描き直し、固定概念を崩せるよう、説明を工夫しました。何回も議論を重ねてようやく受け入れてもらえたという感じですね。

何度も説明する中で、途中で気持ちが折れそうになることはありませんでしたか?

難波様:いや、むしろ「これを実現できるチャンスは今しかない」と思っていました。何度跳ね返されても、その都度説明をブラッシュアップして、しっかり伝え続けることで、最終的には納得してもらえました。

他にも、導入前の調整で苦労した点はありましたか?

原口様:研修内容に合わせた設備配置の最適化には時間を要しましたね。受講者がどのように学べるかを考慮しながら設計を進め、ICT設備を活かせるようにレイアウトの調整を行いました。

USS川出:この教室をどういう形にするかについては、センターの皆様が非常に細かく検討し、内部調整を重ねていらっしゃいました。我々としては、最初の提案から何度か打ち合わせを重ねる中で、本当にこの研修環境にふさわしい機器類を選定することに注力しました。

具体的には、どのような部分をこだわって選定されたのでしょうか?

USS川出:例えば、機器の選定においては複数の選択肢を提示しながらも、センターの皆様が実際の活用シーンを想像しながら取捨選択を行えるようサポートしました。その過程で、使われなくなってしまうほどのオーバースペックな設備にならないよう調整しつつ、研修環境としての最適なバランスを見極めることを意識しました。

株式会社ウチダシステムズ 大阪公共営業部|川出 直

変わる教職員の学び─導入後の研修現場と受講者のリアルな声

Q. フューチャークラスルーム導入後、研修の様子はどのように変わりましたか?

原口様:導入前は、研修といえば講師が前で話して受講者がそれを聞くという形がほとんどでした。でも今は、受講者自身が積極的に参加し、グループワークの機会も増えました。特に、机やモニターを自由に動かせたり、受講者が自分の考えを共有したりできるので、話し合いや発表がスムーズに進むようになったのは大きな変化ですね。

受講者の反応はいかがでしたか?

原口様:例えば、研修の冒頭、音楽や動画を流していると、受講者の興味を引くことができ、ここでどんな研修をするのだろうか、研修への期待度が一気に高まるのを実感しています。受講者からも『最初から研修に入り込みやすかった』という声を多くいただいています。

他にも複数のグループで進行する研修の中で、リアルタイムに情報を共有できる点が非常に好評です。以前は講師が1グループずつ回って指導・助言する形でしたが、今では4つの画面を一度に表示できるので、より細かい指導・助言が可能になりました。講師側の負担が軽減されただけでなく、受講者も他のグループの進捗を自然に意識できるようになり、学びが深まっています。休憩時間にも話し合っている様子もあり、「ちゃんと休んでくださいね」と声をかけることもあります(笑)

かなり主体的に参加されるようになった様子が伺えますね。研修の質に変化はありましたか?

原口様:受け身で受講している人は見かけなくなりました。受講者の満足度が上がったのはもちろんですが、講師側としても、より効果的な研修を提供できる環境になったと実感しています。特に、演習中のフォローがしやすくなったのが大きいですね。

兵庫県立総合教育センター 情報教育研修課 主任指導主事|原口 攻一郎 様

未来の教職員研修はどうなる? フューチャークラスルームのさらなる可能性

Q. 今後、フューチャークラスルームをどのように発展させていく予定ですか?

安本様:授業のあり方が変わってきている中で、研修も一方向の形式では十分とは言えません。現在の研修スタイルは対面を中心に構築されていますが、今後は個人ワークと協働演習を組み合わせた研修スタイルに進化させていく必要があります。そのためには、フューチャークラスルームのような柔軟な環境を整え、より実践的な研修の場を作っていきたいと思っています。

原口様:理想は、講師があれこれ説明しなくても成立する研修にしたいと思っています。機器の操作手順や研修のガイドもあって、他人の事例も適宜見られる状況なので、自ら気付きを得て自分のワークを進めるようなイメージです。私たちは、受講者が躓いたときに手を差し伸べて伴走するような研修にしていきたいですね。

あわせて、違う校種や教科の先生同士をつなげることでより研修での学びが深まるし、その後のつながりが増えれば教育全体のレベルアップにもつながると思っています。

各学校の取り組みは、それぞれの学校の中で完結しがちですが、教育センターは県全体の教職員が訪れる場所ですよね。センターがハブとなって、この取り組みを広げていく非常に重要な立ち位置にあるのではないかと思います。

FCRの導入で、研修環境が大きく変わり、受講者も講師の皆さまもこれまで以上に充実した研修になっていることがわかりました。今後はオンライン活用も視野に入れているとのことですので、教職員の学びの変革が教育全体の向上につながることを期待しております。

この記事を書いた人

そしきLab編集部

ウチダシステムズのスタッフを中心に、組織作りや場づくりについて議論を交わしています。業務の中で実際に役に立ったことなどを紹介していきます。


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