
近年では、従業員の副業を認める企業が増えています。
副業は従業員の自己実現や収入増に繋がる一方で、きちんと管理しないと本業に支障が出たり、思わぬ不祥事に繋がったりすることもあります。従業員と会社の双方にとって安心できる副業制度を整備しましょう。
本記事では、企業が従業員に副業を認める際の注意点などを弁護士が解説します。
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企業が従業員の副業を認めるメリット
企業が従業員の副業を認めるメリットの一つは、優秀な従業員を確保しやすくなる点です。
能力の高い人材は、本業だけでなく幅広い領域において、自分の力を発揮しようとする傾向にあります。そのような人材が勤務先を選ぶに当たり、副業が認められていることは大切な要素の一つです。
こうしたニーズに応えるため、企業が従業員の副業を認めることは十分合理的と言えます。
また、従業員の副業を認めていることが広く認知されるようになれば、「懐の広い企業」といったポジティブなイメージの定着に繋がります。社会的な企業イメージが向上すれば、業績アップにも繋がっていきます。
そもそも、使用者である企業が従業員を指揮できるのは労働時間に限られています。それ以外の時間をどのように使うかは、本来従業員の自由です。
近年では上記の考え方が幅広く浸透し、副業を認める社会的な流れが加速しています。時代の潮流に適した経営をするためには、従業員の副業を認めることは不可欠の要素になりつつあります。
従業員の副業について、企業が注意すべきトラブル
企業が従業員の副業を認める際には、副業に起因するトラブルに注意しなければなりません。たとえば以下のようなトラブルが想定されるところ、企業は何らかの対策を講じておく必要があります。
副業に熱心なあまり、本業に支障が出てしまう
従業員が副業に対して熱心に取り組みすぎると、本業がおろそかになってしまうおそれがあります。たとえば、深夜まで副業をしていたために遅刻をしたり、寝不足で仕事にならない状態で出勤したりするケースが分かりやすいでしょう。
企業は従業員に対して、本業に支障が出ない範囲内で副業をするように、ルールを作って指導することが求められます。
副業中の不祥事によって、企業の評判が損なわれる
従業員が副業に関して不祥事を起こしたことにより、本業の企業名が報道されたり、SNSで拡散されたりするケースがあります。
たとえば、犯罪行為や反社会的勢力と繋がりが判明した場合などには、所属企業の評判が損なわれてしまうことになりかねません。
企業は従業員がどのような副業をしているのか把握し、不適切と思われる場合はやめるよう指導すべきです。
営業秘密が持ち出され、副業先で悪用される
従業員の副業先が競合他社である場合などには、自社の営業秘密が持ち出されて悪用されるおそれがあります。営業秘密が外部で悪用されると、売上や市場シェアの低下、評判の失墜などに繋がりかねません。
企業は従業員の副業先をチェックするとともに、営業秘密を不正に持ち出さない旨を従業員に誓約させるなどの対応を行いましょう。
また、営業秘密の不正使用等は不正競争防止法違反に当たり、違反者に対して使用の差止めなどを請求することができます。
企業が知らないうちに、労働基準法違反の状態が生じる
従業員が2カ所以上の職場で雇用されている場合、労働基準法による労働時間の上限は、すべての職場における労働時間の合計に対して適用されます。
従業員が別の職場で雇用されていることや、副業先での労働時間を把握していないと、知らないうちに労働基準法違反の状態が生じるおそれがあるので要注意です。
従業員の副業を適切に管理するためのポイント
企業が従業員の副業状況を適切に管理するためには、以下のポイントを押さえた対応を行いましょう。
副業の内容や労働時間などを、従業員に届け出させる
従業員が行っている副業の内容を把握することは、競合他社や反社会的勢力への関与、本業への支障を防ぐ観点から重要です。
また、従業員が別の職場でも雇用されている場合は、労働時間の合計に対して上限規制が適用されることを踏まえると、副業先における労働時間も把握する必要があります。
副業をしようとする従業員に対しては、副業の内容や労働時間などの届出を義務付けましょう。
就業規則において、副業を制限できる場合を定める
従業員の副業の内容が不適切と思われる場合は、企業の判断で副業を制限できる旨の規定を就業規則に定めておきましょう。
たとえばモデル就業規則*1では、以下の場合に副業を制限できる旨が定められています。
(1)労務提供上の支障がある場合
(2)企業秘密が漏洩する場合
(3)会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
(4)競業により、企業の利益を害する場合
ただし、合理的な理由なく副業を制限する就業規則の規定は、公序良俗に反し無効となるおそれがあるので注意が必要です。
本業への支障や不祥事の防止などの観点から、必要があると考えられる場合に限って副業を制限するのが基本的な考え方になります。
従業員に対し、副業に関するルールを十分周知させる
就業規則などによって副業に関するルールを定めたら、その内容を従業員に対して周知させる必要があります。
イントラネットなどにより、副業規定を従業員が閲覧できる状態にしておくことは大切ですが、それだけでは不十分です。定期的に従業員研修を行い、副業に関するルールを詳しく説明するなどの対応が推奨されます。
従業員が副業に関するルールに違反した場合は、懲戒処分を検討する
副業に関するルールに違反し、不適切な形で副業を行った従業員に対しては、懲戒処分を検討すべきでしょう。適切に懲戒処分を行えば、他の従業員の規範意識が向上し、副業に伴うトラブルのリスク防止に繋がります。
ただし懲戒処分を行う際には、懲戒権の濫用に当たらないように注意しなければなりません。客観的・合理的な理由のない懲戒処分や、従業員の行為の性質や態様に照らして重すぎる懲戒処分は、懲戒権の濫用として無効となります(労働契約法15条)。
懲戒権の濫用を避けるためには、いきなり懲戒処分を行うのではなく、その前に従業員に対して注意と改善指導を行うことが推奨されます。
懲戒処分を行うとしても、よほど悪質なケースでない限りは、戒告などの軽い懲戒処分にとどめた方が無難です。
まとめ
従業員の副業を認めることは、優秀な人材の確保や企業イメージの向上に繋がります。その一方で、営業秘密の流出や不祥事など思わぬトラブルのリスクがある点には十分注意が必要です。
企業においては、副業状況を適切に管理できる仕組みを整えることが求められます。
具体的には、就業規則で副業に関するルールを明示したうえで、その内容を従業員に対して十分に周知し、実際の副業状況の届出を求めるなどの対応が考えられます。自社に合った副業制度の在り方を検討しましょう。
この記事を書いた人
阿部 由羅
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
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参考資料
*1 参考)厚生労働省「モデル就業規則」p90
https://www.mhlw.go.jp/content/001018385.pdf
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