
体調不良による急な欠勤は、職種を問わず誰にでも起こりうるものです。しかし、「休むと迷惑をかけてしまうのでは」という気持ちから、無理に出社する方も少なからずいるようです*1。
また、休む際の連絡内容に不備があると、職場での対応に混乱をまねくことにもなりかねません。

https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r06/zentai/html/zuhyo/zuhyo00-45.html
そもそも「体調不良」は身体的な症状だけでなく、メンタル面の不調まで含む幅広い概念です。何を、どこまで伝えればよいのか判断に迷う場合も多く、従業員だけでなく企業側も適切な対応が必要です。
この記事では、体調不良で仕事を休む際に会社へ伝えるべきこと、市販薬使用時の注意点、日頃から取り組みたい健康管理術を解説します。
病気休暇制度の整備状況や実例も紹介しますので、従業員一人ひとりの休み方だけでなく、組織としての向き合い方を考えるきっかけとしてお役立てください。
体調不良時に会社へ連絡する際のポイント*2*3
体調不良で休むときは、伝え方ひとつで職場の受け止め方が変わります。ここでは、連絡時に押さえておくべきポイントを整理します。
誰に、どのように連絡するか
欠勤連絡につき社内規定がある場合は、それに従います。特に決まりがない場合は、直属の上司に連絡するのが基本で、メールでの連絡でも差し支えないと考えられます。
なお、取引先との約束がある場合は対応が異なります。上司への連絡に加えて、先方にも取り急ぎメールで一報を入れ、その後電話でお詫びを伝えるのが望ましいでしょう。
いつ連絡するか
欠勤連絡は、原則として就業時間前に済ませましょう。
早めに連絡すれば、上司や同僚がその日の業務を調整しやすくなります。
何を伝えるか
伝えるべき内容は、(1)休む理由、(2)復帰の見込み、(3)引き継ぎたい業務、(4)お詫びの一言です。
(3)については、何をどこまで対応してほしいのかを具体的に伝え、業務が停滞・混乱しないようにしましょう。
医療機関を受診する予定がある場合は、診察後に復帰の見込みをあらためて連絡するとよいでしょう。なお、メンタル面の不調で欠勤する場合は、詳しい症状をすべて明らかにする必要はなく、「体調不良のため」と伝えるだけで十分です。
体調不良で休む際の連絡フローおよび連絡内容

市販薬の使い方と日常的な健康管理
体調不良時に市販薬を使う方も多いと思います。しかし、市販薬を使用する際には、アレルギー歴や併用薬などに注意が必要です。また、体調不良そのものを防ぐには、日々の生活習慣を整えることが大切です。
市販薬を使うときの注意点
過去に薬でアレルギー症状を起こしたことがある方は、該当する成分が含まれていないか必ず確認してください。同じ成分でなくても同系統の成分で症状が出るケースがあるため、不安がある場合は購入前に薬剤師に確認すると安心です。
また、医師から処方されている薬やほかの市販薬を飲んでいる場合、サプリメントを使用している場合は、飲み合わせに注意が必要です。成分の重複による過剰摂取のほか、薬の代謝・分解に影響がおよんで効果が強く出たり弱くなったりすることもあるため、安易な併用は避けましょう。
そのほか、妊娠中や授乳中の方、持病がある方(心臓、腎臓、肝臓の病気など)は、自己判断で市販薬を使用せず、服用前に医師・薬剤師に相談することをおすすめします。
なお、市販薬を使用しても症状が改善しない場合は、早めに医療機関を受診してください。
体調不良を防ぐ日常的な健康管理
睡眠時間を確保する
睡眠不足が続くと、疲労が回復せず体調を崩しやすくなります。
また、睡眠時間が短すぎると、肥満や高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管疾患、認知症、うつ病などの発症リスクが高まることが明らかになっています。さらに、睡眠時間が6時間未満になると、死亡リスクが有意に上昇することも報告されています*4。
適正な睡眠時間は人により異なりますが、健康の維持・増進のため6時間以上は睡眠をとるようにしましょう。
食事のバランスを整える
栄養バランスの悪い食事が続くと、抵抗力が落ちて風邪をひくなどの不調が出やすくなります。「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」の5つの食品群を目安に、偏りの少ない食事を摂るよう心がけましょう*5。
栄養のことを考えるのが面倒な場合は、「赤・白・黄・緑・黒」の食材を意識して選んでください。このようにすると、無理なくいろいろな食材を取り入れられるため、栄養バランスが整いやすくなります*6。
できるだけ体を動かす
体を動かす機会が少ないと、腰痛や肩こり、頭痛などが起きやすくなり、欠勤しない場合でもプレゼンティーズム(出勤していても生産性が低下する状態)をまねくおそれがあります*7。また、十分な身体活動を行わないと生活習慣病をはじめとする疾患のリスクが高まり、座位時間が長くなりすぎると死亡リスクが高まることも明らかになっています。
適度な運動は、体をほぐして疲れをやわらげるだけでなく、気分転換にも役立ちます。理想は、歩行と同程度以上の運動を毎日60分以上(歩数に換算すると約8,000歩以上)行うことですが、体を動かしたり運動したりする時間が10分増えるだけでも病気になるリスク・死亡するリスクが低下します*8。仕事が忙しいときでも、できるだけ座りっぱなしを避け、体を動かすことを心がけましょう。
お酒の量を見直す
飲酒は、睡眠を妨げ肝臓などにも負担をかけます。生活習慣病や肝疾患、がんなどの発症にも関係することがわかっているため、摂取量を見直すことが大切です。
節度ある飲酒量は、1日当たり純アルコール量20g程度(ビール:500mL程度、チューハイ:350mL程度)とされています。女性やお酒に弱い方の「適量」はより少量になる*9ので、飲み過ぎないようにしましょう。
飲酒と関係する疾患の例

https://gen-shu.jp/risks-associated-with-alcohol/
ストレスに早めに気づく
ストレスをため込むと、心にも体にも負荷がかかり続け、欠勤リスクが高くなります。
ストレスへの対処は、メンタルヘルスケアの出発点としても大変重要です。
気分の落ち込みや疲労感を感じたら、無理をしないで休息をとることを優先しましょう。
病気休暇制度の整備状況と企業の取り組み
体調不良の従業員が安心して休める環境をつくるには、企業側の制度づくりも欠かせません。病気休暇制度の現状と、企業の取り組み事例を見ていきましょう。
病気休暇制度とその現状
病気休暇制度とは、私的な負傷や病気で療養が必要になった場合に、年次有給休暇とは別に休暇を取得できる制度です。年次有給休暇の残日数を気にせず休暇を取得できるため、従業員が安心して療養に専念できる環境づくりにつながります。
病気休暇制度を導入している企業はまだ少なく、令和5年度の調査ではおよそ1/4にとどまっています*10。
病気休暇制度の導入状況

https://work-holiday.mhlw.go.jp/kyuukaseido/recuperation.html
企業による取り組み例
病気休暇は年次有給休暇のように法律で義務とされているわけではないため、その内容を比較的自由に決められます。以下は、実際の取り組み例です*10*11。
| 毎月2日まで特別有給休暇を取得できる「がん」を対象とした休暇制度時間単位あるいは半日単位で取得できる休暇制度失効した年次有給休暇を積み立て、病気等で療養する場合に取得できる失効年休積立制度など |
これらのほか、性別を問わず取得できる「更年期症状による体調不良等のための休暇」や、心身の疲労回復などを目的として付与される「リフレッシュ休暇」などを導入している企業もあります*12。
まとめ|体調不良への備えを従業員任せにしないために
体調不良で休む際は、誰に・いつ・どのように連絡し、何を伝えるかを整理しておくことで、職場への配慮と従業員自身の安心を両立できます。市販薬を使う場合は、アレルギーや飲み合わせに注意し、症状が改善しないときは早めに医療機関を受診しましょう。なお、体調を崩しにくくするためには、日頃の健康管理を意識することも重要です。
従業員が無理をせず休める環境をつくるには、企業側の積極的な取り組みが欠かせません。病気休暇制度の導入はまだ一部の企業にとどまっていますが、がん治療休暇や失効年休積立制度など、柔軟な仕組みを取り入れている例もあります。無理をしない・させない職場をつくるためにも、体調不良への備えを従業員任せにせず、個人と組織の両方で向き合うことが大切です。

この記事を書いた人

中西 真理
公立大学薬学部卒。薬剤師。薬学修士。医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。
参考資料
*1
出所)内閣府男女共同参画局「男女共同参画とは>男女共同参画白書>男女共同参画白書令和6年版>第2節 仕事、家事・育児等と健康課題の両立>特-45図健康 課題に関する働く上での困りごと(男女、役職・雇用形態別・有業者)」
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r06/zentai/html/zuhyo/zuhyo00-45.html
*2
出所)まいにちdoda「はたらく>体調不良で会社を休む連絡はメールで大丈夫?専門家監修の例文を送信相手とシチュエーション別に紹介」
https://mainichi.doda.jp/article/2501281
*3
出所)マイナビ転職「転職ノウハウ>転職実用事典「キャリペディア」>体調不良で仕事を休む際のメール例文|会社や取引先など【シーン別】に紹介」
https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/caripedia/253/
*4
出所)厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>健康>生活習慣病予防>睡眠対策>「健康づくりのための睡眠ガイド2023」」P.11
https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf P.11
*5
出所)厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット)>栄養・食生活>食事バランスガイド(基本編)」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-03-007
*6
出所)アサヒグループ食品「アサヒのサプリ ディアナチュラ>栄養と健康を学ぶ>自分に必要な栄養素について知る>「赤・白・黄・緑・黒」の食材5色バランスチェック」
https://www.dear-natura.com/special/shokuzaibalancecheck
*7
出所)厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット)>身体活動・運動>「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」情報シート:働く人が職場で活動的に過ごすためのポイント」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-00-006
*8
出所)厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット)>身体活動・運動>「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」推奨シート:成人版」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-00-002
*9
出所)大塚製薬「減酒.jp>飲酒量と健康リスクの関係」
https://gen-shu.jp/risks-associated-with-alcohol/
*10
出所)働き方・休み方改善ポータルサイト「働き方・休み方改革を進めるための支援策>代表的な特別な休暇制度の例>病気療養のための休暇」
https://work-holiday.mhlw.go.jp/kyuukaseido/recuperation.html
*11
出所)働き方・休み方改善ポータルサイト「働き方・休み方改革を進めるための支援策>特別な休暇制度導入事例>ティーペック株式会社」
https://work-holiday.mhlw.go.jp/detail/06222.pdf
*12
出所)働き方・休み方改善ポータルサイト「働き方・休み方改革を進めるための支援策>代表的な特別休暇制度の例」
https://work-holiday.mhlw.go.jp/kyuukaseido/example.html
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