AIを使いこなす社員、使いこなせない会社の差 意外なボトルネックをデータを元に解説

生成AIが急速に普及し、企業でもAI活用を推進する動きが広がっています。
しかし、実際には同じAIを導入していても、活用が進む企業と、ほとんど使われていない企業があります。

その違いは、社員のITリテラシーでしょうか。
あるいはAIそのものの性能でしょうか。

最近の調査では、企業がAI活用を進める際に、その定着を左右するのは、AIを使いこなすための知識やスキルだけではなく、「もっとも身近な存在」であることが明らかになっています。

AI活用を後押ししている、あるいは阻んでいる意外な存在とは何か。
最新の調査データから読み解いていきます。

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AI活用を左右するのは「直属の上司」

多くの企業では、生成AIツールを導入するにあたって、AI活用のガイドラインを整備したり、AI研修を実施したりといった取り組みを進めています。

もちろん、こうした環境整備は重要です。
しかし、それだけでは社員はAIを積極的に活用できません。

GALLUP社の「2026年第1四半期の米国労働者調査」によると、組織内でAIが日常的に活用される主な要因の1つが「管理職によるAI活用の推進」でした。*1
AI活用を左右するのは、AIそのものではなく「管理職の関わり方」なのです。

AIへの投資を進める米国企業では、直属の上司がチームでのAI活用を積極的に支援していると感じている従業員ほど、次のように、AIの価値を高く評価する傾向が見られました。

AIによって働き方が変わったと強く感じる割合:約8.7倍
AIによって自分の強みをより発揮できるようになったと感じる割合:約7.4倍

つまり、AIを導入するだけでは十分ではなく、現場で管理職がAI活用を後押しできるかどうかが、AIの効果を大きく左右しているということになります。

なぜ上司がそこまで重要なのか

AI活用には、まだ「正解」がありません。

どの業務に使うべきか。
どこまで任せてよいのか。

AIの活用では、多くの社員が手探りで試行錯誤しています。
このような状況では、部下がさまざまな不安を抱えるのは自然なことです。

「失敗したら叱られるのではないか」
「AIを使うことを本当に評価してもらえるだろうか」
「時間をかけて試してもいいのか」

そんなふうに考えても不思議ではありません。

新しいことに挑戦するとき、「失敗して評価が下がるのではないか」「余計なことをしていると思われないか」と感じるのは人の常でしょう。

これはAI活用に限った話ではありません。
新しいシステムや業務改善の取り組み、働き方改革なども、現場に定着するかどうかは直属の
上司が背中を押してくれるかどうかに大きく左右されます。
部下が安心して新しいことに挑戦できる環境をつくれているかどうかが、組織の変化や成長そのものを左右しているのです。

つまりこの問題も本質的には、「新しい挑戦を後押しする職場づくり」の問題です。
AI活用は、その姿勢が最も分かりやすく表れる1つの例にすぎません。

それでも「AIを支援してくれる上司」はまだ少ない

GALLUP社の調査では、課題も明らかになっています。*1

AIを導入している企業でも、「直属の上司がAI活用を積極的に支援している」と強く感じている従業員は3割未満にとどまっているのです。
ドイツで実施された同社による同様の調査でも同じ傾向が見られ、その割合は21%でした。

つまり、多くの企業ではAI導入が進んでも、それを後押しするマネジメントが追いついていないのです。

生成AIは現場で使われて初めて価値を発揮します。
しかし現場を動かすのは管理職。

経営層がAI活用を掲げても、「現場で挑戦を後押しするマネジメント」が十分に機能していなければ、活用は広がりません。

それと反対に、挑戦を支援するマネジメントが根付いた組織では、AIだけでなく、業務改善などの新しい取り組みも定着しやすい環境が整っているといっていいでしょう。

AI時代に、より重要になるマネジャーの役割

これまで見てきたように、AI活用の成否は、AIそのものの性能よりも、現場でそれを後押しする管理職の存在に大きく左右されます。

では、AIが普及する時代に、管理職にはどのような役割が求められるのでしょうか。

リクルートマネジメントソリューションズは、AIによってマネジャー(管理職)の役割が大きく変化すると分析しています。*2

これまでマネジャーには、人材育成や評価、進捗管理、業務改善など幅広い役割が求められてきました。
しかし今後は、そうした業務の多くはAIの支援を受けることが当たり前になるでしょう。

一方で、「人を育てる」「挑戦を後押しする」「チームの力を引き出す」といった、人にしか担えない役割は、これまで以上に重要になると考えられています。

メンバーのパフォーマンスとモチベーションを高めること

AIが日常業務を支援するようになると、一定水準の仕事は誰でもこなしやすくなります。
また、従来のように「仕事はどこまで進んでいるか」を細かく管理する役割は、AIが担うようになります。

そのような環境では、成果を左右するのは、知識や経験よりも「やる気」や「心の状態」になります。

また、AIによって個人のスキルや経験が可視化され、最適なプロジェクトに配置される機会も増えるでしょう。
そのため、マネジャーには、一人ひとりの強みや個性、置かれている状況を理解し、それぞれに合った働きかけで力を引き出すことが求められます。

メンバーが成果を出せるように支援したり、より質の高いアウトプットにつながるよう助言したりすることが、マネジャーの中心的な役割になっていくでしょう。

成長や学びを支援する

AIは急速に進化しているため、AIを適切に活用するためには、新しい技術や使い方を学び続ける必要があります。

そのためマネジャーには、チーム全体に「学び続ける文化」を根づかせることが求められます。
そのためには、自分自身が変化を受け入れ、新しいことに挑戦する姿勢を示すことが欠かせません。

さらに、AIは学習そのもののあり方も変えています。
マネジャーには、一人ひとりに合った学習機会を提供し、継続的な成長を後押しする役割が、これまで以上に重要になっていくでしょう。

おわりに

AIは、管理職自身のマネジメントを支援するツールとしても期待されています。
多くの管理職は、部下の力を引き出すための十分なマネジメント教育を受けているわけではありません。
その点、AIは、部下との関わり方や育成方法について、状況に応じた示唆を得るための支援ツールとして活用できる可能性があります。

このように、AIは従業員の業務をサポートするだけでなく、管理職のマネジメント力を補完し、その結果として組織全体のAI活用や従業員エンゲージメントを高める存在としても期待されています。

AI時代に企業の競争力を左右するのは、「どれだけ高性能なAIを導入したか」だけではありません。
AIを使ってみよう、新しい方法を試してみようと思ったとき、管理職がその挑戦を受け止め、背中を押せるかどうか―それこそが、AI活用を成功させる土台になります。

AI活用を後押ししている、あるいは阻んでいる意外な存在とは何か。
そのデータから見えてくるのは、組織の変化を支える管理職の役割です。

この記事を書いた人

横内 美保子

博士(文学)。総合政策学部などで准教授、教授を歴任。専門は日本語学、日本語教育。高等教育の他、文部科学省、外務省、厚生労働省などのプログラムに関わり、日本語教師育成、教材開発、リカレント教育、外国人就労支援、ボランティアのサポートなどに携わる。パラレルワーカーとして、ウェブライター、編集者、ディレクターとしても働いている。
X:よこうちみほこ Facebook:よこうちみほこ

資料一覧

*1
GALLUP「世界の職場の状況 AI革命と「人」のこれから 2026年版レポート」p.9

*2
リクルートマネジメントソリューションズ「AIはマネジャーの仕事をどう変えるのか ~11の役割から見る変化とは~」(2025年10月20日)
https://www.recruit-ms.co.jp/issue/column/0000001494/


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この記事を書いた人

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そしきLab編集部

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