Z世代はなぜ管理職やリーダーになりたくないのか データを元に組織運営を検証してみよう

「管理職になるくらいなら、このままずっと一般社員でいたい」

若手社員からこんな言葉を聞いたら、管理職世代は驚くかもしれない。

昇進し管理職になることは、かつては会社員の目標だったといってもいい。
役職が上がれば、給与が増え、裁量が広がり、組織の意思決定にも関われる。

「いつかは管理職に」
そんなキャリア観は、多くの企業で当たり前のものとして共有されてきた。
管理職になることは組織に認められた証であり、社員にとって成功の象徴でもあった。

しかし今、その前提が大きく揺らいでいる。

Z世代を中心とする若い社員の間では、管理職などのリーダーになることを望まない人が増えている。
「責任が重そう」「仕事づけになりそう」「今の働き方を変えたくない」―そんな声も聞かれる。

この現象は、しばしば「最近の若者は出世欲がない」という言葉で片付けられる。
しかし、本当にそうなのだろうか。

データを見ていくと、この問題は若者の意識変化だけに起因しているものではないことがわかる。
浮かび上がってくるのは、管理職という仕事そのものの魅力が低下している可能性である。

若者は管理職から逃げているのではない。
むしろ、管理職になることによって得られるものと背負うものとのバランスを、冷静に見極めようとしているのではないだろうか。

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管理職のエンゲージメントが低下している

まず注目したいのは、現在管理職として働いている人たち自身の変化である。

従業員エンゲージメントとは、「従業員が自身の仕事やチーム、そして勤務先に対して抱く心理的な結びつき」を指す。
従業員エンゲージメントが重視されているのは、従業員エンゲージメントと生産性(事業単位の収益性や売上など)とが密接に関連しているからである。*1

この分野におけるグローバルな調査結果をみてみよう。
コンサルティングのトップ企業であるGALLUP社は、25年以上にわたりこの分野での調査を続けてきた。
「役割の明確さ」「リソースの豊富さ」「成果に対する評価」「職場における成長」「意見の尊重」「会社のミッションや目的とのつながり」「同僚との関係」「仕事の進展具合」など、職場体験に関する12の項目を基準に、6,400万人の従業員を対象として、エンゲージメントとウェルビーイングを測定している。*2

その調査結果をまとめた「世界の職場の状況 AI革命と「人」のこれから 2026年版レポート」の内容はどのようなものだろうか。*1

同レポートによると、管理職のエンゲージメントは2022年には31%だった。しかし2025年には22%まで低下している。わずか3年で約10ポイント近く下落したことになる。
前年からの低下幅が最も大きかったのは2024年から2025年にかけてで、5ポイント低下した。

さらに重要なのは、一般従業員との差だ。
2022年には、部下を持たない一般従業員のエンゲージメントは11%だった。管理職との差は20ポイントあり、管理職のほうが明らかに仕事への熱意や組織への関与度が高い傾向があった。
ところが2025年には、その差はわずか3ポイントにまで縮小している(図1)。

図1 部下がいる管理職と一般従業員のエンゲージメント
図1 部下がいる管理職と一般従業員のエンゲージメント
出所)GALLUP「世界の職場の状況 AI革命と「人」のこれから 2026年版レポート」p.7

かつて管理職は、一般従業員より高いエンゲージメント水準にあったが、現在ではその差は縮小し、チームメンバーとほぼ同程度の水準に近づいているのである。
つまり、以前存在していた「管理職だからこそ得られる仕事への充実感」という優位性が薄れつつあるのだ。

さらに同調査では、管理職は一般従業員よりもストレス、怒り、悲しみ、孤独感を感じる割合が高いという結果が示されている。
組織を率いるはずの管理職が、実は組織の中でもっとも心理的な負荷を抱える立場になりつつある。

この姿を間近で見ている若手社員が、「自分もあの立場になりたい」と思えるだろうか。

「管理職になりたくない」人が増えている

では、「管理職になりたくない」人はどのくらいいるだろうか。
日本能率協会マネジメントセンターが2023年に実施した実態調査(以下、「実態調査」)の結果をみてみよう。*3

一般社員に対して、「今の仕事が面白い/面白くない」「管理職になりたい/なりたくない」を軸に四象限に分類したところ、約77.3%が「管理職になりたくない」と回答した(図2)。
4人に3人以上が管理職への昇進を希望していないという結果である。

図2 「管理職になりたくない」の回答割合・「今の仕事を面白い/面白くない」の回答割合
図2 「管理職になりたくない」の回答割合・「今の仕事を面白い/面白くない」の回答割合
出所)日本能率協会マネジメントセンター 「77%が「管理職になりたくない」【調査レポート】ポジティブな管理職を育てるために人事が押さえたいポイントとは?」
https://www.jmam.co.jp/hrm/column/0095-kanrishokuchousa.html

2018年にJMAMが行った同様の調査では、「管理職になりたくない」と回答した部下が72.8%だったことから、多くの一般社員の間で「管理職になりたくない」という傾向が強まっていることが予想される。

この数字だけを見ると、「向上心がなくなった」「責任を避ける人が増えた」と考える人もいるかもしれない。
しかし、「今の仕事が面白い」と回答している社員でも、おおよそ3人に1人(32.2%)が「管理職になりたくない」と回答しているのはなぜだろう。

現在の管理職を取り巻く環境を見ると、それも当然という側面が見えてくる。

管理職の負担が増している

管理職とは、企業内で部や課を率いる役職のことである。*3
一定の権限を持ち、部下やチームをまとめる役割を担う。

現代の管理職に求められる役割は、以前とは大きく変わった。
かつての管理職は、経験や知識をもとに判断し、部下へ指示を出す役割が中心だった。
しかし現在は違う。

以下は、管理職が担う役割の一例である。

  1. 目標設定・進捗管理
  2. 労務管理
  3. 部下の管理(育成や仕事への動機付けなど)
  4. チームビルディング
  5. 経営層との橋渡し

現在は、成果目標の達成だけでなく、部下のキャリア支援、心理的安全性の確保、多様な働き方への対応、ハラスメント防止など、求められる役割は急速に広がっている。

上層部からは成果を求められる一方で、部下一人ひとりの価値観にも寄り添わなければならない。
こうした役割を果たすためには、さまざまな能力やスキルが必要だ。

管理職は「命令する人」ではなく、「複雑な利害や価値観を調整する人」になったのである。
仕事の難易度は確実に上がっている。

では、その負担に見合うだけのメリットは増えているのだろうか。

管理職になるメリットは縮小している

上述の「実態調査」では、実際に管理職になってみて、「管理職の仕事にどのような印象を抱いたか」についても聞いている。

その結果をみると、「管理職を続けたい」と考えている管理職は、「自分の成長につながった」と回答している。

一方、「管理職を続けたくない」と考えている管理職は「調整が多くて面倒」・「プレーヤーとしての仕事の方が面白い」がいずれも71.3%で、最多となっている。
さらに、「負担に対し報酬が釣り合っていない」も65.3%に上る(図3)。

図3 管理職を続けたくない管理職が「管理職」の仕事に抱いている印象
図3 管理職を続けたくない管理職が「管理職」の仕事に抱いている印象
出所)日本能率協会マネジメントセンター 「77%が「管理職になりたくない」【調査レポート】ポジティブな管理職を育てるために人事が押さえたいポイントとは?」
https://www.jmam.co.jp/hrm/column/0095-kanrishokuchousa.html

同調査によると、「管理職になりたかった理由」の回答として、もっとも割合が高かったのは「報酬アップのため」で、57.7%を占めている。 
それが報われないとしたら、どうだろう。

「管理職になりたくない」は合理的な判断

こうした背景にあるのは、報酬面の変化である。

リクルートワークス研究所は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」に基づいて、20~24歳の非役職者の時間当たり賃金を基準に、役職者の相対的な賃金水準を比較した。*4

そのデータによると、2010年以降、係長級から部長級まで、役職者の相対的な賃金水準はいずれも低下傾向にある(図4)。

図4 役職者の時間当たり相対賃金倍率の変化
図4 役職者の時間当たり相対賃金倍率の変化
出所}リクルートワークス研究所 主任研究員 大嶋 寧子「役職別賃金の動向に見る、昇進の金銭的価値」(2025年9月4日)
https://www.works-i.com/column/labor-market/detail002.html

もちろん、管理職の給与額そのものが下がっているわけではない。
近年は管理職の賃金自体が上昇しているものの、若年非役職者の賃金も上昇を続けてきた結果、少なくとも大企業に勤める若者にとって、管理職になることで得られる報酬上の優位性は以前より小さくなっているのだ。

つまり、若手社員の目にはこう映る。

責任は増える。
業務量も増える。
人間関係の調整も増える。
しかし、その負担に対する報いは以前ほど大きくない。

そう考えれば、「管理職になる意味はあるのか」という疑問を持つことは、むしろ合理的だ。

Z世代は出世したくないのではなく、納得できる理由を求めている

Z世代はよく「出世欲がない世代」と言われる。
しかし、それは少し単純化しすぎた見方ではないだろうか。

彼らは成長したくないわけではない。
責任ある仕事を避けたいだけでもない。
ただ、その責任を引き受ける意味があるかどうかを見定めようとしているのだ。

そこに自分の時間を投じる価値があるのか。
成長につながるのか。
努力や責任が正当に評価されるのか。

そうした点を冷静に判断している。

「役職が上がること自体が成功」という時代から、「その役割を担う意味があるか」を考える時代へと変化したのである。

問われているのは若者ではなく、管理職という仕組みである
若者が管理職になりたがらないという現象は、単なる世代の問題ではない。
むしろ、現在の管理職制度が抱える課題を示すサインといってもいいだろう。

これから人手不足がさらに進む中で、企業にとって次世代リーダーの育成は避けて通れない課題になる。
そのために必要なのは、「もっと挑戦しなさい」と若者に求めることだけではない。
管理職という仕事を、挑戦したいと思える役割へ変えていくことだ。

責任には、それに見合った裁量が必要である。
負担には、それに見合った支援が必要である。
そして成果には、それに見合った報いが必要である。

Z世代が投げかけている問いは、「なぜ管理職にならないのか」ではない。
「なぜ管理職になりたいと思える仕組みになっていないのか」である。

企業が向き合うべきなのは、若者の価値観を変えることではなく、管理職を支える仕組みや組織のあり方を再設計することではないだろうか。

この記事を書いた人

横内 美保子

博士(文学)。総合政策学部などで准教授、教授を歴任。専門は日本語学、日本語教育。高等教育の他、文部科学省、外務省、厚生労働省などのプログラムに関わり、日本語教師育成、教材開発、リカレント教育、外国人就労支援、ボランティアのサポートなどに携わる。パラレルワーカーとして、ウェブライター、編集者、ディレクターとしても働いている。 X:よこうちみほこFacebook:よこうちみほこ

参考資料

*1
GALLUP「世界の職場の状況 AI革命と「人」のこれから 2026年版レポート」p.6, 7,15
*2
GALLUP「従業員体験に関する世界最大規模の調査」(2024年9月25日)
https://www.gallup.com/jp/653543/%E5%BE%93%E6%A5%AD%E5%93%A1%E4%BD%93%E
*3
日本能率協会マネジメントセンター 「77%が「管理職になりたくない」【調査レポート】ポジティブな管理職を育てるために人事が押さえたいポイントとは?」(2025年7月30日)
https://www.jmam.co.jp/hrm/column/0095-kanrishokuchousa.html
*4
リクルートワークス研究所 主任研究員 大嶋 寧子「役職別賃金の動向に見る、昇進の金銭的価値」(2025年9月4日)
https://www.works-i.com/column/labor-market/detail002.html


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