
新卒で初めて社会に出たときや転職して新しい会社に入社したとき、異動して新しい仕事を始めたときに「この仕事に向いてないのかもしれない」と思ったことはありませんか?
でも、本当にその仕事は向いていないのでしょうか。向いてないと思い込む前に、立ち止まって考えてみましょう。
この音声コンテンツは、記事の文脈をAIが読み取り独自に対話を重ねて構成したものです。文章の読み上げではなく、流れや意図を汲み取った自然な音声体験をお届けします。※AIで作成しているため、一部誤りや不自然な表現が含まれる場合があります。
「向いてない」と「慣れていない」は、実は別物
筆者が新卒で入社した会社は、同じ部署に同期は一人もいませんでした。まわりを見渡せば先輩ばかりです。誰もがすでに仕事の流れをつかんでいて、迷いなくテキパキと動いています。そんな中で自分だけが、周りより明らかに仕事のスピードが遅い状況でした。
自分としては、言われた仕事をやっているつもりでしたが、周りの先輩を見ていると、自分で仕事を見つけたり、指示されなくとも業務の補足資料を作ったりしています。その姿を見て、「あ、そんな作業も必要だったんだ。自分はなんて気が利かない人間なんだろう」と何度となく思いました。
「能力がない。」「この仕事に向いていない。」そんな言葉が、頭の中をぐるぐる回っていました。同期がいれば「わかる、私も同じ」と笑い合えたのかもしれませんが、比較対象は常に、何年もその仕事をしているベテランの先輩たちでした。振り返れば、比べる相手を間違えていただけなのかもしれません。
新しい環境で「向いてない」と感じたとき、私たちはつい、それを能力や適性の問題だと決めつけてしまいます。でも冷静に振り返ると、あのときの自分に足りなかったのは才能ではなく、単純に「経験」と「時間」だったのではないかと思うのです。
同期がいないというのは、思っている以上にこたえます。「みんな最初はできなかったよね」と笑い合える相手がいないので、自分の現在地を確かめる物差しがないまま、いつのまにか完成された先輩たちの姿だけが基準になってしまいます。できなくて当然の段階なのに、まるで自分だけが劣っているかのように錯覚してしまうのです。
「向いてない」という言葉は、便利なぶん厄介です。一度そう思い込むと、その思考からなかなか抜け出せません。
「今の自分に何が足りないのか」
「どうすればスムーズに業務を行うことができるのか」
本来考えるべきこうした問いが、「向いてないから仕方ない」のひとことで片づいてしまいます。答えの出ない自己否定だけが残り、次の一歩を考える余地がなくなってしまうのです。
子どもの頃の「水泳」、大人になって始めた「ピアノ」
そこで思い出したのが、子どもの頃に習っていた水泳です。
筆者はもともと運動が得意なタイプではありませんでした。習い始めたころは当然泳げず、スイミングスクールの入り口の扉にしがみついて大泣きし、最後はコーチに引きずられるようにしてプールに連れていかれていました。あの頃の自分も、きっと「向いてない」と思っていたはずです。
それでも小学生の間ずっと通い続けていたら、いつのまにか同級生よりも泳げるようになっていて、毎年、みんなの前でお手本として泳ぐ役目を任されるまでになっていました。
最近始めたピアノでも、同じようなことを感じています。同じ教室に通う子どもたちの中には、コンクールで入賞するような子もいるのですが、話を聞くと低学年であっても平日は1時間以上、休みの日は3時間ほど練習しているそうです。
筆者の子どもの頃を振り返ると、休みの日には友達と遊ぶこと、テレビを見ることしか考えていませんでした。3時間も習い事の練習をしているなんて、筆者からすれば信じられません。
もちろん才能という側面もあるのでしょうが、それ以上に、それだけの練習量をこなしているからこそ上達しているのだと痛感させられました。
向き不向きを判断する前に、そもそも十分な時間をかけていたかどうかを振り返ってみたいところです。水泳もピアノも、そして仕事も、最初の数週間や数か月だけを切り取って「向いてない」と結論づけるには、あまりにも短い時間だったのかもしれません。
辞める前にチェックしたいポイント
とはいえ、「とにかく我慢して続ければいい」という話でもありません。心身を壊してまで続ける必要はありませんし、明らかに労働環境そのものに問題がある場合は、話が別です。そのうえで、「向いてない」と感じたときに、辞めるという結論を出す前に確認しておきたいポイントを整理してみます。
その仕事を始めてから、どれくらい経ちましたか?
水泳もピアノも、始めて数週間で結果が出たわけではありません。「向いてない」と感じたのが、始めてからまだ数週間から数か月というタイミングなら、それは才能の話ではなく、単に経験値がまだ蓄積されていないだけかもしれません。
マイナビ学生の窓口の調査によると、「一番『仕事盛り』だと思う年齢は何歳だと思いますか?」という問いに対して、第1位は30歳、第2は28歳、第3位は35歳でした。
「一通り仕事ができるようになっていて、体力的にもまだ大丈夫なので」(男性/43歳/食品・飲料)
「仕事にも慣れて貫禄が出てきて、いろいろ任されるようになる年齢だから」(女性/30歳/その他)
といった理由が挙げられています。*1
こうした回答からも、仕事に慣れることや経験を積み重ねることを、仕事が充実するための一つの要素として捉えている人がいることがわかります。
今できないことだけを見て「向いてない」と判断するのではなく、これまでどれくらいの時間をその仕事に費やしてきたのか、一度振り返ってみてもよいのではないでしょうか。
誰かに話してみましたか?
図1は、独立行政法人 労働政策研究・研修機構が行った調査で、仕事や働くことの悩みをどのような相手に相談したかを示したものです。
この結果を見ると、悩みがあったものの誰にも相談しなかった割合は、男女ともに勤続1年以内で特に高くなっています。勤続期間が短いほど、悩みを抱えても相談できる相手を見つけにくい状況があることがうかがえます。*2

出所)独立行政法人 労働政策研究・研修機構「若年者の初職における経験と若年正社員の離職状況―第3回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査―」P.106
https://www.jil.go.jp/institute/research/2025/documents/250.pdf
筆者のように同期がいない環境では特に、自分の状況を客観的に見てくれる相手が身近にいません。そのような場合は、家族や友人、あるいは職場の相談窓口でも構いません。話してみる勇気を持つことで、自分ひとりでは気づけなかった視点をもらえることがあります。
比較している相手は、そもそも比較対象として適切ですか?
入社1年目の自分と、10年選手の先輩を比べても、差が出るのは当然です。同じ経験年数の人と比べたら、実はそれほど劣っていないというケースも少なくありません。
前述の調査では、男性も女性も、仕事が上手くできずに自信を失って離職するのは圧倒的に勤続1年以内で多い事がわかっています (図2)。*2

出所)独立行政法人 労働政策研究・研修機構「若年者の初職における経験と若年正社員の離職状況―第3回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査―」P.110
https://www.jil.go.jp/institute/research/2025/documents/250.pdf
この事実は、「この仕事は向いてないかも」と感じている自分を否定するものではなく、むしろ逆です。同じように感じている人がこれだけいるのなら、それは自分ひとりの能力の問題ではなく、誰もが新しい環境で一度は通る道だと考えるほうが自然ではないでしょうか。だからこそ、感覚だけで結論を急ぐ前に、経過した時間や周囲の声といった材料を集めてから判断しても、決して遅くはないのだと思います。
立ち止まって考えてみよう
「向いてない」という言葉は、今の自分にとって都合がよく、そして同時に苦しい言葉です。一度口にしてしまうと、それ以上考えずに済んでしまうからです。実際は、まだ経験が浅いだけの、途中経過にすぎないのかもしれません。
水泳は、できるようになるまでには相応の時間と回数が必要でした。ピアノに至っては全く練習が足りず、楽譜を読むことすらままならない状況です。弾けるようになるのかどうかは、これからの自分の練習量にかかっていると思っています。
今の仕事も、もう少しだけ時間をかけてみたら、見える景色が変わってくるかもしれません。辞めるかどうかは、それを確かめてからでも、決して遅くはないはずです。
「向いてない」と感じた自分を責める必要はありません。それだけ真剣に向き合っているからこそ出てくる言葉でもあるからです。焦って結論を出す前に、今日お話ししたチェックポイントを振り返ってみてください。

この記事を書いた人
田中ぱん
学生のころから地球環境や温暖化に興味があり、大学では環境科学を学ぶ。現在は、環境や農業に関する記事を中心に執筆。臭気判定士。におい・かおり環境協会会員。
参考資料
*1
出所)マイナビ 学生の窓口 フレッシャーズ「一番仕事が楽しいとき? 社会人が『仕事盛り』だと思う年齢Top5」
https://gakumado.mynavi.jp/freshers/articles/49164
*2
出所)独立行政法人 労働政策研究・研修機構「若年者の初職における経験と若年正社員の離職状況―第3回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査―」P.105, P.106, P.108, P.110
https://www.jil.go.jp/institute/research/2025/documents/250.pdf
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