USS式付加価値のつくりかた〜営業企画座談会【前半】〜

ウチダシステムズは、内田洋行の製品をメインにオフィス家具や事務用品を言われたままに販売して行く受動的なやり方で、能動的な取り組みは弱く、商品「モノ」を販売するような会社でしたが、リーマンショックをきっかけに、場づくりという付加価値をつけることで「コト」を売る会社へと変容していきました。
今回は、「モノ売りからコト売り」への転換点や、営業を成長させる仕組みと企業文化などを中心に、そしきLab編集部のメンバーに座談会形式でインタビューをしてみました。

そしきLab編集部の座談会メンバー

常盤(営業企画部 部長)
紆余曲折を経てウチダシステムズに流れ着いた2児の父

篠宮(営業企画推進部 企画推進課 担当課長)
営業支援スタッフ歴十数年でありながら、日々右往左往して営業の奥深さを感じている迷い人。趣味は徒歩通勤

山田(営業企画部 営業企画課)
営業から企画マーケティングの仕事を担当するようになった、営業企画推進部の実務担当者。横文字と悪戦苦闘中。

インタビュワー 神田
実はこのホームページを作ったWeb制作会社の人だが、ウチダシステムズのファンになってしまったWebプロデューサー。

「モノ売り」から「コト売り」の会社への転換点は?

ーウチダシステムズは「自社で実際に試した体験・成果をソリューションとして提供する」という面白い行動ポリシーがありますが、そういった付加価値をつけた「コト売り」への転換点を教えてください。

常盤:リーマンショックが大きなきっかけのひとつでしたが、同じタイミングで代表が現代表の岩田に代わり、経営方針も大きく変わった事ですね。リーマンショック以前は、ウチダシステムズもまだまだオフィス家具を受動的なやり方で販売していて、リーマンショックを機にそのスタイルが通用しなくなった。そんな中、売るものがないなら営業自身が売るものを見つけるような仕組みづくりに取り組み始めました。

ーそれがUSS Newsといわれる取り組みですか?

常盤:そうですね。製品に付加価値をつけて売るためのツール「USS News」というものが生まれたんです。大きな会社だと、企画系の部門で市場調査などを行い、調査したものをリリースするというのが一般的だと思います。ですが当社は、お客様に一番近い営業マンがマーチャンダイジング(商品化計画)をし、お客様のお困りごとを解決できる製品・サービスを見つけてはお客様にお伝えする、ということをやり始めました。根底に流れているのは、「営業が一番お客様の課題をわかっているのだから、わかっている人が考えるべきで、わかっている人から伝えられる方がお客様も助かるよね」ということですね。

USS News(ウチダシステムズニュース)とは?

営業やデザイナー自らが制作する「製品・サービス紹介チラシ」。製品・サービスをただ紹介するのではなく、実際に自社で導入・活用してみて感じたことや得られた体験を通じて、お客様へソリューションとして紹介しています。

ーそういった取り組みをする前は、どんな営業スタイルだったんですか?

常盤:私自身はソリューション営業のつもりでしたが、今考えると本当に需要対応の御用聞きだったと思います。それが、USS Newsを活用することでお客様の課題解決だけでなく、真のお困りごとを一緒に探すプロセスも踏めるようになりました。

篠宮:当時は「お客様のお困りごとをどう解決していくか」という姿勢だったので、今のような「お客様が気づく前に、お客様の課題を考えてみよう」なんていう思考は、なかなかできなかったですね。

付加価値のある提案をするための成長プロセスとは?

ーいきなり「自分たちでアプローチツールをつくれ」と言われてもなかなか難しいと思うのですが、当時はどのように進めていったのでしょうか?

篠宮:当時はそういった販促物をつくるスタッフというのはひとりも居なかったんです。当時の営業マンには、製品の情報を編集して人に伝えるというスキルもないし、お客様の課題を整理して解決していく筋道を立てるスキルもまだ稚拙だったので、訓練のような意味合いでやってみたという部分もあります。
順番に営業を指名して商材を選んでもらい、外部のデザイン会社に手伝ってもらいながらつくっていきました。社員のスキルを上げるという意味合いもUSS News誕生の理由のひとつではあったと思います。

常盤:私たちはメーカーではないので、自社商品はありません。だから、売ってるものに愛着が湧きにくい。けれど、USS Newsをつくることで製品に愛着が湧いてきて、「良い製品だからお客様にも使ってもらいたい」という気持ちが自然に出てくるんです。そういう意図も裏側にはありました。

山田:言われてみれば、USS Newsにはそういった一面もありますね。

ーUSS Newsに限らずですが、「まずは一度自分たちでやってみる」という文化は面白いなと感じますね。

常盤:当時は非日常を多くつくるということをかなり意識してやってたんですよね。

山田:USS Newsづくりが非日常だったということですか?

常盤:営業がUSS Newsのようなものをつくるのは、当時では非日常の行為でした。数あるイベントもそうです。営業に絶えず刺激を与えることで、成長できるだけでなく販売ツールまで増えていく。最初からそんなストーリーが繋がっていたわけではなかったと思うのですが、振り返ってみると、良い相乗効果だなと感じます。

篠宮:ただ、今は会社の規模が大きくなり様々なことがシステム化されてきて、魅力を失っていることもあります。「何のためにやっているのか?」を真剣に考え直さないと自己満足的なツールになってしまうため、もう一度見直している最中です。

ー具体的な事例のあるUSS Newsはありますか?

山田:椅子に関するUSS Newsがわかりやすい例だと思います。リモートワークからオフィスに出勤してくる流れがある中で、オフィスに良い椅子を揃えませんか、と提案する内容です。「椅子は座ってみないとわからないよね」とおっしゃるお客様も多いので、このNewsをきっかけに当社のオフィス見学をご案内することもあります。

篠宮:コロナ禍でリモートワークが浸透した今、オフィスに出勤して働くモチベーションってなんだろうと考えると、椅子がひとつのきっかけになるのではと思いました。企業側としても、社員にオフィスに帰ってきてほしいのであれば簡単に手をつけられるところだと思っています。「自宅や外部オフィスとは違った、自社オフィスならではの心地よさを意図的につくる」ということをNews内で提案しています。スペック情報が豊富なメーカーのパンフレットとは違った視点でオフィスチェアを紹介した例です。

遊び心から生まれる一体感

ー営業の方がここまでやる会社ってなかなかないですよね。全員一体になって自分たちで進んでいく感じがすごく面白いなと思っていますが、そこの源泉がどこにあるんだろうかと気になっています。

常盤:昔からノリの良い人が多い会社でした。「この指止まれ」というと集まってくる人たちばかり。その上で、ひとりひとりが役割と自覚を持って仕事をしています。当たり前ですが全員が「この指止まれ」と言い出す訳ではなく、それを言い出す人たち、その指に止まる人たちを数多くつくるというのは意識しています。

ー今やっている総選挙なんて、他の会社ではなかなか見れない面白い取り組みですよね。

篠宮:お客様向けイベントの盛り上げ策として、みんなで公約を立てて選挙(看板)をつくるという取り組みですね。少し前はそういった遊び要素のあるものが盛んでした。会社の規模が大きくなるにつれ、遊び文化が盛んだった頃の雰囲気を知らない人が増えています。少人数でワイワイやっていた楽しさが薄れてしまった空気があり、今回の取り組みをはじめたんです。選挙自体は、実はお客様のオフィスでアイデアをいただいたものです。

ー社員全員がつけているAEDマイスターのバッジも、そういった遊び文化の一環なんでしょうか。

篠宮:そうですね。もちろん我々がAEDを販売できる会社であり、設置頂くことで多くの命が救えて結果的にお客様のお役に立てると言う事は勿論ですが、「お客様へのお役立ち数に従ってバッジの色が変わっていく」というような仕掛けもあります。この様な仕掛けから、東京オリンピックの時には警護に来ていた警察の方の人命も救助出来ました。遊び心もありつつお客様に真に貢献できたことは本当に誇らしく思えました。

常盤:そういう遊び心とお客様貢献が実際に出来てしまうのは、ウチダシステムズのユニークなところかもしれないですね。

常盤:逆に今課題だと思ってるのは、遊び心や仕組みが、あって当たり前な世代の人たちが増えてきたことで、一体感が薄まってきた部分です。会社の仕組みが整ってきているので、「こんなことをやりたい」と言い出さなくても完結できています。けれど私自身はまだまだ課題が多いと思っているので、みんなが「これ変えようよ、こうしようよ」と進んでやっていく会社でないと、この先20年、30年後に生き残れないと感じています。

全員参加型経営をつくるための取り組みとは?

ー全員参加型経営的な悩みは他の会社にも通ずるところがあると思います。全員参加型経営や「この指止まれ!」で人が集まるような会社を維持するために、どのような取り組みをしていますか?

常盤:私たち営業企画推進部のような営業サポートスタッフが主体的に動くというよりも、営業や他のスタッフからスタートして、我々がサポートをしながら、色々なセクションのキーマンを加えていく形を取っています。そんなやり方で自然と集まる環境をつくっている部分はあるのかもしれないですね。
あとは、先輩が後輩に対して主体的に動けるような姿勢をとり、伝えていかないと自然発生的に文化が生まれることはないと思います。そういったコミュニケーションが大事だなというのは、年を取って思いますね。

山田:どのくらいからそういったコミュニケーションが大事だなと思ったんですか?

常盤:マネージャーになったり後輩ができたりして、言う方の裏の意図もわかるようになってからかな。後輩がいるってすごく大事なことだと思います。後輩の前では良い格好をしなくてはいけないから、勉強して、調べて、言ったことに責任持つようになる。そうすると、成長するんですよね。

篠宮:どうしたら後輩や若手が一緒に乗ってくれるかというのは、常に考えていますね。全員がワイワイするのが好きなわけでないので、つい参加したくなるような仕掛けをしたり、みんなが興味を持って見たくなるような勉強会を行ったり、そういう工夫の繰り返しをしています。YouTubeと同じで視聴者数をどう伸ばすか、という感じです。

ー岩田社長がそういった遊びの要素を出し始めたのがきっかけだったんでしょうか。

常盤:そうですね。そういうことをやり始めると、今まであまり表に出なかった人たちが表に出てきたりして、遊びの文化をつくるようになった。だから、トップが率先して姿勢や有り様を見せるのは大事なのかもしれません。

ー山田さんは中堅の立場から見て、そういった全員参加経営的な文化や遊びの文化はどう感じますか?

山田:3年目くらいまでは後輩も少なく、マネージャーの皆さんに巻き込んでもらって全員参加の文化に染まることができていました。ただ、私たちのような新卒入社の社員が増えてきたので、若手だけのコミュニティが出来始めています。リモートが増え、イベントごとが減った時期でもあるので、次は私たちの世代が後輩にその文化を伝えていく必要があるのかなと感じています。正直、やりたくないなと思うこともあったりしますが(笑)

常盤:無理に押し殺す必要はないよね。やっぱり、「やりたくない」って感じるっていうことは、「こうやったらいいのにな」という気持ちを持っていると思うんです。それをちゃんと出すのがすごく健全なんだと思うんですよね。やりたくないんだったら、「こうやりたいんです」って言えるような健全な組織づくりをしていきたいと感じています。

企業文化とオフィス空間の話〜営業企画座談会【後半】〜につづく


組織力の強化や組織文化が根付くオフィス作りをお考えなら、ウチダシステムズにご相談ください。

企画コンサルティングから設計、構築、運用までトータルな製品・サービス・システムをご提供しています。お客様の課題に寄り添った提案が得意です。

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そしきLab編集部

ウチダシステムズのスタッフを中心に、組織作りや場づくりについて議論を交わしています。業務の中で実際に役に立ったことなどを紹介していきます。